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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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 あの日ショックを受けて自分の発言や感情を封印してから、だいぶ時は経つ。

則陽とのやり取りや、なつと友喜の会話を小耳に入れた事も相乗効果となって、再び自分というものを本当の意味で取り戻し始めている気がした。


日が過ぎ行く毎に、より自然体へと近づいて、そこで気付いたのは自分の気持ちだ。

気が付いた瞬間、動揺するが、それはそれとして、仕方が無いものだ。


何が変わる訳でも無い。これからも、きっと…。







 なつは兄、功と友喜を交互に見て、


「どうしたの、二人共。」

と言った。

功は、あ、いや、と言葉を濁し、友喜はそんな功の反応をぼうっと眺めていた。


「友喜?」

「…あ、なっちん?…なんか、寝不足なのかな。今一瞬、記憶、飛んでた…。」

友喜の返事に、えっ?と、なつは驚く。


「ひょっとして入れ替わっていたんじゃないの?友喜怪しいからな~。」

「人の事、おばけみたいに言わないでよ!」

友喜が反論する。

それでも以前、梨乃から聞いた通り、いつその状態にあるのかは未だに自分で分かっていないから、なつの言う事ももっともだ。


功は同じ席の空いている椅子を引いて、いつもの様に座る。


片肘を立ててその手に顎を載せて二人を見守る功は、いつもより少し憂いのある表情に見えた。

友喜はそんな功を眺めると、功はぼうっとしていて、何処か遠くを見ているのか、視線がなかなか合わない。


功が友喜の視線にようやく気が付いて、


「ん?ああ、悪い。ぼうっとしててな。」

何故か功が謝ってきた。

友喜が首を振り、軽く微笑む。

その表情を見て、功は真顔になった。


「…帰るか。」

功の言葉に、そうだね、と、なつが答え、なつと友喜は、勉強道具の片付けを始める。

なつは友喜より一足先に片づけ終わって、兄の功を眺めた。

いつもより静かに見える功は、今までに見た事の無い表情をしていた。

なつは友喜に話し掛ける。


「友喜、今度の土曜日も来れる?」

「え?ああ、うん。」

「来れるって。」

なつが功に向かって言う。


「ああ、そうか。いつもありがとうな。」

功は微笑んで言った。

いいえ、こちらこそと友喜は答え、なつを見る。

なつは横目で友喜を見てにっこり笑う。

何だか変な間が流れた。


「行こう。」

なつが二人に声を掛けて、三人はそれぞれ立ち上がった。

いつもの様に、なつと友喜が先に行くのを見てから功は後に続く。


「じゃね、友喜。」

「気を付けてな。」

二人が手を振る。

友喜が、うん、と笑顔で答えて、二人は進む方向に向き直った。

友喜は少しずつ遠ざかっていく二人の背中をしばらく眺めてから自分も前に向き直り、家の方向へと歩き始めた。




商店街を歩きながら、なつは尚も兄、功の様子を観察する。

物々しい様子の今日の功は、口数も少ない。


「ん?何だよ。」

なつの視線に気がついて功が聞いてきた。

別にい、となつが答えると、功はまた前を向き直る。


「あ、俺今度の土曜日は、午後また出てくるからな。」

「ええ~。」

「昼までは居てやるから。それで良いだろ?」

なつは面白く無いという顔になって、兄の功を眺めた。








 林の奥のたった二棟の家。

夜、有津世が友喜の部屋のドアをノックする。


「友喜、ちょっとこっち来て。」


有津世の部屋に友喜が顔を覗かせると、机の上にあるラップトップコンピュータのモニター画面を有津世は指し示した。


見ると則陽からのメールだ。


そこには最近までの修正プログラムの解析による則陽の分析が記されていた。


「…奈巣野さん、すごい…。」

