第4話 お得意様と食いしん坊
「もう着きますよ。エルムの町です。結構大きな町で、香草料理が美味しいらしいです」
「へー食べてみたいなー」
「私もです。お腹一杯食べましょう」
「そう言えば、ここは何て言う国何ですか?」
「ここはラプント王国です。主大陸の南に位置する王国で、国土の約6割が森林と草原となっています。現国王が若い頃に森林や草原を整備し始め、今では果物や木材の産出は各国の中でもトップとなっています。また、未整備の森林をある程度残し、魔物狩りを生業とする冒険者などに狩場として提供したため、冒険者の流通も多く豊かな国です」
なるほど。多分王族が優秀なタイプの国だな。それにしても魔物がいることを逆手にとって、国に人を呼ぶとは面白い発想だ。
「というか、森林に魔物が湧くんですか?魔物自体の説明は聞きましたけど、どういうところに出現するかは聞いてなかったですね」
「魔物の出現は魔素の量と明るさによって変わります。魔素は人間が取り込んでいるため、基本的に人気がなく、暗いところに魔物は生まれます。整備のされていない森林は、人があまりたち寄らず、また植物から魔素が漏れだすので魔素が多く、暗いため魔物が出現するのに絶好のポイントという訳です」
「明るさが関係してるんですか。じゃあれも···」
面白いことを思い付いた。
「ん、何か言いましたか?」
「いやちょっと思い付いたことがあって、うーんあとでゆっくり説明しますね」
「えー気になります。いま教えてくださいよー」
「説明すると長くなりそうなので、宿でゆっくり話します。それにほら着きましたよ」
「分かりました。楽しみにしておきますね」
ということでエルムの町到着である。とりあえず、魔石を売りに行くことにした。大通りに買い取り屋があったのでそこに入る。結構広く魔石を売りに来た人も多くカウンターのようなところに並んでいた。それに倣って列に並ぶ。
「ハイハイ、待たせたね。魔石の買い取りだね」
赤い髪の気の良いおばちゃんという感じの人が対応してくれた。
「はい、お願いします」
「あんた見ない顔だね。最近こっちに来た冒険者さんかい?」
「まあ、はい」
最近(異世界から)来た(駆け出しの)冒険者である。
「ほい、どれを売るんだい?」
「これです」
昼に倒したゴブリンの魔石をカウンターに出す。
「おお、大きいね!質もいい。こりゃ何の魔石だい?」
「ゴブリンです」
「あっはっは、面白いこというねえ、あんた。ゴブリンの魔石がこんな大きい訳ないじゃないか。まあ言いたくないなら別にいいよ。そうだねえ。この大きさなら金貨1枚と銀貨5枚ぐらいだけど面白い冗談を聞かせてもらったし、初めての買い取りだから金貨2枚でいいよ」
「良いんですか?」
この世界の金額レートはわからないが、おまけしてくれるのはありがたい。
「いいよ、いいよ。その代わり次魔石を売る時もうちで売ってくれよ。おまけするからさ」
「分かりました」
「よし、そんじゃあ、ちょっと待っててくれ」
そう言うとおばちゃんは、奥の部屋に入り、袋を持って帰って来た。
「はいこれ。金貨2枚ね」
「ありがとうございます。あっそうだ、香草料理が食べれる店を教えてくれませんか?」
「ああそれならあそこだね。あそこはあの角を右にーーー」
いい人だったな。おまけしてもらったし、店も教えてもらった。
「そんじゃあルーンさんご飯を食べに行きましょうか」
「はい!もうお腹ペコペコです。早く行きましょう」
食いぎみに返事が帰って来た。本当にペコペコなんだろう。急いでいくことにしよう。
「ルーンさん質問があるんですけど、この世界の硬貨ってどれがどのくらいの価値何ですか?」
「硬貨は全部で5種類有ります。下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨の順です。銅貨が鉄貨10枚分、銀貨が銅貨10枚分、金貨が銀貨10枚分、大金貨は特殊で国王の許可がないと発行できず金貨100枚分に当たります。普通の宿代が1泊4銀貨ぐらい、他にはーーー」
なるほど。話を聞く限り元の世界で考えると、鉄貨が10円、銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が10000円ぐらいだろう。大金貨は100万円ぐらいか。分かりやすくていい。宿代に二人で1金貨。食事に5銀貨ぐらい使うだろうから余った5銀貨で剣でも買うとしよう。
「はー、お腹一杯です」
金貨が1枚なくなった。驚きである。俺の前には皿の山と満足そうな顔で水を飲むルーンさんがいる。俺じゃあ食べるのに三日はかかるであろう料理をルーンさんがペロリと平らげてしまった。ルーンさんの属性に新たに食いしん坊が追加された。
「そんじゃあ行きましょうか優さん」
「はい。宿を探しましょう」
積み重なった皿とそれを食べたルーンさんにだいぶ注目が集まっていたのでそそくさと店を出た。
宿は大通りから少し離れた大きな宿屋にした。だいぶきれいな外見で中も清潔だった。
「1泊で銀貨5枚二人で金貨1枚ね。相部屋でいいかい?」
「ルーンさんどうしますか?」
「私は一緒で良いですよ」
「じゃあ相部屋でお願いします」
部屋について、ベッドに腰を下ろす。自然と力が抜けた。今日の範囲がどこからかわからないが、今日は疲れた。未だに夢のように思える。
「疲れましたね」
「はい。いろいろ在りましたね。でも美味しい料理を食べれて私は満足です」
「それは良かったです」
「あっ、そうだ優さん。町につく前に言っていた思い付いたことってなんなんですか。ここならゆっくり話せますし教えてください」
「そうでしたね。説明しましょう。俺が思い付いたのは、成功すれば自動で魔石が集まる装置です」