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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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予定表

挿絵(By みてみん)










 石碑の前で、ツァームがアミュラを包み込み、額の石をアミュラに触れさせる。


緑に囲まれた美しい星。


ツァームはアミュラに自分が見えている現象を伝えようと、感覚を繋げようと試みている。


石碑の前に座り込み、アミュラを自分の胸に寄りかからせる様に腕で取り囲み、アミュラの片方の手のひらを自分の額の石に触れさせていた。



目を閉じていたアミュラが、ぱっと目を開く。


「今、一瞬、こことは別の星が見えた気がする。」

「やったよ、アミュラ。それはきっと、キャルユの行った星だよ。」

「…キャルユの…。」

アミュラはツァームと目を合わせて呟くと、


「別の僕達が居る場所でもある。…だからキャルユの言った通り、僕達は今も一緒なんだよ。」

アミュラはツァームの言葉に目をきらきらとさせる。


「今も、一緒…。」

「うん。キャルユは向こうでも元気なんだ。」

「…どうして分かるの?」

「それはね…、」

ツァームは微笑みながら、アミュラに説明をした。








 天井の高い部屋。

後ろの壁は、一見大きな窓が張り巡らされているかの様な印象を受ける、窓枠のデザインで大きな照明がはめ込まれている。


ソウイチは自分のデスクに座りながらコンピュータのモニター画面を見て、何かを待っているかの様に見える。


…居ない?

