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第1章 28 怒りの執事

14時―


「落ち着け、グスタフ。本当にこのまま屋敷を出て行くと言うのかっ?!」


アーベルは自室でトランクケースに次々と私物を詰め込んでいるグスタフを必死で止めようとしている。


「いや、俺はもう決めた。今日中にこの屋敷を出る。どうせお前達だってリヒャルト様の葬儀の後に全員解雇されてしまうのだろう?」


「そ、それはそうだが・・・こんな状態で屋敷を辞めたら一体シュバルツ家はどうなるか・・・。」


「だから、あの女が弁護士を雇ったのだろう?」


グスタフは顔も上げずに、次の荷造りを始めた。


「しかし・・・。」


尚も言いかけるアーベルにグスタフは言った。


「俺はヴィクトールの後を追う。」


「え・・?」


「彼は今リヒャルト様の死を疑い・・自分の目で確かめる為に『ベルンヘル』にいる。俺も彼の元へ向かい・・・調査を手伝うつもりだ。」


「グスタフ・・・そうだったのか・・・。」


「アーベル、お前はどうする?」


「俺は・・とりあえずギリギリまでこの屋敷で働く。スカーレット様の事が気がかりだからな・・・。」


「ああ・・・ブリジット様から聞いた。あの女は早速スカーレット様の元へ向かってリヒャルト様の葬儀が終わり次第、屋敷を出るように言ったそうだな・・・。気の毒なスカーレット様は泣きながらメイド達と荷造りをしているそうだ・・。」


グスタフは忌々しげに言う。


「くそ・・・っ!」


アーベルは拳を握りしめ、忌々し気に壁をドンと叩いた。


「俺は・・絶対にあきらめない。あの母娘が絶対にリヒャルト様に何かしたに決まっている。必ずあの母娘の悪事を白日の下にさらけ出し・・・裁きを受けさせてやる。例え・・・何年かかろうともな・・。」


グスタフは怒りに燃えた目で言うのだった―。




****


同時刻―


「スカーレットお嬢様・・・。おやめくださいっ!荷造りの準備など・・っ!」


ブリジットは必死に止めるが、スカーレットは力なく首を振る。


「駄目よ・・ブリジット。どのみち・・私はアンドレア様がエーリカと夫婦としてこの屋敷で暮らす様子を目の当たりにするなんて・・・そんな事耐えられそうにないわ。それならいっそ・・永遠にあの2人の目の届かない場所に消えてしまった方がよほどましよ・・・・。」


スカーレットは目に涙をたたえながら荷造りをやめようとはしない。そしてそれを手伝うメイド達の間にも悲しみが降りている。今この部屋には3人のメイド達がいるが・・彼女たちは全員解雇されてしまうのだ。ただ、おとなしくしていればアグネスが紹介状を書いてくれるとの事なので、このメイド達の方がスカーレットやブリジット達よりはまだましな状況と言えた。


「とりあえず・・・今日は荷造りをして・・明日から・・・何所へ行くか、どんな部屋を借りるか決めないといけないわ・・・。」



その時・・


コンコン


スカーレットの部屋のドアがノックされた。


「誰かしら・・こんな取り込み中に・・・。」


ブリジットは忌々しげに言うと立ち上がり、扉を開けた。


「ま・・・まあっ!あ、貴方は・・・っ!」


そこに立っていたのは今回アグネスの顧問弁護士になった人物であった。


「何をしにこちらにいらしたのですか?これ以上スカーレットお嬢様を追い詰めるのはおよしになって下さいっ!」


ブリジットは強気な態度で弁護士に言う。すると彼は突然頭を下げてきた。


「申し訳ございません・・・・私は所詮雇われ弁護士でしかありませんが・・・あまりの理不尽さに我慢できずに、こちらのお嬢様のお力になれないものかと思い、アグネス様の目を盗んで参りました。どうか・・お話だけでも聞いていただけないでしょうか・・?」


「はい・・・お話だけでも聞かせていただけますか・・?」


そこへスカーレットが弁護士の前に歩み寄って来た―。


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