クリスタルの中で
~泣き言を言ってもしょうがない、しょうがないよ…。
ツァームとアミュラとキャルユの三人は、立ち枯れた樹の前に来ていた。
エールを再度送ってみるためだ。
樹は立ち枯れてはいたが、幹は不思議と虹色の光を帯びていた。枯れた当初は樹そのものの色が抜け落ちてしまったかの様だったのに。
「これは…。」
「樹が完全には枯れていないって事かな…。」
この現象自体、見るのが初めてで、彼等の額の石がこれについて何かを教えてくれる訳でも無かったから、三人は、ただただその光景を眺めていた。
「この幹の色は…まだエールに包まれているの?」
「エール、足りているみたいだよね…。」
「この樹は、まだ僕達に望みを残してくれているみたいだ…。」
きらきらと幹が光り輝くのを三人は一様に見上げ、胸が熱くなるのを感じた。
「…キャルユ、」
「何?」
「さっき話していた、向こうの星の事を教えて。」
「ん~、そうね…、こことは違って、随分と、そうね、型にはまった世界だわ。私達がこちらの世界で受け持つ役割とは違う形で、最初から大きな枠組みがされていて、一律に暮らす様な仕組みがあるの。」
「なんだか不便そうだね。」
「そうね、その中でも私達は、随分と恵まれているわ…。向こうの星では、親という人達と一緒に暮らしているわ。」
「親?僕達の額の石の事?」
「人よ。ああ、そうね、生まれ方からしてこちらの世界とは違うのよ…。
額の石は、向こうの星では着けていないわ。私達のそれぞれの親は、とても愛情深くて、私達の意思をとても尊重してくれる…。」
「生まれ方…あたし達、いつの間にかここに居たよね…。」
「そうだね。」
「さっきも言ったけれど、向こうの星は随分と空気が重いの。」
「ねえ、なんで向こうの星は空気が重いんだろうね?」
アミュラの質問を受けて、キャルユがう~ん、と固まる。
「なんでかしら…、とにかく、あんまり跳べないし、ツァームがする様なテレポートも無いのよ。」
「え、じゃあどうやって移動するの?」
「こちらの世界とは別の方法で…道具を作って、それに乗ったりしているわ。」
「ふぅ~ん…不便なのか便利なのか分からないね…。」
アミュラが肩をすくめる。
「確かにアミュラの言う通りだわ。向こうの星ではこっちの世界よりもずっと、色んな物が複雑。向こうの星での私達は、それを喜びで持って体験してる。」
「あたし達って、別の世界でも幸せなんだね。」
アミュラの感想に、キャルユは優しい微笑みと共に頷き返した。
「そうか、それとさ…、」
今まで黙っていたツァームが口を開く。
「アミュラが向こうの星では向こうの僕達に、こちらの星の情報を教えてくれているって言っていたけど、どうしてアミュラは今、その記憶が無いんだろう?」
「確かに、そうね…。何で覚えていないのかな…。」
軽く首を傾げるアミュラ。
キャルユも不思議そうな顔をする。
「なんだか不思議な事が多いわね、どうしてそうなのか、はっきりしない現象ばかり…。」
「ひとつずつ解いていくしかなさそうだね。」
三人は空を見上げた。
青空と星空のちょうど混じり合う位置。そこに別の自分達を想って…。
特に何かがしたい、とかは無い。
仕事して、いつものご飯を食べて、たまにスイーツとかを楽しんで、それで良かったのかも知れない。
上手くいっていたと思っていたのに、不意にどうしても寂しくなって…自分から壊してしまった。
すると、自分が壊したものの大きさを知った。
あれから私は、まるで抜け殻の様に過ごしている。
傍から見たら、充実した毎日を送るOLに見えるかも知れない。
毎日綺麗にお化粧して、仕事にきめ細やかな配慮をして、それでいて頑張り過ぎずに自分の時間もある。
何が大切か、だなんて、壊れる前は誤解していた。
全ては自分の我が儘で、寂しさで、壊してしまった。
あれほどにも彼の事を愛していたのに。
小綺麗な外観の小さなマンションの一角に、彼女は住まいを構えていた。
典型的な一人暮らし専用の賃貸マンションで、内装もこざっぱりとしている。
今日も仕事が一日終わり、日が沈む少し前に彼女は自室へと辿り着いた。
低いヒールのオフィス靴を玄関でかがんで脱いで部屋へと上がり、テーブルに小さなビニール袋を置くと、その中から缶ビールと弁当を取り出す。
おもむろに缶ビールを開けると、最初の一口を飲んだ。
