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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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過小評価

 林の木々が風にそよいで、さわさわと音を立てる。

ログハウスの玄関ドアから、友喜がそっと出てきた。そそくさと自分の家の玄関前へと移動すると、ドアを開けて中に入っていく。










 茶色が基調の古めかしい雰囲気漂う喫茶店。

今日も作業終わりに則陽と功はその店に立ち寄っていた。


則陽がプログラム解析の今現在までの考察を功に伝える。


「そうか…。それじゃあ…、あれはひょっとして…」

「吉葉先輩、何か気になるものでも?」

則陽がその反応を見て功に聞く。


「…いや、…あのよ。家の近くの公園にさ…ちょっと前から変なもんが出来てて。それってもしかしたら…って思ってよ…」

則陽がなるほど、と頷き、


「それも俺達の作業の賜物かも知れませんね。」

功に返す。


「…なんか段々、大それた事になってきやしないか?」

功の言葉に、則陽は少し考える。


「そうですね。俺も有津世くんから情報もらったり、修正プログラミングの管理者の人との話で色々と判明していく毎に、それを感じていますよ。」

則陽はあくまでも穏やかな口調で言う。


「お前…冷静だな……」

功が則陽の態度を感心して眺める。


「出現する小人にも、日々鍛えられていますから。」

そう言って則陽は少し笑った。


「…モニター画面を渡り歩く小人って何だよ……。流石に俺も見た事ねえよ。マジでお前レベル高いな…。」

「先輩、俺はオーラとか見えませんから。それにその地面に出来た魔法陣らしきものとやらも俺の目には見えませんしね。それらしきプログラムがあったと言うのが解析出来ただけで…。」

ただのカテゴリー違いだと、則陽は言う。


「実際先輩は神獣も見ているんでしょう?レベルが高い、低いの話では無いと思いますよ。」

功は則陽の言葉にじっくり聞き入る。


「……実際、こうやってお前に随分と助けられてるし、お前に惹かれる訳も分かるんだよな。だからお前を責める理由も何にも無いし…、」

急に功がブツクサ呟き始めた。


「先輩、突然何の話をしているんですか?」

則陽が聞く。


「ちょっとよ、俺の中での整理だよ。お前見てむしゃくしゃしたって仕方ねえよな。」

「はぁ?」

そこまで言って、功は肘をついてふんぞり返った。

また何か出てきたぞ、と則陽は功を真顔で見る。


功の態度で、則陽はいきなり機嫌が悪くなる小人ツピエルを連想した。


「先輩、あんまりそういう小人みたいな態度取ってると、友喜ちゃんに嫌われますよ。」

則陽は功に言う。


「なっ、お前っ!お前だけはそれを言うなよっ!」

「友喜ちゃん、あの小人がかなり苦手みたいで…。」

則陽はそう途中まで返して言葉を続けず、功の様子を見る。

功は功で、自分の失言に気が付き、手で口を押え、黙りこくった。

そうして一定の間が空いてから、


「何でもねえ、何でもねえって!今のはあれだ、冗談だよ!」

声が思わず大きくなり、則陽は周りを見回す。それを見た功が、ああ、悪い、と言って、自分の声の大きさを元に戻す。


「何でも無かったらむしゃくしゃしないんじゃないですか?」

則陽が言い、続けて、


「で?吉葉先輩、何で俺を見てむしゃくしゃするんですか?」

則陽が功の事を真っ直ぐ見て僅かに気迫が感じられる声で問い質す。

だめだ、マジで、則陽が少し怒っている。功はそれを感じて、観念した様にぼそりと、


「…友喜ちゃんがお前の事好いてるからだよ。」

ものすごく小さな声で言った。


「えっ…?」

則陽が功の方に耳を寄せて何とかそれを聞き取り、眉をひそめた。


「…先輩、何か勘違いしてません?」

ぶすっとした顔で、功が則陽を見る。


「俺が友喜ちゃんに会ったのは、たった2回で、それもクリスタルの中ですよ。実際に会った事もありませんし、後は…お兄さんの有津世くんと同じメールアドレス上でのやり取りですから、彼にも筒抜けなんです。そんな中、何をどうやったらそうなるんです?」

