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第2章 11 朝の食卓の会話

 翌朝―


6時に起床したスカーレットは、起き上がるとクローゼットを開けた。


「・・・」


そのクローゼットに入っているワンピースは全て今頃の季節に着るワンピースとなっている。薄い素材で襟元も開き、袖は七分袖となっている。


(駄目・・こんな心もとないドレスでは・・・男性の前で肌をさらけ出すことになってしまうわ・・!)


寝ているところを突然アンドレアに襲われかけてからはスカーレットはすっかり着る洋服も変わってしまった。もうすぐ6月になると言うのに、長袖に襟元からぴっちり覆われた服にスカート丈はくるぶしまで届く長さの物しか着用する事が出来なくなっていたのだ。

スカーレットは自分を責めていた。深夜に襲われたのは自分が無防備な姿でベッドで眠っていたからだと・・・。


(これだけ肌の露出を押さえた服なら・・・男の人の目に留まることも無いはずだわ・・)


スカーレットは気づいていない。男性恐怖症になったことで・・自分の心が一部分病んでしまっているという事を―。




****


「おはようございます。カール様」


遠すぎるダイニングルーム迄スカーレットとブリジットは5分以上かけて歩いてやってきた。


「おはようございます。スカーレット様、ブリジット様」


既に椅子に座っていたカールがにこやかに挨拶をする。この屋敷のダイニングルームは朝は夜とは違い、違った顔を見せていた。

真っ白な大理石の床は太陽の光を反射して、部屋全体を明るく見せている。南向きの掃き出し窓からは明るい日差しが差し込み、窓から見える景色には緑の木々が生え、風に吹かれてざわめいている。そこはまるで避暑地と見まごうような素晴らしい景色だった。


「まあ・・ここのダイニングルームはなんて素敵な景色が窓から見えるのでしょうね」


スカーレットはカールの向かい側の席に座りながら言う。するとカールは笑顔で答えた。


「そうなんです!ここのダイニングルームはとても景色がいいんですよ?それで部屋からはちょっと遠いんですけど、お母さまがここをダイニングルームにしましょうと言って・・・・」


徐々にカールの声が小さくなっていく。


「カール様・・・」


スカーレットはカールが哀れでならなかった。今のカールの話から、部屋が遠くてもここをダイニングルームに変えたのは母親である事は間違いない。それなのに肝心の母親はまだ幼い息子をここに残し、夫と2人で避暑地に移り住んでしまったのだろう。


(何てお気の毒な・・・)


その時・・・。


「失礼致します」


扉が開かれ、1人のメイドが大きなワゴンを押して部屋へ入ってきた。そして3人の前に朝食を並べていく。フレンチトーストにベーコン、スクランブルエッグにサラダ、ヨーグルトにみずみずしいフルーツ。ピッチャーに入ったミルクとオレンジジュースを置くと、再び頭を下げて去って行った。


「まあ・・・今朝のお料理もとっても美味しそうですね?さあいただきましょう?」


スカーレットの言葉に2人も頷き、食事が開始された。



「本当にここの料理はおいしいですね。特に卵が絶品です」


ブリジットがスクランブルエッグを食べながら言う。するとカールが言った。


「本当ですか?実はこの卵・・この屋敷で飼っている鶏が生んだんです。それに野菜やハーブもこの屋敷の畑で作っているんですよ」


「まあ、すごいですね。このお屋敷はそんなことまでされているんですね?」


スカーレットは感心したように言う。


「はい、そうなんです。僕の身体があまり丈夫じゃないから身体によいものを食べさせようと・・アリオスお兄様が畑を用意したんです。養鶏場も・・アリオスお兄様は本当に良い方なんです・・」


カールが恥ずかしそうに言った。


「まあ・・・そうだったのですね?」


(冷たい人に見えたけれど・・あの方は本当は優しい方なのかもしれないわ・・)


スカーレットは思うのだった―。

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