第7話【やっちゃえ、狂死郎《バーサーカー》】
日曜の朝に投稿!
※5/7日にて改稿。読みやすいように、改行と段落一字下げを行いました。
校内に入る前に面倒臭いイベントも終わり、やっと解放されて校舎内へと足を踏み入れる。ゲーム本編前だからこんなイベント知らんし、イレギュラーにも程がある。
帰りは清掃作業だ。むふふ、綺麗な心で校舎も綺麗にするぞー!
アンリとは二階で別れた。1年生の教室は3階、2年生の教室は2階、3年生の教室は1階だからだ。
入学して元気な一年坊は、面倒臭い階段を毎日昇り降りして苦労しろって事だろう、多分。どうでもいいか。
現在は2階の廊下、三歩斜め後ろに静流さんが着いて歩く。
俺の姿を見る生徒の皆さんの反応は様々だ。遠巻きに様子を伺う者、「俺は壁俺は壁」とか言いつつ壁に引っ付いたり「綺麗な木だ〜」とかここから見えもしない空想の木を眺める者、つまりビビってるパターン、庶民だったり下級貴族だったりする奴らだな。
あからさまに睨み付けたり舌打ちする奴らは中位貴族以上の奴らだろう。俺は敵意があるぞビビってねえからなと虚栄心を見せ自己主張しているが、近寄ったり睨み付けたりすると目を逸らしたり逃げたりする奴が大半だ。
「静流。お前は俺の背中だけを見つめてただ黙って着いてくりゃ良い。」
「恭士郎様…。はい、如何な障害があり如何なる道であろうとも、この身が朽ち果てようが、私は身も心も御身と共にあらせまする故…。」
ゲームの設定で知ってるとは言え、この壮大なアウェー感。あがり症の緊張屋さんにこの反応は耐えられへんですよ。
『静流さんや。そばに居てね、離れないで。絶対だよ』みたいな事口走ったら無駄にかっこいい台詞出て来ちゃったよ!対する静流さんの台詞も深い。アウェーで気まずいし寂しいからそばに居てねって軽い言葉を本当は口にしてるだけに、何だか申し訳ないです。
ゲーム内で恭士郎が爪弾き者の不良みたいなキャラになったのには理由がある。
恭士郎個人だけの問題ではなく、家庭内で問題があったからグレたとかそんな良くある話ではないのだ。
ここはランドガルフ帝国で陽国は極東にある島国だ。お気付きだろうが、日本人もとい陽国人の数は学園内では少なく珍しい部類に入る。そして、彼ら彼女らは奴隷以上庶民以下の身分であるとされる。
今から約10年前の出来事。
ランドガルフ帝国が率いる黒船艦隊が陽国に攻め入った。数も技術も大国のランドガルフに敵わないと知りつつも、国を守る為に自爆覚悟で応戦。陽国は大国相手に半年もの間持ち堪えるも、王である恭士郎の父と次期王子である兄が戦死。陽国は属国になってしまった。
現在、ランドガルフの支配下にある陽国だが植民地であるにも関わらず、完璧に虐げられておらず奴隷扱いにもなっていないのには訳がある。
帝国が誇る最強の六人の英雄然とした将軍、通称帝国六英将の一人に、陽国人がいるからだ。
その人物は帝国の狗となる代わりに、陽国を領地として承り監督している。恭士郎が学園に通う理由も、その人物が大きく関わっているのだが、今は恭士郎の性格の話なので置いておこう。
差別される陽国人、ここは敵地真っ只中同然。本当は自分一人だけ入学しようとしたが、従者’sは頑なに着いて来る意志を崩さなかった。
学園で舐められたら最後、自分は元より女である従者達が暴行されるのは前提として、下手すれば慰め者になる可能性も否めない。
ならばと尊大な態度と力で以ってして、学園内のスクールカースト上位に君臨する必要があったのだ。
本来ならば狂気的な部分もあるのだが、俺が行動に移してないだけに丸くなったけどおっかないヤンキーなのは変わらない現状だな。
原作では俺はホント容赦ないからね?従者に手を出そうとした奴には特に…。
貴族であろうと計画的犯行で目標を拉致し、森の中の木に縛り付け、喉を潰して声を出せないようにし、いざ逃げ出す事のないよう手足の腱を切り身動き出来ないようにしてから、草食系の魔物の死体をばら撒き、生きたまま誘き寄せた魔物に食わせたりするから。
リアルにいたら狂気以外の何物でもないサイコパスだよマジで。
