00.✝野次馬の中で✝
満二十歳の高校中退無職が、今の俺のパラメータ。どうしようもない男ってことしか分からないが、実は身長170ちょいで、太りすぎても痩せすぎてもいない平均的な腹回りのナイスガイ。
六畳程度の部屋。そこで俺は普段からゴロゴロ自堕落に、人生を無駄に消費していた。
引きこもり歴は高校の中盤辺りからだから、四年ほど。漫画やアニメ、ゲームに小説。家で出来る限りのことをやっていた。
しかし常に男磨きは忘れずに、筋トレはしているし、高校まで運動部をしていて体力には自信はある。いわゆる運動できる系オタクだ。
引きこもりになった理由は、聞かないでくれ。俺はもう忘れたいんだ。あの子への儚き想いは。
そんな俺をここまで面倒見てくれた親には感謝してる。俺の精神的な苦痛も分かってくれて、敢えてそっとしてくれることも嬉しいかった。
だが一ヶ月前、机に五万円と置き手紙、『元気でね』。
―――――正気か!
俺と言う荷物を抱えるのを、四年我慢してくれたことに感謝するべきか。
だが、この軍資金五万円は一ヶ月経つ頃には無くなっており、今こうやって困っている。
取り敢えず家から外に出た。
何かをする当てはない。歩いていたら何かあるだろうと、こうやってアクションを起こしているのだが、ただ平和な日曜日の昼。
仕事は覚えることが多すぎて嫌だ。何かこう、自分の身一つで金を稼げるようなのがあったら、活躍できる気がする。次の人生はモンスターがたくさんいて、冒険者が活躍してる。そんな世界に産まれたい。
そんな、中学生高校生辺りが考えそうなことを妄想しながら、大きな道の横を歩く。
すると、脳内に"ゴッ"と鈍い音が響き渡る。
―――――あっつぃ。
下腹部辺りから、耐え難い燃えているような熱さを感じる。
状況は直ぐに把握できた。困惑はした。これが現実なのか、それとも夢なのか―――――。
俺の正面には半壊したトラック。どうやら吹っ飛ばされてしまったらしい。
そして俺の腹部には、木の枝が突き刺さっていた。通りで痛いわけだわ。
そう言えば昨日は台風が横断していたことを思い出した。過去最高になるかもと言われていたほどで、引きこもりには関係ないと思いつつ、心配はしていたが。
まさか、トラックに飛ばされて、折れている木に直撃とは、我ながら悪運が強い。
視界がピンク色に染まる。頭に霧のかかったかのように何も考えられない。たくさんの人がスマホを手にして俺の方を見ている。
―――――俺のために救急車呼んでくれてるのかな。
でも俺は無理だと分かっている。どうか、次は異世界で。
―――――幸せになれますように。
そうやって多くの野次馬の視線に見つめられながら死んだ。