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二度目も、同じ結末なんて

 その後、エヴァリストに連れられてやってきたのはこの間と同じ中庭だった。


 彼はさっさと人払いをしてしまい、ジゼルの身体をベンチに座らせる。そして、少し離れた位置に自身も腰掛けた。


「……落ち着いたか?」


 エヴァリストが何でもない風にジゼルにそう問いかけてくる。そのため、ジゼルはこくんと首を縦に振った。


 そもそも、落ち着いたも何もないのだ。ジゼルがひどい顔をしていただけであり、取り乱したりはしていない。それすなわち……その言葉は、少々語弊があるということ。


「そんな風に気を張らなくていいよ。……俺とジゼルは、婚約者なんだから」


 ジゼルの方をちらりとも見ずに、エヴァリストが淡々とそう告げる。ジゼルには、「偽装の」という言葉が聞こえたような気がした。いや、実際エヴァリストはそういう意味で言ったのだろう。


「……嫌な思い出でも、あったのかな」


 エヴァリストがぽつりとそう言葉を零す。……話そうか。いや、話さない方が良いだろう。そもそも、自分がやり直しの人生を歩んでいるかもしれないなんてこと、話したところで信じてもらえるわけがない。


(ここは、やっぱり予知夢よね)


 そう思い、ジゼルはぽつぽつと声を発する。


「……その、予知夢の中で、ここでとても嫌な思い出があったのです」


 そっとそうエヴァリストに言えば、彼はなんてことない風に「そうか」とだけ言葉をくれた。……慌てるでも、バカにするでも。それこそ、呆れたような声音でもない。ただ、世間話の一環に相槌を打つような。そんな声音だった。


「俺は確かにジゼルが見た予知夢について、ある程度は聞いたよ。……でも、そう言えば詳しくは聞いていなかったなぁって、思ったんだ」


 彼の視線は前を向いている。ジゼルの方を見つめることは、ない。


「……そう、でしたか?」

「あぁ、そうだよ」


 ジゼル自身には、結構詳しく話したつもりだった。しかし、詳しい詳しくないというのは人によって違う感覚なのだ。ジゼルが割と詳しく話したと思っても、エヴァリストはそう捉えていないことだってあるのだ。


「ジゼルは、バティストと婚約すれば、自分が死ぬという予知夢を見た」

「……はい」

「……どうして、バティストがジゼルを殺すんだ」


 そんな風に、エヴァリストは問いかけてきた。


 ……どうして、バティストがジゼルを殺したのか。それは……定かではない。だって、彼の気持ちなどこれっぽっちもわからないのだから。


「邪魔になったから、だと思います」


 バティストはジゼルに婚約の破棄を告げていた。そのうえで殺すなど、普通に考えて邪魔になったからとしか考えられない。


 ジゼルはそう考え、その気持ちを口にする。だが、エヴァリストは納得していないようだ。


「婚約の解消を告げられた後に、殺されたんだよね? 婚約の解消を、告げる前じゃなくて」

「……はい」

「普通だったら、婚約の解消を告げる前に殺すとは思わない? だって、婚約者が殺されたとなれば、同情だって集められる」


 確かに、エヴァリストの言うことはもっともだ。


 ……じゃあ、どうしてバティストはジゼルを殺したのか。


(不可解すぎて、何もわからない……)


 ジゼルは殺されたくない。死にたくない。惨めな思いをしたくないという一心で、エヴァリストを頼った。


 が、もしかしたらそれは間違いだったのかも――とまで思って、エヴァリストの顔を見る。彼は、ジゼルのことをまっすぐに見つめていた。


「……まぁ、俺としてもあんまり詮索するのは良くないと思うしね。所詮、それは予知夢だから」


 エヴァリストは、そう言葉を締めくくった。


 そのため、ジゼルはもう何も言えなかった。


(予知夢だけれど、きっと現実になってしまうのだもの……)


 時間が戻ったことに関しては、やり直しのチャンスを得たとジゼルは受け取っている。


 今度は、自分の好きなように生きようとも、思っている。それは、間違いない。その気持ちに、嘘も偽りもない。


「ジゼルは、さ」


 エヴァリストが静かな声でジゼルの名前を呼ぶ。だから、ジゼルは彼の目をもう一度見つめる。とても、美しい目だった。


「その予知夢通りに、なりたくないと、思った」

「はい。それから、自分の好きなようにやりたいと、思いました」


 剣術も魔法も、それこそ商売だって。教師をエヴァリストに探してもらっているのは、ひとえにやりたいことだったからだ。


 ずっと、自由にあこがれていた。その自由を、今度は手にする。そうとも思っている。


「そのためには、その予知夢のときのバティストの気持ちを知るべきだと思うんだよ」

「……そう、ですか」

「そうだ。だって、バティストがどういう感情でジゼルを殺したのかがわからないと、結局手の打ちようがないんだ」


 そこまで、ジゼルは考えなかった。きっと、バティストはジゼルを嫌って殺したのだ。そう決めつけていた。


 しかし、もしもエヴァリストの言うように少し違う感情を抱いていたとすれば……?


(手を打たないと、今回も同じようになる可能性が、あるってこと……?)


 そんな想像をして、ジゼルは背筋に冷たいものが走るような気がした。

私の書くざまぁものなので、人によってはざまぁとは捉えられない可能性があることに、今気が付きました……。


どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします……!(出来る限りざまぁにします!)

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