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超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


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困惑のあるけみ・まじかる その7

 室内であったはずの空間に満月が出ていた。

 周囲は夜、というより夜空。

 うさみの魔法に三人は驚いていた。ベルさんとメリーの二人はともかく、ウサギさん仮面の演出をやらかしたのを見ていたバニさんまでが驚いていた。


「うさみ、これはどういう効果がありますの?」

「この魔法は満月の夜と同じ条件を作る魔法だよ。開発中なんだけど」


 空間自体に効果を持たせる魔法であったからである。ウサギさん仮面の時は光と音を操作していただけだったのだが、プラスα以上のことをしているのが、他でもないさっきからやってた訓練のおかげでおぼろげながら理解できたのだ。


「うわぁ、星空の中にいるみたいね」

「これ、うちの壁とかどうなってるです?」


 いち早く我に返ったバニさんがうさみに話しかけるのを見て気を取り直す残りの二人。


「どうもなってないよ。部屋の中だけにしたから。そのかわり魔法が終わるまで出入りできないけどね。今回はすぐ終わるし」


 といっている間に元に戻った。

 十秒ちょっと保てばよかったのでそのようにしたのである。


「多分だいたい三千くらいじゃないかなって」

「それよりさっきの魔法、他に効果を付けたりできませんの? HPやMPを吸収するだとか、内部に限りパワーアップするだとか!」

「えええ」


 MP回復量は最大でどのくらいか聞かれたから試して答えたのに、“それより”扱いされたのでうさみはちょっとムッときたのだが、妙にテンション上がったバニさんの勢いに気おされてしまっていた。

 えらい琴線に触れたようである。話を総合すると過去にあったゲームで似たようなカッコいい奴があったらしい。必殺技とか決め技とかそういった類のものであるようで、バニさんがゲームをはじめアニメやら小説、はては伝説やら神話やらの話をしはじめたのでうさみは聞くことにした。うまいこと改良できれば星光竜に見せびらかせそうだと思ったので。




 一方、半ば置いてかれていたベルさんはメリーから錬金術の話を聞きだすことにした。ようやくの本題である。メンバーの三分の二は違うこと話しているけれど、まあいいだろう。


「魔力でいろいろ生産の過程を省略するのが錬金術ということでいいのかしら」

「ええと、そういう一面もあるです。が、それだけでもないのですよ。串焼きはお肉ですがお肉がすべて串焼きというわけではないのです。ステーキとか。」


 差し入れの串焼きだった串を見ながらのメリーの説明は微妙に思えたが、要はそれが全てではないが一面の事実ではあるということだろうかとベルさんは了解する。


「もともと錬金術はその名の通り卑金属を金にしようという、神様の奇跡を人の身で再現しようという試みから始まった技術だといわれているのですが」


 メリーが一旦間を入れる。

 卑金属というのはこの場合、貴金属でない金属を指すもので、厳密な定義はおいておいて要するに鉄や鉛などのことだと思えばいい。

 トンデモな話に思えるが、現実世界でも金をつくろうという錬金術は過去に存在し、これが現在の科学や化学の基礎になっていたりするのでバカにできなかったりする。ましてやゲーム内のことでもあり、実際に可能かどうかは背景設定次第である。


「ですが?」

「別の説では上古魔法文明期の技術で作られた産物を再現しようという活動が発祥とも言われているそうです。そういう歴史的なことは、メリーさん独学ですのであまり詳しくないのです」


 メリーは両手を上げた。お手上げ?


「メリーさんの教科書はおばあちゃんの覚書と街の図書館の蔵書だけですので、錬金術の街であるフィヴルアに行けば最新の学説が」

「大体の概要を聞きたいのだわ。あるいは水中活動に適した布を錬金術で作れるかとその難易度とか」

「ふむ」


 ベルがバッサリ長くなりそうな話を切り捨てて単刀直入に尋ねる。メリーはそれを受けて端的に話すことにする。


「魔力を活用する技術であることは知っての通りです。そして実際的な話、代用、代替の技術であるといえるでしょう」

「魔力で過程を代替したということかしら?」

「その限りではありませんです。もう一つの側面として、素材の持つ性質、特性と呼んでいるですが、これを抽出、代替的に組み込むことで本来のものとは別の組み合わせでも同等のものを作る、というものがあるです」

「ちょっとよくわからないわね」


 ベルは頬に手を当てて小首をかしげる。

 言葉だけではよくわからない。


「そうですね、シチューを作ると考えるです。鳥肉とお野菜をじっくりコトコト煮込むです。このとき鶏肉の代わりに兎肉を使うと何になるか、といいますと、変わらずシチューになるということです」

「いやまあそうでしょうけど、鶏肉のシチューと兎肉のシチューじゃ似て非なるものじゃない?」

「料理ですとそうですが、錬金術ですと同じであるといいますか、例えですのであまり固執するのは無意味なのですが、そうですねえ」


 食べ物で例えるからわかりにくいのではというか食べ物で例えるの好きよねこの子とベルは思ったが、メリーが言葉を選んでいる様子を見て黙って待つことにした。


「これは先ほどのポーションの素材の薬草ですが、これを錬金術で加工する場合、“傷をいやす”という特性を抽出して使用するのです」

「ふむふむ?」

「そしてこっちとこっちの薬草の違いはわかりますか?」


 メリーが左右の手にひと束ずつの薬草を持って差し出した。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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