表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理想の姿になりました  作者: 屋野五月
1/14

現状説明

 世の中には色々な”理想”がある。

 理想的な服、理想的な道具、理想的な家、例を挙げればきりがない。

 人は一人一人自分だけの理想を持ち、恐らくそれが完璧に叶えられるということは極稀な、奇跡といっていいような幸運としか言いようがない。

 それはどれだけ小さなことにも存在する。

 理想的な形、理想的な大きさ、理想的な色、これらを挙げていけば一日では語りきれないかもしれない。

 人によっては今俺があげた例にそこまでこだわりはないという人もいるかもしれない。

 だが、これは間違いなく全人類が一度以上は考えたことがあるだろう。


 ”理想的な異性”である。


 これについてなんでもいいと言う奴はいないだろう。大なり小なりみんな持っているはずだ。

 理想的な年齢、理想的な声、理想的な容姿、理想的な性格。挙げていけば絶対に語り尽くせないだろう。

 もちろん理想を全て兼ね備えた都合のいい”理想的な存在”なんて現実には現れないだろう。

 自分の理想が他人には受け入れられないということもよくある話だ。


 普通はそれに近い現実の人間か、二次元のキャラで満足してるものだ。

 だがしかし、中にはそれでは我慢できない人間もいる。それが俺だ。


 俺の理想・・・”ノリがよく明るいビ○チ感がある距離感の近い黒ギャル美少女女子高生”なのだが、これがなかなかいない。


 俺が自分の女の理想があまり一般的なオタクには受けが悪いと気づいたのは高校の時のオタクの友人と話していたときだ。

 あの時の友人から趣味が悪いと言われ、軽くケンカになりかけたが今では懐かしい話だ。

 だがその時友人にそんな女が現実にいるはずがないと言われ、そんなことはないだろうと俺は色々な手で理想の女の子を探してみた。


 当時現役の高校生だったが、真面目な校風の男子校にそんな娘は当然いなかった。

 人がたくさんいるところならと街に出掛けても、それらしい娘はおらず。

 ネットで画像を探すも二次元にも三次元にも近いものはあっても理想は見つからず。

 やつの言った通り、俺の理想とする女の子はどれだけ探しても、見つかることはなかった。まぁやつの理想の女の子もいなかったが。 


 そういうことで、理想の女の子なんて存在しないんだ、なんて結論付けたがそれで終われば苦労はない。

 そう結論付けてももしかしたらいつか出会えるんじゃないのかと周りを探して、やっぱりいなかったと一人で落ち込むのは人の性。

 それでも理想の姿を探して諦められずに日々を過ごしていたら、ある日気づいたのだ。


 ないなら作ればいい、と。


 とにかく絵でも人形でもいいから、自分から理想的な女の子を作ってみよう、と考えたのだ。

 だがしかし、俺はそれまであまりそういった活動に対して疎かったので、正直全然うまくいかなった。だがとあるゲームに出会うことで状況は変わった。


 ”フェンリル・オンライン”


 いわゆるMMORPGとよばれるゲームは俺の欲求を満たすには十分な存在だった。

 ゲーム設定は数百年後の地球で、突如なぞの現象が起こってファンタジーの世界と繋がってしまいいわゆる魔物とよばれるものに侵略されそうになってる、というものでそこでプレイヤーはハンターとよばれる職業につき、魔物たちを倒していく、というもの。

 荒廃した地球が舞台のこのゲームは、芸術の創作を不得手としていた俺には最高の存在だった。


 まずキャラメイキングがかなり豊富で、顔の輪郭からあらゆるパーツの高さや角度、髪や肌の色からスタイルまで自由自在で、声もある程度自分好みに調節ができ、さらに豊富な種類のアクセサリーで好きに飾り付け可能、という理想的なキャラを作ってみたいと思ってた俺には最高なゲームだった。

 またこのフェンリル・オンラインは数百年後の現実社会がモデルということで、装備の一部が現実でもありそうな服があったりしてそこがけっこう気に入っていた。

 ファンタジーやSF感溢れる装備が嫌いなわけではないが、どうせならブレザーやセーラー服を着せたい。そういう意味でもこのゲームはよかった。


 お陰でかなり見た目は自分の理想の女の子にできた。

 それこそ髪や眼の色に肌の色、身長や胸の大きさだけでなく腕や足の細さまでうんうんと唸りながら決め、声だって学校のリスニング問題よりも耳に集中して決定した。

 一部を除いて途中で変えるには課金とかしないといけないので見た目を決めるだけで休日を一日潰したのは今となってはいい思い出だ。


 そんな理由で始めたこのゲーム、気づけばもう三年以上もやってて、俺も大学生になってた。

 普通にゲームとしても面白いし、ゲームをやれば俺の作った理想の女の子がいるのでやってて楽しかったのだ。

 それだけやればこの手のゲームを始めてやった俺だって最高位のSランクハンターとなっていて、それなりの地位についているというものだ。

 基本はソロだが時にはどこかのパーティに組ませてもらったりしてそれなりにネカマをエンジョイしていたのである。


 さて長々と話していたが、俺がいったい何を話したいのか分からない方もいるだろう。

 実は俺なり今の状況を説明したいのだが、理解しやすいようそれなりに順序だてて説明すべきかと思い長々と話してしまった。

 というわけでここからは簡潔に俺の状況を説明したいと思う。







 ある日、目が覚めたら知らない場所で、俺は自分が作った女キャラになっていた。

 多分、ゲームの世界かもしれない。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