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超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


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困惑のさいとしーいんぐ その20

「こちらでは施療を行っております。怪我や身体・精神の異常の治療、死の呪縛の解呪、そのほか呪いの解呪などでございますね。いくらか寄付をお納めいただくことになりますが。エルフのお嬢様、死の呪縛が残っているようですが、解呪はいかがでしょう?」

「しのじゅばく?」

「死に戻りのステータス低下のことですわ」


 病院の診察室のような小部屋がいくつか並ぶ一角である。

 死ぬと一定時間能力値が低下する。うさみはさっき水に跳び込んで死んだので、その影響が残っていた。


「そんなお手軽に治せるんだ」

「残り時間と種族レベルをかけあわせた100倍の額をお納めいただいております。異界のマレビトは交流の神たるリーネ様の加護を受けてございますので、端数は切り捨てでございますよ」  


 ちなみに異界のマレビト以外に死亡ペナルティ解除サービスの顧客はいない。たぶん。

 かつて千時間以上のペナルティをアイテムで解除してもらった経験があるうさみだけれども、本人的にはちょっと体が軽くなったなあという程度のものであった。しかし金額に直すとおいくらまんリネになるだろうか。レベル1だからそれほどでもないか。

 そしてせっかくだから解除してもらうことにする。だって200リネでいいそうだし。安い。


 案内のおねえさんが神様を称える文句を唱えると、煌めく光がうさみを包む。

 その光が消えたときにはうさみの身体は本来の調子に戻っていた。

 本来の。


「初回サービスでHPも癒しておきました」

「えっ」

「あっ」

「ん?」

「えっ?」


 うさみはHPが回復すると能力値への補正ががくりと下がりペナルティを受けていたときと大差なくなるっていうかむしろ下がるのである。


「あ、あははなんでもないデス。ありがとう」

「ほほほ」


 まあいつでも減らせるようになったから別にいいか。

 折角おまけしてくれたのに余計なお世話でしたと言うのはさすがに余計だろう。うさみは乾いた笑いでごまかした。バニさんは苦笑い。


 それでは次が本題だ。

 【ヒール】を使えるクラスを得る。




 □■□■□■




「――神様への捧げものにも事欠くほど困窮することになりました。そこへ交流の神、リーネ様が現れて言いました。

『おまえたちが食べられぬのに我らに供物を捧げるのも苦しいでしょう。そこでおまえたちにコインを与えましょう。これからは食べ物ではなく、このコインを代わりに捧げることを許しましょう。他の神々への供物も同様に。我が話を付けておきましょう』

 こうしてリーネ様は我々にコインを与え、それを供物の代償として捧げることをお認めになり、また他の神々へも、その交流の権能をもって説得し、同様にコインを捧げることを認めさせてくださったのでございます」


 案内のおねえさんのお説教である。

 おねえさんは実は結構偉い人だったそうで、具体的にはこの神殿で上から五番目なのだけど、入信の儀式を執り行う資格があるのだそうだ。

 入信の儀式を終えると【入信者】というクラスを獲得でき、このクラスの専用スキルにヒールがある、とうさみは教わった。

 そしてその儀式の中に、神様の由来や教団の成り立ちなどについての語りを聞くことというものがあり、要するに神話をお話してもらうのであるが、これが眠い。

 あんまり興味がない長話を聞いていると眠くなる。うさみはどちらかというまでもなく走りまわり動き回るのが好きで得意な子であり、校長先生のお話とか苦手なタイプである。物語を聞くのは嫌いではないが、いまはもっと別のことに興味が向いているので退屈に感じるのだ。退屈に感じると眠くなる。

 でも寝たらまずいよね。うさみは頑張った。

 一回カクンときたけど。


「このようにしてただただお金を貯めこむ者を諫められたのが聖ゼニマネー様でございます。『お金は貯めこむものではなく使うものである。お金を使うことで交流を広げよ。そしてさらにお金を稼ぐのだ』と言い遺されました。『金貨は誠意。金額は信仰』という御言葉を提唱したのも聖ゼニマネー様であるとも言われております」


 すごい名前ですねゼニマネーさま。

 若干朦朧としてきたあたりでゼニマネーさま。

 うさみがゼニマネーさまに心をとらわれていると、案内のおねえさんが教本を閉じる。


「さてそれでは最後に、新たな入信者うさみの信仰を示していただきます。具体的には金貨を捧げるのでございます。たくさん捧げることでより強くリーネ様のご加護を受けることができるでしょう」

「たくさんがいいの?」

「金貨は誠意。金額は信仰。使ってこそのお金でございます」

「それじゃあ、はい」

「!?」


 どん。とうさみの前に金貨が現れる。

 積み上げられた金貨は100枚。一千万リネ。

 たくさんと言われたのでキリよく出せる最大量をポンと出したのである。

 若干寝ぼけていなければさすがに出していなかっただろう。いや寝てないけどね。

 でもまあその、出した後うさみが心の中で「あっ」と思ったのは秘密である。いや寝てないけどね。


 案内のおねえさんも驚いていた。

 うさみは【入信者】をマスターして上位クラス、【神官】を獲得した。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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