表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
烏と僕と霊障と  作者: 愛猫家 奴隷乙
中学生編 第1部
13/28

すさのお様と期末考査

短めですm(_ _)m



 6月も中旬ごろ、流星窟で師匠からいつもの指導を受けて、烏天狗たちと組手をしたり、瞑想したりと、時間の流れが違うことを利用してたっぷりと修練して、ついでに期末考査に向けて、持ち込んだ教科書や参考書で勉強もする。

 肉体については持ち前の魂の格が上がっていくのに従って上昇する身体能力を師匠の管理と指導のもと、必死に修行して制御出来るようにしていたため、同級生に負ける要素はほぼないと思うし、元々、父親譲りの運動神経もあるから、スポーツ全般では、この前の運動会みたいに周りに優秀なクラスメートがいることも手伝って、あまり心配してないんだけど、頭脳については、こっちも魂の格が上がることで多少は記憶力や集中力は上がっていると感じるものの、覚えるためには勉強するしかないので、やっぱり必死に予習復習だ。

 流星窟の烏天狗たちは、前にヤタガラス様が言ったように教えたがりで勉強しているとあれこれとアドバイスしてくれる。僕の成績が上がったのは、時間無制限で優秀な家庭教師が揃っている、この環境のお陰が大きい、本当に感謝しかないよ。

 ある程度、予定を済ませてから、僕はすさのお様のいる神域へと足を運んだ。



 「おー縁か、そちらから来るのは珍しいの、神域の出入りも自由に出来るようになって、すっかり成長したんもんじゃ」

 すさのお様はそう言いながら、嬉しそうに豪快に笑う。僕は挨拶をしながら、近況を報告して、本題へと入ったんだ。

 「すさのお様、実は相談したいことがありまして」

 「そなたを殺さんとする、何者かに憑かれた女子(おなご)のことじゃな」

 「やっぱり、わかっていましたか、僕と淡雪には正体が掴めなくて」

 「そなたに殺意を向けた者に憑いておるのは黄泉津大神(よもつおおかみ)、伊佐那美じゃ」

 「えっ!!イザナミ様」

 僕は思いもしなかった言葉に思わず叫んでしまう。

 「驚くのも無理はないが、そなたがあった伊佐那美であり熊野権現たる那智の牟須美(ふすび)とは同一であり、別の神格じゃ」

 「同じだけど違うんですか」

 「うむ、伊佐那美は迦具土を産み落とすさいに火傷を負い、それがもとで根の方の国、つまりは黄泉の亡者どもの国に誘われたのじゃ、伊佐那岐は救い出そうと黄泉比良坂(よもつひらさか)を越えて根の方の国へと赴いたが、結局は助ける事は出来なんだ。そうして黄泉を統べる神となったのが黄泉津大神じゃ」

 「じゃあ、僕が出会ったイザナミ様はどうして、こっちの神様なんですか」

 「熊野三山にて奉られた我等、熊野権現として信仰を集めたことで、伊佐那美には新たな神格が産まれたのじゃ、その事で黄泉津大神より、魂が分かたれて牟須美という神格が産まれた。じゃから、二柱の神は同一であり、別の神格というわけじゃな」

 前に神様っていうのは分かれたり、くっついたりするんだって聞いたけど、まさか自分が知ってる神様が分かれていて、その上、片方に殺意を向けられるなんて思いもしなかった。

 「このような経緯なんでな、黄泉津大神のほうが本体なんじゃが、今、熊野権現たる伊佐那美は黄泉津大神に乗っ取られようとしておる」

 えっ!!イザナミ様が乗っ取られる!!


 「どういうことですかっ!!」

 「落ち着け、縁よ。今は儂と伊佐那岐が結界を張り干渉を妨げとるから、あやつもそうはどうこう出来ん。ただな、そんな状況ゆえに儂らとて、そなたに十分な手助けが出来んのじゃ、…縁よ、黄泉津大神がどのように生者に取り憑いたかは解らんが、未だ本領は発揮出来んはずじゃ、どうか儂らを、伊佐那美を助けてくれんか」

 すさのお様が頭を下げる。

 正直、今まで皆に守って貰っていた僕がそんな凄い神様を相手にするのは怖くて怖くて仕方ない、でも、僕は淡雪みたいになるって決めたんだ。

 「すさのお様、任せて下さい!!」

 「流石は縁じゃ、安心しなさい、もしもの時は助けになるよう、応援を頼んどるし、ほれ、右手を出しなさい」

 言われるままに右手を出すと、右手首が光出して、黒い小さな玉と、その左右に4対8個の小さな黒い勾玉を白い絹糸で編み込まれた帯に通したブレスレットがはまっていた。

 「…きれい」

 「それはそなたに施された儂と淡雪の魂の封印を具現化したものじゃ、そなたは魂の格が上がって封印を解くことが出来るようになっとる。その勾玉に触れて解と唱えれば、外側から順に5段階で解かれる仕組みじゃが、まだ第1段階までしか解けんようにしておる」 

 「いざというときのために、封印を解いて体を慣らしておくのじゃ。あとな、そなたに渡した咎切じゃが、あれは実体があるようでいて、概念体じゃ、修練を重ねて、己の斬りたいものを斬り、斬りたく無いものは斬らぬ、そう出来るようにしておくのじゃ」

 「わかりました。ありがとうございます」


 斬りたくないものを斬らぬと言うのが良くは分からなかったけれど、きっと大切なことなんだと、僕は修練に励んで、お陰でテストは少し点数を落としてしまった、水守さんに負けてしまい、

 「こ…今回は私の実力が発揮出来たみたいね、残念でしたけど、つつ次は頑張るのよ、…大丈夫です、体調とか崩してない、…最近、ほら」

 と心配されてしまった。

 やっぱり残念な人だけど、とってもいい人で、大好きだな~って思ったし、だからこそ、何か善からぬ目的のために藤崎さんに取り憑いている黄泉津大神に勝たなくちゃと僕は思った。





次回は夏休み、臨海学校となります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