友喜の口から感嘆が漏れ出た。

友喜の反応を見て、有津世は微笑む。


「友喜はもう梨乃さんとは実際に会っているし、奈巣野さん達といつか直接会ったりとかも出来るかな…。」

希望をもって有津世が言った。


「そしたらさ、きっと楽しいね。」

友喜は自分達と梨乃達一同が会した様子を思い浮かべて言った。


「友喜。」

「ん?何お兄ちゃん。」

有津世は友喜の顔をよくよく見てから、


「やっぱ何でも無い。」

言う言葉を留めた。

変なの、と友喜は笑い、教えてくれてありがとう、じゃあ、寝るね、と有津世にお休みの挨拶をして有津世の部屋から去って行く。


「うん。お休みなさい。」


友喜の閉めていったドアを見つめた後、有津世はラップトップコンピュータのモニター画面に視線を戻した。








 住宅街の一角。

友喜は今日も吉葉家に遊びに来ている。


リビングにあるテレビやらを眺めていると、ゲーム機を見つけた。


「あ、ねえ、これ遊ぶの?」

「うん、主にお兄ちゃんがね。」

なつが答える。


「あたしはゲーム、興味無いからさ~。知ってるでしょ?せいぜい画面を眺めるだけだけど。あっ、ねえ!」

ダイニングテーブルの席に座る功に向かって、リビングからなつが声を掛ける。


「お兄ちゃん、友喜とゲームやりなよ!」

「は?」

唐突な、なつの提案に功は、


「何でだよ。」

と言い、


「え~、だって、友喜もゲーム、相当好きだよ。ねっ?」

と尚も言うなつに、そりゃ、そうだけど、と友喜はたじろきつつも思い出した様に、そう言えば、と言を発した。


「奈巣野さんとのやり取りのきっかけが、このゲーム機のソフトなんです。その…小人が出てきちゃって画面バグって…、そこから始まりました。」

その事を話す友喜は何とも嬉しそうで。


「えっとだから…一緒のゲーム、作ってました?」

「…ああ、サンデンの事か。あれはアップデート用のデータは則陽の担当だけど、他の部分では、うん、…やってたよ。今もだけどな。」

ダイニングテーブルの席で座って腕を組みながら功が答える。

すごい!と友喜は喜んだ。


「始めサンデントークの掲示板に質問を載せたのがきっかけで…兄が投稿したんですけれど、奈巣野さんから返事が来て、そこから…。」


功は友喜の言葉を頷きながら聞いた。


功と友喜のやり取りを見て、


「ねっ、やりなよ!」

改めてなつが言い、功が問いたげに友喜を見る。


「サンデン好きですよ。」

友喜がその視線に答える様に言った。


じゃあ、ちょっと、やるか、と言って、功はコントローラーを握り、ゲーム機を起動させる。


もう一つのコントローラーを功は友喜に手渡して、二人でゲームを始めた。


「あ、これゲストモード、あるんだ。」

友喜にとって今まで気付いていなかった仕様らしい。

功は僅かに頬を緩めて、目の端に映る友喜をちらと見た。


「何だ、ちょこまかちょこまかと動くなあ。」

友喜の操作するキャラクターの動きに愉快そうに功が言う。

ははは、と友喜は朗らかに笑って、そんな二人をなつは微笑んで眺めていた。


ゲームに夢中になって、いつの間にかお昼近くになった。

なつは、今日も種類、選ばせて貰ったら?と友喜に話を持ち掛ける。


「友喜ちゃんが選ぶのは良いけど、なつ、お前だけ家に残ってるのって、何なんだよ。お前も一緒に来いよ。」

功が文句を言う。

功の言葉に友喜もなつに対して首を傾げ、なっちん一緒に行こうよ、と言った。


「あたしは良いの!」

「なつ、お前だけ出ないって、なんか、ずるくねえか?」

なあ、と友喜に同意を求める。

友喜と功がなつを見ると、なつはいたずらっ子の様な顔をして、にこにこ笑っていた。


「はあ、友喜ちゃん、どうする?」

「あ、大丈夫ですよ。一緒に行きます。」


二人は今日もなつに玄関で見送られて、バーガー店へ足を運ぶ事になった。



「…ったく、なつのあれ、何なんだろうなあ。」

「ははは…。」

