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理想の姿になりました  作者: 屋野五月
3/14

現状を確認しよう 2


「・・・こんなことある?」


 ある日、俺は目を覚ますとゲームのキャラクターになっていた。

 何がどうしてそうなったのか分からないが、事態をまとめるとそんな感じになる。

 場所も持ってる道具もわかってることは少ない。


 だが少し進展した。わかったことはほんの少しだがそれでも十分だ。

 一つ分かれば後は芋づる式に謎は解くことができる。

 まずは左手にある腕輪だ。

 どこかで見たことがあったと思ったが、自分自身の姿を確認して、ようやく思い出した。

 これもフェンリル・オンラインに出てくる道具だ。








 さてここで、俺が嵌まってた”フェンリル・オンライン”について語ろうと思う。


 時代設定は今の俺たちの時代から数百年後、突如として地球に今まで”存在しなかった土地”がいくつも現れるという怪現象が起こる。

 そしてその土地から、神話やゲームとかでしか出なかったモンスターたちが現れ、人々を襲うようになる。

 どういうわけだか今までの武器が殆ど効果ないモンスターたちに、人類は追い込まれていく。

 だが、とある発明家が開発した魔法と武器によって人類の反撃が始まる、・・・という流れでプレイヤーは武器を持って荒廃した地球を探索しながらモンスターたちを倒していく、というゲームだった。


 設定が未来というせいか、その世界で使われる道具も結構特徴的だ。

 それが左手にあるゴツい腕輪。

 これはゲームの中では誰かと通信したり、メニューを開くときにこの腕輪をいじっていたはずだ。

 つまりこれを起動させることができれば、誰かと通信する事ができるし、確かGPS機能も付いていたはずだから場所の確認もできるはずだ。

 というわけでこの腕輪を起動させたいのだが・・・。


「・・・どうしようかね、これ」


 いやだって、これの現実での使い方わかんないし。

 ゲームだったらコントローラのボタン一個で使えたんだが、そんな都合のいいものこれには見当たらない。


「ぬ、この、くそ、・・・くっ、全くわからん」


 格闘すること数分、突然腕輪からポンッという音が聞こえた。

 するととある箇所から蛍光グリーンの文字列が流れ始め腕輪全体を覆ったかというと、文字は次第に空中にまで浮かび始めた。

 そして・・・。


『おはようございます。ご用件はなんでしょうか』

「・・・おはようシキ。ちょっと確認してほしいことがあるんだけど」


 空中にモニターを浮かばせながら、モニターからいつもの音声ガイド・シキが俺に質問してきた。

 ようやくこれで話が進む、そう思い俺はシキに今俺はどこにいるのか、ここはどこなのかを質問した、が。


『申し訳ありません。ここは圏外です』

「・・・はい?」

『当地点は衛星と接続できません。なのでGPSを使っての位置情報が掴めません』


 ・・・どういう事だ?俺の記憶があっているのなら、この世界のGPSはダンジョンの地下に入ろうと標高の高い山に登ろうと普通に使えていたはずだ。こんなこと聞いたことがない。


「・・・それじゃ本部や他のプレイヤーとの通信も」

『通信は私を中心に一㎞以内でしたら衛星を使わずとも可能です。通信可能か試してみますか?』

「・・・ちょっとまってくれ」


 状況を整理しよう。

 俺はさっきゲーム世界だと思っていた。泉を覗いて見えた顔が俺の作ったアバターと全く同じだからだ。

 だがしかし、ゲームと同じなのはそこまでだ。今いるところは最後にログアウトしたところと違うし、いつも持ってる装備もない。

 そうだ、武器だ。

 今気づいたけど、こんなところで武器を持ってないとか色々と怖いんだけど。


「ごめん、先に訊きたいんだけど、俺が持ってた装備どこにいったかわかる?」

『かしこまりました。装備をアップロードします』

「・・・はい?」


 それはどういうことかと訊く前に、目の前の地面に青白く光る円が現れた。

 いきなり過ぎる光景に固まっていると、そこから上に向かってせり出すようにそれは出てきた。


 出てきたのはベルトとそれにくっつくように出てきた四本の棒、それと小さなポシェット。

 光が消えると同時に出てきたのはフェンリル・オンラインに出てくる武器とアイテムボックスだ。


『装備のアップロード、完了いたしました』

「・・・なにこれ」

『緊急事態だったの私の判断でアカネ様の装備は亜空間に保存させていただきました』

「・・・ああ、そう、どうも。・・・・・・緊急事態?」


 亜空間はなんとかわかる。いつも使ってたアイテムボックスも亜空間とかに繋がっていてそこに本来の容量以上の道具が入る使用なんだとか。

 しかし緊急事態?俺そこには覚えがないんだけど。


「・・・いったい何が起こったか、説明頼む」

『了解しました。それでは、最後にアカネ様が活動を休止されていた前後から説明いたします』


 休止ってなに?


