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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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二人目

挿絵(By みてみん)










 「どうする?部屋に来ても良いけど…。」

有津世が雨見に言った。


土曜日の午前中、有津世の家に雨見が訪ねて来たのだが、有津世達の両親が1階のリビングに居る事を考慮した有津世は自分の部屋に来る事を提案してみた所だ。


「あ~…ううん、ここで、外で良いよ。今日は涼しい方だし。」

「うん。分かった。じゃあちょっと座っちゃおうか。」

玄関前の段差に二人は座り込む。


「あのね、有津世、…今朝見た夢でね…。」



 「アミュラが、気付いた?」

「そうなの。ぽわぽわがキャルユだって答えて…。」


林の奥の二棟の家、手前側の有津世の家の玄関前で、段差に腰掛けて有津世と雨見は話していた。


「ねえ有津世、友喜ちゃんがこの前、石を手にしてキャルユになった事は…。」

「あ、それさ、また、なったんだよ。…それで直後に友喜にも話した。」

「そうなんだ。やっぱり、話さなきゃだもんね…。」


雨見が有津世の顔を眺めた。

俯きがちに前方の景色を眺める有津世は額の石の有無や髪色の違いはあれどやっぱりツァームに生き写しで。


「ねえ、もう一人の友喜ちゃんが友喜ちゃんと分かれて存在する様に、キャルユも友喜ちゃんと分かれて存在しているって事なのかな。」

「…分かれている方が役割上都合が良くて…か。」

「うん。」


雨見と有津世は前方の林の木々を見やり、キャルユと友喜にと想いを巡らせた。








 涼やかな鈴の音がして、喫茶店の小さなドアが開く。

梨乃が本から顔を上げると、穂乃香の元彼の辰成が入って来る所だった。


辰成は奥を見て梨乃の存在に気付いて会釈をしたが、席に近づこうとはせずに手前のカウンター席へと座る。


今日は穂乃香さんと一緒じゃないのかな。

梨乃は思った。


そうして辰成の存在を気にしながらも、再び本に視線を落とした。








 ゆっくりと過ごそうと思ったから、穂乃香は居心地の良さそうなカフェを見つけて店内に入ってみた。


席がゆったりとした間隔で配置されているし、メニューも美味しそうなものが載っている。

レジ脇に案内で置いてあるメニュー表を見て、穂乃香はここでお昼を過ごす事に決めて注文レジへと並んだ。


注文を済ませて番号札と先に用意された飲み物をトレイに載せて、店内を見回して壁一面がガラスで覆われたテラス席近くの明るい席に座る。


トレイの上の透明な液体で満たされているグラスには炭酸の泡が踊りミントの葉とレモンの輪切りが複数沈んでいた。

穂乃香は嬉しそうに眺めてストローでひと口飲んだ。

美味しい。

口の中に清涼感が広がるのを感じて、穂乃香は、ほっと息をついた。







 林の奥の二棟の家。

雨見と有津世が手前の家の玄関前の段差に並んで腰掛けて話を続けていた。


「ねえ、有津世。」

「うん?」


「私ね、友喜ちゃんがキャルユと入れ替わったのを見てからずっと考えていたんだけど…。」

「…うん。」


「キャルユがね、実際にこちらの世界でも私達と言葉で持ってやり取りをしたいのなら、それを封じ込めるのは…なんか、違うのかなって…。ぽわぽわとは、こちらの世界では双方向のコミュニケーションは無理でしょう?友喜ちゃんに、実際に聞いて喋ってってお願いすれば出来なくも無いかも知れないけれど、あの様子だと、現状は無理だもんね…。」


