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烏と僕と霊障と  作者: 愛猫家 奴隷乙
中学生編 第1部
12/28

運動会と予兆と邂逅

運動会です。




 6月上旬の今日、僕たちの通う三中では運動会が開かれる予定になっていて、三中の運動会は第一体育館でバスケットボールとソフトバレーボールが第二体育館でフットサルが、そして剣道や柔道の授業や部活動で使われる錬武場で剣道の団体戦が行われることが毎年の決まりらしい。

 最後に校庭で各学年ごとの2000メートルリレーが行われて、そのまま校庭で各競技表彰と、学年ごとの表彰、さらに総合順位の表彰が行われて終了となるようだ。


 試合は各クラス一チームが出て、まずは各学年6クラスで抽選による組み合わせで3試合行われて、残った3クラスの総当たりで学年ごとの順位を決める。

 初戦を勝った段階で2ポイントを付与され、学年順位に応じて、1位4ポイント2位2ポイントがさらに付与される。そして、3年生の上位2チームと1,2年生の上位1チーム計4チームによる決勝トーナメントと、3位決定戦が行われて、1位4ポイント2位3ポイント3位2ポイントが付与されるルールになっている。

 最後におこなう各学年ごとのリレーでも上位3チームに5ポイント、4ポイント、3ポイントと付与されるため、1年でも総合優勝は狙える仕様だ、まあ、毎年3年生が総合優勝らしいけど、この時期の成長による差を舐めてはいけないと言うことだと思う。


 ちなみに、試合に出れさえすればいくつ掛け持っても問題ない仕様で、一応どれかの競技には参加登録しなければいけないけれど、実際に試合に出るかも自由という、なんともアバウトなイベントだ。


 そして、各競技は男女混合で行うこととなっており、その比率も女子を最低二人出場されなければいけないなどのルールがある以外自由だ。


 僕は一応バスケットボールに登録したけれど、同じ第一体育館で行われるソフトバレーボールにも出る予定だ。

 戦略としては、ソフトバレーとバスケットで決勝トーナメントまで進み、出来ればどちらかで優勝、フットサルもタカシ君が出るので初戦敗退はない。うまく、そちらも決勝まで進めば、最後のリレーは各学年ごとのクラス対抗なので、間違いなく自分たちが勝てる、これなら、一年生で総合優勝もいける。

 

 「やるぞー!!」

 ギャラリー席に見に来てるだろう両親に良いところを見て貰う、そんな風に気持ちを昂らせていたときだった。

 覚えのある殺気に振り返る、見覚えのない女子生徒、此方を見ていないが彼女から、入学式の時に感じた殺気が放たれていた。が、それはほんの僅かな時間で振り返るとほぼ同時に霧散した。


 「今度は捉えた。でも、なんであの子が殺気を」


 見覚えはないが、どうやら同じ一年生らしく、学校指定の体操服の色は今年の一年生が来ている青だ。指定体操服は各学年で統一されていて、青、赤、緑の三色で、入学時の色で三年間過ごすことになる。

 ちなみに今の2年生は赤で3年生は緑なので、来年の新一年生は緑になるはずだ。

 大人しそうな見た目で、若干幼く見えるのは身長と童顔のせいか、可愛らしい顔つきで頭にお団子を作って、耳の後ろのあたりでシュシュをつけて纏めている。

 「どうしたの、縁」

 「あ、はるとん、何でもないよ」

 はるとんが声を掛けて来て、

 「あれ、5組の藤崎 早織さんだね、気になるの」

 少しニヤつきながら聞いてくる。どうやら、見ていたのを勘違いされたらしい、…どう言い訳したものか。

 「なんか、同学年に見えないなって思って」

 すごい失礼なことを言ってるけど、まさか殺気を感じてって言っても理解なんかされないから、仕方ないよね。

 「あー、確かに同い年には見えないよね。僕は同じ塾行ってたから知ってるけど」

 「ん、てこはタカシとも知り合い?」

 「あー、そうだね。あんまり話したことはないけどね」

 そっかー、なんて話していると、僕たちの第一試合が始まった。

 対戦相手は3組でスターティングメンバーは双方ともに男子3人女子2人だ。こっちは僕がスモールフォワード、ポイントガードは女子バスケ部だったりする水守さん、センターが背は高く無いけど当たり負けはしないからと森田くん、パワーフォワードにバスケ部の金谷くん、シューティングガードは女子バスケ部の大下さん。

