離れていても
きっとね、いつもの事だ、って、軽くあしらわれて終わり。
遠くに向けた澄んだ瞳がそう言うのなら、私はそれ以上は何も言えないから。
私にとっては大切な事でも、彼にとってはそうでも無い。
彼にとっては大切な事でも、私にとってはそうでも無い。
突き詰めていくと、何で一緒に居たのかが分からなくなる。
大切って、大切って…何だろう。
きっと口の利き方の乱暴な中には何も無いんだし。
そこには大切なものなんて何も含まれていないんだから、きっと…。
穂乃香は辰成と解散してから気が変わって街に買い物に出ていた。
この街は歩くだけでも充分に楽しい。
小さな路面店がそこここに展開する通りの両側を眺めながら行くとその内のひとつの建物の前に立ち止まった。
そうだ、服と、それにアクセサリーも見ようかな。
穂乃香は店のウィンドウディスプレイを眺めると、自動ドアの入り口から中へ入って行った。
茶色が基調のこじんまりとした喫茶店。
奥のテーブル席では功の機転が効いて友喜が特段変調も起きずに無事にパフェを食べ終わる事が出来、功や有津世を始め周りの全員がほっと密かに胸を撫で下ろしていた。
食べ終わってひと息ついた所で梨乃が皆に向けて口を開く。
「皆で会えて楽しかったね。」
「うん。有意義な時間が過ごせて嬉しかったよ。」
則陽も満足そうに頷く。
有津世や雨見もそれに続き今日ここで集まり話が出来た事に充実感をもって感想を口々にしたが、功はそれよりも友喜の事が気になってしょうが無かったし友喜は自身の意識が混濁していた時間が多過ぎて納得いかなかった。
「え~、もう終わり…。」
不満を表す友喜に、
「友喜ちゃん、また集まれば良いよ。忙しいかもだけど、こうして予定を調整してさ。」
慰める様に則陽が言って、有津世も頷いた。
「そうだよ、友喜。こうして皆で会えた事自体がさ、すごい事だと思うし…。」
何より皆が一連の不思議な出来事を共有出来たのがとても貴重だしある意味奇跡だと思って有津世は言った。
雨見も有津世に微笑んでから言葉を添える。
「クリスタルの中で会うのは偶然のチャンスを狙うしか無いけれど、実際に会うのはこの先も不可能では無いもんね。」
だから大丈夫だよ、と伝えた。
「うん…だけど、さあ…。」
友喜はしょぼんとして皆と別れるのが寂しそうだ。
功がテーブル下の友喜の手を優しく握り返した。
パフェを食べる直前から今の今まで功は友喜の手を離そうとはしなかった。
「…。」
「大丈夫だよ、また会えるからさ。」
「…うん。」
功が優しく投げかけるひと言で友喜の不平不満は収まった。
「…。」
有津世が文句ありげに横目で二人の様子を見る。と雨見に横から肘で小突かれた。
「応援するんじゃなかったの?」
雨見に睨まれる。
「応援してるよ。してるけどさ、…。」
ぶつぶつと有津世が文句を言っている。
ここに来て友喜が自分よりも功の発言に比重を置いているのが有津世には面白くないみたいだった。
帰り道の電車の車内は混んでいて、つり革につかまったり金属の手すりにつかまったりと各自がドア近くに立ちながらの乗車だった。
梨乃と則陽とは途中までが一緒で、二人は有津世達よりも数駅手前で降りるとホームから電車に向かって皆に手を振ってくれた。また会おうね、と言いながら。
友喜が想像していたのと違わない梨乃と則陽の仲睦まじさにハンカチの奥の口元から友喜の笑みがこぼれた。
ハンカチを持っているから平気だろうけれどそれでも友喜の動向をちょくちょく気にしていた功は友喜の表情の変化に気付き自らの表情もふと柔らかくなった。
