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見上げる空に願いを込めるのは何故だろうか(仮)  作者: 晴海 真叶(はれうみ まかな)
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揺らぎの中で

挿絵(By みてみん)










 「見えた?」

「見えたよ。とても綺麗。」

きらきらと砂の様に細かい光の粒子の波を目にして私は声音も柔らかく肯定した。





 ほとんどの大地が濃淡様々な緑色で埋め尽くされた星。


石碑の前に座り込みいつもの様にアミュラを自分の胸に寄り掛からせようとしたツァームに、アミュラは戸惑った。


「アミュラ…?」

「何?」

「そんなに離れてると、僕の額の石にアミュラの手が届かないよ。」

「ああ、そうだった。」

ツァームの座る位置から足ひとつ分程離れて座ったアミュラがツァームに指摘されて座り直す。


「…もっとちゃんと寄り掛かって。でないと辛いでしょ?」

アミュラの手をやんわりと掴みながら自分の額の石に導き、ツァームは更に注意する。


「うん…。」


ツァームの方に腰を寄せ直しながら、ふと気になって片方の袖の中に手をやった。


「…?」


袖の中はすかすかとしていて、居る時も割とすかすかと触り心地は心許無かったけれど、今のそれは、何も無い、すかすかした感触だった。


「あ、ねえ、ツァーム…。」

「なあに?」

「あのね、キャルユの事なんだけど…。」

「うん。」


背を預けて片手をツァームに導かれていた状態からツァーム側に振り返り、ツァームの手は掴んでいたアミュラの片手を優しく離す。


「妖精達と話したの。妖精達はキャルユはもうこっちに戻れないんじゃないかって話していたけれど…。」

「うん、」

「現状、ぽわぽわが、キャルユな訳でしょう?」

「そうだね。」

「それってある意味戻れているから、妖精達の言った事は当たっていなくて、だから、その、…今はぽわぽわの姿であっても、いつかはキャルユの姿でまた会えるんじゃないか、って、そう思ってて…。」


アミュラの言葉を受けて、ツァームは感慨深く頷いた。


「確かにそうだね。アミュラがぽわぽわと喋れてキャルユだって教えて貰ってから、前とは違うけれどキャルユとのやり取りも再び出来る様になった。格段に可能性は増えたよね。」

ツァームが嬉しそうにアミュラに言った。

アミュラはツァームの反応をじっと見つめて、また口を開いた。


「戻ってきたら、キャルユ、大泣きしそう…。だって、会いたかった相手に…会えるんだし…。」



あちらの世界でも私達は会えている。

一緒に居る。


以前、キャルユから教えて貰った別の世界の情報だ。


その言葉を借りるとするなら自分達は離れ離れなんかにはなっていない。

けれども、今、目に見えている自分達の世界には同じ姿の彼女は居なくて。

再び訪れた穏やかな日々の中でも、彼女を想わずには居られない。


だから彼女もきっとそうであろうと、アミュラは思う。


キャルユの性格を知っているアミュラにとって、ぽわぽわの感情表現はややあっさりし過ぎている様に思えた。

姿形が違うと出てくる変化だろうか。

それとも、より波動の軽い存在だから成せる業なのだろうか。


ぽわぽわと接している時は心地良かったし、喜びや明るさを強く感じる。

キャルユのじめじめした部分は何処かにそぎ落とされて来ているのだろうか。

ツァームを前に考え込んでいたアミュラがツァームの声でふと我に返る。


「ここを発つ直前に見せた彼女の顔を思うと、戻ってきたとしても果敢な表情でにこりと笑うだけかも知れないと僕は思うけどね。」

「…。」

「泣いていたのは、アミュラ、君だよ。大泣きは…君がしていた。」

「…あ、うん。…そうだったね。」


指摘を受けてほんのりと頬が赤くなったアミュラが、渋々頷く。


今の今までぼんやりと憂いていた内容がツァームのひと言で何処かへ吹っ飛んでしまう。つまりは自分の憂いている事は大した事では無いかも知れなくて。

石碑の外側へと足を一歩踏み出した時から、それ以前の自分とは違う自分が既に居座っていて時にこうしてうじうじと考え込んでしまう。


前にも思った事があった、キャルユの置き土産…。


アミュラは、はっとした表情になった。








 次に出会うのはいつかな。

とても楽しみにしている。


空間を経て、距離を経て、幻想いっぱいの世界の中で、

こうしてあなたと遊ぶ事が出来て嬉しいの。


だってね、この遊びは喜びの感情が増すでしょう?

