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好きなんて言うもんか!

作者: 柚根蛍

 思えば、入学当時から好きになっていたんだと思う。

 それは、彼女も同じようだった。


 俺たちは、いつの間にか一緒にいる時間が増えていって、今じゃ互いの家に邪魔する仲にまでなっていた。


 しかし、そんな俺たちには一つ困ったことがある。

 通学路、彼女と一緒に歩いて来ると声が聞こえた。


「おいおいあいつら、いつ付き合うんだろうなぁ」

「え?あれで付き合ってないの?マジかよ」

「いや〜、どっちが告るか楽しみだぜ」


 そうだ、ああいう野次馬がいるから僕たちは正式に付き合わない。


 なぜなら僕たちはーーーどちらも超がつくほどの負けず嫌いだからだ!


「どっちから告白するか」とか言われたら言えるわけねーじゃん!

 それは彼女も同じであり、お互い好き同士と知りながらも相手に「好きだ」と言わせようと奮起するのであった。


 お互いに「ぷいっ」とそっぽをむく。

 そうして学校にたどり着いた俺たちは教室へと入っていく。


 同じクラスで、俺の隣の隣の席だ。

 俺と彼女に挟まれている谷崎は「イチャイチャするなバカップル」と言ってくるが、二人の性格を理解してなんだかんだ、いつも三人一緒にいる。


「さー授業始めるぞー」


 さあ、今日は一体どういう手であいつに好きと言わせるか。

 授業を聴きながら、器用に俺は考える。


「あ、閃いた」


 ふと思いついた、俺はそれを実行に移すことにする。

 待ってろよ!この勝負に勝つのは俺だからな……!


ーーーーーーーーーー


 次の日、俺はボイスレコーダーを持ってきた。

 

「おいなんだ、お前また何かする気なのか?いーから早く付き合えよ」

「谷崎だってなんだかんだ優しいからな、俺に付き合ってくれよ」

「はぁ……!?お前そっちの気が!」

「ちげーよ!一緒に来てくれってことだよ!」

「なら最初からそう言え、はぁ。わかったよ……」


 渋々とした感じで、谷崎は了承する。普通にいい奴なんだよな。


「そしてこうだ!」

「おま、まじかよ。なんちゅー作戦だそりゃ」

「いいからいいから」

「はぁ、どうなっても知らねーぞ?」


ーーーーーーーーーー


 よし、これで準備は完璧だ!

 俺は、とある教室に彼女を呼んだ。


「んで?何改まって?もしかして、ついに言っちゃうわけ〜?」

「そうだ!」

「はぁ!?そ、そそそそそんな!私心の準備が!」

「俺は……俺はお前の事が!」

ポチッ

『好きだああーーっ!』


「……。」

「….……。」


 彼女からは、何故かとてつもないオーラが漂い、俺の目には鬼の姿が彼女の背後にあった。


「あんたふざけてんの!?ばっかじゃないの!?それ、ぜ〜ったい!谷崎の声じゃん!」

「あ、バレた?」

「バレたじゃないわよ馬鹿!他の奴の声使うってどーいう神経してんの!期待して損したわ」

「あの、怒った?」

「とーぜんじゃない!怒らない方が不思議よ!」


 その後も彼女の説教は続き、僕はこってりと絞られたのであった。


ーーーーーーーーーー


「だから言ったじゃんか、やめとけって」

「やばいわ俺、まともな考えが出来なくなってんのかな。よく考えたらサイテーじゃん!?」

「よく考えなくてもわかるだろ!?」

「なんだよ谷崎!わかってたんなら教えてくれよ!」

「あれ!?俺忠告したよな!したよな!」

「……はい、しました」


 そうだ、次だ。もう次を考えよう。

 でもなぁ、結構やり尽くしちゃった感じするんだよなぁ。


 何かあったっけ、他にアイツに好きって言わせる方法。

 紙に書いて、読ませようとしても失敗した。

 こちょこちょして言わせようとしても耐えた。

 テストで100点取らなかったら言えって言っても何故か100点取ったし……。


 あれ!?もしかして隙なくね!?


 しかし俺も良く言わなかったと思う。

 なんだかんだでどっちもどっちなんだよなぁ。


 因みにこのバトルのせいで、何故か好き以外のすきも言ってはいけないような雰囲気になってる。

 

 例えば「隙ありー!」とか「ハスキー」とかそういうの。

 もはやただの言葉狩りじゃんかよ。


 そしてどっちも言ってない、そろそろ決着つけたいんだけどなぁ……。


ーーーーーーーーーー


 次の日


「おーい谷崎、お前あいつから何か聞いてない?」

「何をだ?」

「次の計画とか相談されてんだろ」

「されてねーよ、というかそれもうルール違反だろ」

「はぁ、そっかあ」

「でもな、お前が言うからさ。俺も彼女の魅力に気付いちゃったんだよ」

「は!?谷崎お前」

「俺が好きって言ったら、好きって言わないお前なんかより俺の方を選ぶよな♪」


 谷崎は冗談を言っているようには見えなかった。


「んじゃ、彼女さんは俺がもらーう!」

「あ、待てよ!」


 谷崎が行ってしまった!

 俺も追わなきゃ!やばいぞ!

 くそ、まさかこんなことになるなんて、俺から言っときゃよかったじゃんかよ!



 曲がり角、いた!あいつと谷崎だ!


「俺!実はずっと好きだったんだ!良ければあいつより俺と付き合わない?」

「え!?そ、そんな急に言われても……でもいいか。あいつ言ってくれないし。いいよ、付き合おう」


 はあああああああああああああああああ!?

 まじか!まじかよ!

 俺が言うはずだったのに!

 くそ、まだだ!もう告白されたとか関係ない!言ってやる!


「おい待て!なんで谷崎なんかと!」

「あ?いたの?だって、言わないから仕方ないじゃん」

「くっ!」

「だよなー、俺の方がいいよなー」


 くそ!どうにでもなれ!


「聞け!俺はお前のことが好きだ!谷崎なんかの好きより断然好きだ!大好きだ!俺が悪かったから考え直してくれよ!お前は俺のこと好きじゃないのか!」


 言ってしまった!……ど、どうなるんだ俺!?


「……ふふっ、私も好きだよ」

「……は?」


 一体、どういう事だ?


「はい大成功〜!」

「いえーい!」

「はああああああああああああ!?」

「どうどう?俺の演技、中々のものだったでしょ」

「いやーあんがと谷崎!これで私の勝利だな!」

「は、はああ!?」


 なんだよ!演技だったのかよ、やられた!」


「ああ、そうだよ!俺は好きだよお前のこと!もう勝負終わったんだからいいよな!?好きだ!好きだ!大好きだぞ!」

「は、はっ!?な、なんなのあんた!今日まで一言も言わなかったのにそんな急に言われても、心の準備がやばいって!」

「はっはっはー!恥ずかしがったな俺の勝ちー!」

「何よそれ!あんたには負けないんだからー!」



 こうして、二人は末長く幸せになりました。

谷崎が一番の功労者。

谷崎も他の人と幸せになりました。

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