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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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水辺

挿絵(By みてみん)










自ら発した叫び声はこだまとなって、何重にも反響している空間に私は居た。


音は聞こえるけれど、それが自分の発した声の名残りだとは露にも思わず、何を発したかも覚えていなかった。


決して明るくは無い薄闇の空間で重なり合うこだまを聞き立ち往生する。


つい先程、則陽と会えた瞬間がもう懐かしく、包み込む様に接してくれた事は夢だったのかと思う。

自分の存在を肯定してくれて、自分の想いを汲み取ってくれて…。


想い…自分の想い………。


空間の内に響いて聞き取れはしない重なったこだまを耳にしながら、自分の想いが何だったのかを思い出せなくて、私は一人、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。








 心地良い花の香りが漂う花畑。

その中にたった一本そびえ立つ木の幹に、寄り掛かりながら座っている梨乃とソウイチはたまに互いの顔を見つつ話をしていた。


ソウイチは何処かふわりとした雰囲気で梨乃はいつの間にか和んでいたし、ソウイチも梨乃との会話を楽しんでいる様に見えた。


「私…則ちゃ、…奈巣野さんからソウイチさんの話は聞いていたけれど、もっと年が上の人を思い浮かべていました。こんなに若い人だなんて思ってもみなかったな。」

ソウイチが梨乃に目をやる。


「だって、そうでしょ?不思議な機械に不思議な場所、不思議な仕事にマニュアル本まで…同じ本の中身が途中で不思議と変化するって…。奈巣野さんの話を聞いているととてもあなたみたいな人がそれをやってのけているなんて思わなくて…。」


「私だけの力では無いです。奈巣野さんの様な方々に支えられての活動ですし…。」

ソウイチは静かな声音で言って、にこやかな表情を梨乃に見せる。

その顔を見て梨乃が言った。


「…ひょっとしたら、私より若いかも。おいくつなんですか?」


和んでいた空気が、さっと変わってソウイチの表情が一瞬固くなったのを感じた。

梨乃が僅かに首を傾げる隣で、ソウイチは再び静かな声音で言葉を発する。



「…私は、自分の年齢は分からないんです。」

「…分からない?」

「はい。…おそらくは、あなたや奈巣野さんとそう変わらない年齢だとは思います。」

「分からないって、どうして…。」


梨乃は不思議がって問い掛けた。


「私には出生の記録がありません。」

「え…?」

思いもよらない返事に梨乃は隣のソウイチの顔を二度見する。



「私の覚えているのは…暗闇に居た記憶です。…ある時、そこから救い出されて一命を取り留めました。救い出される事が無ければ、今私がこうして存在する事も無かったでしょう。」