ちょっとの間だけでも、虚しさを紛らわせたかった。
弱気が拍車をかけて、毎晩こうして飲んでしまう。
美味しいと思えたら別なんだろうけれど。
美味しいとも思えぬまま、こうして飲んでいるのが問題だ。
もし、今の自分の姿を彼が見たとしたら、どう思うだろう。
余計に嫌がられるな、きっと。
分かりきっているのに、何故私は毎晩同じ事をしているのだろう。
こざっぱりとした内装に、特にインテリア等の装飾にも気を配っていない洒落っ気の無い部屋で、彼女は一人、生気の無い夕食時間を過ごす。
人望が無い訳では無い。
仕事ではそれなりに評価もされている。
ただ、それ以上に彼女は以前の彼の事をどうにも忘れられずにいたのだ。
無理やり飛び出して、見栄を張って今まで住んでいた所よりもグレードは上げたつもりだった。それが余計に虚しいだなんて、どうかしている。
ピロピロピロ…
彼女のスマートフォンが鳴る。着信音だ。
彼女は画面を見て、通話ボタンを押す。
「あ、お母さん。うん、うん、元気だよ…。うん、うん、分かったから。うん、今度帰るから。うん、じゃあね、」
通話終了ボタンを押して、ふう、と息をつく。
電話帳の連絡先一覧が表示される画面に移ろうとして、途中で考え直して止めた。
学校が終わって放課後。
ここはお馴染み、有津世達の家のリビングだ。
いつもの様に三人ソファに腰掛け、座卓にはいつもの様に紅茶とお菓子を三人分用意してある。
そんな中、雨見の夢日記の報告から三人の活動は始まった。
「じゃあ、その樹はまだ何か出来そうなの?」
「ん…少なくとも、光ってくれていたから…、だと良いなって、あちらの世界の私達は話していたの。」
「ツァーム達の世界か…。」
自分で言った言葉に反応し、雨見と友喜もはっとする。
「クリスタルの中が、世界を編む場所に通じているんなら、そこへ行けば何か手掛かりがあるんじゃないかな?」
「そうだね!お兄ちゃんが行った場所に行ければ、何か分かるかも!」
「うん!」
途端に、ブイーンとゲーム機が起動して、テレビ画面が付いた。
ツピエルは、先日自身が作成した家の中で何やらティータイムを楽しんでいる。
家の窓部分がクローズアップされて中の様子が映し出されていた。
「ふんふんふん…♪ああ~やっぱり、紅茶にスコーンって、合うわあ!」
こちらの様子など、知らんぷりだ。
三人顔を見合わせて、まあ、いっか、と、自分達も彼の挙動は気にしない事にした。
「よし、じゃあ皆で世界を編む場所に行ってみよう。カーソルを合わせて…と、」
クリスタルにカーソルを合わせて有津世が号令をかける。
「じゃあ行くよ!」
「うんっ。」
「おうっ!」
雨見と友喜の二人とも気合十分な返事をすると、有津世はコントローラーのAボタンを押した。
画面のクリスタルは輝き出して、広がった白色の眩い光は有津世達の部屋の空間までも包み込んだ。
どーん、どーん…。
花火が上がっている。
薄暗い空間の遥か向こう側で、花火が上がっている音がする。
何故花火だと思ったかは、一度だけ花火の火花が見えた気がしたからだ。
有津世は思わず周りを見回した。
「あれ?」
残念な事に、今回も二人とははぐれてしまった。
しかもここは、前回の場所とも違うらしい。
「何をしてるんだろう…?」
依然続く花火の様な音は、有津世を次第に不安にさせた。
なんだか、平和的で無い様な気がしてきて。
これは、いつかテレビの映像で見聞きした事のある、ミサイルの発射音なのではないか。
そう感じ始めると、どんどん胸の鼓動が早くなっていった。
前回訪れた場所が平和そのものだったので、有津世は一気に気分が悪くなる。
「なんで…?何やってるの?」
いたたまれなくなって、空間から逃げるのにもどうしたら良いのか分からない有津世は、音がする方へと、力無く近づく。
近づいてみると、次第に様子が分かってきた。
何かに応戦している。
黒いモヤモヤが空の上から次から次へと落ちてきて、迎え撃つ花火の音が炸裂する。
花火は黒いモヤモヤを跳ね返そうとして放たれているみたいだ。
黒いモヤモヤは、跳ね返されて霧散するのもあれば、跳ね返し切れなくて、地面まで到達してしまうものもあった。
到達してしまった所の地面を見ると、その部分だけ、どす黒い。
良くないものなのだろうと容易に推測出来た。
雨見が見たのは、これかな…?
