出逢いと夢枕の熊野権現様
拙作起請文の紡ぐ縁の続編となります。
よろしければ、そちらをご覧になってからお読み下さい。
僕は木ノ下縁、今年で18歳になる高校生だ。
僕には小さな頃から、僕にしか見えない友人がいる。
最初に見えたのは5才くらいの時で、嘴と目は輝石のような煌めきがある漆黒なのに羽毛はキラキラと光を反射する淡雪のような純白の烏が止まり木の上で羽根を休めていて「ママ、白いカラスさんがいる」と言ったものの、母親は「白いカラスさんは見えないよ」と返して来た。
それから数日もすると、カラスさんが自分にしか見えない事と、どうやらあのカラスさんは自分や自分の両親を見守ってくれているようだと感じた。
更に数日して僕の夢にとっても厳ついこわ目なおじさんが現れた。おじさんはやたら昔の人が着るような着物みたいな服に胴当てと呼べばいいと思う鎧のようなものを着けていて、髭を豪快に生やしていた。
「縁よ、儂は熊野権現という、神さまじゃ」
「神さまなんですか」
「あー、縁よ、儂はお主に頼みがあるんじゃよ。お主は大変美しい白い烏が見えとるじゃろ」
僕はここ最近、僕にしか見えないカラスの話題に食い付いた。
「はい、見えます」
「あの烏はな、お前の両親の恩人なんじゃよ」
それから、熊野権現様はあのカラスと両親の前世について話してくれた、あのカラスが自分の身を犠牲にしてまで両親の前世での死別を哀れんで、来世での幸福を願い、それに応えた熊野権現様が、カラスを神さまにして、今世で両親を引き合わせてくれたそうだ。
「熊野権現様ありがとうございます」
「うん、素直な良い子じゃな。其処で頼みなんじゃが、あの烏、今は神となり烏産姫と申す、あれは、自己犠牲を厭わぬ良い魂の持ち主なんじゃが、如何せん己を省みない、どうか友達になっておくれ」
熊野権現様はおっかない顔に似合わない、とても優しい表情で、でもどこか不安そうに僕にお願いしたんだ。
カラスさんの頼みを訊いて、僕の両親を結びつけるためカラスさんを神さまにするほど偉い神さまが、たった5才の僕に頭を下げてる、すごいな~と思った僕は「勿論いいよ」って答えて、熊野権現様はすごい豪快な笑顔でこう言ったんだ。
「それでこそ、烏産姫が救いし魂より出でた者じゃ、頼んだぞ」
目を覚ますと窓の外にカラスさんがいた、やっぱりキレイな雪のようなカラスさんを見ながら、うのなんたらさんは覚えられないけど、大恩人のカラスさんと仲良くなるために話しかけたんだ。
「とっても白くて綺麗なカラスさん、お友達になりましょう」
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