勿論、それだけでは、無いけれど。


でもね、出会った分だけ、ものすごく嬉しいの。

それは、他の感情を持ち合わせているから感じられる。


だから私達は、この遊びを選んだの。


とびきりロマンチックだし、とびきり、らしいと思うんだ。


だってね、私達、表現を思いっ切りする方でしょう。


思いっ切り叫んで、思いっ切り怒って、悩んで、泣いて、沈んで…。

その後に来るから、

だからこれだけ、喜びが深く感じられるんだ。


深く眠った後での喜びは、これほど強いものなんだと、私達は手を取り合って大喜びするね。

きっと…。








 林の奥の二棟の家。

今夜は各家家の照明がきちんと付いて周りの林はぼんやりと照らされている。


手前側の漆黒の外壁の家では、夕食を終えた友喜の部屋に有津世が再び訪問をしていた。


「友喜。もうそろそろ寝なって。昨日、一睡もしていないんでしょ?」

「これ。面白い。」

人形を掴んだ手で、床に腰を下ろして人形の家を弄っていた友喜が有津世に振り返って発言する。


「そんなにそれ、気に入ったの?また明日、帰ってから遊んであげて。…明日はカフェに寄るの?」

寄らずに帰るのなら遊ぶ時間、沢山取れると思うよ、と有津世は助言する。


「明日も、明後日も、その次の日も、学校の帰りにはカフェ、寄るの。」

「…。」

友喜の言葉を聞いて思った。

今の友喜は吉葉家の兄妹に懐いているんだっけ。


にこにこ顔で言う友喜を、有津世は気の抜けた表情で見守る。


「そっちの楽しみも、逃す訳にはいかない、か。」

「楽しい!ね。」

「はは。楽しそうだね。だけどね、ちゃんと寝てね。俺はもう戻るから。分かった?」

「…はーい。」

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」

人形を掴んだままで、友喜の側にしゃがんでいた有津世が腰を上げて部屋から出て行くのをじっと見つめて、挨拶を返した。


部屋のドアが閉められて、自分だけになった部屋を友喜は見回すと、人形をそっと床に置いて机の傍に寄った。

そのまま席に座ると、机の奥に置かれた鏡を覗いて自分の顔を見つめた。








 繁華街に埋もれて存在しているワンルームマンション。


穂乃香の前置きした台詞は何処へやら、夜中じゅう触れ合って過ごしていて、二人寝落ちした頃には朝焼けの明るさが再び訪れていた。


辰成から借りた、だぼだぼのTシャツを身に着けている穂乃香は、辰成の腕に包まれてすやすやと寝息を立てている。


辰成は薄っすらと目を開けたが、穂乃香が自分の胸元に頭を埋めて眠り込んでいるのを見て、安心してまた眠りの中に戻って行った。








 街を散策するのに丁度良い日和で、足取りはより軽く、梨乃と則陽は目的の店を順繰りに見て回る。

数々の製品を眺めて、横に置いてある説明書きを読んで首を傾げる梨乃に、則陽が言葉を添えると梨乃が、なるほど、と頷く場面が何度かあった。


「そろそろ何処かでお昼を食べない?」


則陽の提案に梨乃が微笑んで頷く。


「何を食べようか。」



 梨乃のリクエストで、二人は最初のデートの時に来たカフェを訪れた。


開店して間も無くの当時と比べてそこまで混み合っては無く、店内の落ち着いた空気に梨乃は則陽に笑みを見せた。


「席、どこに座る?」

「じゃあ、あっちは?」

則陽が梨乃に席を指し示して梨乃が頷く。


席に移動すると梨乃が自分のタオルハンカチをテーブルに置いて、二人は注文口に並んだ。


天井近くの壁に掲げられているカラフルなメニュー表を見上げて、


「前とメニュー、そんなに変わって無いみたいね。」

梨乃が言う。


「うん。梨乃はどれにするか決めた?」

「え~っとね…。」



 メニューを選んで注文を済ませた後、二人は受け取り口付近で立っていた。


ここでも初めてデートをした時の事を思い出す。



やたらと連れ回されて何だか良く分からなかったけれど、二人で歩いていた路地からこの店を見かけて店内に二人で入った時には梨乃の中での緊張は随分と解けていた。


彼の言動はいちいち純粋で、自分の好きな物に対する真摯さが内容が分からないなりにも伝わってきて、その内に和んできた。

面白い。

気分が弾んできて。

自分を口説きたくて誘ったんじゃ無いのかな、この人。という疑問を口に出したくなるくらいには、方向性が違うんじゃないかって思って。


