第6話【ああっミリアさまっ】
※4/6にて改稿。読みやすいように、改行と段落一字下げを行いました。
ミリア様来たぁぁああ!ふつくしい…っし!これで勝つる。ミリア様マジ女神。女生徒を視姦していた為、周りを見ていた俺はいち早く女性の登場に気付いていた。
カシャンと腰にサーベルを収める音が鳴る。音の鳴る方へ皆一様に目線を送る。
銀髪の女性が表情の無い澄ました顔付きながらも、サーベルを収めた後には顔の下、胸の前にて腕でバッテンを作って、見た目からは想像しづらいお茶目な面を見せる。
女性の登場にロイ、ルイス、ゴリさんの三人の動きが止まる。
ロイは「あちゃ〜」と苦笑いしつつも、腰が引け気味で慌ててトンファーを両太もものホルダーにしまい、ルイスは直ぐにロングソードを納刀し姿勢を正して右手を握り心臓の上の胸元に当てる敬礼を行う。ゴリさんは片膝をついて頭を下げる。
「ゴルグくん、顔上げて、姿勢戻していいから。ロイちゃんのやんちゃ止めなきゃダメだよ。」
「い、いえ!っス!ウッス!」
「2年生で先輩なんだから、嗜めるのもお仕事。」
「っス!す、すいやせんっス!」
良いと言われるも恐縮して片膝を付いたまま応じるゴリさん。
っス言い過ぎだろ。緊張だけでなく、頬を赤く染めている。ゴリさん気持ち悪い、ゴリラ顔の紅潮する頬とか誰得だよ。女性は冷たい顔してるが、物言いはどこか優しげだ。
「次にロイちゃん。口笛吹いてそっぽ向いて無いで、こっち向く。」
「へ?ははは、嫌だなぁリア姉〜。やんちゃ何かしてないよ。なぁみんな?」
女性に向かっては笑顔だが、振り返るロイの聖騎会の面々へと向ける表情は眉を吊り上げ、分かってるんだろうな?的な口裏合わせしろよと訴える表情をしていた。
「みんな。嘘ついたら、お仕置き。」
ロイの後ろから女性がぽつりと言いつつ聖騎会の面々を見渡す。ロイの言葉に頷きかけた面々は慌てて首を左右に振る。
「あ、こら!お前ら俺の部隊だろ!?裏切っ…いひゃひゃ、ひあへえー、いひゃい!」
思い通りにいかなかったロイは、面々に向かい拳を握り物申そうとしたも、続く言葉は出なかった。女性がロイの頬を両手で掴んで伸ばしているからだ。いたた、リア姉ー、痛いよ!とでも言ってるんだろう。
「はっ、茶番も良いとこだ。そろそろ教室向かわせろ。」
やべ!また余計な事口走ったぁぁああ!バレ無いよう口を押さえて欠伸してる振りを。
『よし、コメディ路線に変更だ!教室入ってJK達眺めたいんだ、俺は。』なんて出てた。誤魔化しも悲しく俺の台詞は良く通る声でした。
あの人に対して息をするように無礼な態度とは信じられん、狂犬め…なんてルイスが呟いている。
俺の言葉を耳にした聖騎会の面々が、一斉に殺気立つ。殺気を受けた俺はどこ吹く風と涼しい顔をする。内心はビビりすぎて動けないだけだ。悪意を真に受けてちびりそうだったよ!
「みんな、落ち着こう。キョウくんはもう少し待って。」
聖騎会達を嗜め、俺に向かっても待機の指示を出す。血気盛んな面々は「はっ!」と敬礼して、女性の言葉に一斉に落ち着き静かになった。
キョウくん…耳が幸せ。出来ればいつかカズくんと呼んで欲しい所だ。
女性の名前はミリア・ド・アークライト。聖騎会No.2の副会長。
ロゼリカ学園騎士課3年、序列2位の特A級にして女生徒最強の騎士生。
今の皇帝の次男が当主を務める大公家のご令嬢で皇族に連なる貴い血を持つ。今の皇子や皇女のいとこに当たる。
小生意気なロイや純血主義者のルイスが逆らえず大人しくするのも、血統だけではなく裏打ちされた実力を持つ為に、庶民の生徒達からも高い支持を持つ。
腰まで伸びる銀髪は、陽の光を受け神々しい輝きを見せる。顔の造形は一流の芸術家が集結し、一つ一つのパーツを時間をかけて作ったかのような美しさ。
アメジストを思わせる高貴な深い紫の瞳は、見つめる者の視線を釘付けにさせる。無表情ながら冷たい顔には見えず、どこか母性を漂わせるお姉様だ。
庶民の主人公ちゃんに対しても分け隔てなく接し、お姉様キャラとして時にはアドバイスを与え時には進むべき道を示し時には助けてくれ良くしてくれる。
「誰か、事情が分かる人は…」
ミリア様は周りを一人一人見渡す。ゴリさんが立ち上がり勢い良く手を上げるが一つ頷くだけだ。
ロイとゴリさんや聖騎会の面々を一瞥し、次に俺や静流さんにアンリに目を向けるも当事者だからか一方的な意見しか出ないだろうと判断したのだろう。背後のリリたんとティナへと視線を固定させる。
「リリーさん、ティナさん。話、聞かせて貰ってもいいかな?」
「ふぇっ!?し、仕方ないわね、いいわ!話して上げる。」
「うむ、構いませぬとも。」
「お願いね。」