 青い小部屋は狭かったけれど、それなりに心地が良かった。

私の為に用意された部屋だったし、耳を澄ますとシャンシャンと綺麗な鈴の音も聞こえる。


すごく嬉しいなと思ったのが、扉を開けると美しい草原の地へと繋がっていた事だ。


空気は良いし、とてものんびりしている。


私は窓を開け放った。


草原の恩恵を受ける事も出来るし、青い小部屋の落ち着いた感じも享受出来る。


窓辺の縁に両腕を組んで顎を載せると、私は入り込む風を浴びて気持ち良さに目を閉じた。



目を閉じると鈴の音の綺麗な旋律が聞こえてきて…。


私は思わず頬を緩ませた。








 花々が咲き乱れる地でぽつんと一本だけ生えている木の幹を背に、隣り合って座った梨乃とソウイチが話を続けていた。



「…暗闇?」

「はい、暗闇です。私が思い出せる記憶の限り、最初の記憶は暗闇でした。」


「胎内の、記憶とかでは無くて…?」

「違います。」

ソウイチはきっぱりと否定してから話を続けた。



当時の自分は、気付くと暗闇の中だというのを感知した。その環境の中で、感情というものがあるかも分からない停滞した状態を過ごして居た。

生きる、と言うには最低限を下回った状態で、自分が生きてあの場所から出られた事は間違い無く奇跡だったとソウイチは続けた。


「そんな事が…。」

果たしてあって良いのだろうか。


梨乃は自分の知っている現実とはかけ離れた世界にソウイチが置かれていた事を知る。

言葉の数は多くは無くても、その状況がどんなに残酷で、どんなに無慈悲な状態だったかを推して量るに難く無かった。



でもどうして…。

「…当時のソウイチさんは…何故そこに居たの?」

「それは、私にも分かりません。」

「…。」


遠くへ視線をやりながら答えるソウイチを見て、梨乃も正面に広がる花畑をぼうっと眺めた。



彼が同じ日本人の顔つきなのに何処か異国情緒を感じさせる風貌なのはソウイチが今梨乃に打ち明けた複雑な経緯が根底にあるからだろうか。

ともすれば深い沼に沈み込んでしまいそうな重い背景を抱えながらも今を生きるソウイチの姿に、彼は強いんだと梨乃は思った。


彼のほんの一部しか梨乃は見ていないけれど…。



目の前に広がる花畑は優しい色彩と甘い芳香を放っていた。


「綺麗な場所…。」

「ですね。私も気に入っています。」

「…ここはソウイチさんの場所ですか?」

ふと聞いてみる。


「いいえ、私の場所ではありません。ですが少なくとも…私が必要とした時に来れる様にと、想いを伝えてくれた様です。」

「………?」


ソウイチは頬を緩めて梨乃に柔らかい笑みを見せる。

何と無く、ソウイチの心の支えがあるのが分かった気がして梨乃も微笑んだ。


一人で…立っている訳じゃ無いんだ。


「今は、お幸せですか?」

「…はい。今の私は、とても幸せです。」

そう答えるソウイチと、二人で笑い合った。








 都内アパート。

意識が自宅アパートへと戻った則陽が、ソファ隣の梨乃の様子を伺う。


梨乃の意識も何処かへ飛んでいるのか、俯き加減の顔に目は閉じていた。


則陽は梨乃の髪の毛をまさぐりおもむろにくちづけをする。

梨乃の意識を持って行く何処かの空間に対して自分は妬いているのだろうか。

彼女が気が付くまで続けようと、次第に肩に背中に腕で梨乃を自分の胸に寄せる。


そうしている内に、梨乃から声が漏れた。


「ん…。」


目が開いて、則陽の体温を感じているのを認識して頬が紅潮する。


「則ちゃ…ん…。」

「梨乃。」


梨乃が反応したのを見てようやく則陽が唇を離した。


きっと自分は極度の心配性なのだと目の前の梨乃を見ながら思う。

それとも先程の友喜の様子を見てしまったからか…。


いずれにせよ、梨乃にはしつこいくらいにスキンシップを取らずには居られない自分だと良く理解していたから。


赤く染まった頬できょとんとする梨乃に則陽は静かに息をついて微笑み掛けた。


「良かった。戻って来てくれて。何処に飛んでた?」

梨乃の髪の毛を丁寧に梳きながら、則陽は梨乃に話し掛けた。








 ちゃぷちゃぷと水の音の聞こえる何処かで、誰かと話をしているみたいだった。


ちゃぷちゃぷ、ぴしゃぴしゃと、涼し気な水の音はやたらと耳に残る。


それとは反対に、誰と話しているのか、何処の場所に居るのかについては曖昧で。


それでも自分という意識は保ちつつ、自分と対峙していると思われる相手と喋った。




何の話だ?


自分から何を知ろうとしているのか。


相手の真意が分からず、聞いても覚えていられそうも無い。


何故かって?


