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第四章『カリフォルニア共和国』

1846年六月…カリフォルニア


(現代の)北米大陸の地図を見る。北のカナダとアメリカ合衆国の国境は

西半分は北緯四十九度で東西にまっすぐ引かれている。


両国の国境が交渉の末に確定したのはこの年である。

『オレゴン』…現在のワシントンシアトル・マリナーズのあるところ

オレゴン州を含む地域を併合することで、アメリカは太平洋への出口を手に入れた。


オレゴンの南に太平洋に沿って、南北に長く延びるのがカリフォルニア州である。

日本人にもなじみのある地名としては、北から『サンフランシスコ』…そこから

百キロほど内陸の『サクラメント』、シスコから南に五百キロの『ロサンゼルス』、

さらに二百キロ南の『サン ディエゴ』…軍港として戦記などにもよく登場する…

といったところだろうか。


当時(1846年)カリフォルニアはアメリカの南の隣国メキシコ共和国の領土であった。

とはいえ、僻地でありネイティブを除く人口はわずか一万ほどで、それもかなりの割合を

アメリカからの…アングロサクソン系入植者が占めていた。


地図を見て特徴的なのは、一千キロにもおよぶ長大なカリフォルニア半島と、

それによって形成される同じ奥行きをもつカリフォルニア湾である。

ところが、ここはメキシコ領である…何となく違和感を感じないだろうか。

じつはアメリカ領カリフォルニア州は、広大なメキシコ領カリフォルニアの

上半分…『アルタ・カリフォルニア』という地域を併合したものなのだ。


この年の春、ジョン・フリーモントという、軍人だか冒険家だかよくわからない

アメリカ人が、六十人ほどの部下とともにカリフォルニアをおとずれた。

彼はメキシコの役人に『オレゴンへ探検に向かいたい』と申し入れた後で姿を消した。


どうやらフリーモントは各地の入植者たちにメキシコからの『独立』を使嗾して

まわっていたらしい。


六月十四日、サクラメント近郊のソノマに駐屯していた二百名のメキシコ軍は

二百五十人ほどの入植者によって攻撃を受け敗走した。


入植者を指揮していたウイリアム・アイダは手作りの旗を持ち出すと叫んだ。


「さあ『カリフォルニア共和国』の誕……」


彼の言葉のつづきは重い物体が発する飛翔音と、数瞬の後の火薬が炸裂する轟音によって

かき消された。


「敵襲……」「どこ……」「まさかメキ……」


連続して落下する砲弾によって、さほど大きくない集落は火と煙に包まれる。

大混乱を起こしながらも、一部の部隊…武装入植者の群れはサクラメント方面に

避退しようとした。


だが、彼らも恐るべき密度で飛んでくる銃弾に包まれ次々に倒れていく。

地面に伏せた者の耳には、ほとんど切れ目なく続く銃の発射音が聞こえただろう。

そのときになって、前方の丘陵上に大軍…おそらく五百人以上が展開しているのが

見えた。


「…インディアン!?」


目のいい者が前方の丘陵上に展開してる『敵』の顔がメキシコ人とも、ましてや

白人とも違っていることに気がついた。


『まさか…見慣れない服を着てるし、変なかぶとみたいなものをかぶってる…

だがあいつらは……』


彼は伏せたまま銃の狙いを付けようとしたが、その上に『シュルシュル』というような

音を立てて多数の物体がおおいかぶさってきた…火と鉄片の嵐が一帯をなぎはらう。


同様のことはソノマの四周すべてで起こっていた。つまり…

『カリフォルニア共和国軍』は強大な敵に完全に包囲されていたのだ。


死骸とうめき声を上げる負傷者の中で、ひとりよろめきながらも立ち上がった

アイダは拾い上げた旗を掲げようとした…が、最後の砲弾によって吹き飛ばされた。


彼の『カリフォルニア共和国』は数十分で潰えることになった。もっとも、史実でも

二週間後にはアメリカ合衆国に併合され消え去る運命なのだが…


「お疲れさまでした山下大佐…『独立第一愚連隊』の作戦第一段は大成功ですね」


「桑畑君…『敵』の一部には投降の動きもあったようだが無視をした。

あれでよかったのだろうね…捕虜らしいメキシコ兵や一般人も見られたが…」


「もちろん! 事前の作戦通り…一人残らず殲滅!非常にけっこうです。

彼らは正規軍ではありません…中国戦線では民衆にまぎれこんだ『便衣隊』を

まわりもろとも、まとめて『討伐』したではありませんか。まだしばらく、

われわれの存在は闇の中に置きたいですし、多少の巻きぞえは戦いの常です…

後の処置をよろしく」


「…武器弾薬はすべて回収しろ。息があるものは…楽にしてやれ。

馬車に載せ、離れた場所に埋め…埋葬する。いそげ!」


この日、サクラメントと付随する『サッター砦』…かつてスイス人入植者が

築いた砦…交易所を木柵で囲った程度のものだが。さらにサンフランシスコでも

同様の包囲殲滅戦がおこなわれた…はずである。


トントが数人のネイティブを連れて近寄ってきた。


「彼らは言っている…あなたたちの精霊はとてつもない力をもっている。

ともに力を合わせ、母なる大地を守るため戦おう。同じ赤い肌を持つ

『ヤマタイの人』よ…と」


つづく







ようやく…というか、いきなり戦闘が始まりました。まずは『反乱入植者』の殲滅! もっともこの先はまた説明の必要が山ほどありますので、戦いはしばらくないと思います。あまりおなじみでない時代と地域…作者も一歩ずつ『開拓』していきますのでよろしく。

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