表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

00.✝野次馬の中で✝


 満二十歳の高校中退無職が、今の俺のパラメータ。どうしようもない男ってことしか分からないが、実は身長170ちょいで、太りすぎても痩せすぎてもいない平均的な腹回りのナイスガイ。

 六畳程度の部屋。そこで俺は普段からゴロゴロ自堕落に、人生を無駄に消費していた。

 引きこもり歴は高校の中盤辺りからだから、四年ほど。漫画やアニメ、ゲームに小説。家で出来る限りのことをやっていた。

 しかし常に男磨きは忘れずに、筋トレはしているし、高校まで運動部をしていて体力には自信はある。いわゆる運動できる系オタクだ。

 引きこもりになった理由は、聞かないでくれ。俺はもう忘れたいんだ。あの子への儚き想いは。


 そんな俺をここまで面倒見てくれた親には感謝してる。俺の精神的な苦痛も分かってくれて、敢えてそっとしてくれることも嬉しいかった。

 だが一ヶ月前、机に五万円と置き手紙、『元気でね』。


―――――正気か!


 俺と言う荷物を抱えるのを、四年我慢してくれたことに感謝するべきか。

 だが、この軍資金五万円は一ヶ月経つ頃には無くなっており、今こうやって困っている。


 取り敢えず家から外に出た。

 何かをする当てはない。歩いていたら何かあるだろうと、こうやってアクションを起こしているのだが、ただ平和な日曜日の昼。

 仕事は覚えることが多すぎて嫌だ。何かこう、自分の身一つで金を稼げるようなのがあったら、活躍できる気がする。次の人生はモンスターがたくさんいて、冒険者が活躍してる。そんな世界に産まれたい。

 そんな、中学生高校生辺りが考えそうなことを妄想しながら、大きな道の横を歩く。

 すると、脳内に"ゴッ"と鈍い音が響き渡る。


―――――あっつぃ。


 下腹部辺りから、耐え難い燃えているような熱さを感じる。

 状況は直ぐに把握できた。困惑はした。これが現実なのか、それとも夢なのか―――――。

 俺の正面には半壊したトラック。どうやら吹っ飛ばされてしまったらしい。

 そして俺の腹部には、木の枝が突き刺さっていた。通りで痛いわけだわ。

 そう言えば昨日は台風が横断していたことを思い出した。過去最高になるかもと言われていたほどで、引きこもりには関係ないと思いつつ、心配はしていたが。

 まさか、トラックに飛ばされて、折れている木に直撃とは、我ながら悪運が強い。

 視界がピンク色に染まる。頭に霧のかかったかのように何も考えられない。たくさんの人がスマホを手にして俺の方を見ている。


―――――俺のために救急車呼んでくれてるのかな。


 でも俺は無理だと分かっている。どうか、次は異世界で。


―――――幸せになれますように。


 そうやって多くの野次馬の視線に見つめられながら死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