功は則陽が則陽自身の事を過小評価しているとそれを聞いて思ったし、則陽は功がとんでもない勘違いをしていると思った。


「先輩、それで最近…。謎が解けましたよ。」

則陽が静かに息を吐く。


「先輩は俺なんかよりずっと友喜ちゃんに会っているんですし、しかも実際に。後は友喜ちゃん側がどう思っているかは分からないですけれど、」

だから友喜ちゃんはお前を…と功は呟く。


「なんなら聞いてみれば良いじゃないですか。」

則陽がにっこりと笑って言う。


「…。」

そんな事したら…、功は黙りこくる。

少なくとも誤解は解けると思いますよ、と則陽は付け加える。


「ああ、じゃあ今度クリスタルの中で、もし友喜ちゃんに会ったら聞いて上げますよ。」

則陽がさらっと言う。


「お前…。」

実際に会うのとは違うと聞いても、功はその言葉が聞き逃せない。


「お前、勝手に会うなよ!」

思わず本音が出る。


「会っちゃったら仕方が無いですよね。何しろ、何処に飛ぶのかその時まで毎回分かりませんし。」

則陽は功が激情するであろう言葉をさらりと続ける。


「このやろ…」

功が悔しそうに則陽を睨む。

則陽はあくまでも功の様子を観察して、その後、ふっと笑った。

その態度に功はますます腹を立てる。


「なんで毎週の様に先輩の妹さんと週末、家で遊ぶんですか?聞けば最近は平日の帰りにも会う事あるって言うじゃないですか。以前から…?」

「それは家の妹と仲良いから…」

そう言った後、功は考え込む。


則陽はそんなに頻繁に功自身が彼女に会っているのに、僅かな回数しか会っていない自分を気にしている事を不思議に思う。

功は考え込みながら、友喜が自分を見つめてきた時の事を思い出した。


「いや、…まさか…。」

手で口を抑え込み、功は信じられないと言った顔で視線をテーブルに向ける。

可能性としてはその方が遥かに高いと思いますけどね、と則陽は口角を上げて言った。

それを聞いて、功は店の壁掛け時計を見上げる。

則陽がその様子を見て一緒に時計を見上げると、功は、ああ、もう帰っちまったか…と呟く。


「行きましょうか。」

則陽が言い、功は無言で頷く。会計を済ませて二人は外に出ると、


「じゃあな。」

功は考え込む様に言葉少なに素っ気無く挨拶する。


「はい。また月曜日に。」

則陽が微かな微笑みで素っ気無い功の挨拶に答え、彼の立ち去る様子を見守った。

そして静かに嘆息すると、自分もその場を後にした。








 林の道に気持ちの良い朝日が木陰の隙間から降り注ぐ中、有津世と雨見が登校していた。


「ねえ、有津世とこうして会話している事を私が覚えていなかったらどうする?」

雨見が言う。


「ん?この会話とかも?」

「そう。すごく大切な会話とかしているかも知れないのに、その部分が抜け落ちていたりしたら…」

雨見のその言葉に、


「それは問題なんじゃない?色々と…支障が出そうだよね。」

「…だよね。」

雨見は有津世の意見を聞いて、ふうっと息を吐く。


「雨見、そういう事あるの?」

有津世が聞く。


「…無いけど…あったら不便だなって。」

「そう…。」

それ以上追及するのは止めたが、有津世はそれは先日聞いた友喜の話と関係しているんじゃないかと勘づいた。何かの拍子に記憶が抜けるのは友喜だ。雨見も一度だけあるけれど、それ以外の時にその現象は今の所は起きていないから、この話は友喜に関係していると有津世の中でほぼ確定した。


「本人はとても困るだろうね。」

「そう、とても困っているの…。」

有津世が言った言葉に、思わずぽろりと出る。

有津世が雨見の方を見ると、


「じゃなくて、そういう事のある人が居たら、本当に不便そうだな、大変そうだなって…」

雨見が必死に誤魔化しているのが見えて、有津世は軽くため息をつく。

そして前を向き直して、


「もしそれが俺だったら…、雨見に、本当の事を言うよ。俺は時々記憶が無いんだ、って。それを逆手に変な事する言い訳にするんじゃなくってさ。そして、雨見と時々答え合わせをする。あの時はどうして居たっけ?とか。」