友喜がぽわぽわの状況をリアルタイムで教えてくれようとして、ハンカチを外してから直ぐに眠り込んでしまった事を思い出して雨見は言う。


「うん。それは俺も思って、…友喜にも言った。」

「…何て?」

「…もしこの先に友喜が石を触ってしまってキャルユに入れ替わってしまったその時には…丁寧に接するから安心して、って。」

「…うん。それが、良いんじゃないかって、思う。」

決意を固めている風に真剣な面持ちで雨見も同意した。


「雨見…。」

気にしても良いだろうに、雨見は物分かりが良かった。

有津世は俯くも、


「それで、友喜ちゃんはどういう反応だった?」

雨見からの問い掛けに再度雨見の方に向き直る。


「友喜も同じ事を考えていたみたいでさ。意見も、同じだった。」


キャルユの気持ちに引きずられていた経緯があるからだろう。

きっと友喜には、キャルユの想いが痛い程分かっているのだろうと二人は思った。

今のアミュラと、…雨見とその想いは果たして似ているだろうか。


有津世は雨見の顔をじっと見つめた。








 茶色が基調の古めかしい印象の喫茶店。

ゆっくりと時が流れる中、梨乃は奥のソファのテーブル席で本に視線を落としたままで、辰成は入り口付近のカウンター席に掛けてコーヒーを飲んでいる。


辰成が席を立った。

奥の化粧室に行く様だ。


その間も、梨乃は本に集中しているのか脇を通る辰成には目を向けなかった。



化粧室から戻って来た辰成が梨乃の背中を見て気になり、ふと声を掛けてみる。


「こんにちは。」

高低差の無い声色で聞こえてきた挨拶に梨乃が本から顔を上げて辰成を見る。


「あ、こんにちは。」

梨乃が軽く微笑んで答えた。


「さっきさ、奈巣野さんとあっちで会ったよ。…待ってるの?」

「うん、そう。終わるまで、ここで待つって言ったの。」

「へえ。」

「今日は、穂乃香さんとは一緒じゃないんだ。」

梨乃から穂乃香の名前が出てきて辰成は一瞬顔が強張る。


「?」

「あ、いや、そう、あいつは今日は一緒じゃない。」

「…。」

梨乃が辰成の顔を覗き込む様に見る。


あまりにもじろじろと見られている気がして、辰成は自分の顔に何か付いているのか気になった。


「私ね、穂乃香さん、好きですよ。」

梨乃がいきなりかしこまった口調になって言った。


「会社で、ちょっとしつこい男の人が居るんです。私、自分一人で対処出来ると思って…。でもね、困っているのに気付いてくれたのが穂乃香さんなんです。とっても思いやり深くて、それでいて相手側の都合もきちんと考えてくれて、押しつけがましく無いんです。」


何の話が始まったのかと、辰成はぽかんとして梨乃を見た。


「あ、ちょっと座ります?」

梨乃が前方のソファを指して、辰成に着席を促す。

辰成は言われるままに目の前のソファに腰掛けた。


「それでね、私、穂乃香さんに助けて貰って…。もう何度も。だからね、穂乃香さんが男だったら、それか私が男だったら穂乃香さんに惚れちゃうなあ、って。…そしたら、私達、ライバルですね?」