自分が名指しされると思ってなかったのであろう、リリたんは素っ頓狂な声を上げるも直ぐに腕組みして偉そうにする。隣でティナが首肯して答える。そんな二人に軽く頭を下げてお願いするミリア様。
そこからリリたん主体で話し始める。ティナが時々補足しつつも第三者の意見による正しい説明が行われる。
俺がリリたんに対して無礼を働いた事。お姫様抱っこして放り捨てた事だ。ティナは関係ない話として聞かなかった事にしてと流す。
校舎への道でリリたんとティナの二人が歩いていたら、恭士郎と静流さんにアンリの宗像騎士団が遭遇して話していた。
ルイスが自分達に絡んで来て売り言葉に買い言葉、恭士郎が挑発して喧嘩を買った事。
いや、喧嘩買ったつもりはないんですけどね。不本意ながら勝手に口が動いた結果なんです。
二人が対峙していざ決闘が始まりそうになった時に、聖騎会が登場したと。
うん、どう考えたってここまではルイスが悪いね。きっかけはルイスだよ。
ゴルグが鎮圧しに来たと口にして、それで終わらずにロイが挑発気味に現れ、今度はルイスとロイの間で問題になりそうになった事だ。
そして流れで恭士郎&静流VSルイスVSロイ&ゴルグの戦いが始まりそうになり、そこで副会長が現れて今に至るというわけだ。
「いつものキョウくんとルイスくんが発端か。喧嘩する程仲がいいって言葉もあるし、悪い事とは言わない。」
「ミリア様、こんな卑国人となんて!?」
「ミリア、んなチキン野郎となんざ!」
俺とルイスはお互いの顔を見て互いに睨み付け合う。遺憾だとばかりにお互いを指差し否定する。
『ミミミリアたま、こここんなイケメン性悪男となんて…おおお男と仲良くするだけでも、御免です!』呼び捨てにしたのはキャラ口調だ。恭士郎よ、ミリア様は先輩だ。ルイスを呼ぶ時デフォがチキンになってるんだろう。
「まあ、落ち着いて。二人とも、ちゃんと覚えてるとは思うけど…ゴルグくん、決闘の規則を。」
「はっ!学内に置いて、その場その時で唐突に行われる私闘は禁ず。お互い意見を通したい時は、互いが聖騎会へと決闘の申請を提出し、受理された場合のみ決闘は許される。」
決闘システム。騎士学園に伝わる伝統で、生徒間で問題が起きた場合、戦闘を本職にする騎士ならば騎士らしく腕尽くで意見を通せと言う物。
受理された後、日時や場所は聖騎会の指定で不正を出来ぬよう審判も聖騎会の者が務め正々堂々と執り行われて戦う事が出来る。
「そう、問題が起こったら決定申請しないとダメ、私闘厳禁。今回の罰として…二人とも実地訓練が終わるまで決闘は不許可及び、今日授業後校舎内の清掃を命じます。詳しくはプリントにして今日中に渡すから待ってて。」
なん…だと?実地訓練まで首の皮繋がったぜ!そしてそして、清掃だって?
不本意だろうに、悔しそうにルイスが俯いている。
「なっ!恭士郎様が清掃など。」
「こんな時こそ、アタシの出番だよ〜。」
うちの娘達がミリア様の罰にあり得ないと口を出すも、片手で制する。
「やらせて頂きますとも。」
ヒャッホー!廊下や階段下で、しゃがんでも何も言われない不審に思われない。何せ掃除してるから!俺は堂々と覗き行為を行なえる大義名分を得たのである!
「キョウくん。私が来る前から始めから気付いてこっちチラチラ見てたよね。刀も柄を直ぐ離して備えてたし…部下の子達を罰に巻き込まぬようしたんだよね、流石だよ。」
「はっ、何の事やら。」
校舎の方見てたのは確かだ。ミリア様にいち早く気付いたのも、風で揺れ動く女の子達のスカートを見逃さぬよう眺めてただけだけどな!バレたのかと焦って『うぇ!?な何の事ででせうか。』としらばっくれようとしたら、ミリア様は素敵な勘違いをして下さった。
「え…も、申し訳御座いませぬ!私が…私が至らぬばかり…。」
「キョ…キョウ様ぁん。」
静流さんはその場で頭を下げようとする。主人の気持ちも知らず、交戦しようとした事を悔いてるようだ。アンリは毎度の如く俺にメロメロメロンで腰をくねらせる。
そんな門から校舎へと続く道で起こっているやり取りを、校舎の中の高い場所にあるとある一室から眺める影が二つ。
「ほう…面白い集団だ。私も行けば良かったかな。」
「お戯れを。」
机の上の書類に羽ペンを走らせ、窓から見えた光景にふっと笑う男。その背後に佇む女性が、冗談を言う男を嗜める。
ミリア様の登場!こういうキャラって腹黒かったり悪どかったり…主人公ちゃんに立ちはだかったりもしそう(小並感)
最後に出て来た男女とは?新キャラッシュでごっちゃになってたらすみません。さて置き、皆さん、お気に入りの子は出来そうでしょうか。
次回投稿は遅れます。早くて日曜か月曜には投稿出来たら良いなと。もし、お待ちにして下さってる方が居たら申し訳御座いません。