ただ、雨見は、何かが壊されていく風景だったって言っていたから、また違うものかも知れない。
目の前の景色は、壊されてはいない、地面が侵食される類のものだったから。
有津世は自問自答をしながら、火花を散らした光景を見守っていた。
「お兄ちゃ~ん、お兄ちゃ~ん!」
友喜が空間で叫ぶ。
「有津世、ここには居ないみたいね…。」
雨見は友喜に振り返って言った。
「ここはどこなんだろう?」
二人が来た所も、前回の場所とは様子が違っていた。
友喜が有津世を呼ぶのに叫んだ時、やたらと声が反響した。
今、雨見と喋っている通常の話し声でさえも、僅かに反響するのを感じた。
薄い水色の四角い空間の中で佇む二人は、ぽつりぽつりと会話を続ける。
「雨見ちゃんが前回見たのって…。」
「これとは違う…何かが壊されていく様子を見たんだ。」
「友喜もこれとは違うのだったよ。すっごく小さな鳥さんが、くるくるくるくる体の周りを回ってくれるの。面白かったよ!」
「良いなあ。私もそういうの、見たかったな。」
「ここは何だろうね?」
「ね?」
ただただ薄い水色の空間に佇んで、閉じ込められた気分で二人は何か変化があるのかと少しの間、場所を動かずじっと立って待っていた。
けれども、何も起こらない。
「これ、端っこどうなっているんだろう。」
「ちょっと行ってみる?」
「そうしようか。」
一歩、歩き始めた時に、斜め後ろに気配を感じた。
二人が振り返ると一人の男性が立ち尽くしており、相手も驚いた表情で雨見達に話しかけてきた。
「驚きました…いや何、ここ何年かは、この場所で誰かに会ったりもしなかったものですから…。」
落ち着いた色味の和装に身を包んだ初老の男性は、はっきりとこちらに聞こえる声ながらも柔らかさを兼ね備えた口調で第一声を発した。
雨見と友喜は顔を見合わせる。
「あの~、」
友喜が始めに口を開いた。
「ここって…何の場所ですか?」
「何って…分かっていて来たのでは無いのですか?珍しい事もあるものだ。ここは、私が瞑想した時に辿り着く小部屋です。」
「めいそう?」
「ああ、瞑想というのは、心を静まり返させ、無の境地から、別の次元へと自分の意識をワープさせるものです。」
「ワープ…。」
「え、あ、そしたら、おじさんは、実際の世界に存在している人?」
「勿論です。ああ、申し遅れました。私は、とある山奥で、神社の神主をしております、杉と申します。」
「あ、雨見です。そしてこっちは友喜です。」
「友喜です。初めまして。」
気後れした様子の雨見と友喜が慌てて挨拶を返した。
「雨見さんと、友喜さんですね、お会い出来て光栄です。」
杉と名乗った男は、物腰も柔らかに丁寧にお辞儀した。
「ところであなた方はどの様にしてこちらの空間に辿り着いたのでしょうか。先程の様子だと、瞑想を知らなそうでしたし…。」
杉の言葉に友喜が答える。
「ゲーム機がね、変なバグが起こって、それからこっちに来れる様になったの。」
「ゲーム?はて、私はゲームや機械に詳しく無いので、なんとなくのイメージしか出来ませんが…その変化があなた方にもたらされたという事は、それがあなた方にとって必要だから、なのでしょうね…。」
考えながら、言葉を選びつつ話してくれているのが雨見達二人にも分かる。
「ごめんなさい、ちょっとだけ質問して良い?」
友喜が申し訳無さそうに聞く。
「ああ、いくらでも。この様な状況は珍しいですし、折角の機会ですから。」