雨見がそれを聞いて、顔色を明るくする。


「有津世すごい…。」

「もし今度そういう話をする機会があったら、友喜にそう話しておいてくれる?俺には、話しにくい内容みたいだし。」

雨見が真顔から一転、気まずい顔になる。


「あ、…」

「ごめん。雨見のせいじゃなくて…なんか分かっちゃったからさ。事故って事にしておいてくれない?」

有津世が雨見を庇う様に言う。

雨見は気まずい表情のままで少し俯きながら、どうしよう、と呟いている。そんな雨見に優しく微笑みながら、林の道から抜ける手前で有津世は雨見を傍に寄せて、そっと唇を重ねた。







 山奥の神社。

今日も山の木々に囲まれてなかなか上空からの視認の出来ないその神社の中では、いつもの様にノリコとノリコの祖父がそれぞれの役割を務めていた。


ノリコが瞑想の終わった祖父に気が付き、小さな座卓の上に載せている写本のノートを掲げ、


「おじいちゃん、これ、ソウイチくんの事が載ってる!」

ノリコが嬉しそうに言った。


「それはすごいですね。何処に記述してあるんですか?」

ノリコは近くに来て覗き込んでくる祖父に、ここに、と指し示す。


「そうですか、そこに記述してあるんですね。ノリコも…すごいです。」

ノリコにしか解読出来ないそれを、祖父は感嘆しながら見守る。


「ノリコが前に見つけた生き物達の事も、もしかしたら載っているかも知れませんね。」

祖父が言う。


「うん!」

ノリコはこの所写本が楽しみになっていたから、午前も午後も夜も、何かとそれを続けていた。


言い回しが難解で祖父の意見を求める時、祖父は大抵瞑想をしていて声を掛ける事が出来なかったから、そうした時は、気分転換で自分のお気に入りの山の斜面の道なき道へと散歩に出るのが最近のノリコの活動パターンだった。