でその貴族の家に疑われたら、屋敷内の人間を皆殺しにしてから盗賊に警備が薄いと情報を流し、金銭を奪わせて金目当ての盗賊の仕業に見せかけるからね。盗賊からしたら安全に大金をせしめる事が出来るから、そいつらが捕まってバレたとしてもグレーゾーンなだけで証拠はないから捕まらないわけだ、鬼畜やわ。
そんなこんなで教室へと到着する。
「私の机と交換します!」
「いらん。誰が犯人だか…舐めた真似しやがったから、連帯責任で全員ぶちのめして泣かすか。」
俺の席にいち早く近付き椅子を引いてくれる静流さん。お持て成しの心が凄いね、静流さんに世話されてたらダメ人間になってしまいそうだ。
やっぱりか。俺の机には削って彫られた誹謗中傷の数々が描かれていて、机の中には小動物の死体が入っていた。
『のぉぉぉおおお!エスカレートし過ぎたイジメや!誰だ、犯人許すまじ!泣くぞ。』何か話大きくなってる。え?マジで全員ぶちのめす流れ?今の俺じゃ倒せんよ。別に、全員倒してしまっても構わんのだろう?無理っす、言ってみたかっただけです。
俺の発言にクラスの奴ら全員がビクッと体を震わせる。
因みにルイスは違うクラスだ。そもそもあいつが犯人の可能性は限りなく低い。腐ってもプライドが高い男である。こんな小物がやるようなコソコソ見えない所で、陰険な真似しないで直接目の前で笑いながらやるだろう。
「うわ…、わ私じゃないわよ!」
「何も言ってないし、如何にも犯人っぽい動揺の仕方だけれど、間違いなく君の仕業ではないよね。」
遅れて教室にやって来たのはリリたんとティナのエルフ&ドワーフのコンビだ。
教室に入り沈黙したクラスメイト達の空気と視線の元である恭士郎へと目を向け机の惨状に気付き、直ぐに同情の嘆息と否定の声を上げる。
いや、本当に誰も何も言ってないのに疑われ易そうな真似するよね。
イジメなんて、ムカつくわ。コソコソやるのが腹立たしい、目の前で堂々とやられても何言っていいか分からんけどね。
怒ってますよ、アピールしますか。幸い明らか強い生徒はこのクラスには四、五人位しかいないし。いざという時はA級序列8位にランクインしてる静流さんいるしな!ちょっと調子乗ってやるぜ。
椅子へと座り、両脚を机へと乗せて更に足を組んでやる。俺の頃はとてもそうでもなかったが、俺になってから精神が体に引っ張られてるのか、落ち着くわ。
「今日1日だけ待ってやる。犯人が見つからなかったら、分かってるな?」
『はぁ〜、今日1日だけ我慢するか。』これ俺の台詞を恭士郎っぽく変換してるのではなく、自然と恭士郎の魂が反応して話してるんじゃないか?今の所分からないが、その説も否定出来ないな。
見渡してみると周りの反応はと…皆顔を青くしているね。悪気はないんだよ、俺は。
「私が犯人探しに全力を尽くします。」
「いい。お前がやる必要はないから、俺のそばにいろ。」
いざという時静流さんいないと困るし大変だからね。
『大丈夫、一緒にいて。』って言ったら今度はそのままほぼ変わらない台詞で伝わったよ。多少俺様だけど。
周りは従者に手伝わせない事が、逆にプレッシャーを与える事態になってしまったようだ。
「ちょ、ちょっと!犯人の候補の中に私とティナも入ってるわけ!?違うわよ。」
「さあ。お前がどう受け取るかは、お前次第だな。」
「あぁ…完璧に被疑者に入ってるね。外れてるのは宗像くん本人と、側近の龍蔵寺さんだけと考えてるようだよ、リリ。」
「なんでよ〜!?わ、私に手出したら大変なんだからね!国際問題で戦争になるから!」
「…考えてもみたまえ。彼は陽国人、この地はランドガルフ。もし、戦争になったとしても、問題ないと考えるのも不思議じゃないよ。意図的だとしても偶発的だとしてもだ。」
こうしてイジメ事件は犯人探しへと発展する事になる。犯人はこの中にいる!
探すつもりなかったんだけどな。モブの誰かが晒し上げになる未来が見えます。
今回は新キャラが出ません。今まで1話に最低1人と、出し過ぎて混乱させてしまうと思い…。
イジメ事件は内容的には小さいんでサクッと解決しようか、はたまた別の事件の前振りにしようか考え中です(笑)
いつも即興で書いてるんで、矛盾や誤字脱字があったらすみませぬ!