師匠と奥義と修練
平民のひろろ様より頂きました必殺技「七死討」使わせて貰いました。
ありがとうございますm(_ _)m
淡雪の古長様への挨拶が終わって、淡雪はヤタガラス様と去っていった。
「縁殿、それでは修練に向けてまず、吾の技を一つお見せしよう」
「技…?」
「流星窟の頭目たる吾が永劫を生きる、その無為な時間の中で磨き作りしも未だ完成至らぬ未熟な技ですがな」
なんだろう、とても難しいことを言ってるけど、つまりは烏天狗さんの長老が作って、それを凄いものにするために練習し続けてる奥義ってこと。
「凄い、古長様の奥義ですね」
「ほほ、奥義とはちと大袈裟ですが、まあ、それに類推するものではありますな」
古長様はゆったりと歩み出して集落の少し開けた場所へ案内してくれる。
周りを何人かの烏天狗さんが囲み、古長様がここですな、とこちらに振り向くと技の説明を初めた。
「この技は討滅、死滅の概念を言霊として刃に乗せることで対象の存在そのものに干渉するものなのですが、未だ不完全ゆえ、滅しきるには至らぬのですな」
まずは見て頂きましょうと言うと古長様は手を振って広場の中央に翳すと、土が盛り上り巨大な岩が出来上がった。それだけでも十分驚いたんだけど、翳している右手と反対に左手を肩に水平に横に上げると、いつの間にか空中に現れていた白木の鞘の刀をとる、拵えもなく、鞘も柄も白木で出来た刀を手に取った位置から下ろすことなく水平に眼前へと移動させた古長様は出現させた巨岩に向けていた右手で柄を持ち、一気に抜き払う、美しく煌めく刀身が露になり、今度は鞘が花びらのように散って消える。
御覧いれます。そう呟いた刹那、古長様の背中に左右3対の抜き身の刃が現れる。古長様の美しい黒羽根に添うように現れた刃は幽玄な炎を纏い、静かにやや半身気味に正眼に構えた古長様が忽然と消え、巨岩の周りに幾筋もの剣閃が走る。
古長様が僕の前に戻ったとき、6枚の刃も手にもった刀も消えており、無数に刻まれた巨岩が砂のように崩れていった。
「今、お見せしたものが七死討、七振の刃にて其々七度切り、あわせて四十九の斬撃を瞬時与えて、存在そのものを切る技、なのですがな、まだまだ未完ゆえ、存在を消しきれん、七振りの刃には其々『死』と『討』の概念が言霊を介して宿っており、輪廻を司る数字にて縛ることで存在に干渉するのですな。此れを最終目標として、修練は吾が行うでな、よろしく頼みますぞ」
僕はびっくりして固まってしまった。今の技を使えるようになるのが目標って、というのと、古長様がお師匠様というので、そんな凄いこと出来るんだろうかとか、わざわざ古長様が教えてくれるのとか、だから僕はすぐに言葉が出なくて、ただ
「あぁ、うん、お願いします」
なんて失礼な返ししか出来なかったんだ。でも、古長様は笑顔で大変ですぞ、頑張って下されと頭を撫でてくれて、まるでおじいちゃんみたいに優しく微笑んでたんだ。
古長様は何故、七死討を目標とするかを解説してくれた。
「先程の技は半神半妖である吾があらゆる物を滅しうる力を手にするために編み出したものでな。縁殿は今は人の身なれど、姫様の魂を宿し、大権現様より宿命を賜ったことで、半神となりつつあるのですな」
「阪神?」
「ん、盛大に食い違ったような、半分神様と言うことですな」
「え、僕は神様になるの!」
「ご両親の魂を導くため、大権現様に願い出て己のが魂を裂かれてまで、二人の縁を結んだわけですから、いくらご両親の魂から姫様の魂は回収されたとは言え、その繋がりは消えるものではありませんし、その二人の縁の証である縁殿に縁の言霊が乗り、ご両親の姫様との繋がりを紡いだ姫様の魂の欠片が縁殿の中で芽生えるのは理の当然ということですな。そして、縁殿は大権現様に姫様のようになりたいと誓われ、その誓願を受けた大権現様より一族の末席に加えられて加護がお与えになられておりますから、いずれ神へとその身が変容していくは必定ということですな」
「そっか、淡雪みたいになりたいって、すさのお様に誓った以上は神様になるくらい強くならなきゃいけないんだ」
「どちらかと言えば、強くならなきゃいけないというより、縁殿は強い力を制御出来る術を身につけておかなければいけないのですな」
「強い力?」
「姫様との繋がりのために放って置けば、縁殿は半神や半妖のような存在に自然と魂が格上がってしまう可能性がありましたが、人としての普通の生を全うして欲しいと考えた姫様が加護を与えて、その力を封印しておったのです、ですが、縁殿は流石ですな、姫様への感謝と憧憬から自らその封印の一部を解いたのですぞ、そして誓願を立てられた」
「僕は妖怪になるかも知れなかったの」
気になってしまったので失礼とは思いながら、話しを切る。そんな僕に古長様は丁寧に教えてくれる。
「そうですな、神である姫様の魂の欠片を宿し、強く存在が繋がりあっているため、魂がその強度を高めねば自壊してしまいますでな、なので姫様は外側から魂を強化して封印することでそれを防いでいたわけですな。故に縁殿は神となる道へと歩みながら、妖しとしての力もまた宿しておるのですな」
「じゃあ、淡雪もすさのお様も僕が妖怪にならないようにしてくれてたんだね」
「そうですぞ、しかして、縁殿は自ら修練を経て、その力を制御されようとしておられる。それが叶えば縁殿は吾らと同じ半神半妖となりましょう。いや、吾らとは違いますな、神と成りきれない吾らとは違い、人の身に神と妖しを宿すのですぞ、だからこそ、その力に心身を滅ぼされることの無いようにするのです」
「そうしたら、僕はその力を扱って邪を祓えるようになるだね」
「それだけではありませんぞ、縁殿自身が自らの力を御すれば、その力を抑えて縁殿を護っておる大権現様や姫様の加護が縁殿を護ることから強化することに移り変わりましょう。さすれば、どれ程の力を有することになるやら、楽しみですな」
「ですが、そのための修練は厳しいものになりましょう、七死討は神力と妖力を合わせて格上の存在にも届きうる斬撃と変えるものゆえ、これを修めることが出来れば、縁殿はその身に眠る力を見事に制したと言えるでしょう、どうされますかな」
「勿論、やるに決まってるよ。お願いいたします、お師匠様」
そう言った僕の言葉に、嬉しそうに笑う古長様の声が木霊していたんだ。
次回は成長した縁くんのチートぶりが炸裂する予定です。