功の独り言の様な呟きに、友喜は力無く笑う。


二人は外の空気を気持ち良く浴びながら、歩調もゆっくり歩く。

功は後ろに付いてくる友喜を見て僅かに微笑み、前に視線を戻した。



 店の前に着いて、友喜は功と店の脇にあるメニュープレートを一緒に見る。


「ん~。」

どうしようっかな、と友喜は言い、前回と同じアボカド入りのバーガーに決めた。


「ん、それで良いか。」

功が答え、財布を取り出しながら注文口に行った。



 注文が済み、二人は店の外側に設置されているベンチへ座ると、功が話す。


「なつはよ、たまに我が儘で、ごめんな。」

友喜が首を振る。


「俺は大人になってたけど、母親が亡くなった時、あいつはまだ小さかったからな。その分俺に甘えてくるんだろうけどな。」

そう言えば、なつからそういう話をあまり聞いた事が無い。

いつもしっかりしていて、自身の目標に向かって歩んでいるなつの姿ばかり、今まで見てきた気がする。


「なっちんにとって、功お兄ちゃんが心の支えなんですね…。」

なつを想い、しみじみと友喜は言った。


自分の名前を不意に呼ばれた功は、思わず振り向いて友喜を凝視した。


「…あ、なっちんにそう呼べって言われて…、」

功の反応に友喜も驚いて、ダメでしたか?と、小首を傾げて尋ねた。


「いや、ちょっと驚いただけ。…そう呼んでくれて良いよ。」

胸の内が温かくなったのを確かに感じて、功の顔には自然と笑みがこぼれた。



座った二人の間に、爽やかな風が通り抜ける。

その瞬間、功の目が何かに注目して表情が変わったのを友喜は見かけ、不思議に思って問い掛けた。


「あ、今もしかして、何かが見えたんですか?」


功は友喜の言葉を耳にして、友喜を見つめながら時が止まった様になった。




 住宅街の一角。

功と友喜は家に着き、なつに出迎えられる。


「おかえりなさーい!」

にこにこの笑顔で迎えるなつに、


「お前な…」

半ば呆れ顔で、功はなつを見てから、どう思う?という感じで友喜に目をやる。

友喜は、また、あはは、と笑って、それをやり過ごした。


なつと友喜はリビングの座卓で、功はダイニングテーブルの自分の席で、選んだバーガーセットをそれぞれ食べながら会話を交わしていた。


「午後から、留守番を頼む。俺ちょっと行って来るから。」

「ちょっとって、どれくらい?」

「多分夕方頃まで。」

「そっか、なら友喜、お兄ちゃん帰って来るまで家居なよ。」

なつが友喜に言う。


「お前…無理言うなよ。友喜ちゃん、時間になったら帰りな。なつの駄々、全部聞く事ねえからな。」

功がなつの発言を受けて言う。


「お兄ちゃんが出掛けるからだ。」

なつが功を睨んで言う。

はあ?と功が言い、出掛けちゃダメなのかよ、と言う。


「大体何処行くのさ。」

「ちょっと…野暮用。」

功が言葉を濁した。

そんな功を、なつがじっくり観察して、


「あっ、お兄ちゃん、もしかして…!」

「お前が思ってる様な事じゃあねえよ。仕事だ、仕事。」

なつの誤解が面倒くさいとでも言う様に、功は弁解した。


「へ…仕事?」

そうだ、と功は頷き、


「友喜ちゃんは則陽の副業の事を知ってるだろ?同じ所だよ。」

友喜がそれを聞いて、ああ、と言う。


「え、お兄ちゃんもそこ通う様になった訳?何で?」

なつが追及する。


「いや、ちょっと…興味あってな。」

「ふう~ん。」

なつがまじまじと功を見る。


「え、あ、じゃあ、奈巣野さんにも会うんですか?」

急に友喜が勢い込んで尋ねた。


「え、ああ、まあ、居るだろうな。とは言っても、平日も毎日顔を突き合わせてはいるけどな。」

友喜が頬の血色を随分と良くして功の返答を聞いた。

友喜の反応は功にとって想定内だったが、功は真顔になっていた。


「ま、そういう訳だから、二人共留守番を頼む。あ、友喜ちゃんは友喜ちゃんの都合で時間に帰ってな。」

分かりました、と友喜は言い、そんなやり取りをする二人を交互に睨んでいる、なつは不服そうだった。