「ライバル?そうかな…。」

何と無くはぐらかして返す辰成を梨乃は注意深く観察する。


「第一、野崎さんには奈巣野さんが居るんだし…。悪い冗談だな。」

無表情で、それでもつっけんどんでは無い丁寧な返しをしてくる。


「分からないですよ。今は男女間だけでは無いですよ。ライバルは。」

「…何の話?」

困惑して無表情から顔色がひょっこり伺える。


「魅力的なので。穂乃香さんが。」

「…。」

それだけで言いたい事は伝わってきた。



要するに、寄りを戻せって話だろう。

出来るのならば、そうしている。いや、今朝の今朝まで、そうしようと試みていた。

見事に、失敗で。

結果は目も当てられたもんじゃない。


梨乃を前にして気付かれない様に深くため息をつこうとする辰成が居る。


「今日も、ひょっとして穂乃香さんと一緒に来ようとしました?」

梨乃が鋭い言葉を発した。


「…ああ。誘う前に…喧嘩と言うか…仲違いを。」

「連絡は…。」

「いや、取ってない。」

「連絡されたら、嬉しいんじゃないかな。」

梨乃は穂乃香を想って言ってみた。



 副業のオフィスに辰成と一緒に行く事は、男友達と一緒に行動する事と同じだと言い訳していた。

それでも辰成の事を男友達だと思って接した事は一度も無いと、何とも矛盾した事を穂乃香は梨乃に言った。

それが、穂乃香の答えなんじゃないかと思って。


「きっと穂乃香さん、水内みずちさんの連絡、心待ちにしていますよ。」

「…。」

梨乃は真っ直ぐ辰成の目を見て言った。


「…ここに来る前に、彼女のマンションには寄ったんだ。でも居なくて…。」

「え?じゃあ何処で仲違いを?メールとかでですか?」

梨乃が疑問に思って尋ねてきた。


「いや…俺のマンション…。」

「…。」

もう答えは出ている気がした。



「あ~…、ありがとう。」

照れた風に微かに頬を緩ませて辰成は梨乃に礼を言うとソファの席を立った。


「あ、こちらこそ。話せて良かったです。」

柔らかな笑みと共に梨乃が返した。


「じゃあ。」

「はい。また。」

ほんの一瞬、辰成が笑みを見せる。


…。


辰成は自分の席に戻ると、急いで残りのコーヒーを飲み干し、入り口近くのレジで代金を支払うと鈴の音を鳴らして小さなドアから外に出て行った。



 店の外に出ると、スマートフォンを取り出す。

電話番号を着信履歴から表示させると、迷わず発信ボタンを押した。


呼び出し音の数回鳴った後に、画面が通話中の表示に変わった。


「…はい。」

「えっとさ、俺。今、何処に居る?」

「オレオレ詐欺は間に合ってま~す。」

電話を即座に切られそうになる。


「あ、待って!あのさ………、今までの事、謝りたいし、その…会いたいんだよ!」

通話終了ボタンを押そうとして耳から離した途端にスマートフォンからがなり声が聞こえてきた。


「ちょっと、声、大きい!」

穂乃香が店内を見回して再度スマートフォンを耳に寄せると恥ずかしそうに小声で文句を言った。


「今、カフェに居るんだから、止めてくれる?」

「ああ、だってさ、電話切られそうになったから。で、カフェに居るの?何処のカフェ?」

「え~、もう…。」


面倒くさそうに答えながらも、穂乃香の頬は血色が良くなっている。


電話を切ると、はあっと息を吐いてから俯き、穂乃香は口角をゆるりと上げた。








 バーガー店に着いた友喜と功は注文口の脇にあるメニュー表を二人で見つめる。


前で見ている友喜に功が後ろから覆い被さる様にしてメニューを覗き込んでいると友喜が振り向いて功に微笑んだ。


「…。」

功が一拍置いて微笑み返し、もう少し前に進み出て、友喜の後ろに沿う形で立つ。


友喜は功が更に近づいたのを感じて、頬がかっかと燃え上がりそうに感じた。

微笑んでいた顔が次に振り向いた時には頬を膨らまして仏頂面になり照れを隠している。


その表情の移り変わりに功は軽く笑って友喜に聞いた。


「んで?今日はどれにするんだ?」

「ん~、これ…。」

「…。そうか、じゃあ俺もそれ。」

「…。」

友喜が一瞬、目を見張る。


その表情は何かを言いたげで。

功は友喜の反応に、笑みが真剣な表情に戻り、友喜を一瞬見つめた。



 草原の中で会った彼女が、泣いていた訳を話さなかった。

消えていた時の事で泣いていたのだろうか。


何でも無いと彼女は言って、功にしがみついてきた。

