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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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脈絡

挿絵(By みてみん)










 「でさあ、明日はどうするのさ。」

「明日?」

うん、土曜日でしょ、と、なつが功に言う。


家への帰り道、二人は商店街を抜けて住宅街に入った所の道を歩いていた。


「うん。それは、今まで通り。」

「えっ?」

そこはデートでしょ?なつは功に言う。


「デート?ああ、それはさせて貰ってるよ。授業、の為の時間と昼の買い出し。あれが…デートだよ。」

なつがそれを聞いて顔をしかめる。


「なんかもっとさあ…、」

なつが文句を言おうとして、真面目な功の表情を見て言い留まる。


「…。」

「…、分かったよ。いつも通りね。友喜、がっかりしなければ良いけど。」

納得いかないけれど、自分よりも思慮深そうな功の雰囲気を見るとそれ以上は言えない。

なつは依然真顔の功の横顔を見て自分も前に向き直り、静かに息を吐いた。








 宿泊施設の一室。


カーペット敷きで緑色とベージュ色が基調のシンプルなホテルスタイルのその部屋は、余裕のある空間に大きな背もたれが印象的な2脚の椅子にセットのテーブル、中央奥にはクイーンサイズのベッドが設置されている。窓には小さな町の夜景が見え、その直ぐ後ろには光源が少なくほぼ真っ暗な山の影が迫っている。


窓からは見えない反対側には近くに海があって、山と海のどちらにも足を伸ばしやすい立地からも、そこは割と人気の観光地だった。



鍵を開ける音がする。


館内通路側から部屋のドアが開くと、梨乃と則陽の二人が部屋の中に入って来た。

二人はのんびりとした足取りで部屋にある大きな背もたれの椅子の所に来るとそれぞれ腰かけて、梨乃が穏やかに息を付いた。


「沢山食べちゃった。」

「思ったよりも種類が豊富だったね。」

夕食のビュッフェの席から戻って来た二人は満足そうにその感想を言い合った。


「温泉、また行く?」

「そうだね、夕飯終わりで混んでるだろうけど。」

梨乃が聞いて、則陽からの返事に少し考える。


「混んでるかな。」

「混んでるんじゃない?」

「じゃあちょっと休んでからにする?」

そうだね、と則陽が答えて椅子から立ち上がり、梨乃の横に回って彼女の髪を指でゆっくりと梳き始める。


「ねえ、休むんじゃないの?」

髪を指で梳いた流れでくちづけをされながら梨乃が則陽に聞く。


「だってさ、こういうの、ほら、休憩って言ったりするでしょ?」

則陽が梨乃の首筋に唇を触れながらそれに答える。


「そうかも知れないけれど、…っ、」

触れて僅かに這わせる唇に梨乃が反応し、則陽はその反応を見て梨乃の腰に手を回すと椅子から立ち上がらせ、くちづけを交わしながらもベッドへと導いた。








 きらきらした午前中の日差しが街に降り注ぐ。


有津世は今週も街の外れにある合気道教室の入っている建物に来ていた。

建物内の階段を上がり2階に着くと、ガラス戸の扉を開けて挨拶を交わす。


「おはようございます。」

ガラス戸がその重さでゆっくりと閉まり、有津世は教室の中へと入っていった。







 なつが見る限りは、それはいつもとさして変わらない土曜日の午前中で。


友喜が家に着いてからいつも通り午前中の、兄、功と出掛ける時間帯前までは友喜はなつと一緒にお喋りして過ごしたし、功は功で、ダイニングテーブルの自分の席に座り二人の様子を今までと変わらず遠目からゆるりと見守っていたから。


