困惑のとれいん その3
スキル合成でなんか変なスキルができた。
「さて、これで魔法の奥義の伝授は終わったわけだけれど。ん、どうかしたかな?」
「あ、なんだか一風変わったスキルができたから」
なんだろうとうさみが小首をかしげたのを気にされたのである。
「どれ。おお、【タレント】に開眼したのか。それも7つも末恐ろしい子だね」
「恐ろしい? あいや、【タレント】?」
「【ギフト】同様に他のスキルの上位存在の一つとでもいおうか。どちらかというと名誉称号に近いのだけど」
「称号?」
【タレント】とは行動に一定以上習熟していることの証明であるという。具体的にはスキルがなくても行動を再現できるほど身についているということらしい。スキルに頼っているとスキルレベルがどんなに高くてもタレントは得られないらしい。
うさみが得たタレントは、【魔力適性】【魔法適性】【危地適性】【身体適性】【無窮鍛錬】【移動適性】【苦痛耐性】の7つであった。だいたいうさみがやってきたことがうかがえる。
また、タレントにはレベルがなく、ボーナス的なおまけ効果があるらしい。例えばMPが千ほど増えていた。スキルは全部1か0に戻っているにもかかわらず。他にスキルレベル上限開放とかいうものもあった。上限あったんだくらいにしか思わなかったが。
HPも記憶より1増えていたが、これは生命力が増えている分の補正だろうから実質増えていないようだ。うさみがやってきたことがうかがえる。
ついでにいきなり話に挙がった【ギフト】についても聞いてみたところ、これは高位存在から授けられた能力であるらしい。うさみは【フリーアクション】というギフトを持っていた。星降り山の山頂で貰ったやつである。
「つまり、これわたしスキルがなくても魔法が使えるの?」
「そうなるね」
マジかよ魔法少女じゃん! いや少女っていう歳でもないけれど。というかさすがに現実世界では使えないだろう。ゲームの中でってことだろう。
実際のところ、魔法を作ることができるということはスキルがなくても魔法が使えるということなので、驚くほどのことではないかもしれない。
資格試験に合格したとかそんな感じ?
うさみはそう理解した。
「実に驚くべきことだけど、もう生徒うさみのことだから一周回って驚かないね」
「えええ」
アン先生がうんうんと一人納得しているのをちょっと不満に思ったが、一応褒められているのだろうと思いなおしておく。ゴリラに変えられている人に変人扱いされているわけではないと思いたかった。
「そ、それより奥義って」
話を戻した。
奥義といわれたが、うさみの中で気づいていた、あるいは気づきつつあったことがらを、問答のうちに整理しただけのことだった。新しいことといえば神話重要だよいう情報くらいだ。これが奥義? 奥義ってもっとこう、大げさというかすごい感じ? のなんかこう、えーとあれじゃないの?
いや、その“整理した”ということが重要なのかな。断片的な“気づき”をつなげて自分の中に落とし込み、身につけるとでもいったらいいのか。使える形になった感じはある。具体的に新しいことを覚えたわけではないけれど。次に何かをするときには活用できるだろう。
確かに重要な示唆だ。奥義ということばに相応しいのかもしれない。というか奥義ってこういうものなのかも。
うさみが言葉を途中で止めて考え込んだのをアン先生は見守っていた。
そしてうさみが顔を上げた。
「あ、アン先生、もしかして錬金術って魔法と同じ?」
アン先生は大層驚いたそうな。
□■□■□■
アン先生の工房。
「魔力を使う以上、錬金術も魔法の一種ということもできる。というより、魔法を模倣して編み出されたものだという説があるから、魔法の廉価版といったところかな」
以前錬金術で改造したうさみのリュックを錬金釜にぽい。
「ただ、若干方向性が違うから進歩の方向が違っているようでね。完全に一致するわけではないんだ。とはいえ、それぞれの視点からお互いの技術を再現することはできるだろうから、やはり同列の技術でもあるのだけどね。ここでそれを入れて」
「はい。ややこしくない?」
魔法をかけた糸と染料をぽいぽい。
「まあ似たようなものだということさ。よし、魔力を注ぎこみなさい。全力でいい」
「はい」
呼吸を整え魔力を投入する。投入しながらも魔力を回復する。スキルレベルが上がっていく。いくらか上がったところで【魔力適性】の域まで届かなければあんまり意味がないけれど、魔力の最大値が伸びることで回復量も増えるので無意味ではない。
「錬金術は魔力がすくないものが扱える技術ということで発展した。様々な発見や歴史的経緯からそれ一辺倒というわけではないけれどね。一方、魔法は能力に依存した即時性が特徴なのだね」
錬金釜は魔力を多く持たない者でも大魔力を運用するのに有効な錬金道具だそうだ。それだけではないが。
魔法にも時間をかけて大規模な効果を得る儀式魔法などの技術もある。それだけではないが。
よく似た技術なので互いに参考になる部分もあり、高位の魔法使いなら双方の技術を修めているものが多いのだという。
だが魔法を扱い始めてひと月に満たないうさみがそこまで見抜くのはなかなか驚くべきことだったと。
さっきもう驚かないみたいなことを言ったのにもう驚くのだからもう。もう。
「今、入れた素材にかけた魔法は、重さを軽減する魔法と探しものをする魔法なわけだね。これを見た目以上にたくさん入る鞄と合わせるわけだ」
「軽くて中に何があるのかわかるたくさん入る鞄になるってこと?」
「調整がうまくいけばね。ま、私はこれくらいなら失敗しないけれども。さて最後に特性を強化する素材を入れておこう」
アン先生が宝石のようなものを投入する。
そしてうさみがしこたま魔力を投入しつつかき混ぜ続けて完成したのが。
「【初心者の鞄+3】」
「みっつ特性が追加されているということだね。特性はアイテムによって付与できる質と数に限界があるから、組み合わせなどよく考えるといい」
「なるほどー」
大体容量が30倍くらいで、中のものの重さを無視できて、手を突っ込めば中にあるものがわかって欲しいものを取り出せる、リュックになった、ということが【鑑定】でわかった。
【錬金術】のレベルが足りないからか、まだ鑑定で特性まではっきりとわからない。が、メリーの言っていたことが正しいならレベルを上げればわかるようになるのだろう。
どういう形で魔力が働いているかは感じ取れるので、再現はできそうにも思う。魔力が足りれば。
「このように錬金術の肝は組み合わせなのだね。そして魔法に長けていれば力技で覆すこともできる」
「魔法の効果は魔力が切れたら終わるけど、魔法の効果を受けて変化したものは元に戻らないから、魔法で特性を再現して錬金してしまえば固定できるっていうこと?」
「その通り。ただしそこまで魔法と錬金術を極めている者は現代に何人もいないだろう。うさみはその数少ない一人になりそうだね」
またなにかすごい力を手に入れたらしい。いや、錬金術はまだ自由にできるわけじゃないけど。
うさみは街でのことを思い出してちょっとだけ気が滅入ったがでもまあいいやこれなら水着つくれそうだしと即座に思いなおした。
「さて、これで錬金術の奥義も伝え終わったね。講義モードおわり」
「え、これでおわり?」
「そうだよ。あとは自分で見つけなさい。調べてもいいし人に聞いても構わない。工房が必要なら貸してあげよう。使ったら掃除してね」
レシピとかも教えてもらえるかと、うさみは思っていたのだがそう甘くないらしい。
というか水着の素材について相談するつもりだったのだけれど、おわりっていわれてしまった。
おわりじゃ仕方ないか。
うさみはまた明日ベルさんとメリーあたりに相談してみようと考えるのだった。