 飲み屋街の一角の、地下2階程まで階段を下った奥にある、隠れたオフィス。

着くと則陽が居て、その仕事に対する真剣さを、功は垣間見た。


以前から作業に集中すると周りに気が付かなくなる所があったが、それでも則陽は功が来た事には気付き、軽く手を上げて合図してくれた。

功は声に出さずに、よっ、との口の形で挨拶を交わし、自分も席に着いた。


受け取ったプログラミングのマニュアル本を開くと、今回も中身の次々と改変されていく様子が、功の目からは読み取る事が出来る。

まるで本が生きているかの様に映った。


取り敢えず適当な所から、画面を見て作業に手を付けていく。


功の様子を隣の席の則陽はちらと見て微かに口角を上げる。

そして数時間、二人は作業に集中した。




 「また、寄って行きませんか?」

オフィス近くの、古めかしい雰囲気の喫茶店を指差し、則陽が功をお茶に誘う。


「ああ、良いよ。」


店内のこじんまりとしたソファ席に二人は掛けると、コーヒーを注文した。


「今日も妹さんの所に友喜ちゃん、遊びに来ているんですか?」

則陽が聞く。

ああ、と言いながらも、今の則陽の発言で功の顔が曇った。


「どうしました?」

功の様子に気付いた則陽はその反応の訳を尋ねてきた。


なんだ、その爽やかさは。

功は則陽を見て、若干のいらつきを覚えた。


「いや、ま、お前に言っても仕方がねえし、何でもねえよ。」

「何ですか?その何でも無く無い返しは。吉葉先輩、最近何だかおかしいですよ?」

則陽が言う。

則陽は、功の顔をじっと見た。


「…ひょっとして、先輩…、」

功は則陽の言葉にぎくりとする。


「何でもねえ、何でもねえって!則陽、お前、勘繰り過ぎ!」

則陽に被せる様に功は声を大にして言った。

則陽は功をじっと見つめたままだ。


何だろう、本当にこの人は。俺が言うのもなんだけど、本当に自分自身の事に関しては不器用な人なんだな。

則陽は功を見て思った。


「まあ、良いですよ。言いたくなったら、その時は聞きますんで。…。」

則陽はあくまでも落ち着いて返しをした。


功は度々の自身の反応が嫌になって、頬杖を付いてそっぽを向く。


この人は今が反抗期なのか。

則陽は功を見て思った。








 休日にオフィスの最寄り駅の街に出て、以前から気になっていたカフェレストランで食事をする。

色味の明るい古い板がベースで観葉植物が所々に飾ってある内装の、目にするだけで和める雰囲気のお店に、梨乃は同じ会社の女性社員とのランチに来ていた。


「野崎さんの話、面白い!そういう事、話す人だとは思わなかったよ。」

梨乃は女性社員の言葉に微笑む。


「私も、つい最近まではそういう事とは無縁だったんですけれど、体験してみたら、プライベートが何だかそればかりになってしまって。」

面白いよ、と言って、女性社員は興味深く梨乃の話に耳を傾けた。




 「野崎さん、魅力的だから、彼氏さんもさぞかし魅力的だろうね。見てみたいなあ!」

穂乃香ほのかさんは、恋人いらっしゃるんですか?」

「私は今居ないんだ。前の彼氏とは馬が合わなくってね。」

喧嘩ばかりだったよ、と彼女が言う。


伸び伸びとして話す彼女は、梨乃から見ても気持ちが良い。


「きっと直ぐ、出来ますね。新しい彼氏。」

梨乃の発言に、穂乃香は明るく微笑む。


「良い人居たらさ、紹介してね!」

うん、分かりました、と梨乃は言い、二人は朗らかに談笑を続けた。








 住宅街の一角。

功が出掛けた後、なつと友喜は家のリビングで二人話し込んでいた。

功が居る時のなつの態度に関して、友喜が指摘する。


「…なっちん。最近のなっちん、ちょっと強引が過ぎない?」

「…」

「いくら功お兄ちゃんの為とは言え、ちょっとやり過ぎじゃない?功お兄ちゃんは優しいから、なっちんの事そこまでとやかく言わないけどさ。私はなっちんに文句言うよ。強引過ぎ!」