「おじいちゃんは今日も誰かに会った?」

「ええ、会いました。昔からこの地を…守ってきた人にです。」

すごい!とノリコは言い、祖父にその話をせがむ。


そうして、山奥の神社の時間は今日も穏やかに過ぎて行く。









 気持ちの良い風が吹いて、カフェのテラス席のテーブルに広げたノートのページをパラパラと軽やかにめくっていく。


いちごシェイクのストローをミサンガの着いた右手でくるくると回してから一口飲んで、なつが言う。


「最近付き合い良いね。作戦会議、良いの?」

それを聞いた友喜が軽く何度か頷く。


「うん。良いの。」

友喜が簡潔に答える。

友喜は雨見ちゃんの見る夢が、もう少し良い方向で進展したら良いな、と、なつからの言葉を受けて思った。その停滞ぶりは今だ健在だ。

そんな事を考えながら、抹茶ラテのマグカップを手に取り、一口、口にする。


「まっ、こっちは有難いし、良いけどね。」

なつは自分の兄、功を思い浮かべてそれを言う。

でしょ?と、なつの真意を読み取らずに友喜が答えて、二人は、ふふ、と笑う。


そしてテラス席から見える、たまに行き交いする人波を二人は同時に眺めた。




 日が暮れて、テラス席への階段を功が上がって来る。


「よっ。」

二人の前に功が辿り着いた。

なつと友喜は功を見上げると、功は二人の顔を交互に見て軽く微笑んだ。

そして同じ席の空いている椅子に今日も座る。


「お兄ちゃん、もうちょっとだけ。」

なつが教科書のページを確認してせがむ。

功がそれに頷くと、友喜を見た。

友喜は功を見ていたので直ぐに視線が合った。


「ん?友喜ちゃんは時間大丈夫か?」

大丈夫、と友喜が答え、功が、そうか、と再び頷いた。

そうして友喜も、勉強の手を動かすのを再び続ける。功は片肘を付いてその手で頭を支えながら、二人を見守った。


いつの間にか視線が移り、友喜を見つめていると、友喜が気付いて顔を上げ、功に微笑んできた。

そんな友喜に功は、舞い上がる気持ちを何とか抑え、僅かに微笑み返す。


「お兄ちゃん、良いよ。友喜もありがとう。もう帰れる?」

シャープペンをノートの上に置いてなつが言う。

功がその言葉に、ああ、と答え、友喜もなつに頷いて答える。

なつが二人の顔を交互に見て状況を確認してから、勉強道具をしまい始め、友喜も片付けを始めた。



…何も生活の場はここだけじゃあるまいし、別の可能性だって山ほどある。

それに年齢が年齢だ。

自分の妹に置き換えてみれば、良く理解出来ると言ったものだ。


功は自分の想いに気付いた時に立ち返り、静かに息を吐く。


胸に少し痛みは感じるが、功は改めて自分の想いには蓋をする事に決める。変に暴走してしまって、自分の想いに歯止めが利かなくなる前に。


片付けが終わり、なつが兄、功を見ると、功は微かに寂しそうな表情をしていた。


「あ、行くか。」

なつと友喜を見て、片付けが済んだのを確認して功は言った。

二人を先に歩かせて、自分はその後を行く。


「じゃあね、友喜。」

「うん、ばいばい。」

「気を付けて帰れよ。」

双方手を振って、なつと功は前を向き直る。その瞬間、功は一瞬躊躇したが、自分のその想いを振り切る様に踵を返した。

友喜は二人を、少しの間その背中を見送る。

そして自分も帰りの方向へと向き直り、その場から去って行った。








 「ここをね、こうやって編み込むんだ。するとね、ほら、出来たでしょ?」

「あ、本当だ。」

真っ暗な星空の下で、二人はその中に浮かんだ小さなまあるい球体に座り、何かを教え合っている。


「ねえ、これは?」

「これは、こうやって…ね?」

完成した綺麗な色とりどりの糸を見て、彼女は彼に嬉しそうな顔を見せた。糸は様々な色の光の玉になって、何処かへ飛んで行く。二人は隣に寄り添い座りながら、それを眺める。