びっくりするくらいに目を輝かせて話す彼に、梨乃はいつの間にか惹き込まれていた。

こうして、あの日も受け取り口で注文の品を待ちながらも、隣の彼へと気が向いている自分が居て。

思い出す度に、淡く胸が躍る感覚を覚える。



やたらと頬が緩む梨乃を目の端に入れて則陽は柔らかな表情になって、二人はのんびりした面持ちで受け取り口に注文の品が出てくるのを待った。








 「うん。良い香りだ。」

カップに口を付けてから二口、三口程飲んでから改めてお茶の香りを嗅ぐ。


香り立つお茶を自分も淹れて貰ってから、シェールの動きをぼんやりと眺めていた。


自然にこの場に居て、この空間に備え付けのティーセットもあたかも自分のものであるかの様に扱っている。


「えっと…。」

「シェールだよ。」

「シェールは、何でそんなにリラックスしているの?」

「リラックス?」

「そう。だってここはあなたの場所じゃ無いじゃない。…もしかしてこの先もずっと一緒に居るの?」


いぶかし気な表情で私は聞く。

ずっと居るのなら昼寝が出来ない。

だって、気になるし。


「もしかして君は、僕が居る事が邪魔って言いたいのかい?」

「そう。あ、違う。えっと…でも、そうかも。」


考えながら答えた私に、シェールは顎を落としそうな勢いで口をあんぐり開いて反応する。


「ひどっ!ひどいっ!ひどいよっ!いくら君がお茶目な性格だからって、僕を邪険に扱わなくてもいいじゃないかっ!」


私は目を丸くして驚いた。


「え?邪険?違う!だってお昼寝出来ないんだもん!」

「昼寝?僕が居ても出来るでしょ?」

「ええ~、安心出来ない。」


再び顎がからんと落ちそうなくらいに口を開けて愕然とするシェール。


「おっかしいな、僕の持ってる情報での君のイメージはそういう事言う人じゃ無いのに。」


先程開いたメモ帳を、また何処からか取り出してぺらぺらとめくる。


「何はともあれ、情報を更新しておこう。君は、なかなかの鋭い指摘もする事のあるお茶目さんってね。」

「…。」

私は大きくため息をついた。


気を取り直して淹れて貰ったお茶をようやく飲む。



「あれ、これ、私が前に飲んだお茶の種類と違う。…茶葉、入れ替えた?」

「ううん。こうやってやったんだ。」

パチンと指を鳴らす。


「それで変わるの?」

「好みの味にね。」

「…。」

でも見ていたけれど、さっきはそんな事している様子は見当たらなかった。


腑に落ちずに、もうひと口お茶を飲む。


「また、味が違う…!」

「でしょ?もう一回鳴らそうか?」

「うん!面白い!やってみて!」


パチンと指を鳴らしたのを見てから、私はお茶のカップに口を付ける。


「ああああ!またまた違う!すごいね!」

「ふふ~ん。こういうのが好きなのか。ならね、いくらでもしちゃう。はい、ここにビスケットがありま~す。」

「ふんふん。」

「ビスケット、好き?」

「好きだよ。」


するとシェールはおもむろにビスケットの載っている小皿を差し出して、私にひとつ取る様に促す。


私はひとつと言わず、ビスケット全部を、自分の手のひらに載せた。


「…何で全部取っちゃうんだい?」

「だって、消えそうだったから。」


私の行動にシェールが高らかに笑い、私はむっつりした表情になって無言でビスケットを口にする。

少々疑いの目でシェールを見ながらビスケットをまたひとつ口にした私は、シェールが手のひらで空になったお皿を一瞬撫でつけるのを目にした。


すると、今度はきらきらと宝石の様な様々な色味のひと口サイズのゼリーでお皿がいっぱいになった。


「わあ。」

驚きながらも、やっぱりビスケットは取っておいて良かったと変に安心した。


「あ、待って、次に進むの、待って。」


きっと同じ事を手に受け取る前にしたら、今、目にしているゼリーはきっと消えてしまうんだ。

私はビスケットを急いで食べ終わろうと手と口の動きを速めた。


「そんなに急ぐ事無いって。君の危惧する所が分かったよ。これも食べたいのなら、ほら、ここに載せておこうか。」

ゼリーの盛られたお皿をティーセットの置いてある小さなテーブルに置いて、代わりに何も無い手のひらを上に向けると次の瞬間に別の皿が何処からともなく現れて手のひらに載る。