ソウイチはデスク脇に置いてある透明の小さな石をちらりと見ると、感覚を研ぎ澄ませた。





 一瞬大きく風が吹いて、ソウイチがただっぴろい草原に降り立った。


辺りを見回し、何かを見つけると、ゆっくり歩いて行く。


そこは石碑の前だった。



…やはり誰も居ないな。


更に見回すと、人の気配をふと感じ、見ると誰かが地べたに屈んでいるのが見えた。


ソウイチはゆっくりその場に近づいて行く。




 …お願いだ、目を覚ましてくれ…。

今も静かに眠っている友喜を目の前に、功が打ちひしがれていた。


何で、彼女は目を覚まさないんだ…。


「大丈夫。夜だからですよ。」

後ろから声がかかる。


功がびっくりして後ろを振り返ると、そこには自分と変わらぬくらいの長身で、細身で肩より少し長い髪の毛を横にゆるりとひとつにまとめた若い男が立っていた。


「夜だから…?」

「ええ。夜だから、今は目が覚めないのです。おそらく…彼女は毎晩の様にここに来ている。調整の為でしょう。心配はありませんよ。」

功が男の言葉を聞いて、友喜を眺める。


「調整?」

「ええ。調整です。起きている際にエネルギーを消費する分、就寝時にはこうして調整するんです。誰もがこういった場は持ち合わせていますが…。」

功が視線を泳がせて、もう一度男の顔を見る。


「あんたは?」

「ああ、申し遅れました。私はあなたの通っている副業のオフィスの管理をしている者で、ソウイチと言います。」

功は一瞬目を見開いた。

則陽から何度か話を聞いた事がある。

あの不思議なコンピュータを作った本人だ。

あの不思議なマニュアル本も…。

そして今現に、こうして不可思議な空間に一緒に入り込んでいる。


「…どうしてあんたはここに来れたんだ?」

功がいぶかしんで聞く。


「石を使いました。」

「…石?」

「ええ、私は石の神獣の使い手です。神獣にお願いして、何か異常を察知した時にはこうして連れて来てもらうのです。」

「…神獣…。」

功がソウイチの言葉を反芻する。


「…今異常って言ったか?」

「ええ。声がしなかったもので。」

「声?」

功が友喜をもう一度見る。


「友喜ちゃんの声って事か?」

「流石、鋭いですね。えっと確かあなたは吉葉さん…、」

「…!俺の名前を覚えているのか?」

ソウイチは、はい、と言って話を続ける。


「正確には、彼女の術で生み出された、使命のみを忠実に執り行うもう一人の彼女と、私はやり取りを行っています。」

「…。」

ソウイチの言葉を聞いて、功のソウイチに対する視線が途端にとげとげしくなる。


「とは言っても、本当に必要な作業と、その背景についての話です。…あなたが思う様な事じゃ無いので安心して下さい。」

功を見てソウイチは言葉を添えた。


「それで、その彼女と交信をしようとした所、声が聞こえなくて、今回こちらには初めて来てみました。」

「それまでは来た事が無かったのか?」

「ええ、私の術は、あくまでも異常を感知してからで無いと顕現しない様になっていますので…。」

功はまた友喜の姿を見る。


「…異常ってのは、彼女が眠りに落ちている事では無いのか。」

「違います。彼女は今安全な状態です。安心して下さい。」

ようやく功がほっと胸を撫で下ろした。


「…声が聞こえないのは、異常なのか?」

「そうであるから、私はここに飛びました。でもそれも必要な段階なのかも知れない。」

ソウイチは草原の向こうに視線を移す。


「もうすぐ…彼女の役目は完了を迎えます。そしたら声は聞こえなくなる。それが常になるとそれは異常では無くなります。」

功が静かにソウイチの言葉を聞く。


「だから今は、その前段階でしょう。私の術が顕現したという事は、そういう事だと思います。」

ソウイチが瞳の奥に微かな哀愁を浮かべた。


「…つまりそれは、彼女の…もう一人の友喜ちゃんの事なんだろ?」

「はい。役目を負うがためだけに生み出された、彼女の霊性の知識の塊です。」

「霊性の知識の塊?」

ソウイチが頷く。


「彼女は私と同じで、遥か昔の、今の人達が知らぬ歴史を受け継ぎ知っています。そしてそれを駆使して、今に仕えている。」

功はソウイチの言葉に呆気に取られて、なんとか理解を呑み込もうとした。


「えっと、そうなのか…うん。………で、何であんた…ソウイチさんはそんなに詳しく知ってるんだ?」

「それは、私が彼女と同じ霊統を継ぐ者だからです。」

「霊統?」

聞き慣れない言葉に功が眉をひそめる。


「ええ、血統では無く、霊統です。その辺については、追々分かるでしょう。…あなたもおそらく、そうみたいですけれど…。」


俺が…?

功はますます眉をひそめた。


「なあ、もうちょっと詳しく…」

功が知りたがってソウイチに説明をせがんだのと同時に、二人の体の周りには白い光の細かな粒子が次々と現れ始めた。


「ああ、時間切れみたいです。あなたともお話してみたかったので、丁度良い機会でした。またいずれお会い出来ると思いますので。いつも作業のご協力に感謝しています。」

ソウイチは光の粒子に包まれながら功に丁寧に一礼した。

功もつられて礼をすると、直ぐ傍で今も眠り続けて居る友喜の姿を愛おしそうに眺めた。


本当に、大丈夫なんだろうな…。大丈夫…だよな…。

名残惜しむ視線を送り、ソウイチに続いて功の姿も草原から霧散した。




 ふと気が付くと、自分の家のダイニングテーブルの席に座ったままの状態だった。

功は俯いていた顔を上げて周辺の変哲の無さを見て我に返る。


テーブルの上の2冊の本に目をやると、買った妖精の本は細かな白い光の粒子を放っていたし、図書館で借りた本からは時折金色の光の粒子が噴水の様に噴射している。2冊とも変わらぬ様相だ。


「…。」

功はしばらくその現象を眺め、静かに息を吐くと両方の本を閉じた。








 林の奥の二棟の家。


それはとても爽やかに感じる朝で。

頭上の丸い天窓から見える青空で、今朝も晴れだとひと目で分かった。


友喜は大きく伸びをして起き上がると、同じく大きなあくびをする。

ロフトから梯子を伝って下りると、自分の机の上の石を見て頬を緩めた。





 着替えを済ませて1階に下りる。

父と母がダイニングで談笑をしながら朝食の用意をしていた。

有津世も寝坊せずに起きていてリビングのソファに座っており友喜に気が付き振り返った。


「友喜おはよ。」

「おはよう。」

父母と有津世から声をかけられ挨拶を返す。


「あれ、友喜。今日も何か予定あるの?」

可愛いワンピースドレスを身にまとい、有津世の座るソファに同じく座った友喜に有津世が話し掛ける。


「だって土曜日だもん。」

有津世がそれを聞いて首を振る。


「ううん、友喜。今日はもう日曜日だよ。」

「え?」

冗談と思い、ソファ前のテレビ棚に置いてある、デジタルで表示されるカレンダーを目にする。


…本当だ。日曜日だ。

って事は、…あれ?