友喜が家に着いた時に一瞬だけ、今までとは違う空気を感じたけれど。

お互いがお互いを意識しているのを二人共もはや隠していなくて、それが直接伝わって来たから。

でもそれ以外は全然普通だった。


功と友喜が出掛ける時間になって二人を見送る玄関ドアが閉まったのを見て、なつは微笑みほっと息を付いた。





 小学校脇の公園に、友喜と功は今日も足を運んでいた。


いつも座るベンチが珍しく埋まっており、周辺にはまばらに人が居たから功は辺りを見回した。

奥の隅にある植木の囲い部分が丁度腰丈程の高さのレンガ造りで誰も居ないのを見て、二人はそこに腰掛ける事にした。



木々の枝葉の重なり合う音を風が奏でて二人の下に運ぶ。


友喜は高鳴る胸を落ち着かせる為に静かに深呼吸をしてみる。

ちらりと功を見上げてみると、功は前方を向き静かに佇んでいた。

一拍後に、功は友喜の視線に気付く。

功は友喜に微笑んで、友喜は頬を赤く染めた。


「ひとつ、試してみて欲しいんだけど…、」

功が口を開く。


「人によって見え方が違う、って、この前言っただろ?本に書いてあってさ…。」

妖精の話題だ。

友喜は真剣に功の言葉に耳を傾ける。


「空間に淀む、流れとか、一瞬光るのとか、注意してみると良いらしいって。」

「空間に淀む、流れ…?」

「うん、何かさ…、気にしなくなっている、それが、ひとつのシャッターになってるんだと。」

「シャッター?」

功は自身の読んだ本の内容を思い返しながら隣の友喜に話す。


「そう、シャッター。閉じられている感性…って意味だってさ。本には、そう書いてあったよ。」

功は人差し指で頬をぽりぽり掻きながら、言葉にして教えられる事って実はあまり無くてさ、少し勉強したよ、と友喜に笑い掛けながら言った。


なつは見えていたから、指を指し示せばそれで良かった。

友喜には、それと同じ教え方は出来ないから。



「例えば空。時間のある時に、のんびり眺めてみる。雲の移り変わりでも良いし、ぼうっと対象を定めずに見るのでも良い。」

友喜はその言葉に、枝葉の覆うその隙間から見える空を見上げる。


「すると…見えていなかったものが、見えてくる事があるんだ…。本の受け売りだけどな。」

そう言って肩を下げながら軽く笑うと、功は友喜の視線を辿って、自分も空を見上げる。


たまに届く木陰からの日の光が、その目に眩しく映った。








 今日は日差しがぽかぽかと温かい。

有津世は合気道教室を終えてすっきりとした爽快な気分と共に、少し久し振りに小学校脇の公園に足を運んでみる事にした。


珍しく今日は公園内には人がまばらに居て、木陰にはカップルらしき人影もある。

丁度木の枝がしだれてこちら側からは足元くらいしか見えなかったけれどその雰囲気から察するにカップルで間違い無いだろう。


有津世は例の場所に辿り着くと、立ち止まって空間の調子を手のひらで確認する。

有津世はポケットにもう片方の手を入れて中にある石に触れ感触を確かめると納得して頷き、公園を後にした。








 懐かしいと感じた物事は全て思い出したものであるのを胸の奥で感じる。


ひとつひとつの現象を彼女は体験して、少しずつ全体像を掴む。

何がどのピースになるかなんて全部が揃わないときっと分からない。

ひょっとしたら全部が揃ってみても分からないのかも知れない。


それでも旅に出ている事は既に彼女自身も知っていて途中では何か分からなくなって思い悩んだりもする。

自分も同じで最初は覚えているつもりでも途中で立ち往生したりもするものだ。


だからそれは全然珍しい事では無くて。

だからこそ僕等はその旅路が愛おしいと思うのだ。








 「ここのお宿、結構良かったな。」

「うん。良い所だったね。」


名残惜しそうに梨乃が振り返って宿泊施設の建物を眺めながら則陽に言い、彼が肯定する。

一泊目が明けてチェックアウトを済ませた二人は外に出てきた所で、ほんのり肌寒い午前中の空気を感じていた。


「チェックインの時間までの間、どうやって過ごそうか。」

今晩宿泊する宿は、ここからそう遠くない場所に位置している。

いくつか案はピックアップはしてみたけれど、その上で梨乃の希望を募った。


行ってみたい場所を梨乃が告げると則陽は快諾して、二人はゆっくりとした歩調で建物の敷地の外へと歩いて行った。








 林の奥の二棟の家。

手前の黒い外壁の家は、深緑色の屋根が日差しを浴びて周りの木々の緑と馴染んでいる。


街から帰ってきた有津世は家で軽い昼食を摂った後、父から借りた家族共用のラップトップコンピュータを自分の部屋に持ち込んだ。


