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第1章 49 アンドレアとアグネスの口論

 18時―


辻馬車に乗って仕事から帰宅したアンドレアは驚いた。何故なら屋敷の中は明かりもともされず、出迎えの物はおろか屋敷内で働く使用人が1人も見当たらなかったからだ。


「こ、これは・・一体どういう事なのだ・・・?」


驚いたアンドレアは明かりがついている部屋がないか、屋敷中を詮索して走り回ると1か所だけ扉の隙間から明るい光が漏れている部屋が目に入った。


(あの部屋だけ明るいっ!)


バンッ!!


アンドレアは勢いよく扉を開けて驚いた。そこには弁護士のジョンとアグネスが向かい合わせで座り、神妙な面持ちで話をしていたからだ。


「い・・一体、これは・・・?」


アンドレアがノックもなしに部屋へ飛び込んできたのを見て、アグネスは眉をしかめた。


「おかえりなさいませ。お邪魔しております。」


ジョンは立ち上がると頭を下げた。


「お帰りなさいませ、アンドレア様。しかし、随分乱暴な方ですわね?ノックもせずにいきなり部屋に入ってくるとは・・。」


アグネスは頭痛でもするのか額を押さえ、ため息をついた。


「申し訳ございません・・・屋敷中の明かりがついておらず・・誰1人使用人の姿が見えなかったもので。」


「ああ、その事だけど・・とても困った事が起きてしまったのよ。」


「困ったこと・・・?」


アンドレアは首を傾げた。


「ええ、そのことだけど・・・もう私の口から説明するのは疲れるわ。貴方が説明して頂戴。」


無責任なアグネスは今回の経緯の経緯を弁護士のジョンに丸投げしてしまったのだ。


「一体・・・どういう事なのですか?」


アンドレアは自分もアグネスとジョンの向かい側のソファに座ると尋ねた。


「ええ・・。実は今朝の事です。アグネス様が使用人たちを広間へと呼んだのです。そこで当主であらせられたリヒャルト様の葬儀を取りやめにし・・やめさせるリストに上がっていた使用人たちに5日以内に出て行くように命じたのです。するとこの屋敷の執事だったアーベル様が激怒して、その場で退職することを明言し、アグネス様と口論になったのです。それを目にした使用人たち・・はっきり言ってしまえば全員がその場で辞めることを決意してしまったのです。そして・・・夕方までに全ての使用人がここを辞めて出て行ってしまいました。私はつい先ほど呼び出されて到着したばかりなのです。」


「な・・・何ですって・・・?!」


アンドレアは衝撃を受けた。少なくともこの広大な屋敷であるシュバルツ家には200人近い使用人たちが働いていた。その彼らが全員いなくなってしまったという話を聞かされたのだ。驚くのも無理は無かった。


「アグネス様・・・!何と愚かな事をしたのですかっ?!」


アンドレアがアグネスを責める発言をすると、その言葉にアグネスは切れた。


「おだまりなさいっ!貴方に言われたくないわっ!大体何なのよ?!エーリカと結婚した・・初夜に・・よりにもよって花嫁を部屋に残し、スカーレットを襲うとは恥を知りなさいっ!でも・・それでもよくやったと褒めてあげるわ。貴方があの娘を襲ったことで・・すっかり男性恐怖症になってしまったそうよ?これでスカーレットはもうどこにも嫁にはいけないわね・・いいざまだわ。」


そしてアグネスはこれ見よがしに高らかに笑った。


「な・・・何だって・・・?!」


(そ、そんな・・・やはりアーベルの話していた通りの事が・・?!)


「・・・。」


アンドレアはガタンと席を立った。


「アンドレア様?どちらへ行かれるのですか?!」


弁護士のジョンは席を立ったアンドレアに声を掛けた。


「町の宿に行きます・・・。このままここの屋敷にいても・・暮らしていけそうにないので・・・。当分戻らないのでよろしくお願いします。」


「な、何ですって?!お待ちなさいっ!」


しかし、アンドレアはそれに答えることは無く部屋を出ると、荷造りの準備をする為に自室へと向かった―。

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