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超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


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困惑のさいとしーいんぐ その19

「金貨は誠意。金額は信仰。ようこそリーネ神殿へ! 本日はいかなる御用でしょう?」

『なぁにこれ』


 ショートパンツにニーソックスと革の編み上げブーツ。ごついベルトに魔法のポーチを改造したベルトポーチ。厚手のシャツの上に皮のジャケット、さらにいつものリュックを背負い、髪をアップにまとめてうさ耳リボンを付けた姿――動きやすさ優先でベルさんが「とりあえず」と言って着せてくれたものだ――をしたうさみは何とも言えない顔で後ろのバニさんとベルさんに振り返った。


 スターティアの街の中心部近く。

 多数の露店がひしめいている中央広場の一角にある、白い石造りの厳かな雰囲気の建造物。それがリーネ神殿である。

 目的地である錬金術師NPCの工房へ向かう途中で通りがかったバニさんが、「そういえば」と寄っていくことを提案したのだ。なんでも、「うさみは自前で回復魔法を使えるようになっておくべきですわ」ということだそうで。本来なら回復役であるあいすが明日案内する予定であったのだが、地下帝国パラウサの件でバタバタしそうなので前倒しにしようということらしい。


 うさみは回復魔法は使えない。いや、厳密にはHPを直接回復する効果の魔法を使えない。冒険者ギルドでいろいろ魔法を作った際に試してみたがなぜかこの効果だけはうまくいかなかったのだ。

 HP自動回復速度を高める魔法は作れたのだが、バッドスキル【不治】の効果か、うさみ自身には効果を発揮しなかった。ひどい。

 一方でWonderland Tea Partyの拠点であいすによってかけられた【ヒール】は効果を発揮した。

 うさみの強みは、自分でHP量のコントロールができればさらに使い勝手が良くなるだろうということで、ついでにヒールを覚えておきましょうすぐですしということになったのである。

 そして連れていかれた先でなぜか先頭に立たされ、進入した結果、冒頭のお言葉をいただいたわけだ。

 わざわざ前に出させられた時点で、ああ、これはなんかあるなとは思ったのだけれども。

 なぁにこれ。


「ここ、リーネ神殿はお金と交流の神、リーネさまを祀る神殿でございます。リーネ様はこの世界に貨幣という概念をもたらした神様でありまして、こちらに貨幣を奉納してをいただくことで、リーネ様の祝福をいただけるのでございますよ」


 白い服に金色の刺繍の入った、現実の宗教のシスター服のような形状の服を身に着けたお姉さんが説明してくれる。初めてのお客様のご案内担当者だそうだ。金色の目をした穏やかそうなおねえさんだ。露出の少ない服装なのに内側が肉感的な体形をしていることがなぜかわかる。ふしぎ。おデブさんではない。えろす。


「こちらの【おみくじ】は、一度に一つだけ、祝福の効果をいただくことができます。一回200リネお納めくださいまし」

「洋風なのにおみくじ……」

『一定時間ささやかなプラス効果がつきますわ。時間と効果はランダムなのですが』

『時間は一時間、三時間、六時間、十二時間だったかしら。効果は本当に多種多様ね。一度引いてみるといいわよ、多分損はしないから』

「ほうほう」


 せっかくなので引いてみるうさみ。200リネを虚空から取り出して箱に投入すると、箱の下部の穴から一枚の紙が出てくる。


「えっと、『十二時間、スキル経験値獲得時さらに+1』だって」

「お、時間は当たりね」

「時間は、ですわね。せっかくなのでわたくしも……『三時間、筋力値+3』」

「ふふふ、見事に使わないところじゃない。ここはこの私が。『一時間、物理被ダメージ-1』」

「ほほほ、そちらも使わないところですわね!」

「なお、効果時間内のお引き直しは自由でございます。効果があるのは最後のもののみですのでご注意くださいまし」

「えええ」


 ひどい集金システムであった。

 稀に大当たりが混ざっていることが報告されているのがさらにえげつない。

 ちなみに今回の三人に関してはないよりましといったところであろう。うさみのスキルレベル200超の必要経験値からすると+1など雀の涙どころでなく、バニさんは魔法メインで筋力はあまり使いどころがない。ベルさんは戦闘する予定もないのでダメージを受ける可能性はあんまりないというかまずない。

 とはいえ今は別に目的があるわけでもなく特に狙った効果もないのでわざわざ引き直しはしなかった。所詮余興である。


「こちらに奉納していただくことでリーネ様の祝福をいただいた道具をお分けしております」


 おみくじのとなりには販売ブースのような一角が設置してあった。


「効果を発揮したら消滅する使い捨てのお守りですわ」

「それと聖水ね。アンデッドや悪魔にダメージを与えたりできるそうよ」


 こちらは和風ではなく、ちょっとおしゃれな感じのアクセサリーが、横の方にはガラス瓶が並んでいる。お分けする、ということだが事実上販売であろう。そして値段は結構するようだ。最低四桁。高いものは七桁。こんなもの普通に並べてて大丈夫なのだろうか。

 うさみが【鑑定】のスキルを思いだしてチェックしてみると、主に攻撃を受けたときに一回限り効果を発揮するというものだった。その効果というのが様々で、その時受けるダメージを緩和するものであったり、高いものだと数秒間受けるダメージを無効化するというものだった。これってかなり有用なのではないだろうか。高いけど。


「こちらの道具を身につけていたおかげでで助かった、仕事が成功した、彼女ができた、などなどご好評の声をいただいております」


 雑誌の最後とかに載ってそうな宣伝文句であった。

 このそこはかとないうさんくささは一体何なの。わざとやってるの。でもおねえさん顔がマジなんだけど。ツッコミ入れていいのかな。うさみはちょっと考えたが、結局何も言わないことにした。そのうち使うこともあるかもしれないし。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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