第2話【エルフも木から落ちる】
※4/5日にて改稿。読みやすいように、改行と段落一字下げを行いました。
食事を済ませた後、学園の授業開始まで後一時間弱。
宗像騎士団団員である我が家の面々は、早起きが習慣となっている。
陽国の諺に早起きで三文の得と言う、ぶっちゃけ日本の諺があるからだ。
俺としては夜間まで遊んで、昼過ぎから夕方までぐっすりと眠りたい物だ。朝から学園があるから無理だが。
憑依して一番の弊害は、アニメやフィギュアやらのサブカルチャーが存在しない事。いや、本気で死活問題である、生き甲斐を奪われた。
ありふれた中世ヨーロッパの世界観ではあるが、飯に関しては黒パンだったりスープが塩味オンリーだったりなんて事はない。
現代日本と同じレベルの物が食えるのは、ゲームを制作した際に現代日本の物を参考にしてるのが多いからありがたい。
授業が始まる前、静流さんとアンリに野暮用があるからと先に学園行ってろと言ってから、一人安らぎ荘の近くにある森へと向かう。
俺の身体のスペックを確認する為だ。通学時間を考えると30分程の時間があるので、軽く試してみようか。
この世界【騎士は誓いの剣と花束を】はファンタジーの例に漏れず、危険な魔物が跋扈する世界だ。
動物はいないが代わりとなるのがこの魔物。体内に魔石を宿し人々に災いと生活を豊かにする祝福を齎す存在。肉食獣な奴らが多い中、豚牛鶏みたいな食用の家畜な扱いをされる草食獣的なのもいる。
種族は人族、所謂普人族とは普通の人間の事で5割の種族がこれに当たる。
次に多いのが獣人族、頭に耳が生えたり尻尾があったり。耳や尻尾は元になった動物によって違うらしく、狐耳や猫耳に犬耳など様々、2割程かな。
普人族より身体能力が高く、短慮で好戦的な性格の物が多い。森や山など自然の多い場所で集落を築いて暮らす。
イメージでは未開の地の蛮族的な?殆どが海を渡った別大陸の【ビストウォーリア】に暮らし、普人族とは敵対関係にある。
普人族が捕らえて奴隷とかにしちゃってるからね。奴隷とか聞くとリビドーが刺激されちゃいますよ。
アレな話をすると獣人に限らず他種族と致した場合、生まれて来る子供は雄の種族になる訳で、ハーフとか言う概念がない。
更に異種族同士の配合は子供に恵まれにくく、心配せずに中庭…そう、中庭を余り心配する必要はないのだ。
雌の種族で生まれて来てたり、中庭危険だった場合は今頃獣人族だらけになってたかもしれないのである。
主人公ちゃんと獣人族の組み合わせで、スチルで獣人男が主人公ちゃんの後ろからハグし、更に主人公ちゃんの腕の中には可愛い獣人族の赤ん坊がいた姿にはほっこりしたものである。
子供欲しいって思ったけど、直ぐに相手がいない現実を思い返させられて沈んで鬱になったが。
残りの3割は耳長族と土人族と海人族などで世界の大陸各国で暮らす。
耳長族はエルフで、森の中の集落に暮らす。美形が多くて寿命が長く 数百年は生きるのだ。
視力が良かったり槍や弓の扱いに長けたりする、森に生き森に死ぬ民で自然を大事にがモットーなエコロジーな種族。是非ともエルフ耳prprして味を確認したい所存である。
土人族はドワーフだ。手先が器用で鍛冶屋などで生計を立てる。身長は150cm位が平均だが、ずんぐりむっくりした体型でガタイが良い。耳長族と比べると短いものの、普人族と比べると寿命が長く倍の200年が寿命だ。筋力ムキムキで髭もじゃがモテるこの種族の美的感覚は理解し難い。
だが、しかしだ!男はおっさんではあるも、女は違う。
合法ロリと言っても過言ではないのがドワーフの女なのである。男は劣化と言うかおっさん化するのが早いが、逆に女は劣化するのが極めて遅い。
ドワーフの男女のカップルが歩いている姿は援助してる交際よろしく最早犯罪にしか見えないも、正常な事です。
海人族は魚や海に住む生物の特徴を持つ魚人だな、人魚もいる。
中には普人族を劣等種と蔑みシャーハッハッ!と笑う危険な奴もいるやもしれんな、ゲーム内では登場してないが。
寿命は普人族と変わらない。水陸両方で生活出来るが海の中がこいつらのホーム。他種族はこいつら相手にただの武器で水中戦をしたら確実に勝てないと断言出来る。
さて、何故いきなり種族の説明をおっぱじめたかと言うとだね。目の前の木の枝に座る少女の存在に起因するのだ。
「…っ、アンタ…宗像恭士郎…!?」