何故なら自分からは薄いベールが何層にも掛かっていて視界は良くはなかったし理解も出来なかったから。


…多分他の誰かと自分とを相手は取り違えているのだろう。


だから意味が分からなくても、そこまで気にしなかった。





 熱の籠る息を静かに吐いて、自分の頭を載せている枕の脇を見ると穂乃香が自身のスマートフォンを弄りながら物憂げな顔をしている。辰成の動きに彼の目が覚めたのに気が付いた。


ワンルームマンションの、ここは辰成の部屋だ。


「おはよ。」

挨拶をする穂乃香を辰成は無言で眺めた。


「ちょっとは…眠れた?さっきから…一時間とちょっとくらい経ったかな。」

言いながら辰成のおでこに手を当てる。


「穂乃香…。」

「ん?どうしたの?」

「…いや、ただ呼んだだけ…。」

穂乃香は辰成の返答に、そう?と言って小首を傾げる。


「まだ…寝てる?それとも何か口にする?」

「水…。」

「水ね。」

穂乃香が立ち上がってぱたぱたと冷蔵庫の前まで行くと、これでしょ?と飲み掛けのペットボトルを出して掲げた。

辰成の前に持って行きペットボトルの蓋を開けて渡す。


「サンキュ…。」

半身を起こした辰成がごくごくと水を飲んで、熱っぽい視線で穂乃香に微かに笑みを見せる。


「だから、それ………。」

「こっちは病人だって言っているだろ。わざとじゃねえよ。」

「分かってるけど…。」


辰成から困った表情で目を逸らした穂乃香が空のペットボトルを受け取り、流しに置いてまた戻ってくる。

穂乃香の頬は、幾分か血色が良くなっていて。


「…。」


普段が無表情がちの辰成の、こうしてたまに見せる弱った時の顔に穂乃香は弱かった。

穂乃香は思う。

きっと彼が造形的に美し過ぎるのだ。


何でも割と開けっ広げに話してしまう穂乃香だったから、辰成にもそれを伝えてしまった事がある。

それ以来、辰成は穂乃香のツボをついて、先程の様な穂乃香へのスキンシップを度々求める様になった。


穂乃香は思う。

自分のせいだけれど、辰成のその行動を見る度に、本当に病人?と勘繰ってしまう。

…自分のせいだけれど。


なるべく辰成を見ない様にして気にしない素振りを見せながら穂乃香は再びスマートフォンに手を伸ばした。

瞬間、辰成が穂乃香の手首を掴んでそれを止めさせる。


「良いから一緒に寝ろよ…。」

弱々しい声音なのに意外とすごい力で腕を引っ張り穂乃香を引き寄せた辰成は穂乃香に覆い被さりくちづけを交わした。








 こだまが響き渡り言葉としての意味が聞き取れないくらいに重なって反響していたのが一挙に収束する。

辺りは静まり返って、代わりに爽やかな声音が耳に届いた。



 そんなに悲観する事は無いよ。



私は抱えていた頭から手を外して顔を上げる。



声のした方を見るとそこには一人の男が立っていた。

中性的な顔立ちで、肩より少し短いくらいの髪は猫っ毛で緩くパーマ掛かっている。

服はかっちりとした詰襟とロングパンツという装いだ。



私は唖然として、ただただ彼を眺めた。


「…。」


「ここはちょっと…薄暗いね。どう?気分は。」


聞かれた私は、おもむろに首を振った。


「そうだろうね。この空間自体が、今の君の心の内を表しているから。この様子だと、気分は…あまり良くないんだと思うよ。」

辺りを見回しながら男は言った。



「…あなたは…。」


「ただの通りすがりだよ。たまたま、この場所を選んでみた。」

「通りすがり?」


男の言葉に私は思わず聞き返す。

彼は頷いてにっこりと笑い私の顔を覗き込んできた。




通りすがり…通りすがり…通りすがりの人なんて…。


…なら関係無いじゃない。


遠慮無く随分と近くに顔を寄せて微笑んでくる男の姿に、私はあからさまに嫌そうな顔を向けた。

心の中で言った文句に、男はさもそれを耳にしたかの様に返事をしてくる。


「そんな事も無いよ。僕がここを通り道にしたのには理由がある。」


「………だって…、通りすがりで、たまたま選んだんでしょ?」

私は頬をむくれさせて面白く無さそうに言い放った。



「文句が言えるだけの元気があるのは良い事だ。」


あくまでも穏やかなままの男に静かに驚いて、私はむくれ顔をより強調した。


「ただの通りすがりのあなたがここに何の用なの?」



 男は小さな玉石を片方の手に握っていて、目の高さに持ち上げてはたまに眺める仕草をする。

彼の姿を目の端に捉えている内にむくれていた自分を忘れ次第に彼に注目していた。


改めて彼を見ると、全体的に派手な外見だなと思った。

目の覚める程の鮮やかな濃い青色をした詰襟のかっちりとした上着に下も同色のロングパンツという装いで、黄緑色の髪色に中性的な美しさのある顔立ちだった。


彼は私に答える。


「僕は、通る道の明度をチェックしている。いつもね。あまりに明るい所は調整して少し平坦に、暗めの所は少し持ち上げて明度を上げるんだ。」


「明度?」

「ああ、明度だ。」


私は考え込む。そしてふと思いついて聞いてみた。


「真っ暗な所は?そういう所も行くの?」


「残念ながら、そういう場所は僕の管轄じゃ無い。」

「…。」


改めて辺りを見回すの男に、つられて私も空間を見回す。




「ここは、真っ暗じゃ無いだろ?君は火を灯した。だからだ。」

「火…?」


聞き返して、私はとんでもないと首を振る。

そんなの知らないし。火を灯した…?



