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第18話~再確認~

 司はルギス達についていくが、なぜか引き離されていた。これが息子を守る親の速さなのか。司は親というものの偉大さを改めて知った。


 元いた場所につくと、すでに戦闘が始まっていた。人間の部隊は見る限りで六十ぐらい。統一された服装から、どこかの国の騎士団であることは明白だ。数的にはルギス達が不利だが、ルギス達が負けるなんて司は思っていない。サイクロプスの強さを身をもって経験した司だからこそ分かる。サイクロプスは強い!


 時間がたつにつれて、サイクロプス側が有利になっていく……はずだった。一人ひとりがサイクロプスに勝てるほど強いようには見えない。だが、人間側が優勢だった。理由は簡単だ。人間側はきっちりとした連携でルギス達を寄せ付けない。それに比べてルギス達は単独で突っ込むばかりだった。


 ルギスもそのことには気づいているだろう。だが訓練を受けていない集団にそんなことができるわけがない。徐々に劣勢になっていく。人間側の連携の強さ。訓練をしているものとしていない者との差、人間の強さを司は改めて目の当たりにすることになった。


 疲弊していくルギス達に人間側はさらに追い打ちをかけていく。もう無理だ。戦闘の初心者である司から見てもそれは明らかだった。そのすきに、オルドがテウスを抱え上げルギスに保護したことを伝える。


「逃げろ! テウスも保護したし、もう十分だ」


 ルギスの合図で一斉にサイクロプスが撤退を始める。死んだ個体はおらず、傷ついてはいるがみんな無事のようだ。よかった。今日あったばかりのルギス達に司は心からホッとしていた。


 ルギス達の撤退に合わせて司も一緒に移動を始める。このままみんな無事に生き残りたい。


「ファイアボール!」


 司が思った瞬間、背後から魔法が飛んでくる。どうやらそう簡単には逃がしてくれないらしい。話し合えば、魔物であっても理解し合えるのに。どうしてなんだ!


「先に行け! テウスのしたことは私が責任をとる。犠牲は私一人で十分だ」


 ルギスが振り返り人間たちに立ち向かっていく。一体で勝算などないだろう。できることなら助けに入りたい。だが、それができるだけの力がない。司は力がないことをさらに悔み、暗闇にサイクロプスと共に消えていく。



「もう終わりだな魔物! 死ね!」


「これだから人間は嫌いなんだよ。人間が全員司君みたいだったら良いのにな」


 ルギスは一体で人間たちと対峙していた。体はすでにボロボロで、ひどい姿となっている。


「死ね! 魔物!」


 一人が剣でルギスを斬りつける。


 だが、その剣はルギスの掌で止まっていた。ルギスの一つ目と体が赤く発光する。


「これを使ったらしばらく動けないんだけど、もういいだろう。テウスも逃げたし、殿としての役目を果たすとしよう。一人でも多く殺し、時間を稼ぐ!」


 それからの動きは、今までの物とは次元が違った。連携をした人間たちを一人で圧倒していく。一人、また一人と人間の息の根を止めていく。だが、それも長くは続かない。ルギスの体の発光がなくなり動きが止まる。


「もう終わりか。いや、よくもったほうか。みんな長生きしてくれよ」


 ルギスは目をつぶり、その時を待つ。


「よくも仲間たちを! クソ野郎が! 死ね!」


 騎士団に囲まれる。一人の剣が、ルギスの首を狙い振るわれる。



 カキンッ


 剣がはじかれ、ルギスは無事だった。


「誰だ!」


 騎士団員が驚きで声をあげる。騎士団員の中心に現れたのは司だった。


「助けに来ました。ルギスさん」


「どうして!」


「ここで見捨てて逃げる奴が、いつか誰かを守りたいなんて。そんなおもしろい話はないでしょう」


 司は思い出していた。花音を傷つけるすべての要因を排除すると誓ったあの日のことを。そのためには何でもする。逃げてばかりでは一生強くなれない! 強くないことを言い訳にしてはいけない! 強くなるんだ!

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