早朝の森の中、朝日が地面を照らす開けた場所で、耳の長いエルフの少女が木の枝に座り、気持ち良さげに日向ぼっこをしていたが、俺に気付くと立ち上がり警戒を露わにする。
「はっ、リリーシャか…。朝早くからご苦労なこった。」
「っ!気軽に名前呼ばないでよ。」
名前を口にした俺を遺憾とばかりに腕組み見下ろし後退るリリーシャ。逃げ場が無く背後の木の幹へと背中が当たり停止する。
鼻で笑ってから言ったのはご愛嬌だよ。本当はこんなとこでリリたんと会って驚いてるんだから。
因みに『ほへぇ、ふぁへふぁふ!リリリリ、リリたん。おおおおは、ははよよよう。』が翻訳前。
にしてもちっ、ギリギリ見えん。風よ!孔明さんになった気分で、風が吹くのを予測する能力があれば。
木の上に立つ彼女のスカートが、弱い風でひらひらと舞う様は、見えそうで見えないのを分かっていながらも、あえて焦らし童貞心を弄んでいるかの如くだ。
勿論俺の勝手な妄想だが。
パンチラの瞬間を見逃さぬよう俺が目を向けたり、視線を誤魔化す為、態としもしない欠伸に漏れる口を押さえたりする一挙一動毎に、彼女は耳をピクピクと動かす。あ〜エルフ耳prprしたいんじゃ〜。
彼女はエルフ。エルフなのだ!神が造ったと言われても疑いようのない、美麗なビスクドールを思わせる容姿は、白い肌を警戒と緊張で林檎のように頬を赤く染めている。
俺が警戒されるのは仕方ない。何せ色々やらかしてる男だからな。危険な香りのする男って感じだ。
いや、それどころか危険な男なんだけどね。
「んじゃ、リリーシャ様、お姫様と呼べば良いのかね?」
「さ、様付けで許してあげるんだから。」
彼女の名前はリリーシャ・ユイス・イグドラジル。
攻略キャラのヴァン・ユイス・イグドラジルの妹で、エルフの国の王子である。リリーシャ改めリリたんはお姫様なのだ。
そして主人公ちゃんの少ない仲良し友達の内の一人。
兄妹でエルフの国から留学生としてこの学園に通うも、プライドが高く気の強い性格で周りと合わないから友達が少ない。国際問題に当たる為貴族でさえも彼女と問題を起こすのは大変だから。
宗像恭士郎はでもそんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!と無礼な態度をとり続けているのだ。ゲームでは関わりがちょくちょくしか無いから予想だが。
リリたんは兄をお兄様呼びするブラコンで、お兄様ルートでは主人公ちゃんと決闘したりと色々あるんだが最後は順風満帆を迎える。
リリたんは他の誰であろうと強気と高飛車な態度は崩さないが、俺相手には及び腰だ。
ビビり可愛いしヘタレ可愛いよ。酷い事しないからツンデレなところ見せて下さい。
一際強い風が吹く。チャンス到来。遂に神風がががが!ベストスポットを確保せねば!
「え、きゃあっ!」
風に捲れさせまいとスカートを抑えるリリたん。さり気なく一歩踏み出す俺。って、リリたん危ない!足を縺れさせて木から…。
一歩踏み出すだけに終わらせるつもりだった物の、頭の中に“コントローラー”が浮かんで来て自然と無意識に操作をしていた。
疾走し地面を片足で砕き跳躍、隣の木を三角飛びの要領で足場にして、滑り落ち落下する彼女をお姫様抱きして救出する。
木を蹴る際にミシッと音が鳴ると共に幹にしっかりと足跡が残ってしまった。
「あ、ありが…」
「ククッ…エルフも木から落ちるか。お怪我はないかよ。お姫様?」
地面へと着地。何が起こったか分からず呆然とするが小声でお礼を言いかけるリリたん。
『あべべべ!?おおお女の子にボディタタタッチゃいやぁぁう!木から落ち、だだだいじょび?け怪我は!?』テンパって地面に降ろそうとした俺の意思を汲んでか、俺は横這いに抱いていた彼女を、パッと放り投げるように手を離す。
エルフも木から落ちるとは、猿も木から落ちる的なアレである。
「きゃ!っ〜!!」
それにしても軽かった。まるで羽根のようだ。それは大袈裟だが、流石は恭士郎の肉体スペック、膂力が普人族を軽く凌駕している。
戦闘についてと言ったな。アレは嘘だ!すみません、戦闘シーンはもう少し先に…森といったらやはりエルフか獣人が頭から離れなかったもので。
そして三人目のヒロイン(?)の登場。ゲームの原作では主人公ちゃんグループの一人のサブキャラっ娘だけどもね。まだ三人目だけど、今のとこ誰が一番好印象か…その内アンケートでヒロイン(?)総選挙でもしようかな…(笑)




