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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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黄緑色の光

挿絵(By みてみん)










 図書館の背の高い本棚近くの席で、友喜が功となつ、二人の顔を見てぽかんとしている。

そう言えばいつの間にか、なつが自分達の正面の席に居ると友喜は思った。


「…今度こそ目が覚めた?」

「…だろ。」

なつが功に確認する。


「…なっちん?」

二人が何の事を言っているのか友喜は聞き返そうとする。


「あー、ここじゃ何だから、お茶でもするか。」

功が二人に提案を持ち掛けた。


「お兄ちゃん、あたしもう少し本読んでいたいんだけど。」

「館内なら持って行けるだろ?一緒に来いよ。」

「…。」

始め三人は図書館併設の雰囲気の良いカフェに足を運んでみるも、あいにく満席で席が直ぐに空く気配が見受けられなかった。そんな訳でカフェで過ごすのは諦めて、2階にある野外テラスの休憩スペースへと立ち寄ってみる。

白いタイル貼りの壁と中央に木が植わってある開放的なその空間にも人は割と居たが、空いている丸テーブルがいくつかあったので功達はそのひとつに座る事にした。


「何か飲むか?」

テラス入り口に設置されている飲み物の自動販売機を指して功が二人に聞いた。


「お兄ちゃんあたしお茶。」

功がなつに頷いてみせて、


「友喜ちゃんは?」

功が聞いてくる。


「良いよ、あたし席取ってるから。友喜も見てきなよ。」

「…うん。」

なつに促されて、じゃあ一緒に見よう、と一旦座った席から功が立ち上がるのと同時に友喜も席を立って功について行く。


二人が自動販売機の方に歩いて行くのを見ると、なつは静かに息をついて持って来た本を広げた。




「俺は…コーヒーかな。」

なつの分のお茶を買って、自動販売機から出てきたお茶のペットボトルを手にすると、自分の選ぶ飲み物を言う。


「えっと、私は…」

友喜は自動販売機のラインナップを眺めて、ミルクティーを選んだ。


「オッケ。じゃあ押してな。」

功がお金を入れて、光ったボタンを友喜が押した。


友喜がお金を支払おうとすると、功は、いいって、と言って受け取らない。

出てきたミルクティーのペットボトルを功が取り出して友喜に手渡す。


「ありがとうございます…。」

おずおずと礼を言う友喜に功は軽く微笑んだ。


最後に功は自分の分の缶コーヒーを選び購入して手にすると、なつの居る席に戻る。


「はい、お茶。」

「ありがとう。」

なつの席のテーブル脇に功がお茶を置くと、本に視線を落としていたなつが顔を上げて礼を言った。

友喜と功もそれぞれ席に座る。


功に買って貰ったミルクティーの蓋を開けて、ひと口、口に含んだ。

紅茶の風味の後味が爽やかでとても美味しく感じた。

友喜がひと息ついたのを確認してから、功が口を開く。


「友喜ちゃんさっきの事で何か記憶…あるか?」

友喜が功を見る。


「えっと私…、」

友喜は自分の状況を思い返してみる。


功と一緒に本を読み始めて、始めは功との距離の近さにどきどきしていたのが、いつの間にか目の前に広げてある本の世界に惹き込まれ始めていて。

起きている時の記憶はそこまでで、それからは自分がぽわぽわになって、アミュラと行動を共にしている夢を見た。


「夢を見ていたのか。…まあ、寝てたしな。」

功の言葉に友喜が頷く。


「目、開けたからさ、声を掛けたんだけど、…様子が何か違ったんだ。そしたらその直ぐ後にさ…。」

ひょっとしたらその友喜の話すぽわぽわと同じ存在を、功となつは見たかも知れない、と功は友喜に話した。


「この…本の中にさ、…吸い込まれる様に入っていったんだよ。」

その時の様子を功が説明する。


「ぽわぽわが…私から飛び出した…?」

友喜が目を丸くする。


「え、だって今までぽわぽわは夜しか来なくて、こう、空から…しかもお兄ちゃんの部屋にしか…何でだろう…。」


自分からぽわぽわが飛び出した?