「知らなくても君はしたんだ。だからここは真っ暗じゃ無い。従ってここは僕の通り道になる。そうして僕は来た訳。」


私は俯いて今言った彼の言葉の意味を考えてみた。



「大丈夫。その内、腑に落ちるよ。」

くすりと笑って、俯く私に顔を向けて彼は続ける。



「知らない振りや忘れた振りが得意だからね、僕達は。その特性を、こちらにまで引きずっちゃったかな。」

まあ、それも面白いんだけどね、と男は気楽に言う。


「僕も…そうだからな…。」

呟く様に言い足した言葉が気になり、彼の顔を私はちらりと伺った。



「とにかく、案じる事は無いよ。君はただ…心地良く居れば良い。出来る?」

「…。」

「出来るよね?」

「…。」


聞かれたけれど分からない。

分からないから返事をしなかった。

男は私の反応を見ても尚、調子を変えずに私に話し続ける。



「まるで話が呑み込めないとでも言いたげだな。でも重要なのはそこじゃ無い。」


「……じゃあ何が重要なの?」


「君だ。」


そう答えが返ってきて、私は眉をひそめて横目で彼を見る。


「君が、君である事が重要だ。ものすごく、重要。ここ、覚えといて。」


「さっきから…言っている意味が…。」


「良いんだ、分からなくても。ただ、心の片隅にでも留めておいてくれればいい。必要ならば、そこから引き出されるから。」


僕もね、と、言葉を言い足して息を吐くと、男は可笑しそうにくすくすと笑った。

笑顔がきらきらと輝いて見えて、私は一瞬言葉を失くす。



「ああ、ほら。明るくなってきたでしょ?」

辺りを見回し、薄暗かった空間がほんのりと明るさを帯びたのを指摘した。


「…ホントだ。」

感心して男に顔を向けると微笑んでくれて、私もつられて思わず頬が緩んだ。私は頬を紅潮させると共に口元に手を当てて表情を隠しながら彼に問う。



「あなたは、…誰なの?」

「だから言ったでしょ、ただの通りすがりだって。あ、でもさ、またここに来させて貰うよ。僕、君が気に入ったから。」


この場から彼が去るのを察した私は不覚にも憂いた表情をしてしまう。

彼は私の様子に気付いて優しい声音で寄り添う様に告げた。


「また来るって言ったでしょ。大丈夫だから。君は…君のままで居て。」

ふわりと私を優しく包み込んで抱きしめると、ダイヤモンドダストの如く派手な光の粒が辺り一面にきらきらと立ち込めて、男の姿は跡形も無く消えていた。








 小さなバーガー店の入り口近くの席で、功が胸の奥の変調を覚えつつも、目の前の友喜には特段説明はしなかった。


不調を訴えかけた所で、今の彼女は戸惑うだけだろう。


功は自分の首に下げてあるネックレスのペンダントトップにそっと触れて気を落ち着かせようとしていると、ポテトを摘まんでいた友喜が、目を丸くして功の胸元に注目する。


深呼吸をして友喜に目をやると彼女は猫の様に功を凝視しているのに気が付いた。


「友喜ちゃん、友喜ちゃんもこれ、見えてるのか?」