 作戦としてはオーソドックスなゾーンから水守さんを中心に、僕がSFとSGを兼任しつつ、金谷くん、森田くんが中のリバウンドを、マークをはずしながら、大下さんと水守さんがスリーを狙う予定だ。

 試合は10分ハーフの前後半で行われる。


 センターの森田くんがジャンプを担当するも、高さが無いためファーストボールは相手に、でも予定通りなので焦らない、速攻をかけようとする相手からボールをカットして、ドリブルで逆速攻をかけると、センターラインを越えてスリーのラインよりかなり手前でジャンプシュートを放つ、リバウンドのために走り込む両チームの選手を尻目に僕の放ったボールはそのままリングに吸い込まれる。

 「よし、先制だ!!」


 試合はそのあと、ほぼ予定通りにすすんだ、僕がスリーや切り込みからのレイアップで得点すると、ダブルチームで潰しに来はじめたので、フリーになった大下さんや水守さんにボールを供給してとにかくスリーを打って貰う、ゴール下には我がクラス2番目に背の高い金谷くんと、ゴリラの異名を持つがっちり体型の森田くんがリバウンドを渡さない。

 そして、相手のディフェンスが崩れれば僕のスリーが決まる。

 一方的な展開で初戦を突破した僕らは、初戦を勝ち抜いた、2組と5組を相手に総当たり戦へと進んだ。

 総当たり戦一回戦は5組、勝ち数と得失点差で順位が決まるため、ここは大量得点差で勝ちたい所だけど、相手が強い。なんと、5人ともバスケ部だ、そして、問題の藤崎 早織さんもメンバーにいる。

 試合開始前、僕に近付いてきた藤崎さんはにこやかに手を差し出しながら、よろしくお願いしますと言ってくる。僕は少し警戒しながらも握手を返そうと手を出してお願いしますと一言。

 「警戒しなくても、まだ殺さないよ」

 男とも女ともつかないノイズ混じりの声で笑顔のままそう言った藤崎さんは何事もなかったようにポジションにつく、間違いなく、彼女の中に何かいるはずだけど、そこまで僕を殺したい理由がわからない。


 動揺のせいで少しプレイが乱れて、リードを許したものの、水守さんの「鼻の下伸ばしてんじゃないわよ」の叱責がイラッとしたお陰で冷静になれて、後半はすこし本気でプレイし過ぎてしまった。

 水守さんには「それでこそ、私のライバルよ」と満足気に言われたが、観戦していた人を含めて、結構ドン引きしている、僕、やり過ぎちゃいましたか、なんて言ってる場合じゃないけど、もう仕方ない。

 金谷くんと大下さんにとんでもなくバスケ部に勧誘されてるけど、丁重にお断りしなきゃ。


 ソフトバレーの試合もバスケの試合とはブッキングしなそうだったので、とりあえず学年対抗の試合までは出て、揃って決勝トーナメントまで進出できたが、ソフトバレーの試合はトーナメントの初戦以外は出れそうにない。

 ソフトバレーは決勝トーナメント初戦こそ勝ったものの、決勝戦で負けて2位という結果だ。

 バスケットは優勝に成功して、フットサルも学年対抗は勝ち抜いて、残念ながら決勝トーナメントは初戦で敗れてしまった。それでも、結構なポイントが稼げた、対抗リレーの結果しだいだけど、総合優勝も見えて来た。

 藤崎さんはあれ以降は普通で、僕や淡雪でも、彼女の中に憑いているはずのものが見えない。

 どうやら、格上の存在が僕と敵対しているようだ。すさのお様に相談しなければ、と思いながら、ギャラリー席にいる両親に手を振る、これから、校庭に移動するのだ。

 「タカシ、フットサル惜しかったね」

 校庭で合流したタカシに話しかける。

 「すまんでござるよ、縁殿の野望にお役にたてなかったでござる」

 「いやいや、決勝トーナメントまで残れば、後は上級生との勝負だもん、負けても仕方ないよ」

 「そうよ、ござる丸、あたしとあたしのライバル縁が組んでいなければ、一年で優勝なんて無理なんだから、学年一位という事を誇りに思いなさい」

 落ち込んでるタカシを水守さんがフォローする。なんだかんだ、いい人なんだよな、水守さんって。


 リレーは順調にいった、今さらだけど、あまり目立ちすぎてもいけないと、セーブし過ぎたら2位になってしまったけど、総合優勝はゲット出来たんだ。





次回もイベントがらみです。

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