机の席に座り、コンピュータを起動させるとまずは新着メールを確認する。

特に気になった内容のものは届いて無かったので程無くメールボックスを閉じた所に、画面の中をひょこひょこと歩くツピエルを発見する。


「!」

「あら、また会ったわね。」

則陽からのメールで教えて貰った事はあるけれど、ゲーム画面以外のモニターにツピエルが出現するのをこの目にしたのは有津世にとってはこれが初めてだった。


「本当に画面の中を渡り歩くんだ…。」

有津世が独り言の様に喋り、その言葉にツピエルが反応する。


「まあ、そうね。あら、ここは訪問初めてだったかしら?」

何でも無い風にツピエルが言い、有津世が真顔でそれに頷く。



ツピエルが久し振りに現れた昨日からふつふつと感じていた事だけど、ツピエルとのコミュニケーションが前に比べ、格段に取れる様になっているのには驚いた。

以前は文句がほとんどで、しかも随分と一方的だったし、なかなか取り合ってくれない印象しか無かったから有津世はその変化には目を見張った。


則陽や梨乃と接してこういった変化がツピエルの中で培われたのだとしたら、彼等二人は何か相当な才能の持ち主なのではないかと有津世は本気で思った。


「あ、そうだ!友喜が前にツピエルの声を近くの林の道で何度か耳にしたんだって言ってたけど、画面以外の場所にも出現する事ってあるの?」

「アタシの家。そこにアタシの家があるのよ。別に他の場所にも行く事は出来なくも無いけれど、今の所はそうはしていないわね。」

「ん?」

有津世が首を傾げる。


「画面の中が家なんじゃ無いの?」

有津世が聞き返す。


「そりゃあ、まあ、画面の中もアタシの家っちゃあ家よね。自由に繋げる事は出来るわ。」

「繋げる?」

「何処の場所にも投影は出来るのよ。インターネット有りきの話だけれど。」

有津世は頷きながら何と無くその意味を理解する。


「それならさ、実際の家、見て見たいから、その場所教えてよ。友喜に前に教えて貰ったんだけどさ、見つからないんだよ。」

「ふんっ。合わせないと、なかなか難しいわよ。」

「合わせる?」

有津世がまた首を傾げる。


「何を?」

「周波数をよ。」

有津世が視線を巡らせてその言葉の意味を考える。


「アタシのはちょっと特殊だから、合わせるの、ひょっとしたら難しいかもね。」

「そうなの?」

ツピエルが頷く。


「どうやれば出来るの?」

「きのこの周波数に合わせるのよ。」

「きのこ?」

「そう、きのこよ。」


さっぱり分からない。


その話題はさておき、有津世はその後も気になる話題をツピエルに持ち掛け、午後の時間を割と友好的に共に過ごした。








 時折目に届く日の光はきらきらと眩しくて、功は視線を友喜に戻した。


友喜は木陰の隙間から空をまだ見上げたままで、日の光と自身を覆う光が、繊細に光り輝いていて。友喜のその姿に、功は見惚れた。


彼女は妖精を見たがっているが、彼女自身が既に妖精に称えられる女神の様で、果たしてそれ以上に彼女は求める必要があるのだろうかとふと考える。

鏡を見れば良い。そうすればその花の精の様な美しい姿が見られるのだからと真剣に思った。

或いは妖精の事がずっと見えないまま、この授業とやらが続けば良い、とも思った。

そしたらこの先もずっと、こうして会える機会は続くだろうし、彼女は俺を頼り続けるだろう。


それとも見える兆しが無かったら、彼女は俺に愛想をつかすだろうか。


功はそんな自分勝手な想いを巡らせた。



「見て。」

おもむろに友喜が話し掛ける。


見ると両手のひらを膨らませて閉じ合わせた友喜が功に微笑み目の前にそっと広げて見せる。


「?」

友喜のゆっくり開いていく手のひらの中を言われるままに功は覗いてみると、そこには小さな淡い光の玉が3つ、宙に浮かんでいた。




功は途端にぎょっとなり目を見張って友喜の顔を見る。

友喜はにこりと笑って、


「今まで、何回か会ったの。あなたは途中から気付いただろうけど。私は…私も友喜よ。ずっと…あなたに会いたかったの。」



 功は唖然とした。


先程から一緒に居るというのに、今ようやく会ったという風な表現をする彼女は入れ替わった友喜だ。

黄緑色の光の霞の彼女が表層に来ている。

つまり、今この時、友喜自身は記憶を失っているという事だ…。


その変化はいつも突然だけれど、今回違っていたのは、別の友喜だと彼女が初めて自ら打ち明けてきた事だ。この状況を理解するのに幾ばくか時間を要し、その様子を友喜は楽しそうに見守っている。