まるで何処かに飛ばされるのを恐れるかの様に。

そんな風に感じた。


一片の欠片が、一片の欠片がもし彼女の何処かに嵌っているんだとしたら。

一片の欠片が、今の彼女の反応をさせたんだろうか。


他に、確かめる方法は…。








 天井の高い部屋。


デスクの席に掛けながら、ソウイチが交信をしている。

目の前には自分の作ったコンピュータのモニター画面があり、時折それに目をやりながら答えていた。


会話が途切れる毎にソウイチはキーボードを手早く打つ。

断続的にそれを繰り返した後で、チャンネルが切り替わった。


「…君か。今日も話せて嬉しいよ。」


ソウイチは耳を澄ます様に静まり返る。


「…いけないかい?こういう事は、言った方が良いと君から教えて貰ったんだ。」


ソウイチは一拍置く。


「…泣いているのかい?違う?…そうか。君の感情の変化でも感知出来るシステムだと良かったんだが…。」

ソウイチの表情が微かに動く。

デスクの脇の石を見つめて、石を素早く手に取った。


石を手に握りしめて、ソウイチは目を閉じる。





 嗚咽する声が聞こえる。

きっとそんなに悲しく無いのに。


今ここに持った感情が叫びたくて、彼女に嗚咽を続けさせていた。


「君は、君の働きを見事に届けてくれているよ。」

ソウイチは彼女に向かって言っていた。


確かにソウイチの声だったけれど、姿は何故か白色に淡い虹色の光をまとった龍の姿だった。

ソウイチは、龍の姿になっていた。

彼は彼女の前に降り立ち言葉を届ける。


「ちょっと前に、彼と会えたと喜んでいたじゃないか。彼も…大いに喜んだんじゃないか?」

ソウイチは彼の顔を思い出しながら尋ねた。


「彼は、…私が君とやり取りをしていると聞いた途端に目くじらを立てる程に君の事を愛している、私はそう感じたよ。」

ソウイチは、いや、目くじら程度じゃ無いな。彼は噴火しそうだったよ、と言い直す。


「それ程までに、それ程までも、君は愛されているんだ。」

ソウイチは龍の姿で、静かに彼女に訴えた。


「だから恐れる事は無いんじゃ無いか?君は、…君も、知っているはずじゃないか。」

泣き腫らした顔で自分を見上げてきた彼女に、ソウイチは柔らかく微笑んだ。







 一面がガラス張りの明るい印象のカフェの店内。

昼の今は何組かの客が席を埋めている。



本気かな。

あんながなり声、今まで聞いた覚えが無かった。

別れた時に見せた態度ですら、無表情で冷静さを崩しもしなかったのに。


届いたランチセットを席で摘まみ始めながら、穂乃香は今さっき来た辰成からの電話についてあれこれと考える。



 小洒落た街に着いて、辰成は小さな路面店が立ち並ぶ通りを歩いていた。

歩調は速く、通りの景色を確認しながら勢い良く進んで行く。


通りの終わりの様にも見えた一角に、視界に入って来たテラス席にカフェの看板が重なり見えて、穂乃香が言っていた店の名前と合致するのを確認する。

入り口を探して店内に入ると穂乃香が席に座っている姿が見えて、逸る気持ちを前に注文口に並んだ。


さっきの喫茶店で飲んだのはコーヒーで今ここで頼むのもコーヒーだ。とにかく購入して席に座る事を目的としていたから何も考えていなかった。

実は副業のオフィスでも飲んだのでコーヒー三昧だ。まあ、良いか。



席に辰成が近づいて来るのを見つけて穂乃香が、


「早っ。」

辰成に対して言葉が出た。


「…急いで来たんだよ。」

「ふうん?」

「…お前さ、勝手に借りた服の脱ぎ捨て方、雑過ぎるんだよ。」

トレイをテーブルに置いて席に着いた辰成が文句を言う。


「何?喧嘩しに来たわけ?」

「違うって。…ああ。そうじゃ無くて。」

辰成の言葉に途端に好戦的になる穂乃香に、はっと気付いて辰成が目線を泳がせてひと呼吸置いてからもう一度穂乃香の顔を見た。


「電話で、言っただろ?今までの事、謝りたいって。」

「…。」

真顔になった穂乃香に、辰成が言葉を続ける。


「今まで、悪かったよ。お前言い返すからさ、そんなに気にして無いと思って。そのやり取りがさ…、お前も楽しんでるんだって勘違いしてた。」

「…。」


「馬鹿になんかしてねえし、上から、ってつもりもねえよ。ただそう見えてたんなら謝るよ。何か言うと何か返してくれる最近のお前の反応がさ、…穂乃香の反応が、…楽しみだったんだよ。…構ってくれてるって感じて。それも、俺の勘違い。」