私はビスケットを食べる調子が再びゆっくりになりながら、目を一瞬見開いたけれど直ぐに表情を元に戻す。


「それ、すごいと思うけどさあ、最初っからお菓子を載せる事は出来ないの?」

「いやあ、鋭い指摘を貰っちゃったなあ!何て言うか、丁寧さ、って必要でしょ?」

「そこに丁寧さは要らない。」


真顔になって否定する。

シェールは、ははは、と笑って、手のひらに載せている空のお皿を撫で付ける様にもう片方の手のひらを動かした。

すると今度はドーナツがてんこ盛りに盛られている皿に一瞬にして変わった。


「あ~、何かもう、甘い物は良いかも。しょっぱい物が食べたい。」

「えっ?もう、驚いてくれないの?君、判定厳し過ぎじゃない?こんなに直ぐに飽きられるなんて…!」

眉尻を思いっきり下げて、悲しそうな表情をシェールは見せた。


「手放しに喜んでくれる状態がもっと続くと思ったんだけどなあ…!もういいや。やーめた。」

「…しょっぱいもの。」

「僕は甘党なの!甘い食べ物しか、出したくない!」

「え~!」


クレーム色多めの音が私の口から漏れる。


「何かもうがっかり。」

「僕もがっかりだよ!君って人は、もう少し慎ましく喜ぶ事が出来ないのかい!」

シェールの大声が響いた後で、私が齧るビスケットの、かりっと言う音が空間に響いた。








 音楽が聞こえる。

青い空間の天井近くから聞こえてくる音楽だ。


鈴の音の様で、誰かの笑い声の様で。

実に賑やかだった。


あの時、彼が龍の姿で対話してくれてから、私はいつの間にかこの空間に移動していた。


暗闇の空間に閉ざされたままである状態からは脱し、代わりに青い色味に囲まれた穏やかな空間に来て留まってからだいぶ経つ。

この空間の中でも閉ざされてはいるが、暗闇の中に飲み込まれるよりはずっと良い。


何故なら、こうして賑やかな音は聞こえるし、たまに、不思議と…、私の望んでいた情景がぱっと意識に入り込んでくる。

そんな時はすかさず自分を表現した。


幻だったかも知れないけれど、それでも私にとっては宝物だ。


ふと気が付くとやっぱりこの空間に居た私は、その宝物を胸に抱き、うとうとと夢を見る。

もう会えないかと思っていたから、一瞬でもその情景が目に出来るだなんて、それこそ夢みたいだ。


そう、私はずっと夢の中に居て…。

きっとこのゆりかごみたいな空間で過ごし続けるのだと理解している。


快適な音に、たまに浮かぶ幻。

穏やかな空気。


私は幸せだった。

きっと…。


ほろりと頬から流れる涙を感じながら私は目を閉じた。








 月に一度だけ訪れる街で、兄、功は妹のなつのリクエストで、文房具店に一緒に寄っていた。


功が妹らしいと思うのが、こういった場面での彼女の反応だ。


普段はともすれば自分よりもしっかりしていて目尻が下がり気味の可愛い顔に似合わずクールな印象の妹が、店に並んだ数々の商品を見て頬を綻ばせている。


この笑顔が見れるのなら、と、功は服も一緒に買わないかと持ち掛けたが、なつは譲ってはくれず、自分で買うのだと功の提案をすげなく切り捨てた。

だからこそ却って貴重なこの時間は別々に暮らしてからも果たして発生するのだろうかと、疑問を持ちながらも今一緒に居れる事に静かな感動を覚えて胸にくるものがあった。


こんなに可愛い妹がもう少ししたら自分の元を離れて一人暮らしを始めたいとは本人たっての希望だ。

応援しない訳にはいかないし、これまで保ってきた自分の姿勢を思えば歓迎するべき意向だ。

だけれど、やっぱり…。


「お兄ちゃん、どうしたの?ぼうっとして。」

気付くと目の前にぬいぐるみのペンケースを持ち出して、見てこれ可愛い、とぬいぐるみの顔を見て嬉しそうに笑顔を見せるなつの姿があった。


