本当は妹のはずが間違えて姉の私を婚約者にしたと王太子殿下に言われてしまったのですが、どうしてそうなった? 円満婚約破棄をしたいと相談されましても困ります。
「違う、君じゃない」
「え?」
「よく見たら違う」
私はお気に入りのすみれ色のドレスを着て、王太子殿下の婚約者に選ばれたというので喜んで選定式に向かったのですが。
いきなり開口一番こういわれたのです。
「君、双子とかじゃないよね?」
「違います」
「よく似た妹さんとか……」
「妹は一人おりますが」
「もしかして……」
私には妹が一人おりますが5歳年下でした。
顔立ちは割とよく似ていますし、妹はなにより実年齢よりもかなり上に見えますけどね。
「何歳?」
「今10歳ですわ」
この殿下のドジっぷりをこの後わかることになるのですが、さすがに妹と姉を間違えたってドジすぎると思うのですわ。
話のはじまりはお茶会にきていた妹に一目ぼれ、そして誰か調べたら名簿から私だと思ったってねえ。
いや銀髪紫目ってたしかにうちの家しかおりませんけどお。
年齢が15歳~16歳ほど、長い銀の髪に紫の目をした少女って……。私しかおりませんでしたわね。
「10歳……」
「あの子は年よりも上に見えますのよ」
おねえちゃまずる~いといっていつも私についてくるのです。
私のドレスを勝手に拝借して、勝手に私に髪飾りなども盗んで…私のふりをしてもぐりこむこともありましたわ。
お茶会も無理やりついてきたのですわあの子!
「……婚約を破棄ってできないかな」
「その場合は解消といいますのよ殿下」
婚姻年齢になるまではあの子後5年もありますわよと殿下にいうと、そうだねとがっくりと肩を落とす殿下。
「どうして10歳……」
「背も私と変わりませんし」
「でも10歳」
「妹のエミリアはいつも私に間違えられてますけど、でもどうしてもっときちんと調べてから婚約者にしてくれませんの!」
「調べてこれなんだ……」
「はあ」
私は婚約解消といわれても困りますとため息をつきました。
エミリアにはそういえば彼氏だって取られたことがありましたわ。
あの子、私の姉とうそをついて言い寄りましたのよ!
「私、今破棄されても困りますわ」
「そうだよね」
「外見が気に入ったというのなら私でも!」
「いやその……」
「そうですか」
胸のあたりを見てため息をつく殿下、男ってみんなそうですわよね! 10才のくせしてそこはたっぷりありますものあの子。
私はならあの子がある程度年を重ねるまでは暫定で私が婚約者ってことで! と言います。
殿下は不服そうにしてましたがこくりと頷きました。
ここから私の復讐計画がはじまったのですわ。もうあのバカ妹に煩わされるのもいやでしたし、殿下のことも腹が立ちましたのよ。
「……お姉さま、殿下に愛されてないのね~たびたびおうちに帰ってくるなんて~」
「うるさい……」
お姉さま怖い~と泣く妹、妹をいじめるなと怒る両親。いつもの光景でした。
妹はその容姿を生かしいろいろな男をたぶらかしていたのですわ。私はその証拠を集めていたのです。
そして…殿下が幼女好きの性癖があるという噂を秘密裏に流しました。
「…悪いが君と婚約破棄する。そろそろ君の妹が適齢年齢だ」
「わかりましわ」
私はにっこりと笑ってそれを受け入れます。そして陛下と王妃様に読んでくださいねと書状を渡して、馬車に乗って隣国の親戚のもとに向かったのです。
いやあその時の殿下の驚きようを直接見たかったですわ。
幼女好きの変態という噂も社交界で持ちきりでしたわ、それで落ち込み、婚約者にしたいと意気揚々と名前を出した妹の男をたぶらかした所業を、すべて書状に私がしたためておいたので陛下と王妃様にたっぷりと叱られて。
妹は既婚者をたぶらかしていたので、その不義で辺境送り。
殿下は幼女好きという噂も相まって、廃嫡の上、謹慎となりました。
まあすっきりしましたわ。
次の婚約者は誰にしましょう。私は釣り書きとやらを見てにっこりと笑ったのでありました。
両親も連座になりましたけど、私は親戚に養女にいったので無事でした。
私が王宮で手に入れた情報と引き換えにお願いしたのですがね。
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