なつにはともかく、功には今まであまり伝えた事の無かったぽわぽわの情報は友喜を僅かに困惑させた。


「…。」


何も考えの浮かばない友喜はミルクティーをもうひと口、口に含んだ。


「本に入っていったっつうのがまた不思議だけど、何だろうな。俺一応この本、借りてみるわ。…借りれる本だよな?」

功は本の背表紙やら裏表紙をめくって見たりして確認した。


なつは二人の話を小耳に入れながらも本のページに視線を落としたままだ。


起こった出来事について依然良い考えが思いつかずに口を尖らせる友喜と、本のページに視線を落としたままのなつ、両方に目を配り、


「とにかく…興味深い現象があった、って事だな。」

功が端的に感想を言った。


「気楽にしろよ、って言っても無理かも知れねえけれど、俺が、見てるからさ。」

功が柔らかな表情で優しい声を掛けてくれる。

友喜は頬を赤らめた。




 図書館での時間が過ぎ、なつと功はそれぞれ本の貸し出し手続きを図書館に設置されている自動読み取り機械で済ませる。


「良し。じゃあ行くか。」

本を手にして功が言うと、三人は図書館の建物から外に出た。


三人横並びで帰りの遊歩道を歩く。

時はもうすぐ夕暮れで、友喜にとっては目まぐるしく様々な出来事が起きた一日も終わりに近づこうとしている。

友喜は隣で歩く功を見上げた。

功がその視線に気付き、友喜を見て僅かに微笑む。


この場所からだと、解散も直ぐだ。

図書館は吉葉家からの方が距離が近い。


「ちょっと家、寄って貰っても良いか?」

功が話す。

なつが功の言葉に、


「良いよ、お兄ちゃん。そのまま友喜、送りに行っても。」

功の目的を汲み取って、なつが功に返した。


「いや、それもどうかと思うしよ。最初にお前を家に帰らせてから、改めて送りに出るわ。」

功がなつの提案を断って、そのやり取りで友喜は主旨を理解した。


「それにまだそこまで…遅い時間じゃ無いしな。家、寄れるだろ?」

友喜に話す。

それは今までに無い少し強引な提案で、友喜は功の言葉にどきんとした。

全然、そういう意味じゃ無いのは知っているけれど。


三人は吉葉家への道のりを行き、家まで辿り着いた。


友喜は家の中に入るといつもの様にリビングにある座卓の脇に鞄を置いて座る。


「ちょっと休んでから出よう。」

功は言い、お茶要るか?と聞いてくる。

友喜はやんわりと首を振り、さっき買って貰ったのがまだあるから、と答えた。


なつが気を利かせようと2階に上がっていこうとするが、そういうのはいいんだよ、と功がなつに踏み留まらせる。

え~?と言う顔をなつがして見せて、お前もあっち座れよ、とリビングの座卓に功が促した。


ダイニングで水のペットボトルを冷蔵庫から出してグラスに注いで飲むと再び冷蔵庫にしまい、今日借りてきた本を手にリビングの座卓に来ると功も腰を下ろした。

座卓に置かれたその本の表紙を友喜は改めてまじまじと眺め、図書館で起きた出来事について功から聞いた話を思い返した。


「功お兄ちゃん、この本って…何か見えるの?」

功の表情を注意深く観察していた友喜が、功に話す。


「えっ、ああ…。光がさ…。たまに、細かい金色の光が噴き出す様に見えてる。」

「金色の…光。」

「ああ。」

なつは口を出さずに自身の借りてきた本のページに視線を落としながら二人の会話を耳にしていただけだったが、三人共この本が友喜の変調のきっかけになったかも知れない可能性を、この時同時に考えていた。


