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烏と僕と霊障と  作者: 愛猫家 奴隷乙
中学生編 第1部
14/28

タカシと流星窟と臨海学校 前編



 期末考査が終わってから、僕はタカシと二人きりであっていた。実はタカシは小学生の頃に、ちょっとしたトラブルがもとで僕の秘密を少しだけ知って、それから、何故か色々あって、流星窟で師匠から剣の手解きを受けている。

 タカシは現実でいきなり剣が使えるのは変だからと、週末には子供向けの教室を開いている近所の剣道場に通いだした。ちなみに僕も、それは確かにと納得して、ちゃっかり一緒に通ってたりする。

 まあ、そのせいで、元々は普通だった口調がござる調になってしまったんだけど、本人が言うには忍者の末裔である僕をサポートする侍になるためだそうだ。

 「拙者は縁殿の従者になるでござる」

 そんな変な目標と夢は捨てて欲しいんだけど、いたって真剣なようで困る。

 ただ、今回はそんなタカシの力が借りたいのだ。

 

 僕とタカシは学校近くのファミレスでドリンクバーとフライドポテトを頼んで向き合っていた。

 「縁殿のほうから頼みとは珍しいでござるな」

 「その口調を直さないって頼みなら、いつもしてるけどね」

 お願いごとをしようと言うのに皮肉を言うべきじゃないけど、つい口をついてしまう。

 「はっはっは、それは無理な頼みですぞ、最初はわざとやっていたこの口調ももう数年とたって、むしろこちらが普通でござるからな」

 ポテトを頬張りながら、愛嬌のある丸顔いっぱいに笑みを浮かべるタカシに諦めることにした僕は本題に入る。

 「5組の藤崎 早織さんってわかるかな」

 「ん、藤崎殿なら知っているでござるが、なにぶん一緒の塾で同門だっただけでござるからな、話したことはあまりないでござるよ」

 「うん、はるとんもそう言ってた。でね」

 ここで僕は固まってしまう、なんて伝えればいいのか、そもそも悪い神様に乗っ取られているなんて言って信じて貰えるか、それより、タカシを巻き込んでいいのか。

 僕がそんな風に悩んでいるとタカシの顔が真剣な表情に変わっていく。

 「縁殿、先に確認でござるが、これは色恋の話ではござらぬな。」

 「うん、確かにそうだけど」

 はるとんもそうだったけど、年頃の友人が可愛い女子の話題を出せば、そっちに誤解するのは当たり前だと思うんだ。でも、タカシは何故かそうじゃないと感じ取ったみたいだ。

 「やっぱり、そうでござるか、縁殿が拙者に恋愛相談などするはず無いでござるからな。されてもアドバイスなど出来んでござるし」

 そう言いながら、また表情を緩めたタカシはすぐに真面目な顔になった。

 「よもや、縁殿に敵対する勢力だったりするんでござるか、しかし、藤崎殿は普通の家庭の子だったと思うでござるし、よもや、なにがしかの組織に洗脳でもされているでござるか!!」

 どうしよう、いつもの僕が忍者の末裔妄想の延長なのは間違いないのに、そのくせ妄想がかなりピンポイントに事実を捉えてる、どんな能力だよ、タカシ。

 「実を言うとね、僕には守護をしている神様がいるって話したよね、前に」

 「おー、日本神話の伊佐那岐やその息子、須佐之男にその娘の烏の神様でござったな」

 目をキラキラさせて乗ってくる、タカシ。確かに流星窟で師匠たちを見てるから、信じてくれてるとは思うけど、それでも少しタカシの将来が不安だ。

 「でね、その神様たちに対抗する悪い神様に藤崎さんは乗っ取られて、僕を殺そうとしてるみたいなんだ」

 「殺そうとしてるですとっ!!」

 大声で叫んだタカシに店内の視線が集まる、僕たちは頭を下げて謝りながら、席につきなおす、ちゃっかりタカシが「すいません」っていってて、口調戻せるじゃんってなるけど、突っ込まないことにする。

 「すまんでござる、縁殿。ですが無関係の幼い女子を乗っ取って、縁殿に仇なそうなどとは到底許せないでござる」

 「うん、でね、本当に申し訳ないけど、塾の伝手とかで、藤崎さんがなにかおかしくなったりしてないか、それとなく調べてくれないかな」

 「それは構わないでござるが、拙者では荷が重いかもしれんでござるな」

 「それほど接点なかったんだもんね。最悪は勘違いされてもいいから、僕の名前を出して聞いて」

 僕が気になった子の情報をタカシを使って探ってるって勘違いされるほうが情報は集まりそうな気がする。

 「それは縁殿に悪いでござるよ、大丈夫、藤崎殿と仲の良かった者には心当たりがござるから、同門の近況を聞く体で聞いてみるでござるよ」

 あきらかに不自然なアプローチだと思うけど、タカシは正義感が強いから、頑張ってくれると思う。

 「ごめんね、無理なお願いで」

 「縁殿、拙者が無知から無茶をして、最悪は死ぬかもしれんところで助けてくれたのは縁殿でござるよ。このくらい、どうということはござらんよ」

 あーカッコいいな~。口調さえ直ればモテるのに、なんというか、罪悪感がひどい。

 「本当に口調は直さないの」

 「無理でござるな」

 頑なだな、ほんとに。


 そんなやりとりをして2週間ほど、タカシは無事に片思いをしていると勘違いされながら、情報を集めてくれた。ほんとに申し訳ない。

 「結果から言えば、性格がだいぶ明るくなって、積極的になったようでござるな。小学生のときは運動自体あまりしなかったようでござるが、今はバスケ部で活躍してるようでござるし」

 「そうじて、プラスに変化してるんだね」

 話を聞く限り、むしろいい変化だと思ってしまう。

 「そうでもないでござるな」

 でも、タカシはそんな僕の言葉を否定した。

 「確かに内気で引っ込み思案だったのは、拙者も何となく記憶にあるでござる。この前の運動会では拙者は会場が違いましたから、直接は見てなかったでござるが、姉者に頼んで撮ってもらった動画で見てびっくりしたでござるよ」

 「え、勇子さん来てたの、気付かなかった」

 「拙者が縁殿の活躍を見逃す訳にはいかんでござるよ。話が逸れたでござるな、確かに明るく変化しているように見えるでござるが、元々は優しくて友達想いだったらしいんでござるが、少し性格が悪くなっているようでござるよ」

 「性格が悪くなってる」

 「同じ小学校の出身の者がいうには、ずいぶんと性格がきつくなっているようでござるな」

 どうやら、黄泉津大神は普段から藤崎を支配してるようだ。これでは藤崎の意思が残ってるかも疑わしい。早く何とかしないと。

 「縁殿、敵の弱点などは分かってるでござるか」

 そう言われて、はっとなる。

 「色々と考えて見るよ。タカシ、本当にありがとう」

 「構わないでござるよ」

 少なくとも藤崎さんから黄泉津大神を出す方法を考えないと、そう思うものの、妙案の出ないまま、7月も中旬、僕達は千葉県南房総は岩井海岸へと臨海学校へと赴いたんだ。



 


 


 

次回は臨海学校です

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