四人になった有津世達は残りの乗車時間を特に言葉を発する事も無く過ごす。電車はいくつかの駅を辿って功達の家の最寄り駅に停車した。
改札口を出て駅構内で四人は一旦足を止める。
行きもここで待ち合わせたし、帰りもここで解散だ。
四人が互いを見る形で向き合ってその流れの折に功が友喜に話しかけた。
「あのさ…、」
ごそごそと鞄から何かを取り出す。
出てきたのは透明な袋に入れた何枚かのハンカチだった。
「ずっと同じのを使う訳にはいかないと思って。それは、回収するよ。」
新しいハンカチと引き換えに、今使っているハンカチを持って帰ると功は言った。
有津世は目が点になっている。
友喜の持つハンカチが功の物だとようやく理解した様だ。
「…。」
雨見の赤面を指摘していた自分まで、ほんのり赤面を露呈させてしまう。
「…。」
「あ、でもその前に…。」
有津世と雨見が二人のやり取りを頬をほんのり染めて半分呆けて見ている中で、功は真剣な顔で淡々と話を進めていった。
「ちょっと考えてみたんだけど、もし俺の考えが合ってるんなら…と思って、」
ごめんな、もうちょっとだけ、と有津世と雨見に功は言葉を添えると自分の胸ポケットから長方形の包みを出した。
「これさ、飴なんだけど。友喜ちゃんこの味食べられるか?」
友喜が不思議そうに功を眺めながら頷く。
「今日会ってからの時間…つまり日中の半分くらいは俺のオーラの範囲内にあったから、これが効くなら匂いっつっても物理的な匂いじゃない事が確定する。…試してみて。」
「オーラ…。」
うん、と功が頷く。
「今食べてみても良い?」
「うん?ああ、じゃあ開けるよ。」
友喜が長方形の飴の包みを覗き込み、功は目の前でぴりぴりと開け口のテープ部分をめくり出す。
「はい。」
ひとつ取り出して友喜に渡すと、友喜はハンカチを浮かせて飴を口の中に含んだ。
ミント味が口の中に広がっていく。
あ。
「…。」
友喜は目を丸くしてハンカチを外してみた。
「大丈夫、かも…!」
「そうか、良かった。」
功が嬉しそうに友喜に微笑む。
「じゃあ、あとハンカチ。はい。」
友喜の持っていたものを功が受け取り、透明な袋に入れた分を友喜に手渡した。
これで渡せるものは渡したなと功は確認して、
「飴も、常時舐められる訳では無いし、ハンカチも、場合によっちゃあ使えない時もあるから万全じゃ無いけど…。また少し、考えてみるわ。」
功は友喜に言うと、雨見と有津世の方にも顔を向けて、
「お待たせ。それじゃあ今日はありがとう。また今日みたいのが出来ると良いな。」
有津世も雨見も、友喜も頷いた。
「それと有津世くん、」
「はい。」
「いつもありがとう。」
必要な事を必要な時に功に知らせてくれるのは有津世だ。功は感謝を込めて有津世に礼を言った。
「いや、こちらこそ…あの、友喜を、これからもよろしくお願いします。」
有津世の言葉に友喜が頬を赤らめて口を尖らせる。
…何も今ここで言わなくたって良いのに…。
「勿論…て答えたら、高飛車が過ぎるか。」
功が友喜に顔を向けて半分照れた様に笑った。
「あ、そうだ、それと…。」
功が有津世と雨見を交互に見て言う。
「有津世くんと雨見ちゃんの石もさ、…対だったよ。言いそびれてたけど。」
有津世が雨見と目を見合わせ、二人の頬はまたほんのり上気した。
「じゃな。気を付けて帰ってな。」
片手を上げて挨拶をしながら功はひと足先に駅の構内から去って行く。
有津世達より一歩前を出て友喜は名残惜しそうに功の姿を見送っていた。
