困惑のあちーぶめんと その2
†バーニング娘†、あいす、ベルの三人は、始まりの街スターティアを出てスター平原へ。そしてある場所へ向かった。
暗いので魔法であたりを照らしながらの移動である。
バニさんによる火魔法の灯火の魔法とベルの光魔法の明かりの魔法、それからあいすの神聖魔法の聖火の魔法だ。
誰か一人が使えばいいように思うが、せっかくなのでそれぞれ使う。
【魔力操作】を鍛えるのにちょうどよいからだ。
うさみの情報提供により、魔力操作の重要性を認識した。魔法を自由につくれるというのは魅力的だ。中二心が刺激される。経験値稼ぎはまめにやっておくべきだろうというわけだ。
光源を意識的に移動させることで経験値が入っているのが確認できる。その量は思ったより多い。
スキル経験値は難易度が高い状況でより多く手に入ることがわかっており、戦闘中であるとか危険なエリアであるとか、難しい行為に挑戦して成功することで入手量が増える。だからこそ時間拘束が多くて戦闘中に使うとか無理がある生産系技能のレベル上げがあまり進んでいないのだが。
話を戻す。
光源を作りだす魔法は大体初歩の魔法である。懐中電灯のスイッチを入れるよりは手間がかかるが、提灯に火を灯すよりは手軽である。そしてスター平原は最初の戦闘マップである。戦闘中でもない。なのに経験値の入りがいいというのはどうしたことだろう。
「隕石のせいかしら」
あれが落ちたらヤバいのは明白なので危険にさらされている状態である。なので難易度が上がった状態であるとシステムが認識しているという説。
「いえ、実は昨日の段階でスキル経験値の取得量が上がっているのは確認されていたのです。まあ、隕石の効果でさらに増えている可能性はありますけれど……検証するほどデータが集まってないですわね」
「ウサギさんがレベルアップしているのならそのせいかも」
「検証班の仮説の中ではそれが有力のようですわね」
出現モンスターのレベルがマップの難易度に反映される説。スター平原のウサギのレベルは大体1~20の範囲、レベルの高い北を除くと1~10に収まる。これが推定60以上に上がっていたならばマップの難易度は激変したことになる。難易度ルナティック。
ちなみに検証班というのはゲームの仕様をひたすら検証して導き出すのが趣味の集団で、掲示板で情報交換しながら検証を進めている連中で、先行攻略者のもたらした情報の裏付け等をやってくれるので重宝されている奴らである。ただしなにから検証を進めるかは彼らの好みに依存するのでいつもいつも当てになるとは限らないのだが。
なんにせよ経験値が多くもらえるなら都合がいいので稼いでおこうということなのである。
ただ異常事態には違いないので注意はしつつ。
しかし、注意はしていたが特に何事もなく目的の場所にたどり着く。
その場所は昨日ウサギさん仮面が出現した場所であり、今日の午後にウサギさんふれあい広場へ行きたい人が集まる予定の場所であった。だいぶ早いはずなのだがプレイヤーの姿も見える。ウサ耳が生えている人が多いのはやはりウサギ効果か。キャラメイクで兎人族を選ぶくらいだからウサギのイベントに熱心になるのは当然かもしれない。熱心であればイベントに早入りすることもあるだろう。
しかし三人はそんなウサ耳たちをスルー。
辺りを見回して目的の人物がいないのを確認。
「ウサギさんかめーん!」
バニさんが叫んだ。
注目を浴びるが気にする様子はなく、そしてすぐにそれどころではなくなった。
月が出た。
満月だ。
ざわざわ。
「我を呼んだか人の子よ!」
じゃじゃーん、と効果音付きで月をバックに落下してきたその人こそウサギさん仮面である。
結い上げた金髪にウサギさんイヤー。赤いバニースーツにふわふわのファーで縁取った赤いマント。
ウサギさん仮面はしゅたっとポーズを決めて三人の前に着地する。
まるで自分が人の子ではないような言い様だが、昨日人間だと宣言していたのは誰だったか。うさみか。
「何用か? 約束の時間にはまだ早いぞ」
いちいち大仰な身振りをしつつ尋ねるウサギさん仮面。顔の前に張りつけられたウィンドウのウサギさんフェイスがシュールである。
「む、貴様、我とキャラが被っておらぬか?」
「はい?」
バニさんを指さして言うウサギさん仮面。
服飾に携わるベルの目で改めてみると首から下のばーんきゅどーんなスタイルは確かにそっくりだ。コピーといってもいいかもしれないほどである。
カラーリングも赤主体という部分は似ている。露出度は正面から見たらウサギさん仮面の方が高いが、マントの分で差し引き互角だろうか。バニさんはスカート長目だけど肩丸出しだからね。胸とか上から覗き込んだら見えそうなデザインだし。何がとは言わないけれど。
それでもやはり髪の色の違いは印象に与える影響は大きい。金色と赤では全然違う。全体のシルエットもやはり異なる。赤主体とはいえ、華やかな印象のウサギさん仮面と比べるとバニさんは黒も使っているのでややダーク寄りである。
要するに。
「そうでもないわ。被っているという心配は必要ないわね」
ベルが断言した。
「そうか!」
ウサギさん仮面が大きく頷いた。揺れた。
それを見たあいすが、くっとか言いながらハンカチを噛む振りをしていた。




