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烏と僕と霊障と  作者: 愛猫家 奴隷乙
中学生編 第1部
18/28

暴走と反撃と荒御魂




 「なー淡島、母上はあのガキと烏が鍵になるって言ってたが、どう思うでげす」

 我らの長男である蛭子が語り掛けてくる。

 母上が簡易的とは言え、作り上げた神域は黄泉の世界にいるようで心地良い。

 「現世に門を開き、亡者を解き放つ。我らが母上が黄泉の王だけでなく現界の王として君臨すれば、憎き父上にも復讐できるだけの力も得られよう。母上が門の鍵として、必要だと言うなら、言われた通りにするだけです」

 私は答えながらも考える。母上は縁という成り立ての神とやはり若い畜生神である烏産姫神という、我等の一族の末の娘を捕らえるつもりらしい。

 弟にあたる須佐乃男尊神、熊野に祀られる熊野大権現の娘として神と成り変わった烏神らしいが、母上は万が一を警戒して、烏神と縁とを引き離して捕らえる計画を立て、我等に縁の足止めと程好く痛め付けて、成長を促すように指示された。

 「まあ、なぜ、あんな若い神など必要なのかは確かに良くわかりませんが」

 「ふんっ、縁とか言ういい子ぶったガキは気に喰わねーでげす。捻り潰してやるでげすよ」

 「やり過ぎないで下さいよ。計画が破綻すれば母上に怒られます。諸々と条件が揃ったと喜んでいたんですから」


 呆れながらも対峙した縁は思ったよりは強かった。

 成り立ての子供の現人神(あらひとかみ)ではたいしたことはなかろうと舐めていたが、授けられた神器込みの実力とはいえ、蛭子の腕を斬り飛ばして見せるとは思わなかった。

 「まったく、可愛がられて気に入られて、愛情を受けて、素直に努力し強くなる。素晴らしいですね。素晴らしいほどに気に喰わない」

 縁の放った神器の対応に苦慮していましたが、バカな兄があのまま止めを刺されても困るので助太刀をする。優しそうな癖に躊躇いなく止めを刺しにくるとは意外でしたが、まあ、不滅である神性存在を簡単には仕留められないと知っている故ですかね。

 

 バカな兄が必要以上に痛め付けようとして、助けに入ったガキを吹き飛ばす。

 某かの介入があったのでしょうが、親友を盾替わりに使うとはいい趣味のようだ、乗っかって差し上げようと、煽りを入れれば、随分とキレているようで、育ちのいい、いい子ちゃんには刺激が強かったようです。


 「おい、なんでげすか、あれは」

 蛭子の言うように縁は禍々しく変貌を遂げていく、5尺ほどだった背丈は8尺に届くかと思われるほどに伸び、肌が青黒く染まっていく。

 全身に浮かんだ呪術紋様のようなものが光を帯び、髪が伸びて長く垂れる。

 盛り上がった筋肉に所々、瘤のように隆起した角のようなもの、その先から刀のようなものが飛び出している。背中には黒い翼が生えて、そして口元は烏のような嘴。

 「なんでしょうね、まるで化け物だ。どうやら呪のようですが」

 「呪でげすか」

 「いい子ちゃんに籠められた期待や希望や愛情、これまで、その身を魂を守り、支えてきた願いや祝いの想いが反転して呪いとなっているようですね。先程のガキの件といい、かなり趣味がいい御仁のようだ」

 今やいい子ちゃんの縁は怒りを増幅されて理性を失い破壊に身を委ねる荒ぶる魂へと堕ちたようですね。


 「まあ、さっさと逃げましょうか。目的は果たしましたし、あれに付き合うのは少しきついですね」

 

 まあ、逃がしてくれればですがね。

 本当に趣味のいい御仁だ、殺してやりたいくらいには。



 縁ちゃんがすっかり闇落ちして、加護として縁ちゃんを護っていた力が逆流して半妖半神の化け物へと変わったでありんすね。

 さあ、身体も治してあげたことでありんす。

 「どうでありんすか、荒御魂となった縁ちゃんは怖いでありんすか」

 震えて怯えているタカシちゃんを煽ってあげる。さあ、本性を晒して危険が伴う縁ちゃんとは距離を置くでありんすよ。

 「あらら。そんな震えて、やっぱり怖いでありんすね。さあ、みんなのもとへ送ってあげるでありんす」

 縁ちゃんもあの黄泉の女王に喰われた女の子も可哀想だけれど、もう神の世界の住人でありんすから、さっさと彼岸に連れていくのが正確でありんす。

 タカシちゃんも含めて縁ちゃんやあの女の子に関わる記憶をこの世界から消してあげるでありんすね。

 「……かっ……かっこいい」

 ん、なんか言ってるでありんすね。


 「かっこいいでござるよっ! 縁殿っ!!」


 あー、そうでありんした。この子は拗らせすぎた厨二病に頭をやられているんでありんした。

 「すごい、かっこいいでござるっ!! 縁殿、拙者も助太刀するでござるよっ! くそ、手足が動かないでござるよ。玉藻前様、手足も治してくだされっ!」

 手足はわっちが動けなくしてるでありんすよ。おかしいでありんすね。怯えたタカシちゃんに突き放されて絶望した縁ちゃんを優しく介抱してあげるはずでありんしたが、なんか、タカシちゃんがハリーハリーとうるさいでありんす。

 シリアスぶち壊し属性なんでありんすか。


 そんなやり取りをしてる間に縁ちゃんがバトり初めてるでありんすね。強いでありんすね~。

 「足手まといなタカシちゃんはしばらくおとなしくしてるでありんすよ」

 「くー、悔しいでござるが、仕方ないでござるよ。流石、縁殿っ!! 必ずや横にたち、役に立てる侍になるでござるよっ!」

 あー、こいつ闇落ちしないでありんすね。

 本当に面白いでありんすな~。これも縁の結びの神たる淡雪ちゃん、縁ちゃんの力でありんすか。


 やっぱり、ちゃんと戻るんでありんすよ。



 でないと、わっちがつまらないでありんすから。

 


しばらく、他者視点の繰り返しでしたが、次話は縁くんの視点に戻りまして、話が進む予定です。

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