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超初心者うさみの困惑  作者: ほすてふ


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困惑のらびっとすくらんぶる その6

「わっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」


 謎の力により一帯のプレイヤーに強烈な重圧がかかり、さらに昼間であるのに薄暗くなる中。

 涼やかな女性の声が、あまりお行儀のよろしくない笑い声を響かせた。

 不思議なのはこの声、どこから響いてくるのかわからない。まるで空間全体が震え発声しているかのようで、どこから聞こえてくるのかわからないためにどうにも不安定な気持ちにさせる。


 そしてそんな中に一筋の光が差す。


 誰もが気づき、視線をやってしまう。暗いなか光があれば目が行くのは当然のこと。

 そこには後光を背負ってマントらしきものに身を包んだ人物が中空からゆっくりと降りて来ていたのであった。

 

「わっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」


 響き渡る笑い声がに合わせて震えるために、声の持ち主がその人物であると理解させられる。

 そして地上から手が届くかどうかという高さまで降りてくると、身に纏っていたマントをぶわっさあ!と翻し、同時に後光が位置を変えスポットライトのようにその人物の全容を顕した。


「「「バニーさん!?」」」


 聴衆の何名かが上げた声の示す通り。

 マントを広げたその人物はまごうことなきバニーさんであったのである!

 金色の長い髪が流れる頭の上にはウサギの耳が。

 首元にはチョーカー、足元にはハイヒール。網タイツが脚を包み体にフィットした黒いバニーさんスーツ。

 どっかの誰かと決定的に違う点はスタイルだ。


 ドンッ!


 キュッ!


 バァーンッ!


 とメリハリの利いた体形であり身長も女性にしては高め。誰かさんの抱き枕体形とは大違いであった。

 そしてそれを置いておいても普通のバニーさんとは違う点がある。

 ひとつはマント。

 真っ赤な生地のふちをふわもこのまっしろなファーがで飾られた、派手とも可愛らしいとも言えそうなマントを身につけている。

 これでは尻尾や背中が見えぬ。惜しい。これは大変惜しい。

 そしてもう一つ。

 顔の前に丸い板のような何かが浮いているのだ。

 それはプレイヤーの多くが身慣れているであろうウインドウ。

 透過率0で本人の顔は見えないが、かわりに、その、デフォルメしたウサギの顔が映されていた。このゲームで現れるモンスターのウサギ、あの耳が生えた毛玉の顔である。

 端的に言って間抜けな感じ。

 しかし、みんながどういう趣味だよコイツと疑問に思う前にマントバニーさんが口を開いた。


「やあやあ諸君! 我は……あ、考えてなかったえーっと、ウサギさん仮面! ウサギさんの友である!」


 大きく身振りを交えながらその人物が名乗る。すると、


「アカンガエテナカッタエートウサギサンカメン?」

「ちっがーう! ウサギさん仮面!」


 赤髪ツインテで子供と手を繋いだプレイヤーがすかさず茶々を入れると腕をぶんぶん振り回してウサギさん仮面が否定する。

 その様子を見て聴衆のみんなはちょっと和んで笑い声が上がる。


「ええい笑うでない! 聞けッ! 我はウサギさん仮面! ウサギさんの友であり! ウサギさんと人類の将来を憂うものである!」


 身振りがおおきいのでばっさばっさとかぶるんぶるんとか揺れたりしてなかなか眼福な光景である。

 しかし珍妙な恰好な割にマジ口調だったので皆さん演説を聞く気になったり、揺れるものを見守ったりした。ぶるん。


「この平原の地下にウサギさんのウサギさんによるウサギさんのためのモフモフ帝国、地下帝国パラウサが存在する!」

「地下帝国」「パラウサ」「なんだってー!?」


 ノリのいいプレイヤーが合いの手を入れる。するとウサギさん仮面は気をよくして続ける。


「地下帝国パラウサは肉食獣勢力の伸長に対抗するため、日々戦っている。野生の掟! 弱肉強食の理である」

「このへんの肉食獣っていうと」「狼か」「東の方にいくと猛禽系が出るよな」「狩りのもりのくまさん」


 みなさん口々に知っていることを口にする。大体新しく踏み入れた場所でなければ活動するマップのモンスターの配置くらいは常識だ。

 スターティア周辺のウサギさんの敵は多い。もっとも生息域が重なっているのは狼である。なんせ昼夜の差はあれ同じ場所に出るのだ。しかしそれ以外にもそれなりにいるようだ。


「さて諸君も気づいた通り、この度、ウサギさんがパワーアップした! その戦力は見ていた諸君ならわかってくれると思うが、しかしこれはその一端にすぎない」

「なんだと!?」


 さっきまで戦っていたプレイヤーが声を上げた。あれだけステータスが上がったウサギが居るというだけでだいぶ厄介で、行動パターンも大概めんどくさいというかいっそウザい。そんなあのウサギがもっといると?


「考えてもみたまえ! さっきの子は、角も生えていないただのウサギさんだ! ウサギさんは角の数が多いほどその力を増す……さらには色違いの子は魔法も使うのだ! この意味がわかるな、諸君?」


 ざわり。

 聴衆のみんなに戦慄がはしる。

 確かにいまたくさんやられたり、トップ級プレイヤーが苦戦を強いられていたのは【いたずらウサギ】。最弱モンスターの一角だ。少なくとも見た目は。

 スターティア近隣には少なくともホーンラビット、バイコーンラビットという上位種が出るし、北マップの夕方に眠りの魔法を使う黒いウサギが出るのも知られていた。

 つまり。

 ウサギさん仮面の言っていることは事実であると。

 あれだけの被害が出たウサギは弱い方であって。

 もっとやばいのが控えているのだと。

 理屈の上ではそういうことになる。


「やべえ!」「バランスどうなってんの」「ウサギさんヤッター!」「更新通知来てないよな?」

「それが事実なら、もしウサギと戦争にでもなったらスターティアの街が地図から消えかねないですよ!?」


 銀の胸当てを身に着けた女剣士が叫ぶと、ざわめきはさらに大きくなるのであった。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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