「綺麗ね。」

「うん、そうだね。」

二人は温かい微笑みを浮かべながら、互いに頷き合った。








 6階建てのビルの4階。

功は入り口の観葉植物ノーリの前でパイプ椅子を広げ、一人、想いにふけっていた。


「吉葉先輩、隣、良いですか?」

則陽が功を見つけ、自分用のパイプ椅子を広げ、隣に座る。


功は、ああ、とだけ言い、ノーリを眺め続けている。

則陽は功の様子を見て、


「土曜日、やっぱり帰ってしまってたんですか?」

則陽が友喜の事を聞いてみる。


「ああ、俺、その事考えるの止めるわ。」

功が気力の抜けた声音で言った。

則陽が黙って功を見ると、功はノーリの方に顔を向けたまま、


「やっぱ、あの、歳が違い過ぎるし、俺がどうこう言ったって、それは揺るぎようの無い事実だし…」

「後少し、待つと言うのは…?」

「いくらでも若くて良い男が寄ってきそうな相手に対してか?それに…今この時点で片思いだし、その案はお門違いだよ。…釣り合わねえ…。」

則陽が功の言葉に耳を傾けて、


「そうですか。」

静かに相槌を打つ。


「それが吉葉先輩の決めた事でしたら、俺はそれを尊重しますよ。」

功はずっとノーリの方を向いたままだったのを、則陽の方に向き直った。

則陽は功を穏やかな表情で見ていた。


「まあ、もっとも、それが原因で俺にまた当たられちゃあ迷惑ですけどね。」

そう言うのを聞いて、功はまたノーリの方へとそっぽを向く。


「でもま、内情知ってますんで、それも受け止めますよ。」


想いを止めようとも、想いを消せないのは、則陽も知っている。

梨乃と一度破局した時、則陽は消したくても消せなかった梨乃への想いがくすぶり、どうしようも無かった。

その事について考えるのを止めるという言葉も、則陽の中で覚えがあったから。男らしいだなんて定義はまやかしだけど、そうする事で、らしく、思うのも無理矢理だった。


ノーリ、何とかなると良いな。

則陽がノーリを眺めながら思う。

するとノーリはいつもの虹色の光に加えて白い細かな光の粒子を湛え、煌びやかに輝いた。


放心している功と、眺めている則陽の目に、その光が映り込む。

二人は黙ったまま、ただその光を浴びていた。







 自分の中で諦めるという決心をしたのに、そうは問屋が卸してはくれない。

土曜日、またいつもの様に友喜が来て、更には妹なつからお達しが出た。


「外出禁止!」

「何だよ、それ!」

流石に功も憤慨する。

友喜に見惚れるのを止めるために、前回のあれはしょうがなかった。理由を言えと言われても、そこは黙りこくるしか芸が無く、功は上手い言い訳が見当たらない。


「外出禁止ならよ、昼は家にある物適当に食べるのかよ?」

「その時だけは許可します。あ、友喜と行ってね!」

友喜がその様子を見て困惑する。


「なっちん、功お兄ちゃん迷惑そう。」

そこまで強引にするの、止めたら?と友喜は言う。


「ほら、友喜ちゃんはまともじゃねえか。お前、そんなに我が儘ばっかり言ってると、友喜ちゃんに嫌われるぞ!」

功が言う。


「じゃあさ、お兄ちゃんは友喜とお昼買いに行くってあたしの提案は迷惑なの?友喜が言う事がまともだったらそれを肯定する事になるけど。」

なつが強気で言う。

その言葉を受けて、友喜と功の目が合う。

何とも形容しがたい空気が流れて、


「いや…そういう意味じゃない。友喜ちゃんにとって迷惑なんじゃないか、って、俺は思っただけ…。」

功はなつに向けて言う。

功を見て、それからなつは友喜を見た。


「…迷惑じゃ無い。迷惑じゃあ無いです。」

功となつは、友喜のその発言を聞いて、三人はしばし時間が止まった。




 そういった出来事が友喜の来た午前中に起こって、今それを受けてまた友喜と二人でバーガー店へと向かっている。

友喜は自分への気遣いでああ言ってくれたんだろうし、この状態に何と会話を切り出そうかを迷う。そう思いながら友喜を見ると、友喜は功の視線に気付き、功に向かって微笑んだ。


「…。」

尚も言葉が出ない。功は胸が締め付けられたまま、二人は特に会話をする事もせず、バーガー店までの道を行った。




 「どれにするか?」

二人はバーガー店に着き、いつもの様にテイクアウト用の注文口脇のメニュープレートを眺める。


「ん~と…」

友喜はアボカド入りのでは無い、別の種類を選んだ。


「オッケ。それな。」

功が応じて注文口へと行く。

そうして注文が終わって、二人は待ち時間の間、今日も店の脇のベンチへと座った。


ベンチに座る、功と友喜の間には今日も隙間が在って、そこを風が通り抜ける。


「また何か飛んで来ないかな?」

友喜がぽつりと言う。

功が友喜を見ると、友喜は功に嬉しそうに続ける。


「妖精。この前、見えたんですよね?」

友喜が言う。


「…ああ。そう。見えたよ。」

功が微かに微笑んで、友喜に返す。

妖精より大それたのがここに居るけどな…、功は思う。

さしずめ花の精、と言った所か。

功はそれを思い、俯きながら微笑む。


「私もね、妖精、見える様になりたいです。どうすれば良いかな…。」

功がその問いに、また友喜の方を見やる。


「特訓?訓練?今度その教室、開いてくれませんか?」

「へ…?」

友喜の顔は冗談を言っている風でも無く、真剣そのものだ。

功が呆気に取られて、友喜をまじまじと見る。


「…なつが…」

「なっちんは功お兄ちゃんが先生みたいだ、って言っていました。そういう話について…。私にも、教えてください。」








 林の道の奥の行き止まりにあるログハウスで、雨見が玄関前の段差に座り、友喜の帰りを待っていた。

友喜の歩いて来るのを見て、雨見は友喜に手を振る。

友喜もそれに気が付き手を振り返して、笑顔になって近づいて行く。

そうしてログハウスの玄関の中に、二人は入って行った。



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