「すまん、先に休止について説明してくれ」

『休止とは、ハンターの方々が必要最低限の生命活動だけを行っている状態を指します。戦闘で多大なダメージを負ったり、自主的にそのような行動をとられることもあります。そのような場合、私に内蔵されている転移装置を使い、安全な市街地かチェックポイントの近くまで運び、処置を行います』


 ・・・説明から察するにログアウトや戦闘での敗北の事かな?

 しかし昨日俺は比較的安全なフィールドでしか行ってないから敵にやられた、ということはなさそうだし、自分からログアウトした記憶もないんだが、はて?

 それよりも今、転送装置って聞こえたんだけど。


「その転送装置を使って近くの市街地とかには行ける?」

『現在、転送ポイントを感知できませんので不可能です』


 だよね~。そんな都合よくいかないか。

 仕方がないので説明の続きを促す。


『今から8時間27分ほど前、アカネ様の居た地点に”侵食”が起こり、アカネ様は活動を休止されました』

「・・・え?」


 ”侵食された土地”。

 戦闘できるフィールドの事だ。設定的には新しい戦闘フィールドができることを『謎の現象によって地球に謎の土地に”侵食”されている』ということになっている。


「・・・いつのまにそんなことに」 

『この事は一週間ほど前、本部から連絡がありました。一年ぶりに新しい”浸食”が起こる可能性があると。この事はすべてのハンターや軍隊関係者に知らされました。過去の通達ログを確認しますか?』

「・・・・・・いや、いい。それより続きを」


 俺のただの確認ミスかよ。

 というかちょっと思い出してきた。


 確かに俺は昨日、ゲームをやってたらメンテナンスに入るってことで強制的にログアウトされたんだ。その時、終わるのが明日の朝だと書いてあって寝ることにしたんだった。


 つまりあの時のメンテナンスは丁度新しいフィールドが作られている最中だったということか。

 じゃあ、ここはその新しいフィールド?

 だとしたらなんでGPSとか使えなくなってんだ?そういう仕様のフィールドとか?


『その時、正体不明の力場が発生し、アカネ様を未知の時流へ流されそうになりました。』


 いきなりすごいこと言われた。正体不明の力場?未知の時流?


『その際、アカネ様を安全な場所に転送しようと試みましたが、失敗のリスクが高く断念しました。なので私の判断でアカネ様自身とその装備を亜空間に収納いたしました。その後、こちらの地に着いた後時空が安定したのを確認し、アカネ様を亜空間から解放させていただきました。その後、エネルギーを保存するため、私はスリープモードに移行しました。・・・以上がおおまかなこれまでの経緯です』


 なんか俺の知らないところで俺が大事件に巻き込まれてるんだけど。


「・・・ちなみに、なんで俺を亜空間の中に入れっぱなしにしとこうとしなかったわけ?」

『亜空間は本来、生命体の収容には適しているとは言えません。今回のような短時間かつ非活動状態なら問題はありませんが、長時間かつ活動状態になった場合、生命活動に支障をきたす恐れがあります』


 そうですか、ありがとうございます。ちょっと今色々と混乱していて、上手く考えがまとまらない。

 つまりログアウトさせられたところが新しい戦闘用のフィールドを作る話があって、そしてそのままメンテナンスが始まって、丁度そこにいた俺はそれに巻き込まれて、気づいたらここにいたと?

 そしてその件には正体不明の力場とか未知の時流とか関わっていて、気づいたらGPSも転送装置も使えないところに居たと?

 

 えーっとつまり?








「・・・もしかして、ここ、日本じゃない?」

『はい。ただしくは地球ではない可能性があります』








 ・・・・・・こんなことある?







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