「ありがとうございます。あのね、私達、とある世界を助けたくて、それでこの空間が何か鍵になるかもって試しにやってみて辿り着いたのがここなの。でもね、何をしたら良いのかてんで分からない。今、雨見ちゃんと、どうしようか、取り敢えず歩こうか、って話してたの。」
「世界を、助ける…。お二方、奇遇ですね。私も、実は自分の神社に少し、問題があって、今回はその解決策を探れないかと、瞑想をしたものですから…。」
「神社に?神社に何か問題があるんですか?」
雨見が反応して友喜の後に続く。
「え、だって、神社って、守られているものじゃないの?結界とか…、あ、これは私のお母さんが教えてくれた事ですけれど…。」
「そうですね。結界は勿論あるのですが、土地のバランスを保つという意味での。ただ、エネルギーの羅針盤としての機能が、少しおかしくなっている気がするのです。」
「エネルギーの…羅針盤…?」
「はい…。詳しく話そうとすると、話が長くなるものですから、ここはかいつまんで話しますと、…神社には、大きな木があるのを、お二人はご存じですか?」
「はい、ありますよね、確か鎮守の森とか、神社の周りの木々だけは、切らずに守られているっていう…。」
「その通りですね…。そして、神社の木には、実はとても大切な役割があります。こんな風に言うと、突拍子も無く聞こえるかも知れませんが…神社の木には、宇宙エネルギーを受け取って、そのエネルギーを土地に流し込むという役割があるのです。」
「宇宙エネルギー?」
「はい、それもあって、神社の境内の木は、特に大きく成長していたりしますよね…宇宙エネルギーを受け取っているからです。」
「はあ…。」
壮大な話に、拍子抜けしながら友喜が相槌を打つ。
「ですから、とても大切な役割を受け持っているんです。それが、ここ最近、様子がおかしいのです。」
雨見と友喜は顔を見合わせてから杉に視線を戻し、彼の話に耳を傾ける。
「エネルギーを受け取っていない様なんです。いえ、少なくとも、遮られている感じがします…。あ、これは、あくまでも私の感覚ですけれど…。私の神社は、宇宙エネルギーを受け取る起点で中心なので、うちが受け取れていないという事は、他の神社でも受け取れていないという事です。このままでは、まずいと思っていまして…。」
「まずいって、何が?」
「世界全体がです。」
友喜が、う~ん、と唸りながら考える。
友喜を見つつ、雨見は、あっ!と声を上げた。
「あの、杉さん。その宇宙エネルギーって、どこから来るのかご存じですか?」
興奮しながら雨見は聞く。
「宇宙エネルギーは…、宇宙からだと思います…。何故でしょう?」
「あ、いえ、その…。」
雨見は、自分の夢の話をして良いのか、迷った。
でも頭が迷うよりも気持ちが推して、口が先に動いていた。
「私、その宇宙エネルギーがどこから送られてくるのか知っています!」
薄い水色の空間に、三人の姿が色鮮やかに見える。
雨見は、手元に夢日記こそ無いが、詳細をきちんと覚えていたので、今まで見てきた夢の事を事細かに杉に説明した。
その横で、友喜がふんふん、ふんふん言っている。納得しているのを示す頷きらしい。
「…なるほど。それは私が言っていた話と符合しますね…。つまり私は、雨見さんと友喜さん、お二方に会う為に、こちらに導かれたのか…。」
「あと、もう一人居ます。」
「ああ、その話にあった男の子ですね。」
「今回、はぐれちゃったあ。お兄ちゃん、どこ~?」
友喜が文句を言う。
「そのお兄さんと、」
