spring nap
暖かさのます春のころ、やわらかな陽の光に包まれた白い世界で、僕は小説を読んでいた。遠くで木々をゆらし緑づいた風が身にしみていくのがわかる。太陽から送られた光の一粒一粒があたりで浮かんで波打って、僕に触れたり、また離れたりをしている。そんな感触を楽しみながら視線は本の中に向いている。白い光は紙を輝かせ黒い文字を浮かびあがらせた。浮かんできた文字たちは少しずつ本からはなれ風にゆられ散らばって僕のほうに近づいてくる。ほんとに目の前までやってきて、でも止まって、右往左往してどこかへいってしまう。視線は固まったまま、でも意識はもうそこにはなくて、どこかに閉じ込められてしまった。手も足も頭も緩やかなひもでしばられたようだ。力を入れれば簡単に振りほどけるけれど、その感触がなんだか心地良くてどんどん力が抜けていく……僕らは飛び立つ。あてもなくどこかへ行きつくのはspring dreamだろうか
嗚呼、このまま光と文字と一つになれたら、それはどんなに……
目がひらくとあたりは赤く染まっている。僕らは赤に行き着いたのか。青白い風が吹く。やっと状況が飲み込めてきた。口元に手をあてると、よだれがついていた。少し焦ったが、良かった本にはついていない。少し折れ目のついてしまったページをなおして、文字がそこに埋まっているのを確認して本を片した。寒さに身を震わせ、考える。夕飯をつくらないと……
最後まで読んでいただきありがとうございます
春は暖かくて眠たくなって……だめですね




