第3話【右手にエベレスト左手に高尾山 そこに山があるから登りたい】
一昨日投稿出来なかったので、代わりに本日二話目の投稿です。前話を読んでいらっしゃらない方はご注意下さい。
※4/5日にて改稿。読みやすいように、改行と段落一字下げを行いました。
「きゃっ!っ〜!!」
「はぁ…。」
『はぁ…はぁ…。』
女の子に触れてしまった事で発作が起こりそうになって、肩を落とす。当の俺は溜め息をつき肩を竦めている。
投げ落とされた事でリリたんは尻餅を付いて地面に落ち、こちらを睨むように上目を向けてくる。怒ってるようで体と顔をプルプルと震わせている。
やだ、可愛い。そして、そして…彼女の体勢はM字…ごくり。スカートの隙間からチラリと…。
後そんなに見つめないで下さい。美少女にそんな顔で見つめられると、緊張してヤバいから。
うん、逃げよう、気まずいし。
「ちょっと!どこ行くのよ!」
彼女に背を向け、黙って歩き去ろうとする。 後ろから声がかかるが逃げるよ。怒られたくないからね。何を言うか分からないし、火に油を注ぐ口を閉じて黙って歩く。
「って、待ちなさいよ!」
待つように言われるも、見ざる聞かざる言わざる去る。先の猿も木から落ちるにかけてうまい!と自画自賛しておこう。
ああ、決して帰って自分を慰める行為にいち早く励みたいわけではない。はぁはぁ言ってたのも興奮していたからではない、口を閉じたのも『おい、白いパンツが見えてんぞ。』と変換されるに決まってるからと思ったわけでもないのだ。
森は学園の反対側。安らぎ荘は学園と森に挟まれた場所にある。
学園に向かう為、自室の荷物を取りに一旦宗像騎士団の拠点であるアパートの一室に戻る。
「お帰りなさいませ。」
「すんすん…ハッ!お、おお帰りなさいです〜。」
玄関に入ると、俺の愛刀を横抱きにして持ち地面で正座して待つ静流さんと、その後ろで俺の鞄を抱えて何やら匂いを嗅いでいた(?)アンリがパッと顔を上げ慌てて取り繕い、挨拶をして来る。
美女達に出迎えして貰えるだなんて、男冥利につきるぜ。
「ああ、俺は先に行ってろと言ったが?」
帰ってさっきの光景を思い出し、5分で発射する予定があったのを邪魔されたから、つい『さささ先行ってって、いい言ったよね?』なんて強気に言ってしまった。
怒ってるわけじゃないよ、リビドーを解放させたかっただけで、ちょっと恨み言零しただけなんだから。
俺は二人を睨み付けるように見て、命令無視を咎めるような雰囲気になってしまった。
「はぅ!?キョウ様の射殺すような視線がぁ。濡れちゃいますよぉ〜。」
「申し訳御座いません、恭士郎様。」
「うげへっ!?あぅ〜。」
静流は抱えていた刀を地面に置き、一瞬スッと立ち上がり、身悶えて猫撫でで腰をくねらせるアンリの額を鉄扇でド突いてから、又同じ場所に正座し三つ指ついて頭を下げる。
ド突かれたアンリは仰向けに倒れて、打った後頭部と額を押さえて左右に転がり、痛みに呻いている。
「先ずは口答えする事をお許し下さい。先に行けと仰られましたが、学園に到着する時間など指定されなかったので。ホームルーム開始の5分前に到着する予定で、アパートを出ようと思った次第です。」
「もっともらしい事言っちゃってさぁ〜もう。静流ちゃんはキョウ様と学園一緒に行きたかっただけでしょ。」
頭を上げ、理由を説明する静流さん。後ろから回復したアンリが、ニタニタ笑いながら静流さんの肩をポンポンと叩いてしたり顔で言う。
「そそ、そんな事は…っ!ありますけど。」
「あるんだ〜、あるんだ〜?」
核心を付かれるが否定しようと声を上げるも、後半の部分は小声だ。
俺は鈍感系主人公でも難聴でもないので、しっかりと聞こえていたが。アンリが先程ド突かれたお返しとばかりに静流さんをからかう。
慕って尽くしてくれる女の子に、悪い気はしないどころか単純に嬉しい。
俺でなく俺に向けられた思いだとしてもだ。
じゃれ合う二人を横目に、壁にかかった時計に目を向ける。時間は未だ余裕があるな。
遅刻ギリギリなんて日本の学生時代だったらどうって事ないが、憑依初日に遅刻をするわけにもいくまい。
間に合うように行き、ゲームとの相違を確認せねば。
「いつまでも遊んでないで行くぞ。」
攻略キャラの様子も見て置かないとな。今後の問題は山積みだ。
二人に言ってから荷物を受け取り、刀は腰へと差す。
「はっ!すみませんっ!アンリ、帰ってからお説教しますよ。」
「え〜。キョウ様、さぁ、腕をお貸し下さい。校舎に入るまで腕組みますね〜。」
「私の前でそんな狼藉許すと思いますか?…しかし許可されたら、反対側は私が頂きますが。」
