表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/78

困惑のまねじめんと その1

 地下帝国パラウサでは、たくさんの耳の生えた毛玉がこれまたたくさんのニンジンをかじっていた。

 この毛玉たちはもちろん、帝国臣民たるウサギたちであり、ニンジンは本日の昼間にニンゲンが一人占めしようとしていた群生地を襲撃した際の戦利品である。

 多数確保したニンジンは、お腹がすいたら食べてもよいものとウーサー三世陛下からの許可が出されており、なのでみんなしてかじっているのである。お腹がすいたら仕方がないよね。

 もちろんウーサー三世陛下自身を含め、主要なメンバーも含まれている。今や帝国最高レベルのウサギとなった、るな子もその中に混ざっていた。


 しかし、そんな幸せな光景に一筋の影。


「なにしてるの?」


 ニンジンをかじる音が一斉に止まる。

 鈴を転がすような声であった。この声を聞き逃すウサギは帝国にはいない。

 るな子と名付けられる前の子ウサギを狼から救い。

 名誉臣民として認められ。

 そして旅立ち、ドラゴンの背に乗って帰還した。

 皇帝の座を譲られたがこれを断り。

 しかし、ウサギが力を得る助けとなった。

 エルフであったがウサギにもなった、その者が、再び帰ってきたのである。


「ね、なにしてるの?」


 その者は微笑んでいた。

 しかし、皆なぜか動けなかった。異様な圧力を感じていた。

 全く強靭ではなく、生命としての位階は全くといってよいほど上がっていない子ウサギのような相手ではある。

 しかし、それでもなお、いや、それだからこそ、ドラゴンが背を許したという事実は、異様であり、異常であり、異質であった。


「訓練しててねって言ったよね?」


 その者の“訓練”により、ウサギたちは大きく力をつけた。

 強力な個体を追う者と見立て、それから逃げるという形で行う“訓練”は、ウサギたちのレベルを大きく引きあげたのである。

 ウサギは逃げる存在であり、逃げることで経験を積み、強くなるのだ。

 ドラゴンの棲家を経験したきわめて強力な個体である、るな子から逃げることで“訓練”は絶大効果を発揮したのである。


「おなかすいちゃったの? それでごはん集めに行ったのかな?」


 そうして得た力で、大量のニンジンを確保した。

 ウサギはニンジンが大好きである。であるので、群生地を独占するニンゲンを苦々しく思っていた。

 しかし、群生地に近づくとニンゲンに襲われるのでどうしようもなかった。

 が。

 ウサギたちは力を得た。

 そして、戦い方も教えられた。

 ならば、いまこそ群生地からニンジンを獲得するとき!

 というわけで手に入れたニンジンがこちら。

 みんなで分けて食べているこちらなのであった。ついでにニンゲンは撃退した。


「狼に負けないようになりたいってことだったよね?」


 そう。狼である。

 縄張りを拡大しつつある狼によって地下帝国パラウサの支配地域が圧迫されているのだ。

 狼はウサギを喰らうもの。そしてウサギは逃げるものであり、この関係性はウサギにとって不利であった。

 狼の勢力拡大は時間の問題であったのだ。


「それで、人間にまで喧嘩を売ってどうするの?」


 だからこそこの者に協力を仰いだのである。

 そして、今、ウサギたちは力を得たのだ。

 それはニンゲンが相手にならなかったことで証明された。今回人間の相手をしたのは実力的には中堅程度の若いウサギであった。今回の“訓練”で力をつけた彼らは実力が証明されたことで自信を持った。

 ニンゲンを軽くあしらえるようになった以上、狼ごときもなにするものぞ。

 狼がニンゲンにやられている場面は各地で確認されているのである。

 であればもはや怖いものなどありはしない。




 □■□■□■




 うさみたちは、メリーのアトリエで解散した。

 夜中はNPCの活動が限定される、というか、メリーが眠そうであったし、最低限の収穫はあったのでお暇することになり、また明日のための準備というか根回しをパラウサ、スターティア双方に進めておく必要があったのでバニさんとは別れ。

 また、ベルさんは錬金術をもっと調べてみるということで錬金都市に向かった。メリーが薬主体の錬金術しか扱えないなら、服飾を扱う自分が錬金術を覚えればいいと、そういうわけである。

 そしてうさみは地下帝国パラウサへやってきたのだった。


「なにしてるの?」


 地下帝国パラウサでは、山と積まれたニンジンを囲んでウサギさんたちがパーティを開いていた。ニンジンパーティだ。ニンジンをみんなで食べる会である。走ってなさいって言ってでかけたんだけど。

 声をかけると、ウサギさんたちの動きが止まる。

 いたずらしてるところを見とがめられた子供みたいだなあ、とうさみは思った。

 まあでも、NPCのひとはお腹がすくそうだし、であればずっと走ってはいられないだろうし仕方がないよね。

 ただ、即日ニンジン畑を襲撃したのはちょっと想定していなかった。人間側の状況を確認するまで下手に動いてもらいたくはなかったのだけれど。

 しかし、これも言い含めていなかったので仕方がないといえば仕方がないことだろう。ウサギさんたちはニンジン畑を群生地だと認識して、人間が独占していると思っているのだ。もっとも、畑だろうと群生地だろうと独占しようとしているのは事実なのだが。人間からしてみれば野生のウサギに収穫物をめぐんでやる義理はないというか害獣にエサをやる選択肢はない。

 問題は人間に喧嘩を売り、脅威であることを知らしめてしまったことである。

 対策は用意したけれど、うまくいかなかったら地下帝国パラウサはおしまいだ。なんたって既に存在をバラしてしまっている。すでにあとはない。


 そんなことを考えていると、ウサギさんが五羽、進みでてきた。

 【識別】してみる。

 レベル78 いたずらウサギ。

 ちなみ向こうで固まっているるな子はレベル187の満月ウサギだそうだ。ウーサー陛下は金色ウサギのレベル108だった。


 さてこのいたずらウサギさんたちだが、どうもちょっと雰囲気が違う。

 どこか攻撃的であり、こちらを見ながらたしたしと地面を叩いている。

 どうやら何か主張があるようだが、何を言っているのかわからない。どうしようかと辺りを見回すと、片眼鏡な黒ウサギ、人語をしゃべるウサギさん、ぴょん五郎がいた。目線で合図すると、くみ取ってくれたようで、


「あー、ぴょん。決闘を申し込む、と言ってるいるぴょん」


 決闘。

 なんか喧嘩売られてるような気がしたのは正解だったようである。

 うさみはしかし、決闘とか言われても、どうしようか、と首をかしげるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