考え込む友喜を見て、有津世が言う。


「友喜さ、やっぱり昨日の事、まるっきり覚えて無いんだ。昨日友喜に石の事を聞いたら、友喜、何にも知らなくってさ…。」

有津世が両親の様子をたまに見ながら、友喜だけに聞こえる声で話す。


「…。」

友喜はショックを受けているみたいで、動きが固まっていた。


「友喜、大丈夫?」

「…ああ、うん。大丈夫。」

ご飯の用意出来たわよ、との母の声に、二人は、はあい、と答え、それぞれダイニングテーブルの自分の席に着く。


「あら、友喜。今日も予定あるの?」

出掛ける装いの友喜を見て聞いてきた母に、うん、ちょっと公園と…図書館、に行こうと思って、と友喜は誤魔化し、いただきますと言って朝食を食べ始める。


有津世は朝食を食べながら友喜の様子を時折気遣わし気に見た。





 朝食時間が終わり、友喜は一旦2階の自分の部屋に戻る。 


…あんなに楽しみにしていた土曜日が、功と会えるはずの土曜日が、いつの間にか過ぎ去っていた。

友喜は予定を書き込んである机の上の卓上カレンダーを手に取りじっと眺める。



次に会うのはまた今度の土曜日で、しかもその日は功だけでは無く有津世や雨見、梨乃や則陽、皆で会う日だ。


カレンダーを置き直すと、部屋の隅に設置されている鞄や帽子の収納用の枝付きポールの傍に行き、引っ掛けてあるお出かけ用鞄の中に功から貰った本が入っているのを確認して鞄ごと手にすると机の上に持ち運び、自分用の石と、功となつの分の石も鞄のポケットの奥に入れた。




程無く部屋を出て、階段を下りて玄関に向かう。

家族に行ってきますと告げて玄関の外に出ると、友喜は一人とぼとぼと林の道を歩き始めた。





 …会う約束もしていないのに日曜日まで家に押し掛けるのは、しかも突然は流石に迷惑だろう。

そう考えて、友喜は一人で小学校脇の公園に来てみた。


この暑さのせいか、公園には誰も居なくて、友喜は木陰になっている中央奥のベンチに座ろうとしてからベンチを見つめ、考え直すと隅の植え込みのレンガブロックの場所まで行った。

誰も居ないのに一人でベンチにぽつんと座っている様子が入り口から丸見えになるのが嫌で、木の枝葉で自分の姿を隠してくれるこちらの場所の方が落ち着けるだろうと思ったからだ。



…もう一人の私は、昨日、功お兄ちゃんと授業はしたのかな…。

どういう風に過ごしたのだろう。

お昼まで一緒だったのかな。それとも夕方まで…。


覚えていないのだから、考えても仕方の無い事だけど、この身は功とはきっと会えた訳だ。

友喜は何と無く自分の腕を掴んで視線を漂わせる。


石、出来れば渡したかったな。

なっちんだったら喜んでくれただろうし、功お兄ちゃんも、多分きっと…。


レンガブロックに軽く腰掛けながら、友喜はサンダルの足で地面の砂を弄る。




…いつまでこの場所に居ようかな。


友喜は一人ぼんやりとして過ごす。


木陰に隠れるこの場所は、一見公園には誰も人が居ない印象を与えるだろう。

それなのに、確実にこちらの方向に向かって誰かの足音が徐々に近づいてきて、その音は友喜の目の前で立ち止まった。





 「友喜ちゃん。」

俯いていた顔を上げると功が居た。


「…。」

友喜が驚いて固まっていると、功が口を開く。


「有津世くんから聞いてさ、ここじゃないかって。」

友喜が思わず泣きそうな顔になるのを見て功が微笑んで、友喜の隣に座った。


「友喜ちゃん、昨日の事、覚えてる?」

友喜が無言で首を振る。功は答えの分かっている質問をして友喜からの確認が取れると、昨日の出来事の説明を始めた。


「じゃあ…答え合わせな。…昨日はさ、いつも通り、午前中は途中まで、友喜ちゃんは俺の妹のなつとお喋りして、昼前にさ、俺とここに授業に来たよ。…その実、授業、何にもしなかったけどな。それとバーガー店に寄って、帰って家で昼ご飯食べて終わり。そんな一日だったよ。」