駅構内から出て、まだ日が暮れる前のやっと涼しくなった商店街の通りを家に向かって功は歩いていた。
「あ、功くん!功くーん!」
お洒落な路面店街と商店街の境目付近の道の途中で、自分の名前を呼ぶ声がする。
振り返るとテイクアウト専門のクレープ店の外の備え付けのベンチで穂乃香がクレープを片手に功に手を振っていた。
「立木さん。」
呼ばれたので近くに寄って行くと、隣に座って、と穂乃香に言われた。
「あ、いや、クレープ買ってねえし…他の人が座るスペース無くなるだろ?」
「そっか。」
ちぇっ、とでも言いたげな表情を一瞬すると、目の前に立っている功の姿に息をつく。
「ねえ、じゃあクレープ買ったら?」
穂乃香がダメ押しをする。
「いや、遠慮しとく。さっき喫茶店でパフェを結構貰ったんだわ。」
「貰った?分けて貰ったの?」
「ああ、貰った。」
「…誰から?」
何と無く聞いて欲しそうな雰囲気を察して穂乃香は聞いてみた。
「…彼女から。」
「あ。」
穂乃香はクレープを片手に難しそうな顔で何度か頷く。
「…自慢したかったんだ。」
「端的に言えばそう。…俺、ちっせえかな。」
「や、別に?あの場に来ていたどっちがその彼女か知らないけれど、…どっちにしたって可愛かったし、自慢したくなるのも分からなくは無いよ。」
穂乃香はそう言って、はあっ、と大きな息を吐いた。
「立木さんは?あの後もデート続行だったんじゃねえのか?」
「デート?どこが?デートなんてした覚えが無いわ。」
穂乃香の受け答えに功が眉を寄せる。
「ん?喧嘩中か?」
「喧嘩なんてしょっちゅうよ。…てか、付き合って無いし。」
「付き合って無いのか、…恋人同士かと思ったよ。」
「前はね!前。ずうっと前!」
穂乃香が憤慨しながら言うのをよそに、ふうん、そうなのか、と、功は冷静に答え、そう言えば則陽がそんな事を言ってたっけか、と思い返しながら先程見た辰成の姿を思い浮かべる。
…彼はそうは見えなかったけどな。
余計なお世話か、と思い、それ以上は言及しない事にする。
食べ終わるまで功は穂乃香の目の前で何と無く見守り、クレープの包み紙だけになると穂乃香は立ち上がりベンチの脇にあるごみ箱に包み紙を入れて、さてと、行こうかな、と言った。
「じゃ。」
「うん、ありがと。」
穂乃香は付き合ってくれた時間のお礼を言って、駅の方向へと向かって行く。
功は穂乃香の後ろ姿を見送ると、再び家の方向へと歩き出した。
真っ暗な星空の下で、美しい男女二人がその中に浮かんだ小さなまあるい球体に座り、ぴったりと寄り添い合っている。
彼は彼女の耳元に口をやり、彼女だけに聞こえる声音で答える。
「まあ、そうなの?」
彼女は微かに首を傾げる。
「それは…楽しいのかしら。」
「楽しいんじゃないかな。だってさ…。」
「出会えるのは嬉しいわ。だけど…。」
彼女は一抹の不安の眼差しを彼に送る。
「大丈夫だよ。いずれは思い出すのだから。」
彼は優しく微笑んで、重なり合っている彼女の手指を自分の手指に絡めた。
夏の陽気で周辺の木々の緑が更に生い茂り、風が吹こうとも上空からの視認がますます出来ない山奥の神社。
開放された縁側からふわりと涼風が建物の中に入ってくる。
ノリコが写本を進めていると、いつか見たのと同じ男女の、今回は別の場面がイメージで流れ込んできた。
星空の空間でぽっかりと浮かぶ小さな丸い星…。その上に座り色とりどりの糸を編み込み次々に完成させると糸は光の玉となって何処かへ飛んで行く…。
ノリコは筆記具を持ったまま肘をつく。
