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第1章 38 それぞれの夜

「スカーレット様・・・落ち着かれましたか?」


ブリジットはブランケットを被ったままベッドの上でブルブル震えていたスカーレットを抱き寄せたまま尋ねた。部屋の中は薄暗く、ベッドサイドに置かれたテーブルの上のアルコールランプの炎がユラユラと揺らめいている。


「え・・・ええ・・・だ、大丈夫・・。ブリジット・・も、もう・・落ち着いたから・・。」


しかし、スカーレットの身体の震えは収まらない。まるで生まれたての子猫のようにブルブルと体を震わせているスカーレットの身体を抱き寄せながら、ブリジットは心の中でアンドレアをなじっていた。


(全く・・・なんて酷い男なのでしょうっ?!エーリカと結婚式を挙げた初夜に・・眠っているスカーレット様の寝室に忍び込んで襲うなんて・・・。でも・・未遂で終わって良かったわ・・これからスカーレット様は誰かの元へ嫁いでいくお方。それなのほかの男に純潔を奪われてしまっていたら、大変なことになっていたわ・・。)


そして思った。スカーレットが落ち着いたら・・・必ずアンドレアに文句を言いに行くのだと・・。

しかし、この時のブリジットにはまだ気づいていなかった。アンドレアに襲われた事がのちにスカーレットの精神状況にどのような影響を及ぼしていくことになるのか・・・。




****


 その頃―


エーリカは夫婦の部屋でベッドにうずくまり、号泣していた。


「ううう・・ひ、酷いわ・・アンドレア様・・・っ!た、ただでさえ・・・結婚式でみっともない目にあっているのに・・・そ、その上新婚初夜にスカーレットの寝室へ行って襲うなんて・・・!」


もはや、エーリカは自分よりも年上で、このリヒャルト家の正当な血筋を引くスカーレットに対して、敬意も何も払っていなかった。いや、それどころか返って逆に彼女に対して激しい憎悪を抱いていた。スカーレットは何も悪くはないのに・・。


そんな我が子の髪を優しくすきながらアグネスは言う。


「落ち着きなさい・・・・エーリカ。確かにアンドレアはスカーレットの元へ行ったけど・・・でも未遂で終わっているのよ?だから安心なさい。」


しかし、この言葉はエーリカにとっては何の意味もなさなかった。


「安心なさい?どうして安心できるのよっ!アンドレア様は結局私ではなくスカーレットを選んだのよっ?!もとはと言えばお母さんのせいよっ!身体さえ繋ぎ止めておけば男なんて単純だからって言っておきながら・・アンドレア様は私よりも、あの女を選んだのよっ?!」


そして再び激しく泣きじゃくる。そんな娘の様子をうかがいながらアグネスは思った。


(やはり、私の悪い予感は当たったわ。結局アンドレアはエーリカよりも知性のある・・スカーレットを選んだという事ね・・。こうなったらリヒャルトの葬式を執り行う前に一刻も早くスカーレットを追い出した方がよさそうね・・。)



****


一方、その頃アンドレアはアーベルから今後一切スカーレットに姿を見せないように言われて衝撃を受けていた。


「そ、そんな・・スカーレットにもう会えないなんて・・どうか見逃してくれ・・。彼女にもう会えないなんて・・そんな残酷な・・。」


「残酷っ?!ではアンドレア様っ!あなたがスカーレット様にしたことは残酷ではないのですかっ?!」


「!そ、それは・・・。」


アンドレアはがっくりうなだれた。それを見るとアーベルは言った。


「とにかく・・今夜はその部屋から出ないでいただきます。」


そしてアーベルは部屋を後にした―。

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