ようやくこの状況を何とか飲み込んだ功は、思った疑問を口にした。


「…別の星の別人格じゃ無いのか?」

「キャルユの事?キャルユじゃないわ。私も友喜。あなたが全面的に庇いたい友喜と…さして変わらないわ。」

キャルユとは確か別の星での友喜の人格の名だった気がする。

功は友喜の発する口調に違和感を覚えた。

そして今彼女が言ったのは…昨日の俺の発言に対してだろうか。


「………それは一体、…何なんだ?」

手のひらに浮かぶ、小さな淡い光の玉を不思議そうに眺めた。


「友喜が扱える術よ。」

「術…?」

「ええ、いずれ彼女は思い出すわ。」


友喜とさして変わらないと言いながら、今の彼女は不可思議なものを功の目の前に差し出し、友喜本人を二人称で言い表すのだから矛盾を感じた。

彼女は術、と言った。

いきなりおとぎ話めいた内容になり、その不可思議さに功は一瞬戸惑う。

こうなる前にも、友喜自身に話していたのは妖精の話で実はそこには確たる差も無かったが。

不可思議な光の玉は気になるが、それよりも気になる点を功は友喜に問い掛けた。


「えっと、…ちょっと待ってくれ。…俺が覚えている限りでは、君が表層に被った時にも口調は変わって無かったと思うけど…?」

「ええ、それはあなたにばれる前だったから。でもばれているのが昨日分かったから、もう隠さないで話すわ。」


ばれる?何だか人聞きの悪い言い方だ。


「そうか…。それと…、記憶の無くなるのを本人はとても不便がっているんだ。それは…何とかならないのか?」

功は友喜自身を想いながら彼女に話す。


「これは私がしているのじゃなくて、友喜自身がしている事なの。便宜上よ。だから私に言っても…どうにもならないわ。」

「…。」

今意識の表層に出ている友喜じゃなくて、友喜自身がしている…。


「ああ…。」

やっぱりそうだったか。それについては何故か功も腑に落ちた。

彼女を取り巻く黄緑色の光の霞の現象を最初に確認した時に感じた印象がそれと同じだったから。

でも理由は分からなかったし何と無くそう感じただけだった。

今こうして入れ替わった友喜に言われるまでその事は忘れていたのが実の所だ。


「まあ、どっちにしろ、友喜は友喜よ。そして、あなたを…。」

友喜が真剣な表情で功に熱視線を送る。

功は赤面になり、舞い上がり過ぎない様に意識しながらなんとか呼吸を整えた。

そしてなるべく穏やかな口調を心がけながら友喜に言う。


「あまり…友喜ちゃん自身とかけ離れた事はしないでくれるか。彼女、何も覚えていないんだろ?」

覚えていない、という点で友喜は頷きながら、


「でも…私は友喜と変わらないのよ。彼女だって、結局私と同じ動きをすると思うわ。」

功は普段の友喜を思い浮かべて、いや、それは無いだろ、といぶかしみながら答えた。


「あなたがまだ知らないだけよ。きっと…そうね…彼女もそれを望んでいるわ。」

それだけ言うと、友喜は功に温かい眼差しを向けた。

功はその表情に思わず見惚れて呆けていると、友喜は瞬きをして一瞬表情から感情の抜けた様になった。同時に、宙に浮く光の玉も手のひら上から消えて無くなった。








 石碑の傍の草原で、友喜が佇む。


確か自分は功と居て、公園で妖精の話をしていた筈だった。

それが夢の中で見た風景の場所にいつの間にか居る事に友喜は首を傾げた。


石碑の他には遠くに見える森への入り口が見えて、友喜はその景色を眺めて尚も佇む。