友喜が遠くの地面を眺める。


「…授業、何にもしなかったの?」

「うん、そうだな…。入れ替わった友喜ちゃんと、ただ久し振りだって言う雑談しかしなかった。」

「…多分その私は、喜んでいたよね。」

「うん、そうだな…。確かに喜んでくれていたよ。」

功が友喜に正直に頷く。


「私が私と、功お兄ちゃんとの時間の取り合いだなんて、おかしいし、きっとそんな風じゃ無いんだろうけれど…。」

功が友喜の言葉を聞く。


「それでも一日全てが無いなんて、ちょっと悔しい。気付いた時に、そう思った。」

功は友喜に静かに頷くと、落ち着いた声のトーンでもう一人の友喜の事を話し始めた。



「…そうだろうな。…今回さ、入れ替わった友喜ちゃんは言っていたよ。もうすぐ自分は消えるかも知れないって。」

「………消える?」

「役目を終えると、消えてしまう。彼女はそういう存在らしい。」

功は前にも一度聞いたが、それでも今まで友喜自身には言って無かった事を、初めて友喜に打ち明ける。


「だから入れ替わった友喜ちゃんにとっては最後の、俺と会うチャンスかもって、彼女は言っていたよ。」

「…。」

友喜は視線を漂わせながら、どう受け止めて良いのか分からないその説明を聞いた。



…功と会えるのがもうこれで最後だなんて言われたら、自分だったら悲しくて泣き崩れてしまう。


「私…泣いてた?」

「いいや、泣いてはいなかったよ。ただ解散する時は、…今ここで会った時の友喜ちゃんみたいな表情はしていた。」

功は友喜の表情の移り変わりをしっかり見ていて、友喜が最初泣き出しそうな顔をしたのを、友喜の感情を、受け止めていた。

それを感じて友喜は途端にまた瞳が潤む。


「…共存は、出来ないのかなあ…。」

ぼそりと友喜が呟く。


「…彼女は、消えるって言っていたけれど、俺はさ、…彼女は何処かしら、…友喜ちゃんの何処かしらに溶け込むんじゃないかと思う様にしてるんだ。だってさ、ただ消えるなんて、悲し過ぎるだろ?」

功が瞳をきらきらさせながら話す。

功も確実に彼女の事を想っていて。功の言葉とその姿から、痛い程それが伝わって来た。


「うん…。そうだね…。」

自分のもう一人の自分の事なのになんだか悲しい。

期限付きで、それがもうじきなのを知っていて、最後に会いに来る為に自分と入れ替わった。

それがどれだけ貴重で、どれだけ愛おしいものなのか、友喜には計り知れなかった。


友喜は思わず涙をこぼす。


「…私、今朝に自分が戻れて昨日一日をふいにした事にただ憤慨してがっかりしていたけれど、彼女はその逆で、たった一日の思い出を胸にして、このまま消えるって言うの?それは、なんだか不公平過ぎる気がする。」

