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身体中から力が抜けていくのが感覚で分かる。
呑めもしない麦酒を胃に流し込んだからだろうか。
それとも部屋の隅に置かれた七輪の中で
ゆっくりとその身を焦がす練炭のせいなのか。
混濁する意識の中、僕はベッドの上から天井を見上げた。
何故か初めて天井を見上げた時の事を不意に思い出した。
あれは百年ほど前だっただろうか。
僕は真っ暗な闇の中、京都の伏見稲荷大社にある
千本鳥居の様な場所で浮遊を続けていた。
彷徨えど彷徨えど見えるのは同じ朱色の立派な鳥居だ。
一体どれぐらいの入り口をくぐり抜けてきたか
忘れてしまうほどの時間が過ぎた時、一縷の白い光が
左方から徐々に、しかし大胆に僕を誘っていた。
「この光は一体何なんだろう」
興味本位で光の正体を追いかけた瞬間、
突如光は僕を包み込む……
目が醒めると知らない天井だ。
隣には見知らぬ男が眠っていた。
辺りを見渡すと六畳ほどの空間らしく、
どうやら僕は小さな子供の様だった。