…思い出すっていうのは、胸の奥が温かくなる現象の事なのかな、もしかすると…。そしたら…。
肘をついた手と筆記具を眺めながら、ノリコは今見た光景に想いを馳せた。
住宅街の一角。
吉葉家では、なつが風呂から上がるのを待ってダイニングテーブルで妖精の本2冊を広げつつ友喜から貰った石を眺める功が居た。
そこに風呂から上がったなつがパジャマ姿に肩に載せたタオルで髪の毛を拭きつつやって来た。
「お兄ちゃん、お待たせ~。ん?また広げてるの?」
「いや、だってさ、綺麗だろ?」
「確かに。」
なつは頷いて微笑む。
「そうだ、今日の集まりの中でさ…。」
功がなつに石の話を聞かせた。
「へえ?あ、じゃあ友喜があたしにくれた石もそれ出来るかもなの?」
「出来るだろうな。」
自分がそれをするとしたら、何が良いかなあ…。色々あるけれど…。
功の手のひらに載せた石をなつも一緒になって眺める。
初めて見せてもらった時よりも功の石はきらきらと光りをより多く放っている様に見えた。
「お兄ちゃんの石…。想いを伝えたから、…なのかな。」
「うん、そうみたいだよ。それをする前後で明らかに変わっていたから。則陽達の石も。」
綺麗な石を眺める功の姿が目の前にある。
その瞳は随分ときらきらと澄んでいて。
石にも負けないくらいに透明感がその瞳に溢れていた。
兄を見て、なつは自然に頬が緩んだ。
功はなつの視線を感じ、最初になつが言った言葉を思い出す。
「ん?あ、風呂か。入ろっと。」
「いってらっしゃい。」
功は席を立ちバスルームに向かった。
都内アパート。
夕飯を終えてベッドの端に座ってリラックスしている梨乃が、友喜から貰った石を手に取り眺めている。
…不思議だった。
有津世の言葉に耳を傾け、自分にも出来るかも知れないと聞いて試してみた、想いを伝えるという石への言葉がけ。
始めた途端に、ふわっと心なしか自分が軽くなった気がしたのだ。
気持ちが、飛んだとか?
洗い物を済ませて梨乃の隣に座ろうとする則陽に、ねえ、則ちゃんの貰ったのも見せて、と梨乃が言った。
「石?はい。」
直ぐ近くにあるデスクトップコンピュータの机の脇に置いてあった鞄から自分が貰った石を取り出し、梨乃の手のひらに預けて則陽も一緒に眺める。
「ありがとう。則ちゃんの石も、綺麗…。」
梨乃が礼を言い則陽が頷く。
「対だって言ってたね、この二つ。」
「うん。」
「功は流石だな…。でも選んだのは友喜ちゃんだから、友喜ちゃんがすごいのか…。」
二つの石を見比べながら則陽が呟いた言葉に梨乃が反応する。
「友喜ちゃん、大変そうだったね…。」
「うん。功が何とか対処していたけど、現状あれだと日常生活も危ぶまれるよね…。」
折角会えた友喜の状態が芳しくなかった事を二人は憂う。
「家ではどうして居るんだろう。」
「ずっとハンカチ持ってるのかな。」
でもそれだと家族に変に思われない?と梨乃が言う。
「自分の親には話して無いのかな。」
「どうだろう、言って無いのかも。」
「なら…出来るだけ自分の部屋に籠ってるとかかな。」
「そうかも。」
梨乃と則陽は言いながら顔を見合わせた。
林の奥の二棟の家。
夜の帳が下りて、手前の漆黒さながらの黒い外壁の家の二つの丸い天窓からは今夜も淡い光が漏れていた。
風呂にも入り終わって友喜は早々に自分の部屋のベッド代わりのロフトに上がり込んだ。
功から貰った長方形の飴の包みとハンカチを一枚、ロフトの上に持ち込み、友喜は寝っ転がりながらそれらを眺めた。
オーラ…。
友喜は目の前のハンカチを掴んで鼻に近づける。
…この香りは、オーラの香り…て事?