ふと近くに視線を移すと、そこには幼い少女が一人で遊んでいる姿があった。


幼いキャルユだ。


友喜はキャルユの動きを眺めていると、その内にキャルユは友喜に気が付き近くに寄って来た。


「あ、また違うおねえちゃんだ!…ん?」

キャルユは友喜を見て、小首を傾げる。

黄緑色の腰ほどまであるウェーブがかったふわふわの髪と、透明がかった黄色の生地が何枚にも折り重なったドレス。額には印象的な雫型の石を身に着けていて、まるでおとぎの国のお姫様の様に友喜は感じた。


友喜がぼうっとキャルユを眺めていると、キャルユは傾げていた首を元に戻し、友喜の腕を両手で掴む。


「おねえちゃん、一緒に座ろう!」

見上げてくるキャルユを見て我に返った友喜は、ひとまずそれに応じて草原に腰を下ろす。


何で今自分はここに居るのだろう。


ゲームのクリスタルの中に入った訳でも無いのに、突如として起きたこの現象が何なのか友喜には分からない。


「おねえちゃんは、いつも居るおねえちゃんと似てるね。」

キャルユは先程自分が感じた事を友喜に告げた。


「いつも居るおねえちゃん?」

「うん。」

小学生の姿の友喜の事か。

そう言えば彼女は今何処に居るのだろう。いつもこの場所に居る訳では無いのか。

友喜は辺りを見回す。


「ねえ、キャルユ、あなたはいつからここに居るの?」

「?ずっと居るよ。」

その質問の意味が分からずキャルユはぽかんとして答える。


ずっと…ここに居る?


友喜はまた別の質問をする。


「いつも居るお姉ちゃんは何処に居るの?」

「ん~、分からない。」

キャルユは答えた後、言葉を足す。


「たまにお仕事してるの。」

「お仕事?」

「うん。大切なんだって。そこの前でよくしてるよ。」

キャルユが近くの石碑を差して言う。


何で自分はこんなに分からないのだろう。

今、目の前に接して居るのも自分の内の一人の筈なのに。


友喜はため息をついた。


「おねえちゃん、元気無いの?」

その言葉に友喜はキャルユの顔を見る。


「…。ううん。そんな事無いよ。元気だよ。」

「それなら良かった!」

無邪気に笑う幼いキャルユは、草原に咲く小さな花を触り、一人で遊び始めた。

友喜はキャルユを目の端にしながら一人、想いにふける。


授業…中だったのに。


思い出し、功が恋しくなる。

と、目の前に光を感じた。


見るとクリスタルの中から戻る時と同様に、自身の体が小さな白い光の粒子で包み込まれ始めているのに気付く。


景色が白い光にまみれて見えなくなる直前に、目の前に現れた小学生の友喜の姿が一瞬友喜の目に映り込んだ。








 緑の葉っぱの匂いがする。

小鳥の声も聞こえてきて、五感に入り混じる雑多な感覚は元の公園に戻って来たんだと友喜に知らせた。


視界を確認して、呆気に取られた功の顔を確認すると、自分も多分似た様な表情をしているだろうと思った。


「あ…。」

功が今しがた自分の体験した事をどこからどうやって友喜に告げようかと迷っている内に、友喜は功に近づいて言う。


「功お兄ちゃん…。」

気後れしている風の功を見上げ、友喜は功を見つめると、


「私も…私も功お兄ちゃんの事が好き。」

顔を近づけ功の唇にそっと自分の唇を重ねた。


  

文章の言い回しの修正を数カ所行いました。(2026年1月12日)

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