「めずらしいな。なつがそういうのに注目するなんて。欲しいのか?」

「ううん、べっつに~。ただ、可愛いな、って。」


今まで父や母から、また他からの頂き物以外ではあまりそういった類の物を欲しがらないなつだからこそ功は注目して、欲しいなら買ってやると、のたまった。


「良いよ。そういうのは友喜に取っておきなって。」


分かった風な口を利いて遠慮するなつに、


「友喜ちゃんは友喜ちゃん。なつ、お前は俺の妹だろ?たまには、こういうの欲しい、ってせがんで良いんだぞ。」


どっちかと言ったら功がそうして貰えなくて寂しい、みたいに傍から見るとその姿は映った。


「本~当にいいんだってば。じゃあさ、見終わった後で、どっかでデザート食べたいな。それなら、したい。」

「おう。良いぞ。」

なつの言葉に功は二つ返事で承諾して、もうちょっと見て良い?と聞いてくるなつに機嫌良さそうに頷いた。








 ツァームの腕に包まれる温かい感触を感じながら、アミュラはツァームの見えている情景が自分にも見えた事を伝える。



緑の濃淡で塗り尽くして中央にぽっかりと空いた穴には白色と虹色が渦巻く星。


アミュラはツァームの誘導で術を一緒に執り行っていた。


今回も見えた、黄緑色の綺麗な光。

回を追う毎に、こちらの術を認識している様に、意識している様に、アミュラは感じた。


きっとキャルユは、私達の術だと言う事を向こうの星で認識しながら光を迎えている。


それは温かくもあったし、胸を打つものでもあった。


別の、存在形態で今も尚、共に居てくれるキャルユの存在を、アミュラは愛おしく思ったし、常に抱きしめたい気持ちでいっぱいだった。

キャルユからの深い愛情を向こうの星からの光でも、とても強く感じる。


真っ直ぐに、こちらに光を放っていて、光だけだけど確かにそれを受け取れるのだ。


私達への愛情が消えていない事、そのともしびを受け取っているのを肌に感じて、術を執り行っているだけなのにアミュラの両目からは、はたはたと涙がこぼれ落ちた。


「…アミュラ。」


手の震えを感じてツァームが自分の額からアミュラの手をそっと外すと自分の前に背を預けて座って居るアミュラの顔を覗く。


「あ、ほら、またキャルユの光が見えたでしょう?…感動しちゃって。」

「…今日も、元気そうだったね。」


多くは言わずに、アミュラが落ち着くまでツァームは自分もキャルユへの想いを巡らせる。


ふと片腕の袖の中にもぞもぞと動きを感じて、アミュラははっとして袖の中を確認する。

先程は居なくなっていたぽわぽわが、戻って来た様だ。


アミュラはぽわぽわを袖口から取り出すと、涙の伝った頬が緩んだ。


「ぽわぽわ、おかえりなさい。」

ツァームが前のアミュラの手元を覗く。

半分透き通っていて、感触もすかすかのぽわぽわがアミュラの両手のひら近くでふわふわと浮かんでいた。


「何か言ってる?」

「うん。…笑顔だよ、笑顔!笑って!…だって。」

アミュラからぽわぽわの言葉を伝達して貰って、ツァームもアミュラに続いて顔を綻ばせる。


「ぽわぽわって、そういう事を言っているのが多いね。」

「うん。笑顔の練習、付き合ってくれたのもぽわぽわだし…。」

「笑顔の練習?」

アミュラの言葉にツァームが首を傾げる。

アミュラは思わず言ってしまった言葉に一人慌てた。


「あっ、ほら、ちょっと前に…前の、事だから。…あの時は、ごめんなさい。」


アミュラから出る言葉を真顔で聞いていたツァームが、再びふっと笑った。


「僕も、だよ。今もずっとあのままだったら…って思うと、ぞっとするけどね。」

アミュラも笑顔になって、ツァームに頷いた。



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