友喜は急にはっきりとする友喜自身のみの意識で思う。
ハンカチを当てたままで寝返りを打ち、うつ伏せになり添えていた手を外した。
良い香り…。
友喜はウトウトとし始め、自分の顔の下敷きになったハンカチから漂う功の香りに包まれながら幸せな気持ちで寝入った。
住宅街の一角。
風呂から上がった功が、広げっぱなしの2冊の本があるダイニングテーブルの前まで戻ってきて席にかけた。
ゲームのはコントローラーを弄るんだと則陽から聞いたが、本に関しては何をどうすると飛ぶとかの確定的要素が今の所、本を開く、くらいしか無いのと、開いたからと言って必ず飛ぶ訳では無いので、タイミングが見計らえていないのが現状だ。
…飛ぶ時は、本を閉じていた状態でも勝手に本が開いて飛ぶんだな…。
功は昼間の喫茶店での一幕を思い出し、もう一度本を眺めた。
ここはただっぴろい草原だ。
石の遺物のある草原。遠くには森への入り口らしき風景もある。
今日2度目となるこの地への訪問に、功はきょろきょろと辺りを見回した。
昼間には彼女と遭遇したのにとがっかりしかけた次の瞬間、後ろからぎゅっと抱きしめられていた。
それがあまりにも自然だったので、びっくりするどころか、胸の奥が温まり安心感まで得ている自分がいる。
功の前へと回された腕には風にそよぐふわふわな薄いピンク色の袖が見えた。
「友喜ちゃん…。」
振り返る前に既に分かっていたけれど見るとそれは昼間に飛んだ時にも出会ったもう一人の友喜だった。
功はもう一人の友喜の姿に自然と頬が緩み、友喜も随分と嬉しそうで頬が上気している。
「ねえ、また会えたの、すごくない?」
はしゃいで飛び上がりそうな勢いで言う、もう一人の友喜は、いつもの大人っぽい口調からは遠ざかっており、まるで友喜自身そのものだった。
「…すごい、と思う。」
功は赤面した顔で友喜の腕を優しく解きながら、目の前の友喜を見つめた。
「小さくないな。何でだ?てか何でさっきははじめ小さかったんだ?」
「ここでは自由自在なの。だから好きな姿で居られる。普段は、身軽だから気に入ってて…それで小学生辺りの大きさなの。」
それを聞いた功は胸の内で安堵の息をついた。
「そう…。」
功はもう一人の友喜に、友喜自身が今二つの意識の狭間にある事実を話した。
昼間はそこまで話をしなかったし、もう一人の友喜にその事を知らせようとも思わなかったのに、今こうして話してしまっている。
二人は草原に腰を下ろしており、友喜は膝を抱えて功は軽く胡坐をかいた姿勢になっていた。
「それってさ、状況が進んだ、って事なのかな。」
「…そうとも言えるかも知れないけれど…でもそれは想定外だわ。言ってしまえば想定外だらけの事ばかりではあるのよね…。」
「?」
功が不思議そうに友喜の顔を見る。
「例えばあなたがここに来れている、これも想定外だわ。私は外界でしかあなたと会えないと思っていたから…。それと…。」
「それと、?」
「キャルユが思ったよりも行動範囲が広いって事。…私が作ったのに、彼女は意外と自由だわ。」
「作った…。じゃあキャルユってのは虚像か?」
「いいえ、れっきとした命よ。」
「命…?作れるのか?」
「作れる…いいえ、真似ただけよ。他の星々の…。」
「…。」
星が…命?
「知らなかった?私達も、星なのよ。」
友喜の発言に功が小首を傾げた。
天井の高い部屋。
ソウイチは自分のデスクの席の以外には何も無い部屋でデスクから背を向けて一人佇んでいた。
デスク上のコンピュータのモニター画面には分割されたカメラからのライブ中継が映っている。
ソウイチはモニター画面には目もくれずに手にした透明の石を見つめていた。
ふと気が付くと暗闇の中に、顔よりも大きい光の玉がそこここに浮かんでおり、様々な色を明滅させている空間の中に居た。
「…。」
見回しても派手な明滅を繰り返す数え切れない大きな光の玉が浮遊しているだけで自分の他には誰も見当たらない。
ふかふかとした心地良い感触と爽やかな香りを発する地べたに座り、光の乱舞を見守りながら、ソウイチは一人静かに嘆息した。
文の言い回しの修正を複数箇所で行いました。(2026年1月22日)




