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第81話〜研鑽〜

「流石ヴァンパイアだ。そう思うだろう?」


 アイネル達の戦いが終わり、戦場には司と二アスが作り出す音のみが響いていた。


「本当に流石。俺も見習わないと」


 司はさらに槍を加速させる。だが、それすらもニアスは弾いていく。


「いいぞ。もっともっと本気を出せ」


 激しい剣撃の中、司は力を開放する。槍は二アスの刀を透過した。


「油断しすぎだ」


 長い打ち合いと共に、ニアスの警戒心が少し緩んだ。その一瞬を見逃さなかった。


「何が起こった?」


 司は目の前の光景が理解できず、言葉を漏らす。槍は刀を透過した。だが、ニアスに当たる直前にあらぬ方向へ向きを変えたのである。槍を手元に戻すと槍は元の一直線に戻っていた。


「特殊な能力を持つのはお前だけではない。魔王それぞれが特殊な力を持っている。様々な能力を持つお前は少々特殊だがな。神の加護か、はたまた呪いなのか」


「どういうことだ?」


「気にするな。この戦いには関係のないことだった。さあ、見せてくてお前の自信に満ちたその顔が絶望に変わる様を」


 司は自分の能力を最大限に使い、ニアスに攻撃を仕掛ける。不死を利用した鬼人化や透過、魔王シンの技をもってしてもあと一歩が届かない。ニアス本来の戦闘能力もそうだが、致命傷になるであろう攻撃は必ずねじ曲がり二アスに届かない。


「万策つきたか? 良い。どうしようもないことに必死に足掻き、思考を回すその健気な表情。最高に気持ちがいい」


 二アスの言った通りだった。司は万策尽きていた。だが、司の心は折れてはいない。魔王シンに心まで破壊されたあの時とは違う。


「俺は諦めるわけにはいかない」


「よくいった。さあ来い」


 しばらく打ちあったがお互いに決定打はない。二アスはさっと刀を鞘に納める。


「そもそも不死であるお前に負けることはないにしろ、勝つことはない。それにお前の心は完結されている。心も破壊できないなら、勝ち目などあるわけがない」


 二アスはそっと司にお辞儀をする。


「絶望の表情が見れなかったのは残念だが、斬り合いは最高だった」


 しばらく間を置いて二アスは驚きの言葉を口にする。


「感謝する」


 それは、どこかで見た。同じ光景。同じ言葉。


「ここからは魔王二アスとしてやらせてもらう」


 二アスの言葉と同時に上空に魔法陣が形成される。それは司のいる位置を中心として巨大化していく。


「何が起こっている?」


 周りを見渡す。すると、司を囲むように幹部らしき魔人が遥か遠くで魔法を使っていた。初めに軍勢を率いていた三人だ。


 司は嫌な予感がして移動をしようとするが二アスに阻まれる。


「お前をここから逃すわけにはいかない」



 魔法陣を見たアイネルはこれが最悪の事態であると理解できた。


「この魔法は?」


「これは死霊系の封印魔法。その能力はこの発動場所で散った命に比例します。この土地では命が散りすぎました。これが狙いだったのですね」


「では早く魔人のところへ」


「そうですね。休んでいる時間はないです。強力なので発動には多くの時間がかかりますが、発動は三人全員殺さなければ止められません」


 重い体を無理やりに動かし、アイネル達は魔人の方へ向かっていく。


「嘘だろ」


 アイネル達の目の前にゲートが出現して魔人が三百体ほど現れた。本来であれば勝てる相手の数だが、疲弊したアイネル達にとってそれは非常に大きな壁となる。


「引け。これ以上こちらも戦力を失うわけにはいかない。今なら見逃してやる。貴様らの王もいずれ消える。本来の城に戻り休息でもするといい」


 アイネルは少しため息をつく。


「でも、私たちは引けない。引くわけにはいかない。たとえ、この命が散ったとしても王の命をお守りしたい。伝承なんて関係ない。私は王に、司君に生きていて欲しい。ただそれだけ。そのためら、この命は惜しみません」


 アイネルの言葉に他のヴァンパイアも目つきが変わる。


「この命かけても王の命お守りするぞ」


「「うおおおお」」

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