一人じゃない
お、お、お久しぶりです……。
なんとか、二ヶ月は経たなかった……ちなみに次のエヴァリスト視点でこの章は終わりです。
あ、あと、完全な気分転換で『潜入文官の(契約)妻~義賊の女と潜入調査中の男は契約結婚をする~』というお話始めました(´;ω;`)ウッ…
内容は訳あり男女の契約結婚。作者ページから飛べますので、よろしければどうぞ……!
策略と陰謀要素強めのものですので、好き嫌いは別れそうですが……。
「そっか」
エヴァリストがそう言う。その言葉は何処となく甘くて、優しくて。ジゼルの胸がぎゅっと締め付けられるような感覚だった。
彼の目を見つめる。その甘い声音とは裏腹に、彼の表情はとても真剣なものだ。
「……俺は、ずっとジゼルを離さないよ」
が、いきなりそう言われると、どう反応すればいいかがわからない。
その所為で目をぱちぱちと瞬かせていれば、彼がほんの少し肩をすくめた。その仕草さえ、驚くほどに色っぽい。
「あ、あの……」
戸惑って、少しだけ視線を逸らす。けれど、彼は変わらずまっすぐにジゼルを見つめてくる。
その目が、ジゼルを射貫く。心臓がどくどくと大きく音を鳴らして、もうなんだかおかしくなってしまいそうだった。
揺れる目で、恐る恐る彼を見つめる。その目の揺れに気が付いたのか、エヴァリストは「冗談」と言っていた。
「……半分は、だけど」
安心した気持ちが、一瞬で吹き飛んだ。
半分は冗談。ということは、残りの半分は……?
頭の中が必死に動いて、答えを探し出そうとする。なのに、上手く答えが出てこない。
ただただ混乱していれば、エヴァリストがふとジゼルの近くに寄ってくる。その後、彼の手がジゼルの手を取った。
「半分は冗談。ただ、残りの半分は本気」
「……え、えっと」
「俺は、面白いことが大好きだから。ジゼルのことを、離すつもりはないよ」
彼の言葉に、少しだけほっとした。
面白いことが大好きだから、離すつもりはない。それすなわち、決して恋愛感情ではないということだ。
……寂しい気持ちも、ある。だけど、やっぱり安心のほうが先に出てきてしまう。
だって、ジゼルは彼に似合わない。相応しくないのだから。
「ジゼル、今、変なこと考えたでしょ?」
「へっ?」
が、すぐ間近に迫ったエヴァリストの端正な顔に、目を瞬かせてしまった。
(変なこと? そんなこと、なにも……)
自分が考えたことは、ただ自分が思い上がらないようにとくぎを刺しただけに過ぎない。
それだけだから、決して変なことでは――。
「ま、いいよ。……いつか、きっと」
そう言ったエヴァリストが、その手でジゼルの頬を撫でた。少しざらついた手が、気持ちいい。
「とりあえず、俺はエルヴェシウス侯爵夫妻に自分の意見を出す。……俺は、ジゼルを離すつもりはないって」
「……はい」
彼はとことんジゼルの味方でいてくれる。それがひしひしと伝わってくるから、嬉しくてたまらない。
マリーズにしろ、エヴァリストにしろ。今のジゼルには、絶対的な味方がいる。一人じゃない。それが、嬉しい。
「もしも、両親に俺との婚約を解消しろと無理強いされたら言ったらいい」
「……なんと?」
「――エヴァリスト・ラ・フォルジュには考えがあるってね」
その言葉の意味は、ジゼルにはいまいちよくわからない。……ただ、彼がそう言ってくれるということは、効力のある言葉なのだろう。それを、察する。
「最悪の場合、逃げてきたらいいから。俺に近い使用人には言っておくから、あの侍女と一緒に逃げておいで」
「……はい」
正直、その提案は断りたかった。だって、それはエヴァリストに迷惑がかかることだ。
しかし、間違いなく。彼は頼られることを望んでいる。それが、とてもよく伝わってくるのだ。そのため、素直に頷く。
「いい子。……俺が、最後まで味方でいるからね」
頭を軽く撫でられて、そう囁かれる。……胸の中いっぱいに広がる、嬉しいという気持ち。
「もう、一人じゃないよ。……これからは、俺も一緒に戦うから」
「……は、ぃ」
「それに、俺だけじゃない。ジゼルには、あの侍女だって、ギオだっている」
ギオが完全にジゼルの味方なのかは、怪しいところだ。でも、エヴァリストの忠実な侍従であるギオは、エヴァリストに付き従う。それすなわち、エヴァリストの意見に賛同するということ。
「……一緒に、抗おう。運命にも、現実にも。――身内にも」
彼が最後に発した単語の意味は、どういう意味なのか。
ジゼルの両親のことを表しているだけなのか。はたまた――彼にも、抗いたい身内がいるのか。
そこは、定かじゃない。だけど、やれることはやる。今の自分は、一人じゃない。
その認識を強めて、ジゼルはエヴァリストの手を握った。ぎゅっと、力強く。
次は3月中旬が来るまでに更新します!(願望)
見捨てないでください……。