「また開いたら、変になっちゃうかな…。」

友喜がその可能性を示唆する。


「ま、そういう事も考えて、俺が借りたんだけどな。」

試しに他の影響が無いであろう吉葉家のリビングで、僅かな思い切りで持って功が本を開いてみる。

なつも思わず友喜と功と一緒に開いた本のページを眺めたが、友喜は妖精の絵が綺麗と思う他は、図書館で起きた出来事の様な変調は起こさずに、普通にその中身が読めた。


「大丈夫…みたいだな。」

開いてから中身を読みつつも友喜の様子を確認して、功が友喜となつに話す。


「まあ、もうちょっと見てみるわ。」



 行こうか、と本を閉じた功が友喜に言い、なつに、友喜ちゃんを送ってくるよ、と告げた。


「友喜、またね。」

「うん。」

穏やかな顔で挨拶をし合うと、友喜は功と一緒に吉葉家から出た。



家から一歩外に出てみると、丁度夕暮れのオレンジ色とピンク色が入り混じった空が見えて、空の色を映した雲には刻一刻と紫色に近い青色が混じっていく。


先程の吉葉家に帰り着くまでの歩調も割とゆっくりな方だったが、今の歩調はそれよりも更にのんびりとしているのを感じて友喜が功を見る。


「あ、遅すぎるか。」

功が友喜に聞く。


「…ううん。丁度良い…。」

友喜は少しでも長く功と一緒に居たかったから、歩みがゆっくりなのは、むしろ嬉しかった。


「ねえ、功お兄ちゃん。」

「ん?」

友喜が功を見上げて、功が友喜の方を向いた。


「家のお兄ちゃんと…何で知り合いなの?」

「ああ…その事か…。公園でさ、偶然会ったんだよ。」

功は経緯を話す。

始めはお互いただ視線を交わしただけだった事。

来る度に魔法陣の傍に来てそれを確かめて帰る有津世の姿が不思議に映った事。

声を掛けてみたら、友喜の兄だと気付いた事…。


「家のお兄ちゃんも、魔法陣、見えるの…?」

友喜が驚く。

兄の有津世からは、そんな話、ひと言も聞いた事が無い。


「え、あ、友喜ちゃんは、知らなかったのか。」

功が友喜の反応を見て言う。


「何にも。あれ、何で、お兄ちゃんその事私に言わないんだろう…。」

友喜が考え込む。


「あ、それで、家のお兄ちゃんと話したの?」

話を逸らしてしまった事に気が付き、流れを元に戻す。


「うん。俺が友喜ちゃんと付き合っている事を話して…挨拶をしに行くつもりなのも話して…。」

功が友喜を見て、二人の目が合う。


「どっちにしろ、何らかの形でそう行動していたとは思うけど、思わぬ形で友喜ちゃんのお兄さんの、有津世くんに助けて貰ってさ。」

功が話す。


「有津世くんさ、…すんげえ友喜ちゃんの事、大切に想ってるのな。」

その想いは清々しいくらいで、参ったよ、と功は告げる。


「でもおかげで…通じ合うものがあったかな。」

穏やかな表情で前を向きながら、功が友喜に話す。

そこまで聞くと、友喜は頬を緩めて、胸の中に灯る温かさを改めて感じた。




「あ、…そう言えばね、今度、皆で一緒に会わないか、って、奈巣野さんや、奈巣野さんの恋人の梨乃さんも言ってくれてるんだけど…。」

「皆で?」

「そう、家のお兄ちゃんと、雨見ちゃんと、私と…。」

功が頷く。


「功お兄ちゃんも、その場に、…一緒に居て欲しい…。」

友喜が前々から思っていた事を話す。


皆で会う場面には功も居て。

そのイメージが、友喜の中にはずっとあって。


「俺も一緒に行って良いのか?」

「…一緒じゃなきゃ、嫌なの…。」

友喜が頬を赤らめて言う。

友喜の様子を見て、功が微笑んだ。


「分かった。則陽にも、話してみるよ。」

「うん。ありがとう…。」


夕暮れは過ぎて、暖色系の色は空から抜け落ちている。

住宅街を抜けて商店街の脇の道を歩く二人は言葉少なになり、互いに隣に居る温度をただ感じて歩いて行った。








 石碑の傍の草原。

大きくなったキャルユを見て、小学生の姿の友喜が微笑む。


「本当に…早かったわね。」

「何を寂しがっているの?これが、私達の望んだ事だわ。」

友喜がキャルユの言葉に、静かに息をつく。

そして何度か頷いた。


「ええ、そうだわね。私達は、それをするためにここに居るんだわ。あなた、よく分かっているわね。」

「そりゃあそうよ。全部、思い出したもの。」

「?」

「額の石から…歌が聞こえてくるわ。」

「ああ…。その歌ね。」

キャルユは柔らかな笑顔を小学生の姿の友喜に見せる。


「これからも…よろしくね。」

「もちろんよ。私、張り切ってるわ。」

キャルユの言葉を聞いて、友喜も穏やかな笑顔をキャルユに返した。








 「うん。なんだか不思議だったの。」

梨乃が則陽に話す。


都内アパート。

副業のオフィスから帰って来た則陽が夕飯の用意をしながら梨乃の話を聞いていた。


「…。」

「…どうしたの、梨乃。」

梨乃の様子を伺い、ガスコンロの前にフライパンを片手に持った則陽が聞く。


「あ、ううん。…前に別の星での友喜ちゃんの人格だって有津世くん達が教えてくれたじゃない?その、キャルユは。友喜ちゃん自身とは少し違うんだ、って、キャルユが自分で言ってたの。」