咄嗟に謝る静流さんと、怒られたばかりなのにも懲りず、直ぐ俺とイチャつこうとするアンリ。
危ない、自然と片腕をポケットに突っ込み腕の隙間を作るよう腕の輪を作る所だった。だって、お胸様に腕を挟まれたいじゃないですか。
続けてこちらをチラ見して来る静流さんの言いたい事を想像する。右腕にエベレスト、左腕に高尾山。一体どのような感触なのであろうか。
「……………。」
不味い、収まって来たリビドーがやる気を出そうとしている。直角のアッパーカットを繰り出してしまいそうだ。
俺だったら惚けて鼻を広げてピクピク動かし気持ち悪い表情をしていただろうが、今はクールイケメンな恭士郎だ。
伊達にファンから、狂死郎様やら狂様やら言われていない。ポーカーフェイスを崩さずに呆れたような視線を向けるだけに止まる。
しかし二人に息子の様子がバレないよう背中を向けて学園に向かって歩き出す。
安らぎ荘から出て学園への道を歩く。
右手の斜め後ろには静流さんが、左手の斜め後ろにはアンリが一定の距離を保って歩む。
ちょっと意地悪して少し歩調を速めたり、逆にゆっくりと歩いたりしても一定距離は変化が無い。
プロだ、伊達に従者していない。静流さんは兎も角として、アンリまでプロだとは…正直舐めていた。
「でね〜、最悪なのよ。今日寮の近くの森でね、宗像恭士郎に会ってね。」
「へぇー、それは災難だったね。失礼なキミが良く殺されなかったね。ボクはその事実に驚きだよ。」
「何違う所で驚いてるのよ!それでね、あいつったら私をその、おおお姫様だっこして……。」
前方に話す二人の女生徒。
その内の一人は先程会った美少女の後ろ姿は、リリたんだ。
立ち止まり、さっきの太腿から覗く逆三角形が頭に過りそうになるも…後ろから二つの殺気が!!パターン青、使徒です!?
慌てて振り返るとニコニコ笑顔の静流さんと口を尖らせて思い切り不満そうなアンリの姿が。
「恭士郎様、お姫様抱っことは如何な事で?」
「キョウ様、お姫様抱っこって何ですぅ〜?」
「あー、あれはだな…。」
二人に同時に詰め寄られる。こら二人共、従者の一定距離はどうしたんだい?
『あわわわわわ、あああれはえええっとそのぉ…えっとそのですね…。』テンパる内心とは裏腹に片手で頭を掻き、面倒そうに言葉を濁す。
「あー!?」
言葉に迷っていた所、後方の学園の方から大きな声が聞こえる。
又視線を向ける為に振り返ると、そこには顔を赤くしてこちらを指差して、詰め寄って来るリリたん。
その後ろから面倒そうに、やれやれと首を左右に振ってから、リリたんを追い掛けて歩いて来るこれ又別の美少女。
「あああ、アンタ朝は良くもねぇ〜…放り投げて放置してくれたわね!?」
「はい、ドードー。周りを見たまえよ、二人の獣が今にも飛び掛らんと警戒してるから。それに後一歩踏み込んだら、彼の間合いなのは間違いないから。胴体と泣き別れしたキミの首を、抱き締めたく無いよ。」
掴み掛かろうと俺に向かって走り出そうとしたリリたんを、背後から羽交い締めにする美少女。
俺の背後で静流さんとアンリが直ぐ押さえつけるべく、警戒して戦闘準備をしているのが“気配で”分かる。
リリたんを制止した人物。名前はティナ・ディルクライ。身長は130cm程、赤縁の眼鏡で肩にかかるくらいの、こげ茶色の髪のショートカット。
細身で胸が平野の如くだ。ティナは土人族、ドワーフだ。
合法ロリktkr、漲って来たぜーーー!
このボクっ子ロリ、さり気に俺とリリたんに失礼な事言ってね?
この二人は置いといて、俺はそんな事しないからね?綺麗なリリたんが亡くなったら剥製にして飾るのはリアル美少女フィギュアでありだと思うが。
「おや、何やらやけに臭うと思ったら理解出来た、納得だな。人族だと言わんばかりに人語を介する亜人共。愚直に敵に突っ込むのが好きな自殺志願者、卑しく卑劣で卑怯がウリ、黄色猿の卑国人共と来た。何時から学園は魔物園になったのやら。」
複数の足音が聞こえて来ていたと思ったら、立ち止まりいきなり憎まれ口を叩く声。
来た、背後を振り返ると奴の姿。
俺は会っても問題無いが、俺は会いたくなかった人物。 すみません、リアル美少女フィギュアの下りは自分でも卑しかったと思います。
四人目のヒロインはドワーフの眼鏡のボクっ娘だぜー!
最後に出て来たのは五人目のヒロイン(?)かなー?気になる方は次話も是非閲覧して下さいませ!(笑)
主人公ちゃんをお待ちの方、暫しお待ちを。今の所乙女ゲー詐欺ですが、転入して来るのは実地訓練のタイミングですので。因みにイケメン攻略キャラもどしどし出して行くのでお楽しみに!




