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ダブり集

降ろしてくれ

作者: 神村 律子

 私は高いところが苦手だ。理由はわからない。何ものにも代えがたいくらい怖い。


 それなのに今日も高い所に行かされる。


 誰も降ろしてくれない。誰も交代してくれない。


 もう嫌だ。逃げ出したい。


 しかし誰もそれを認めてくれない。


「安全バーをしっかりと下ろして下さい」


 いつものアナウンスが流れる。まただ。また行かなければならない。


 カタンカタンと振動音がする。ゆっくりゆっくりと私は一番高い所へと連れて行かれる。


「キャー!」


 若い女性の歓喜とも絶叫ともつかない声が聞こえる。


 私は声が出ない。目を瞑ることもできない。何もできない。


 私が何をしたというのだ? この仕打ちは何だ? 理解不能だ。


 元の位置に戻った。女性は降りたが、私は降ろしてもらえない。


 夢なら早く覚めてくれ! しかし夢ではない。


 紛れもない現実なのだ。非情なほどの結論。


 声も出せず、目も瞑れずにまた戻って来る。でも恐怖は終わらない。


 しかし何か様子がいつもと違う。乗客は待機させられている。


 係員達はヒソヒソと会話している。


 私の方を見て悲しそうな顔をしている。


 何だ? 哀れみか? そんなものはいらない。


 私が欲しいのはこの恐怖からの解放だ。


 すると一人が私に近づいて来た。


 もしや降ろしてくれるのか? ようやく願いが叶うのか?


 係員は私を見て言った。


「この車両はもう限界だからスクラップだな」

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― 新着の感想 ―
[一言] じぇっとコースターだったんですね。 高所恐怖症なのに毎日たいへんですね。 慣れないのかな。 慣れませんねw しかも最後はスクラップ。 何とも可哀想です>< 次作も楽しみにしています。
2010/11/21 18:27 退会済み
管理
[一言] 発想がすごいですね。 文章力もあって、読みや すかったです。 スピーディーに終わってしまうのも魅力的でした 。 今後も、期待してます。
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