「少し違う…か。」

則陽が考える。


「少し違うのは、見て分かる部分で?髪色とか、言ってたっけ?」

「勿論、外見では髪色に、雰囲気とかも違ったけれど…多分そういう事では無くて、内面的な事をキャルユは言ったんじゃないかな…。」


「あ、じゃあ内面的に性格が違うとかで全くの同一人物では無いっていう風な?」

「うん。多分…。」

梨乃は則陽に同意しながらも疑問を募らせる。


「食べようか。」

則陽がフライパンから盛った料理の皿をダイニングテーブルに置くと、梨乃に言った。



「いただきまーす。」

「いただきます。」

手を合わせて梨乃が言うと、則陽も続けてその仕草をして軽く頭を下げる。


夕飯を食べながらも二人はクリスタルの中での話を続けた。


「それってさ、友喜ちゃんだけなのかな。」

「ん?」

「全くの同一人物じゃ無い、って感覚みたいなのは。」

「う~ん、分からない。どうなんだろう…。」

「その辺あんまり有津世くん達から詳しい情報聞いて無いね。」

則陽が言って、梨乃が頷く。


「うん。そう言えば…。きっと尽きない程に情報があって、所々をかいつまんで有津世くん達は説明してくれているんだね。」

そうだね、と、則陽は返して考えを巡らせる。


「でね、今回小さな友喜ちゃんは、全然こっちに目もくれなかったの。」

「ふうん。何でだろう。」

「キャルユが言うには何か仕事中だったみたいよ。」


「…それ聞いて思ったんだけどさ…、」

則陽の発する言葉に、梨乃は頷き耳を傾けた。








 林の道に辿り着く頃には辺りはすっかり暗くなって、しかもこの道には光源も無い。


「…いつもこんな暗い道を歩いているのか?」

功が友喜を見て少し驚きながら尋ねる。


「あ、いつもは懐中電灯付けるの…。」

何故か恥ずかしがり、友喜は今この場所でそれをしようとしない。


「持ってるなら付けた方が…。だってさあんまりにも、…見えなくねえか?」

友喜の行動を不思議に思い、功が言う。


「あ…、でも…。」

「…。」

友喜は言葉の先を言おうとしない。

暗くて今自分が頬の赤いのを悟られなくて済むし、考えている事も言うのが恥ずかしかったから、友喜は言い淀んだ。


「分かった。…じゃあさ、そのタイミングになったら、懐中電灯消して、って言うから、それまでは付けよう。」

功が微笑んで言う。


「そういう事だろ?」

「…。」

功の言葉に一気に顔を赤く染めた友喜はごそごそと鞄を探り、小さな懐中電灯を取り出すと、スイッチを入れる。

功はそれを見てまた微笑んだ。


「…あ、」

きのこを発見した辺りを歩いているのに気が付き、友喜が左側の道路脇を懐中電灯で照らす。


「ん、どうしたんだ?」

「この辺にね、ツピエルの家が前あったの。」

「ツピエル…?小人の事か?」

「うん、そう。」

友喜が答える。


「きのこが…あったはずだけど…。消えちゃったのかな。」

きのこは見当たらなかった。