どうして良いのか分からなくて、泣いてもしょうが無いのだけれど、それでも涙が出てくる。


「私は、私はずっと功お兄ちゃんと、ずっと居たいよ。…だからもう一人の私も、きっとそうだと思う…。」

友喜の様子を見て、功も耐え切れなくなって、一筋の涙を流す。


「…あ、ごめんなさい。勝手に感情が、たかぶって…。」

功が優しい表情で首を振る。


「同じだ。俺も。友喜ちゃんと同じで自分も泣けてきたよ。」

涙の跡を見せながら、功は友喜に頬を緩めて見せる。


「何にせよ、友喜ちゃんは戻って来た。そしてまだ…もう一人の友喜ちゃんも消えてはいない。」

「…何故そう言えるの?」

友喜が不思議そうに功を見る。


「彼女がさ、前に言っていたんだ。友喜ちゃんが全てを思い出した時点で消えるんだ、って。友喜ちゃん、不可思議な術とか、まだ思い出せて無いだろ?」

3つの玉が浮かぶ手のひらをもう一人の友喜から見せて貰った事を功がまた話して、友喜に説明する。


「じゃあもしそうなったら、私はそのタイミング、自分で自覚、するんだ…。」

複雑そうな表情をして、友喜は足元近くの地面を見つめる。


「とにかく、まだ、思い出せていない。だから彼女も消えていない。」

それ以上に、何を言えば良いのか分からなかったけれど、まだ悲観する段階には来ていないと功は告げたかった。


それでも何か方法があるのならば…。

胸の内でそんな事を考えながら、功は木の枝葉の隙間から見える、青空を見上げた。





 「石?」

「うん。この前ね、家のお兄ちゃんと雨見ちゃんと一緒に、河原に行ってきたの。」

功は、友喜のリュックサックを背負ったパンツスタイルの後ろ姿を思い出す。


「その時にね、雨見ちゃんが最初行ったんだけど、上流側に歩いた先に、こういう綺麗な石が沢山の不思議な場所があって…。」

友喜は功に楽しそうに説明する。


功と自分の石を選ぶ時に同じ様なのを探して、すると独りでに石が投げつけられてそれを発見した事、足を踏み入れた際に変な音が鳴り響いた事…。


「そんな場所が、あるのか。」

功が珍しがって友喜の話を興味深く聞く。


友喜がゴソゴソと鞄の中を手で探って、


「これ…。これが拾ってきた石なの。こっちがなっちんので、この2つのどちらかが、私で、どちらかが功お兄ちゃんの分…。」

友喜が頬を赤らめてそれを言うと、功はその石を見て小さく声を上げる。


「?」

「…友喜ちゃん、この石、どれも神獣が入っている。」

「へ?神獣?」

友喜が目を丸くして功に聞き返す。


「うん。どれも…すげえな…。」

功が友喜の手のひらの上の石を凝視している。


「友喜ちゃん、しかもこの石、対だよ。」

友喜と功の分と決めて拾った2つの石を指差し、功は言う。


「対?対なの?」

「うん…。神獣の種類が、同じだ…。」

功はふとソウイチの事を思い出す。

確か石の神獣使い…とか何とか言ってたっけか。

神獣に石…共通するものが今友喜の手元にある事に驚きを感じた。

でもだからといって、何がどうこう、って話じゃ無い。

功に出来るのは、ただそれが見えるって事だけだ。



「あ、友喜ちゃん、今日ってこの後時間は大丈夫なのか?」

功が聞いてくる。

友喜が頷くと、


「ちょっとまだ話があるし、このままデート、って事にして良いか?」

友喜は功の言葉を聞いて、頬を再び赤らめた。


 






 友喜は吉葉さんに会えたかな…。

有津世が自分の部屋で父から借りたラップトップコンピュータのモニター画面を前にしながら想いを巡らせる。


林の奥の家。


有津世は今日も自分の部屋に籠り、何やら作業をしていた。

机の前の大きな窓からは、林の木の綺麗な緑の葉っぱがこちらに差す日の光を時折揺らす。


有津世はコンピュータ脇に友喜から貰った水色の豪奢な装飾のノートを広げて置いてあり、たまにそれを確認しながらコンピュータのキーボードを打っていく。


有津世はモニター画面を見ながら、一人口角を上げた。








 小学校脇の公園の隅。

植え込みのレンガブロックの一角で、功と友喜が隣合って座って居る。

公園には人が未だに来ていなくて、友喜と功の二人きりだ。


「友喜ちゃん。」

「ん?」

功が近くに寄ってと、手招きのジェスチャーをする。

もう充分近くだったけれど、功が始めに友喜の隣に座った時から。


それでももっと顔を寄せてと功が言って友喜がその通りにすると、功が友喜の耳元に顔を近づけて、友喜にしか聞こえない声音で囁く。


友喜は一気に顔を赤くして、功に囁かれた方の耳を思わず触る。

功は真剣な表情で友喜の反応を見守り、耳に触れている友喜の手に自分の手を添えて、優しくその手を握った。


功は一瞬、公園内に人が居ないのをもう一度確認してから、握った手を口元に寄せ、友喜の手指に軽く唇を触れさせた。


「…!」

友喜の真っ赤な顔を見て微笑むと、もう片方の手指で友喜の唇に触れ、優しく撫でる。

そしてその手を顎に添えると、自分の唇をゆっくり重ねた。



文の言い回しの修正を数か所と、文末の方の功がソウイチを思い出す場面において「確か石の神獣使い…とか何とか言ってたっけか。~ただそれが見えるって事だけだ。」の三つの文を付け足しました。(2026年1月17日)

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