「有津世と言います。」
「有津世さんとも、いつかお目にかかりたいですね…。これぞ神の思し召しでしょう…。あなた方にお会い出来て、良かったです。」
杉の言葉に続いて雨見が言った。
「私達も、杉さんに会えて、とても良かったです。エールが、きっと、宇宙エネルギーなんだと知れたから。ただ…、」
「…。」
「解決策が分かったのでは無いです。この先は、どうすれば良いんでしょうか?」
縋るように、杉を見つめる。
「こちらとて同じ事です。話が繋がったのは有難い。けれども解決策が見えた訳では無い。そこから先は、探し続けます。」
「…そうですか…。」
やっぱり、そんなに簡単にゴールなんて見つかるものじゃ無いか、と、雨見はため息をついた。
隣で友喜は、雨見より気楽な表情をしていた。
「また会えるかな?」
「また私達、杉さんにお会い出来るでしょうか?」
「それは私にも分かりません。勿論、私はあなた方にまたお会い出来る事を願っていますが、こればかりは巡り合わせなので…。」
気付いた時には杉の姿が既に白い光の粒に覆われていて、雨見と友喜も同じ状態へとなっているのを彼女達自身で見回して認識した。
「雨見さん、友喜さん、またお会い出来たらお会いしましょう。それまでお元気で…。」
最後まで丁寧だった杉は、一足先に空間から立ち消えた。
白い光の粒子が、二人の意識を運ぶ。
足元から白い光の粒子で意識が体ごと再編成された感覚を伴って、二人の意識は家のリビングへと戻った。
「友喜、雨見!」
有津世が二人の顔を覗き込む。
「どうだった?」
「お兄ちゃん…。」
「有津世…戻ってたんだ!」
友喜は寝起きさながらで目を擦り、雨見は有津世が先に戻っていた事にひと息ついてから嬉しそうに、有津世の呼び掛けに反応した。
有津世は飛んだ先で恐ろし気な光景を目撃したのを二人に話して、雨見と友喜は二人一緒に飛んだ先の空間で会った杉の事を有津世に知らせた。
「それって結構前進じゃない?」
「やっぱり有津世もそう思う?」
「ふにゃ~あ。」
有津世と雨見は頷き合い、友喜はちょっとだけ話が難しいんだよね~、と言って、あくびをして、それでもわくわくしている事を二人に示した。
「じゃあ、エールが届かなかったのは、ここ、地球だって可能性があるの?」
「杉さんの話を聞いていると、そうじゃないかなって思えた…。」
「でもそう考えると辻褄が合うよ。異変が起こっている場所で、俺達三人が暮らしているって事に、共通して意味があるんだとすれば…。」
「ん…?ああ、そうだね!異変が起こっているのが別の星だとしたら、私達、ここにいる意味がなんだかよく分かんなくなっちゃうもんね!」
友喜が、ようやく分かったとでも言いたげに、二人に相槌を打つ。
「だとしたら…、俺達の住んでいる場所にだって何かしらヒントがあったりするのかな…。」
「そうかも知れない…きっと、あるんじゃないかな。そう思いたいな…。」
その夜、有津世は父に借りたラップトップコンピュータを自分の部屋の机の上で開き、先日則陽から届いた返信メールに返信する文章を打ち込んだ。
画面上に現れたクリスタルにカーソルを合わせてボタンを押してみたら起こった事についてと、これはバグのプログラムではもしかしたら無いのかもとの内容で。
有津世は先日送られた最初の返信メールの文字化けについても考えついた点がある。
ブロック…。
一抹の可能性を思いながら、有津世は入力し終わった返信メールを送信した。




