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超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


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困惑のとれいん その1

「おかえり、生徒うさみ」

「アン先生、ただいま!」


 迷いの森。

 その中央に位置する広場に存在する小屋。

 うさみの先生にして森の賢者そして姿はゴリラの、アン先生の住居である。ゴリラの。

 星降山攻略にあたりたくさん協力してもらったのに報告がまだだったのでやってきたのである。

 深夜に。

 もっとも他にも理由はある。魔法とか錬金術について聞きたいことができたのである。

 深夜だけど。

 まあそうはいっても、アン先生は大体いつ行っても歓迎してくれるのだが。最初に出会った際だけである。アン先生が外に出ていたのは。ゲームの都合なのか、なんらかの手段で感知して迎えてくれているのかはわからない。

 何時でも来いといわれてはいるが、本当に深夜だろうが早朝だろうが訪ねたらいるのである。大体座って書物など読んでいたりする。


「おや、今日はおしゃれな恰好をしているじゃないか。異世界風のコーディネートかな? 活発な生徒うさみによく似合っているね」

「そう? ありがとう。友達が選んでくれたんだよ」

「それはよかったね」


 ベルさんのところで着せてもらったボーイッシュスタイルをほめてくれる。

 アン先生は呪いのせいで見た目ゴリラだけど態度はスマートである。気配りできるしおしゃれにも通じているとは。自分はゴリラなのに。あるいはだからこそだろうか。呪いを解く方法を探しているのだから、本来の姿であれば着飾るのが好きであったのかも。今はゴリラだから全裸だけど。いや、でもよく見ると毛並みはいいし目はつぶらで見ようによっては可愛らしいかも。


「そうだ先生、【リムーブカース】っていう魔法を覚えたんだけど、これでどうかな?」

「ほう? 神官になったのかい?」

「なりゆきで」


 呪いで思いだしたが、うさみは神殿で司祭になった時に取得した魔法スキルがいくつかあった。【リムーブカース】はその一つで、和訳すれば呪い除去という意味だ。効果はその通り、“呪いをひとつ解除する”となっている。


「よかったら試してみるけど」

「ふむ、その前にうさみ、私の呪いをよく観察してみてくれるかい?」

「え?」


 うさみは呪いを観察ってどうするのかと思ったが、まず魔力を見て、【鑑定】【識別】のスキルを使った。“状態異常:呪い”とある。が、違和感があった。


「【呪いを観察する魔法】」


 違和感を確かめるために魔法を作る(、、、、、)

 感覚的には拡大鏡である。細かくて判別しにくいものを見やすくする。

 わかった。


「なんかいっぱいある? 複雑に編み込まれて、うっかりすると一つに見えるけど」

「そうなんだよ。しかもそれぞれが相互に影響し合っていてね」

「これだと、下手に解除しようとすると……何が起こるかわからない? 今よりひどいことになる可能性が高いかも」

「ああ。司祭の【リムーブカース】ではおそらく除去しきれないんだ」


 よく似た色の糸をたくさん、ぐちゃぐちゃに絡ませて結果的に布に見える状態になったんだけどその糸はそれぞれ爆弾につながってて切ったら爆発するし一個爆発したらたぶん連鎖爆発あるいは化学変化してもっとやばいものになるかも。みたいな。

 【リムーブカース】で解除できるのは一つであるので要するに手が足りない。


「ゴリラになる呪いじゃなくていろんな呪いが混ざって結果的にゴリラになってるんだ」

「そういうこと。すべて同時に解除するか、解きほぐして計算ずくでうまく解除しなければいけないのさ」


 ものすごく難しいパズルのようなものである。あるいはそのまんま爆弾解体か。専門知識が必要な点と失敗が許されない点で後者の方が近いだろうか。


「というわけさ、ありがとうね、生徒うさみ」

「ううん、簡単にどうにかできるなら、先生自分でとっくに解除してたよね」


 ちょっとしょんぼりしているうさみに、アン先生は大きな手で頬をかきながら苦笑いである。


「ま、それは置いておいて、話し、聞かせてくれるんだろう?」




 ■□■□■□




 星光竜の棲家からの話をした。山頂の星空の話。街の話。ウサギさんの話。

 アン先生は聞き上手で相槌がうまい。反応がいいので話す側も気分がいいのだ。お茶も用意してくれるし、るな子にニンジンも分けてくれた。いつもはうさみが用意していたのだが、今回はお祝いも兼ねてちょっといいニンジンらしい。るな子大喜び。

 バニさんはこういう空間を作りたいのかなとふと思う。Wonderland Tea Partyは好き勝手やってお茶会でお話するのが目的であるとかそんなことを言っていたし。バニさんもわりと聞き上手だ。話したがりでもあるけれど。

 そう考えるとアン先生とバニさんはちょっと似ているかもしれないとうさみは思った。紹介したら面白いかも。


「それでね、人がいっぱい集まると面倒くさいなあって」

「わかる。煩わしいことが多すぎるね。私がこんなところに住んでいるのには、そういう理由もあるからねえ」


 あっはっはえっへっへと意気投合するふたり。

 ゴリラが街中に居ればそれは煩わしいことが多いだろう。うさみは想像してみた。うん、ないな。


「ただ、それでやりたいことやれなくなるのももったいないなって思うようにもなって。ともだちは、『胸を張って鼻で笑っておやりなさい』みたいなこと言ってたけど。あ、アン先生、ともだち何人か連れてきてもいい? 魔法とか錬金術とか知りたいんだって。それと純粋に紹介したいんだけど」

「おおう?」


 バニさんと、あとはベルさんと希望するならあいすもかなあ。くらいの内訳だ。そういえばベルさんフレンド登録してないけどともだち枠でいいよね。だめかな。

 そして唐突な話題転換に身振りで驚いたようなふりをしたアン先生は、ここに自力でたどり着けるくらいの能力はないとね、とおっしゃった。手伝うのはいいよ、とも。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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