突如として現れた、自分の胸元の空間に浮かぶ魔法陣らしき暗号の塊に友喜が丸い目をしたまま頷く。


「通り道。通り道が見える。」


「これが…?」

「うん、そう。」


功は暗号の塊が浮かぶ自身の胸元と友喜の顔とを見て呆気に取られた表情になった。


                                      





 聞こえたんだ、君の声が…あの時確かに。



まるで糸電話みたいだ。


繊細で、それでいてきちんと機能している。


後に、自分達は笑うだろう。


切なさと、稚拙さと、不器用さが織り交ざった今の自分達の姿を。


冷たくあざ笑うのでは無くて、それで良く乗り越えられたなという労いを込めた、温かい笑いだ。


そう。乗り越えられる。


だから今自分達はここに居るんだ。


だってさ、全部自分達で決めてきたんだ。


約束して、こうしようって。


面白可笑しく自分達で組み立てたんだよ。…何もかも。



永遠の別れの様に思えても、それは永遠なんかじゃ無いし、別れでも無い。


だからさ、安心してて良い。



君は君のままで居て。








 都内アパート。


作業部屋の隅のベッドの上で、梨乃が則陽に抱きしめられながらクリスタルの中での出来事を互いに話し合っていた。


「則ちゃんは友喜ちゃんに会って…、私はソウイチさんに会った…。」


「うん…。」

則陽は相槌を打ちながら梨乃の唇を自分の唇で塞ぐ。


「………、ねえ、則ちゃん。今日もオフィスには行くんでしょ?」

ひと息後に唇を離して貰った梨乃が息継ぎの呼吸混じりに言葉を喋る。


「そうだね。行く予定だよ。梨乃も、来る?」

「私は、今日は家で待ってる。…吉葉さん、来るかなあ?」

「どうだろうね。」

言いながら則陽は再び梨乃の唇を塞ぎ、梨乃の口から吐息が漏れた。


「則ちゃ…、時間…。」

「まだ充分にあるよ。何時から行っても良いんだし。梨乃、知ってるでしょ。」

優しい口調で言うも梨乃の背中に回す腕は力強くて離してくれそうも無い。


「でも吉葉さんが来るんだったら…、」

時間、そんなにずらさない方が良いんじゃない?と言い掛けて、途中で唇を塞がれる。


またひとつくちづけを重ねた後で、則陽は微笑み、梨乃は頬がますます紅潮する。


「則ちゃん、私、ちゃんと喋れて無い。」

何かを口にしようとする度にくちづけをしてくるので、梨乃の発言は途切れ途切れになってしまっていた。


勿論それは則陽のわざとで。

梨乃は困った顔で、則陽の真意を知りたがった。


則陽は自分ではどうしてそういう事をするのか分かっている。

でも梨乃には知られたくなかったし、そう思う事自体が自分はひねくれていると少々感じた。


「こうして梨乃との会話を引き延ばしたいんだ。」

また何かを発しようとした梨乃の唇を再び塞いで、則陽は梨乃の気を自分に集中する様に仕向けた。




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