その行動は半分照れ隠しだったし、友喜は前方に懐中電灯の明かりを戻すと再び無言になった。




「あ、もうすぐ家か。」

だいぶ友喜の家に近づいてきたのを功が確認して足を止めると、足を止めた功に気付いた友喜も足を止める。

功は友喜の持つ懐中電灯に目をやり、おもむろに手を伸ばすと友喜の手に自分の手を被せる様に伝って懐中電灯のスイッチのありかを探る。


「あ、…ここ。」

顔から熱を噴きそうなくらいに頬を上気させた友喜が、功の手に塞がれて自由にならない懐中電灯を持つ手にもう一方の手でスイッチの部分を指し示すと、功が、ああ、と言って、懐中電灯のスイッチを切ってから友喜の手をそのまま誘導して鞄にしまい込ませる。


握ったままの手を組み替えて指の先を絡ませ、もう片方の手で友喜の頬に触れると、至近距離まで友喜の顔に近づきその目で少しいたずらっぽく微笑みかけた後、功は自分の唇を友喜の唇に優しく重ねた。






 功に見送られ、友喜が家の玄関ドアの内側に入って行く。

玄関ドアが閉まる直前、友喜は振り返って功に微笑んだ。

功は微笑み返すと、玄関ドアが閉まったのを見届けてから、踵を返して林の暗い道を歩いて行った。




 「ただいま~。」

友喜の第一声に、有津世が玄関までやってくる。


「友喜、おかえり。」

優しい笑顔で、友喜を迎えてくれる。その笑顔に、友喜は胸の奥が熱くなった。


「お兄ちゃん…。」

「うん?」

「あの…ありがとう…。」

今朝も言ったけれど、友喜は有津世に再び礼を言った。

有津世は友喜の言葉に嬉しそうな表情を見せた。


「ほら、鞄置いてきなよ。ご飯だよ。」

友喜は頷き、2階への階段を上がって行った。

その様子を有津世が下から見守っていると、母も後からやってきて、


「友喜、帰って来たのね。」

有津世に話し掛ける。


「うん。」

穏やかな表情で有津世が答える。


「ふふ。」

母から思わず笑みが漏れて、二人は笑顔になりながらリビングに戻って行った。





 自分の部屋で、鞄を下ろす。

机の上に置いた鏡の目の前を通り過ぎる折に鏡の中を意識せずに一瞬目にした。


「…。」

友喜はそのまま通り過ぎようとしたその場所に戻り、何と無く鏡を見直す。


ゆらゆらと糸の様に揺れている、上へと伸びる光の筋は健在で、その煌めきを目にするのは毎日の日常での事で、友喜はそれにはもう慣れていた。

それとは別で、今自分が目にしている自分を映す鏡には、自分を薄く覆うかの様に黄緑色の光のもやが被っているのがありありと映っており、友喜は一瞬固まる。


「…?」

良く見ると、自分の顔と同じ顔が、微妙に自分の輪郭とずれて、重なって存在しているのが伺える。

そのもうひとつの顔が、何故だか友喜自身に笑い掛けてきて。


友喜はその光景に目を見開いて、


「何これ?」

思わず一人で叫んだ。




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