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烏と僕と霊障と  作者: 愛猫家 奴隷乙
中学生編 第1部
16/28

蛭子と淡島と咎切り




 「おいで、咎切り」


 愛刀を呼び出して構えると同時に縁紬を変化させて盾のように展開する。幅1メートル程で数メートルに程に拡張した縁紬が僕の周囲を周りながら結界を展開する。

 「ケケケっ、中々厄介な神器だ」

 そう言いながら蛭子と呼ばれた蛙人間が突っ込んでくる。ぬかるんでいることを物ともせず、蹴り飛び出していたけど、跳躍の瞬間、足が伸びてた。

 純粋な殴打を繰り出してくる蛭子の手足は伸縮自在に伸び縮みしながら関節を無視した動きで攻撃してくる。縁紬が全体にバリアを張ってるために被弾しないが、中々厳しい。

 すると、後方から強い衝撃がくる。これも結界のお陰で余波が来ただけだが、このままだと、結界を壊されてしまう。

 「んー、今ので壊れないですか、遥かにしたの弟の仕上げた神器とは言え、やはり神としての格はあちらが上のようだ」

 骨張った腕で気弾のようなものを複数作ってお手玉しているのは淡島と呼ばれた木乃伊だ。


 「蛭子、淡島は葦舟で流されたあと、漂着先で神として祀られてるはずだよね」

 僕はそう叫んだ。確かに蛭子、淡島は流された神だが、蛭子は恵比寿と淡島は少彦名(スクナビコナ)婆利塞女(バリサイジョ)と関係の深い神で漂着伝承のある各地で信仰される神のはずだ。

 「ケケケ、お勉強の出来るいい子でげすが、母上が黄泉の神と現世(うつしよ)の神とに別れたように、我等も別れたんでげす」

 そう叫んだ蛭子は泥を跳ね上げて飛ばしてくる。

 結界の外に泥が貼り付くとそこからジュージューと煙があがり結界に穴が空いていく。

 「やりますね~」

 淡島が愉快そうに気弾を次々と打ち込む。

 このままじゃホントにじり貧だ。僕はすさのお様から貰ったブレスレットで封印を解く。

 眩い光で一瞬だけど攻撃が弛む。

 「なんでげす」

 「んっ、目が」

 まだ一段階目しか解けない上に、持続出来るのも数分が限界だ、僕は縁紬を鋭い槍のように束ねて淡島へと飛ばす、そうして空中に躍り出て蛭子へと斬りかかった。

 「ケっ、空を飛ぶでげすか。伊達に神と化してないでげすな」

 斬りかかった刃を腕で受けながら蛭子が宣う。

 斬撃を繰り出し続けるも、切れる様子はない。

 「ケケケ、オイラの粘膜表皮を甘く見んで欲しいでげすな、ただの斬撃でなど切れんでげすよ」

 それでも、攻撃を重ねる。縁紬の奇襲を受けた淡島は手傷を負ったようだ、自動追尾する槍型に苦戦しているのが確認できた。

 「なんですか、忌々しい、親に認められた子が作った神器になど、負けるわけにはいかないのです」

 叫びあげて、応戦する淡島を縁紬が押さえている。

 「ケケケ、ダサいな淡島。小僧っ子はオイラが仕留めるでげすか」

 「調子にのってるとこ悪いけど、斬らせてもらうよ」

 僕は刃に妖気と神力を乗せる。破邪の想いを籠めた斬撃に蛭子の腕が一つ切り飛ばされる。

 「うケーっ、いだいいたいいだだいいたいっ」

 のたうって痛がる蛭子に止めを刺そうとつめるも、気弾に邪魔をされる。

 「ダサいのはどちらですか。フェイクに騙されてまんまと斬られるとは」

 クソっ、斬撃を重ねながら準備していたのが無駄になった。腕一本切り落とした分、マシかもしれないけど、そんな風におもってると、蛭子が起き上がる。

 「ダレガダサいじゃーっ」

 切り落とした腕がのたうちながら元の場所へと戻っていく。

 「ぶち殺してやる」

 血走った目で飛びついて来た蛭子はさっきまでに増して複雑怪奇な動きで殴打、蹴撃を繰り出して来る。

 防戦一方になる僕の妖気や神力が削られる。縁紬も強敵を相手に吸い上げる神力の量が増していく。

 「蛭子、やり過ぎるなよ。本当に殺しては計画が破綻する」

 「ケーっ、うるさい。小僧っ子一人殺しても大差などあるか」

 縁紬とのリンクが切れる、消耗の速さに封印が戻ってしまったようだ。

 空中に留まっていた僕は沼へと落ち、手足が深く嵌まってしまう。


 「ケーっ、さっきは良くもやってくれたでげすな。腕の一本くらい、どうせ直せるでげしょう。叩き潰してやるわーっ」

 「くそっ、」

 僕の方へと拳を打ち下ろしてくる蛭子にどうしようも出来ない。

 淡雪もピンチかもしれないのに。


 「喰らうでげす」

 


 「させんでござるよっ!!」


 僕の沼に嵌まってしまった右腕へと打ち込まれようとする打撃を突然あらわれたタカシが受け止めた。

 いや、止めきれず吹き飛ばされた。衝撃で一緒に吹き飛んだお陰で、沼から脱出できた僕はタカシのもとへ向かう。

 「タカシ、ありがとう、大丈夫」

 

 「縁殿…無事で…よ、よかったで…」

 タカシは両手があらぬ方に曲がって吐血していた。

 「タカシっ、しっかりしてタカシ。今、縁紬で治してあげるから」

 そう言って縁紬を呼ぶも反応がない、神力が底をついてしまったみたいだ。

 どーしよう、タカシが死んじゃう。

 「ケーっ、変なガキに邪魔されたげすが、すっきりしたし、帰るでげすな、淡島」

 「まったく、やり過ぎだ、だが、まあ、目障りなアホガキが消えるのは結構だな」

 


 今、なんて言った。


 今、なんて言ったんだ。


 僕のなかのなにかがキレると、声がしてくる。

 「縁ちゃん、縁ちゃんの保護者は過保護な人ばっかでありんす。だから、そんな糞雑魚なんでありんすよ、リミッターをはずしてあげるでありんす、化け物になる覚悟を見せるでありんす」


 化け物になれば、あいつらぶっ殺せる

 「間違いないでありんすよ、それに急がないと淡雪がやられちゃうでありんす」

 淡雪がっ

 「縁ちゃんが糞雑魚だから、お友達がみーんな死んじゃうでありんす。ほら、力を手にするでありんすよ」

 

 僕は言葉に身を任せる、右手のブレスレットがはち切れそうな程に熱を帯びて輝き出す。


 「な、なんだ、母上の神域にヒビが」

 「ケっ、神力と妖気が増大してるでげす」


 「ごめんなさいでありんすよ、縁ちゃんには強制的に強くなって貰うでありんす。ご褒美にお友達は治しておいてあげるでありんす」

 


 「ちゃんと戻って来るでありんすよ、縁ちゃん」



 アァあぁあ゛あぁああ゛ぁぁあぁあ゛う゛わ゛あぁ



 

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