「…私、嫌だ、って言った。」


「分かったよ。なるべく…そういうの、言わない。穂乃香の自尊心を傷つけるつもりなんかこれっぽっちも無かったんだよ。大いに反省してます…。」


前の一緒だった職場でも見た事の無い肩身の狭そうな仕草と発言に、穂乃香は気持ちがほだされていく。一瞬、目を潤ませながらも平静を装った。

鞄の中に手を伸ばすと、穂乃香は透明の袋をテーブルに出した。


「これ…返し忘れちゃったから、今日の内に返しに行こうと思ってたんだけど…。」

辰成のマンションの鍵と、背面に彼が走り書きをしたメモの紙が入っているのが見える。


「…お前のだよ。今朝言っただろ…。」

懇願する様に辰成が言う。


「………どうしようかな。…このメモ、本当に私宛て?」

眉根を寄せて詰問する穂乃香に、


「お前以外に誰が居るんだよ。」

低姿勢を心がけて発言をしていた辰成が、はあ?という顔をしてから怒り出した。


「てかさ、お前、見舞いに来ておいて、見舞いらしい事何ひとつしてねえじゃねえか!あれか?人の服勝手に着といて洗濯物増やしました、が、お前の見舞いか?」

「何言ってるの?意味分からない!服は借りるよ、って言ったし、添い寝だって…!」

穂乃香は言い掛けて、周りを気にして声がすぼまる。


二人共、軽く運動をしたくらいに頬が染まっている。


「…お前さ、公衆の面前で恥ずかしくねえの?」

「そっちこそ!」

体勢を低くして声のトーンを抑えてごにょごにょと二人は話す。


「ああ、もう黙ってて!ランチの続き、食べるから!」

大きく息をつくと、穂乃香は辰成を一瞬睨みつけてから視線を移してランチのパンに手を伸ばした。

その延長線上に穂乃香が置いた透明の袋が穂乃香の目に入った。


「…。」

辰成がその袋に手を伸ばすのを見て穂乃香は微かに焦り顔になり、辰成の挙動に目を見張った。


辰成はおもむろにメモを取り出すと、自分のショルダーバッグからペンをひとつ出して字を書き加えていく。メモを再度透明の袋に収めると、穂乃香に見える様に置いた。



『穂乃香へ

 愛しているよ。

      辰成』



上の端と下の端にそれぞれ穂乃香と辰成の名前が書き足されていた。

穂乃香は目に涙が溜まるのを感じて、目をしぱしぱと動かして誤魔化した。


穂乃香の反応を目にした辰成は微かに頬を緩めた。








 からから、音が聞こえる。

からから、からから。

重なり合って、離れて。

触れ合う毎に、音が鳴って、火花が散る。


あれは何?これは何?

引っ張り出して、確かめる。

見ると糸が付いていて。


なんだ、元は全部繋がっている。

これも、それも、全部、元は一緒?


そうみたい。

何だ、じゃあ問題無いや。


どれが本物なのか、どれが正解なのか、今まで吟味してた。

どれでも正解。

どれを選んでも良いんだ。


じゃあ、私はやっぱりこれを選ぶかな。


それが今の私だから。

それがここで体験するための私だから。



だからね、大好き、を選ぶと良いんだよ…。








 石碑の傍の草原。


黄緑色のウェーブがかった長い髪が風を受け、その毛先がたなびいている。

キャルユは草原をゆるりと歩き、時々立ち止まっては石碑の方を眺めた。


石碑の前には誰も居ない。


草原には軽やかな風が吹いていた。


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