なつは、友喜の言葉に、う~ん、と唸りながら答える。


「あたしはさ、自分なりに勉強しながら、効率的な方法探っている訳。」

分かって、と、なつは両手のひらを合わせて拝み、友喜に訴える。


「効率的な方法?」

友喜は眉を寄せて聞き直す。

そう、と、なつは答える。

友喜がきょとんとする。


「とにかくそれには友喜の協力が必要なの。だからこれからも、お願い!」

なつは友喜に拝み倒す。


「それじゃあ、まるで…」

友喜はその言葉を最後までは言わなかった。

なつは功にそういった事を克服させたいみたいなのは分かるけれど、自分じゃ、なつが接しているのとそう変わらないんじゃ…、友喜は思った。


本当に効果あるのかな。

なつの取る方法に疑問を感じる。


「あんまり、功お兄ちゃんに無理言わないでね。可哀想。」

友喜のその言葉に、何処があ?と、なつは涼しい顔だ。


なつからしてみれば、お門違いの友喜の文句に、友喜こそ分かっていないじゃない、と言いたげな表情になる。


あたしが今までどれだけお兄ちゃんの事を見てきていると思ってるの。

余計な気遣いをする友喜の顔を、なつは真剣に見つめた。








 午後の割と早い時間に吉葉家から退散して、林の道を友喜が歩いていると後ろから声がした。


「友喜ちゃん。」

見ると雨見が、可愛い紙袋を手にしながら、軽い足取りでやって来た。


「お買い物?」

「そう。ちょっと欲しいのがあって。」

雨見が微笑む。

「友喜ちゃんは?」

「友達の家に行ってたの。」

そう言いながらも視線を落とす友喜に雨見が気付いた。


「…何かあった?」

「雨見ちゃん…。」

「うん?」

雨見は包み込む様な柔らかい表情で友喜を眺めた。


「今度…今度相談に乗って欲しい…。お兄ちゃんの居ない場所で…。」

友喜を眺めていた雨見の表情が真顔になった。


「うん、分かった。あ、今からでも。時間、大丈夫?」

雨見が友喜に聞く。

友喜は頷き、じゃあそうしよう、と雨見は言い、自分の家へと誘った。


「ただいま~。友喜ちゃん連れて来たの。」

「こんにちは。お邪魔します。」

友喜は雨見の両親に挨拶をして、2階の雨見の部屋へと移動する。



初めて入ってみた雨見の部屋は、カントリー調の家具で統一されていて、揃えてあるピンクの色味も相まってスイート感満載の雰囲気だ。


「可愛い…。」

友喜が感心して言うと、雨見は、ありがとう、実はこれお母さんの好みなの、と友喜に教えた。


そして床に敷いてあるラグの上で二人クッションを背に座ると、雨見は友喜が話し出すのを待つ。


「はい、これ、抱き抱え用。」

雨見がベッドを見上げ、お気に入りの黒猫のぬいぐるみを手にして友喜に渡す。

ふふ、可愛い、と友喜が笑いを漏らし、ぬいぐるみの頭を撫で、腕に抱えて抱きしめる。

そして少し経ってから、伝えたかった事をぽつり、ぽつりと口にし始める友喜は頬が紅潮していた。



「そうなんだね…。」

雨見が友喜をいたわる様に見つめる。

友喜は自分の想いを話す事で雨見の優しさに触れて、不意に泣きそうになった。





 雨見の家の玄関ドアから、友喜が出て来て、そこから直ぐの自分の家の玄関ドアを開けた。


「ただいま~。」

「おかえり、友喜。」

有津世が友喜の顔を見に玄関まで来る。


「ちょっといつもより、遅かったんじゃないの?」

「そうかな。普通だと思うけど。」

友喜の返しに有津世が幾分か不満気だ。


「そうかあ~?そうやってずるずる、遅くなったらダメだぞ!」

「んもう、いつまでも子供扱い。」

友喜が文句を返した。


「子供扱いしていないから、注意するんだよ。全く、我が妹ながら…。」

吞気なんだから、と有津世は言う。



「お兄ちゃん、ほら、良いからこっちおいで。友喜も鞄置いておいで。ご飯よ。」

母の声だ。

母は、兄の有津世がいつまでも友喜に世話を焼いているのを見て、その事で父と談笑している様だ。


柚木家は安泰だな、父が言うのが、リビング奥から聞こえた。




商店街を歩くなつと功の記述で誤字のあった一文を「なつの視線に気がついて功が聞いてきた。」と訂正しました。(2026年1月8日)

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