何もかも、わからない
今回から定期更新に変わります(o_ _)o))
エヴァリストはただきょとんとジゼルとギオを見つめている。
そして、ジゼルは咄嗟に手を引っ込めた。
(……もしかして、何か勘違いをされてしまった?)
いや、間違いなく勘違いされているだろう。
ジゼルはギオに顔を近づけ、手を伸ばそうとしていた。……はたから見れば、ジゼルがギオに言い寄っている光景だろうから。
「で、殿下っ! 違います……!」
ジゼルよりも先に、ギオが現実に戻って来たらしい。
彼は自身の手をぶんぶんと横に振りながら、エヴァリストに弁解しようとする。が、エヴァリストはただ立っているだけだ。何も言葉を発さず、ただギオとジゼルを交互に見つめている。
……一番怖い奴だ。
心の中で、ジゼルはそう思う。
「あの、エヴァリスト様……これは、違いまして……」
ジゼルだって、この光景で何を言ったところで言い訳にしか聞こえないと、わかっている。
でも、エヴァリストに勘違いされたままなのは嫌だった。
それに、偽装婚約の関係を解消されるのは、もっと嫌だ。
(そうよ。エヴァリスト様が婚約を解消するとおっしゃれば、あっさりとなくなってしまう関係なのよ……)
そう思うと、ジゼルの胸がぎゅっと締め付けられたような気がした。
この気持ちは、一体何なのだろうか? もしかして、本気でエヴァリストに惹かれているのでは――。
一瞬だけそう思ったものの、今はこの微妙な空気を何とかしなくちゃならない。
思考回路を必死に動かして、ジゼルは弁解の言葉を探す。言い訳じゃない。弁解だ。
「……違うって、二人して何言っているの?」
エヴァリストが、部屋に入ってくると壁にもたれかかった。
そのまま彼は腕を組み、にっこりと笑う。……その笑みがひどく胡散臭く、恐ろしさを与えてくるのはわざとなのか。はたまた、偶然なのか。
「ジゼルは、罪な子だね。……俺がいながら、ほかの男にも愛想を振ろうとするなんて」
「ち、ちがっ……!」
違う。
そもそも、彼は一体何を言っているのだろうか?
彼の言葉が正しければ……まるで、彼が嫉妬しているみたいじゃないか。
(エヴァリスト様のお気持ちが、これっぽっちも分からないわ……)
もう、何が何だか全く分からない。
バティストの狙いも。エヴァリストの気持ちも。ギオの気持ちも。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、めちゃくちゃで、どうにかなってしまいそうだ。
ジゼルがそう思って俯いていれば、ふとギオがエヴァリストの方に向かったのがわかった。
「……殿下」
彼が、静かにエヴァリストのことを呼ぶ。エヴァリストは、何も言葉をくれなかった。
「ジゼル様は……」
「……どうして、ギオはジゼルのことを名前で呼んでいるの?」
ギオの言葉に、エヴァリストが全く違うところを指摘する。だからだろうか、ギオが言葉に詰まったのが、ジゼルにも分かった。
「今まで、ジゼル・エルヴェシウスって呼んでいたよね?」
確かにそれは間違いない。ただ、ジゼルが長ったらしいフルネームで呼ばれるのが嫌だっただけなのに。
「そ、それは、私がお願いしたのです」
「……ジゼル?」
「フルネームで呼ばれるのは、なんだか居心地が悪かったので……」
胸の前で手を握り、ジゼルは必死に言葉を紡ぐ。
これではまるで、浮気を疑われたみたいじゃないか。いや、実際そうなのだ。
密室で男女が二人きり。しかも、片方がもう片方に顔を近づけていたなど、浮気だと思っても仕方がない。
「そっか。……まぁ、いいよ」
エヴァリストはそれだけを言うと、ゆっくりとジゼルの方に近づいてきた。その足取りがゆっくりなのに、しっかりとしていて。
ジゼルの背筋に冷たいものが走る。
エヴァリストは、優しい人物だ。……怒るところなんて、ジゼルは見たことがなかった。
「ジゼル」
「……はい」
彼に名前を呼ばれて、ジゼルはそっと返事をする。
そうすれば、エヴァリストに手を掴まれた。彼は、そのまま歩いて行こうとする。
「あ、あのっ!」
慌てて彼について行こうとするものの、脚が絡んで上手く歩けない。
それを見たためなのか、はたまたいろいろと思うことがあったのか。エヴァリストはジゼルの歩幅に合わせて歩き始めてくれた。
ここは素直に、ありがたい。
「いろいろと言いたいことはあるけれど、ね」
「……はい」
「とりあえず、俺の今の気持ちを伝えさせてもらうね」
……怒られるのだろうか。
心の中でそう思いジゼルが目をぎゅっと瞑っていれば、エヴァリストがジゼルの両頬を両手で挟んでくる。
「どうにも、俺は今、年甲斐にもなく嫉妬したみたいなんだよね」
そして、彼はなんてことない風にそう告げる。……嫉妬。
その単語に、ジゼルは目を丸くすることしか出来なかった。
あと、新作始めておりますー!
評判の悪い辺境伯に嫁ぐことになった出戻り娘ですが、辺境伯は生意気盛りの子供でした(どうやら、子育て要因として呼ばれたらしいです)
というお話です。作者ページから飛べますので、よろしければどうぞ……!
また、現在連載中の
闇落ち予定の夫が孤独にならないように、めちゃくちゃ構ってみたら。
の方もよろしくお願いいたします……!(n*´ω`*n)




