泥水よりも綺麗なモノはあるよ
綺麗なモノを見つけた
泥水に足をつける毎日
その水たまりにうつる真っ青な空がやけに青くて
体よく淀みがない白い入道雲で
でも横目で流しその景色を眺めた
だから顔を上げる勇気も気丈さもなかった
私の瞳にうつった瞬間
私は消え去ってしまうんじゃないかと思っていた
地団駄を繰り返し、ぐしゃぐしゃにかき消してゆく
君が止めてくれるその日まで
さあさあ、そのうちにさ、水は空気の中に帰っていく
私を置いて滅びていく
「いつまでそこにいるの?」
「君がむかえに来てくれるまで」
足も干からびて土がこぼれていく
苦しくなんてないよ
呼んでくれる日がくるから
その時は顔を見上げると君の顔が見えるんだ
ただそこに佇んで
「あの空はどこにいったの?」
「あの雲はどこにいったの?」
新しい靴が来たといって足をいれる
「これなら泥水から守ってくれる」
あの生ぬるくて淀んだ色の水のいろ
「私はあそこが似合っていたんじゃないのかな?」
「そんな事はないよ」
「そこから一歩踏み出してごらんよ」
「硬い地面を踏み握って新しい感触が君を救うよ」
「心配なら僕の足跡に足をつけるといいさ」
「そうしたら最後には気が付いたら自分の足跡をつけれるから」
「そうして駆けれるようになったら
時々後ろを振り返って僕の事を思い出してくれるといいな」
「じゃあ、手をつないで歩こうよ」
夜から歩いた君と私は朝まで旅をつづける
足をあげ。君と歩調を合わせて
時々横目で見上げながら
手の力が緩むと握り返してくれるその手に
「だいぶ遠くまできたね」
泥水がある
それを君は飛び越していった
私も真似をしていた
やっぱり静止した水面には綺麗な景色が見えた
そして駆けてゆく
遠く遠く
「どこまで行くの?」
「泥水を君が見下ろさなくなるところまで」
「私はあそこが似合っていたんじゃないのかな?」
「そんな事はないよ」
「泥水よりも綺麗なモノはあるよ」
「それはどこ?」
僕のとなり