第5話 保留と果実
「自動で魔石を集まる装置?そんなことが出来るんですか?」
「はい。といってもまだ絶対できるという確証はありません。いくつか質問しても良いですか?」
「もちろんです」
「まず魔物にも物理法則って働くんですか?」
「はい。重力を始め、全ての物理法則が普通の生物と同様に働きます。ただ、幽体を持つ魔物や高度の知性を持ち、特殊な魔法を使う魔物はいくつかの物理法則を無視する場合もあります」
「次に魔物が出現するのに地面は必要ですか?」
「いいえ、絶対必要という訳ではありません。ただ地面にも微量ですが魔力が含まれているため魔物は地面に出現することが多くなっています」
「うん、多分できると思います。簡単に言えば魔物を重力で殺すんです」
「どうやってですか?」
「魔物を高所に湧かせます。もっと詳しく説明します。まず大きな塔を立てます、出来るだけ高く。上の方だけ光が入らないようにして、魔力を充満させれば魔物が出現するようになります。生まれた魔物は落下し、地面に着く時に重力によって衝撃を受け消滅します。こうすると自動で魔石がゲット出来る訳です」
あるゲームで有名なトラップタワーというやつだ。最高効率のものを作って、PCを破壊仕掛けたのはいい思い出だ。
「なるほど、すごいですね!ただ···その塔、どこに作るんですか?」
「あっ····」
まったく考えていなかった。人の目などゲームでは気にならないし、あっても問題にしてなかったからな。そういう点では、この世界はゲームっぽいがゲームじゃない。
「考えてなかったんですね」
「はい、まったく」
「じゃあ一旦保留ですか?そのアイデアは」
「そうなりますね」
「面白そうだったのに残念です。でもいつかできますよ。多分!」
ルーンさんが励ましてくれた。自分でも面白いと思ったんだが。まあせっかく異世界に来たんだし、最初から一ヶ所にとどまるより様々なところを回るというのも乙と言うものだ。
「そうですね。それはそうとルーンさん、一つ聞きたいことがあるんですけど」
「何ですか?」
「ルーンさんはこの世界で何かしたいことはありませんか?」
「えっ?」
「昼に言ったじゃないですか。一緒にこの世界を楽しみましょうって。このあとの予定を決めるので、ルーンさんのやりたいことを聞いておきたいんです。何でもいいですよ。やりたいこと、見たいもの、何かないですか?」
「うーんそうですね。私は優さんが楽しければ何でも、良いですよ。それが役目ですし、ただひとつお願いを言うなら美味しいものをたくさん食べたいです!」
「分かりました。そうですね···決めました。当面の目標はこの世界の全ての国巡りです。そして行った国で美味しいものを食べましょう。いいですか?」
「もちろんです!」
とりあえず、予定が決まった。異国漫遊というやつだ。気の向くままに、たまには効率を考えずフリープレーといこう。
「話も一段落しましたし、お風呂にでも入って寝ましょうか」
「お風呂ですか?」
「あれ知りませんか?」
「いえ、知識はあるのですが、入ったことはないんです」
なるほど。すっかり忘れていたが、ルーンさんはいわゆる天使だった。天使ならお風呂に入ったことがないのも当然だろう。
「あの···もし良ければ一緒に入っていただけませんか?」
「ほええ」
思わず変な声が出てしまった。そりゃ前の世界とは状況が違うが、さすがにダメだろう。天使とはいえ相手は女の子だ。しかも俺は二次元の民である。もちろん経験はない。
「えーと、さすがにそれはダメですね。すいません」
「残念です。じゃあ入り方を教えてください」
良かった。背中を流すどころか禁断の果実を直視するだけでも卒倒してしまうだろう。
結果から言おう。卒倒はしなかった。まさか天使が裸族だとは思わなかった。そして禁断の果実は美しかった。




